三遠南信自動車道
三遠南信自動車道(さんえんなんしんじどうしゃどう、英語: SAN-EN NANSHIN EXPWY[1])は、長野県飯田市の中央自動車道・飯田山本インターチェンジ (IC) から愛知県を経由して静岡県浜松市浜名区の新東名高速道路・浜松いなさジャンクション (JCT) に至る、総延長約100キロメートル (km) の高規格幹線道路(国土交通大臣指定に基づく高規格幹線道路(一般国道の自動車専用道路)(B路線))である。国道474号に指定されている。 道路名に冠された「三遠南信」とは、愛知県東部(旧三河国)、静岡県西部(旧遠江国)、長野県南部(南信地方)の総称である[2]。略称は三遠南信道(さんえんなんしんどう)。 高速道路ナンバリングによる路線番号は、新東名高速道路引佐連絡路とともに「E69」が割り振られている[3]。 概要中央構造線や赤石山脈(南アルプス)を中心とした険しい山岳地帯を通る。特に静岡県浜松市天竜区水窪町と長野県飯田市南信濃の県境を結ぶ青崩峠は地盤が脆弱でありながら地下水位が高く出水しやすいため、青崩トンネルの掘削は三遠南信道全体の工事の中でも最難関とされている[4][5]。 国道474号一般国道の路線を指定する政令[6][注釈 1]に基づく起終点および重要な経過地は次のとおり。
地理通過する自治体一般国道の路線を指定する政令はいわゆる平成の大合併以前の市町村名で記述されており、合併にあわせた改正などは行われていない。合併により上村は飯田市の一部に、水窪町および佐久間町は浜松市天竜区の一部に、鳳来町は新城市の一部に、引佐町は浜松市浜名区の一部になっているため、現在の市町村名による通過市町村は以下のとおりである。 当面の整備方針の概要飯喬道路
長野県飯田市の中央自動車道から分岐し同市内を横断し長野県下伊那郡喬木村まで至る、現在建設中の自動車専用道路である。基本計画・整備計画では起点を長野県飯田市山本(飯田山本IC)、終点を長野県飯田市上久堅(飯田上久堅・喬木富田IC)とする延長約14.6 kmの道路とされている。飯田上久堅・喬木富田IC - 喬木ICの7.5 km区間は2004年度(平成16年度)小川路峠道路から飯喬道路に編入された。 2018年(平成30年)3月10日に龍江IC - 飯田上久堅・喬木富田IC間が[9]、2019年(令和元年)11月17日に天龍峡IC - 龍江IC間がそれぞれ開通した[10]。 2014年5月、飯田市龍江で建設中の19号橋工事において、施工業者の測量にミスがあり、設計図と実際に建設された橋の上部位置が最大で41.5センチメートル (cm) ずれていることが判明した。飯田国道事務所は延滞損害金を徴収するとともに工期を2015年3月20日まで延期することを認めた。建設工事の全体工程に影響はないとしているものの、道路構造令の基準不適合により是正工事が必要となった[11]。 小川路峠道路
長野県飯田市から長野県下伊那郡喬木村を経て長野県飯田市上村に至る道路である。延長6.0 kmのうち起点寄り4.8 kmの区間が供用済みであるが、矢筈トンネル東側坑口付近で国道152号に接続する暫定出入口から程野ICへ至る1.2 kmは現道活用区間(後述)とされる。基本計画・整備計画では起点を長野県飯田市上久堅(飯田上久堅・喬木富田IC)、終点を長野県飯田市上村程野(程野IC)とする延長13.5 kmの道路とされている。飯田上久堅・喬木富田IC - 喬木ICの7.5 km区間は2004年度(平成16年度)小川路峠道路から飯喬道路に編入された。 現道改良区間(長野県)小川路峠道路終点から青崩峠道路起点へ至る区間は、約12 kmにわたる南信濃道路を調査中としつつ、おおむね並行する国道152号を長野県が改良整備しており、現道活用区間として当面利用するとされた。三遠南信自動車道の全線整備に際して国土交通省は、現道を活用するなどなるべく短期間で整備および開通効果を上げる方針のためとしている[13][14][15]。 長野県では矢筈トンネル出口から小嵐ICまでの21.1 kmに渡り、国道152号の改良(向井万場拡幅・小道木バイパス・和田バイパス・小嵐バイパス)を事業中であり、小嵐バイパスの一部を除く19.2 kmが開通済みである[16][17]。 国道152号 向井万場拡幅急峻な地形のため急カーブが多いほか浦の沢トンネルが交互通行となっているなど幅員狭小個所が多く、落石による被害や通行止めもあったため、線形を改良するとともに完全2車線化する事業。1977年(昭和52年)に着手、2011年(平成23年)7月3日に上中郷工区(豆嵐トンネルとその前後)1.162 km が供用開始され全線開通[18][19]。
