原始中飛車原始中飛車(げんしなかびしゃ、英: Primitive Central Rook[1])は、将棋の戦法。中飛車の一種。 概要
序盤早々に中飛車を決め、あとは5筋を突いて、さらに中央へ銀を繰り出す。初手から▲5六歩や▲5八飛として中央に戦力を集め、中央突破を狙う。一般に玉をほとんど囲わず、居玉のまま戦うことが多い。さらに初心者の場合、金・銀もほとんど動かさずに、飛車・角・桂だけで攻めようとするケースも多い。 相手が陣形を整えないうちに中央突破が決まれば必勝であるが、たいていは出足を止められて劣勢になる(受け方の定跡は確立している)。あまりにも単純なので、中飛車側が攻めきるのは難しいというのが一般的な見解である。このため、プロ棋士同士の対局で出現することは皆無に近く、アマチュアでも有段者が指すことは極めて少ない戦法である。 ただしアマチュア大会ではタクシー運転手の石堂正が原始中飛車一本で1980年、1981年と続けて朝日アマチュア名人戦福岡県代表となっており、『将棋マガジン』1982年4月号「対局日誌」で紹介され、これで勝ちまくるのが痛快であり、いろいろなことが浮かぶとしている。 またかつて、第十八期A級順位戦(1963年(昭和38年)10月5日)にて、升田幸三九段(当時)は対加藤博二八段(当時)戦でこの戦法を用い、定跡で中飛車劣勢とされている局面から新手を放って勝利しており、数少ないプロ公式戦での実戦例となっている[2]。 第3図から△4三金が受けの手段で後述の手順(この場合は▲4二銀成△同金▲5三銀△5二歩▲4二銀成△同玉)で先手指し切りというのが従来の見解である。しかしそこから▲4六歩が升田の用意した一着で、次に▲4五歩を見せて角のラインを生かす。以下も攻めをつなげた升田が快勝した。 この手順はその後プロ公式戦では登場していない模様で、升田の棋譜を発掘した真部一男は「その後この手を用いた棋士が居ないのはなぜか?」と首をひねっているが、2000年代以降の先手中飛車・ゴキゲン中飛車では居飛車側が5筋を突かず、逆に位を取らせて指す指し方が多く、この戦型になりにくくなっている。 原始中飛車の対処法後手が原始中飛車で、下の第1-1図から△5五歩▲同歩△同銀と仕掛ける。これに対して先手は▲2四歩△同歩▲2五歩と継ぎ歩の反撃に出るのが好手。以下△2五同歩▲同飛△3四歩▲2四歩で先手優位。
ただし、第1-2図のように先手陣が5筋の備えが出来ていない場合、△5五歩▲同歩△同銀に対して先手が▲2四歩△同歩▲2五歩と継ぎ歩の反撃に出ても、△3四歩▲2四歩には、今度は△5六銀があり、▲2三歩成には△8八角成▲同銀△2七歩が成立ずる。以下▲1八飛なら△2三金、また▲2七同飛なら△6七銀成から5八角などの強襲が利く。このため第1-2図から△5五歩▲同歩△同