向井万場拡幅終点から小道木バイパス起点へ至る6.6 kmの区間は、1972年(昭和47年)から1995年(平成7年)にかけて上町小道木拡幅として整備された[20][21]。 国道152号 小道木バイパス急峻な地形により急カーブが多く幅員狭小のため、2車線のバイパスを建設する事業。渓谷沿いの現道を2本のトンネルと2つの橋梁により短絡する。2008年度(平成20年度)に着手し、2015年(平成27年)10月17日に全線供用された[22]。
国道152号 和田バイパス渓谷に開けた住宅密集地を通過するため幅員狭小でカーブが多いので、住宅地を避ける形で2車線のバイパス道路を建設する事業。現道を2本のトンネルと3つの橋梁により付け替える。1998年度(平成10年度)に着手し、2010年度(平成22年度)までに林道千遠線交点からかぐら大橋南詰現道交点の間(約2.1 km)、2015年(平成27年)3月23日に秋葉街道下市場トンネル周辺を除いた区間(約1.4 km)[23]、2016年(平成28年)12月17日に秋葉街道下市場トンネルを含む区間(約0.6 km)が供用開始し、全線開通[24]。
国道152号 小嵐バイパス青崩峠へ向かっての幅員狭小かつ急カーブが連続する急勾配の道路で、大型車両の通行が特に困難であるため、これを改築する事業。現道の改良が主だが、兵越林道分岐の北約500 m付近地点で現道から逸れて南南西に向かい、谷を越えた所で青崩峠道路に接続する。2007年度(平成19年度)着手、2015年(平成27年)3月23日に和田バイパス終点から現道交点の間、約0.4 kmが開通。
青崩峠道路
国道152号の不通区間である青崩峠の西側を、青崩トンネル(仮称・4,998 m)[25]等によって迂回する道路である。 延長13.1 kmのうち、長野県飯田市南信濃和田(南信濃IC)から長野県飯田市南信濃八重河内(小嵐IC)まで7.2 kmについては当面国道152号現道を活用し、小嵐ICから終点である静岡県浜松市天竜区水窪町奥領家(水窪北IC)までの5.9 kmのみ早期供用を目指して先行整備する事としている[26]。 当初は国道152号の東側に沿って兵越峠直下を通過する計画で、そのルートに従って草木トンネル(草木IC - 水窪北IC間)が建設・供用された。しかし同トンネル供用後の1997年(平成9年)に、兵越峠直下にあたる地盤が脆弱なことが判明し、2008年(平成20年)までに計画が地盤のやや硬い青崩峠西側を通るルートに変更された[27]。そのため、草木トンネルは三遠南信自動車道のルートから外れ、高速道路規格から一般道路規格に格下げされた[注釈 3]。
青崩峠トンネル別途新設される事となった青崩トンネルについては、2009年の民主党への政権交代を経て事業費圧縮を目的とした規格変更(右表)が行われ、計画自体が当初のものより縮小された。 なお、その延長が4,998 mと5,000 mをわずかに下回るのは、延長が5,000 mを超えると、トンネル内の保安施設のランクが上がりコストが跳ね上がること、危険物積載車両の制限・禁止がなされることによるものである[28][29]。 トンネルのルート周囲の地盤が脆く地下水位が高いため、難工事が予想され、整備に相応の期間を要する事が懸念されたため、沿線自治体である飯田市・浜松市・豊橋市は連携して早期着工に関する中央要望を行っていた[30]。 2014年3月9日に調査坑の起工式が開催されると、牧野光朗飯田市長や鈴木康友浜松市長、国土交通省中部地方整備局長のほか地元選出の国会議員ら約130人が駆け付け、早期開通を祈願した[5]。2017年3月までに飯田市側から1,544 m、浜松市側から1,364 mを掘削して地質調査を行う計画[31]であった。調査坑工事の進捗は遅れたものの、2019年8月24日に貫通、同年12月に工事が完了した[32]。なお、2019年3月16日には、調査坑工事の完成を待たず本坑工事に着手[33]、2023年5月26日に貫通した[34]。 青崩峠トンネル調査坑青崩峠トンネルの本体延長は4,998 mであるが、その調査坑の延長は5,014 mである。長野県側(北側)部分を小嵐トンネル(調査坑延長 2,607 m)と、静岡県側(南側)を池島トンネル(延長2,407 m)と称し、両側から掘進を始めた。小嵐トンネルの坑口側(その1工事)1,344 mと池島トンネルの坑口側(その1工事)1,239 mの完成を経てその2工事(小嵐トンネル側1,263 m、池島トンネル側1,168 m)が進められた。小嵐トンネル(長野側)は2019年3月に完成、池島トンネル(静岡側)は施工中のトンネルが大きく変形するなど地質が不安定で難工事となっていたが[35][36]、2019年12月に完成した。なお、調査坑は本坑工事では土砂などの運搬抗として、完成後は本トンネル内の事故発生時の避難坑として使用される。 現道改良区間(静岡県)水窪北IC(仮称) - 水窪IC(仮称)間の7 kmは浜松市が国道152号を改良整備するとした[37] 。これは、長野県側と同様、三遠南信自動車道の全線整備に際して国土交通省は、現道を活用するなどなるべく短期間で整備および開通効果を上げる方針のためとしている[13][14]。 水窪佐久間道路
青崩峠道路終点の水窪北ICから佐久間道路起点の佐久間川合ICに至る約21 kmについては、長い間計画中とされており、三遠南信道約100 kmの中で唯一の未事業化区間として残っていた[38]。 この区間のルート選定にあたっては、
以上の3案が検討され[注釈 4]、道路と中央構造線との位置関係や有識者による自然環境への影響検証結果、2013年4月から5月にかけて実施された沿線住民らを対象とするアンケートの回答[39]などを踏まえ、2013年12月26日開催の社会資本整備審議会(道路分科会中部地方小委員会)において(2)案を採用する方針を固めた[40][41][注釈 5]。開通予定時期は未定ながらも三遠南信道の全線供用のめどが付いたことに対し、沿線自治体や住民からは歓迎の声が相次ぐ一方、早期の事業化・着工を求める声も聞かれた[43]。(2)案に従い、2019年度(平成31年度)に水窪IC - 佐久間川合IC間の約14.4kmが新規事業化された[注釈 6][44]。 佐久間道路浜松市天竜区から愛知県北設楽郡東栄町に至る、全長約6.9 kmの自動車専用道路である。2019年3月2日開通[45]。 三遠道路愛知県北設楽郡東栄町から静岡県浜松市浜名区の新東名高速道路に至る、全長約21 kmの自動車専用道路である。事業着手当初、2007年度(平成19年度)末には鳳来峡IC - 浜松いなさJCT間の開通が予定されていたが、三遠トンネル(4,520 m)の建設が予想以上に難航し、2012年(平成24年)3月4日に鳳来峡IC - 浜松いなさ北IC間が開通[46][47]、また2012年(平成24年)4月14日には浜松いなさ北IC - 浜松いなさJCT間が開通し、新東名高速道路と接続した[48]。なお、東栄IC - 鳳来峡IC間は2025年度開通予定である[49][50][注釈 7]。
愛知・静岡県境付近で中央構造線を横切るため地形が険しく、その付近には三遠トンネルをはじめ大小さまざまなトンネル・高架橋が建設された。これにより浜松市浜名区引佐町東黒田から東栄町三輪まで国道257号および国道151号を利用するのに比べ所要時間は30分程度短縮される。 インターチェンジなど
歴史
開通予定年度路線状況
※1一部ゆずり車線あり ※2トンネル部は60㎞/h トンネルと主な橋
トンネルと橋の数
道路情報ラジオ飯田山本ICと天竜峡ICの間で放送されている。 交通量24時間交通量(台) 道路交通センサス
(出典:『平成22年度道路交通センサス』『平成27年度全国道路・街路交通情勢調査』(国土交通省ホームページ)より一部データを抜粋して作成) 脚注注釈
出典
関連項目外部リンク
|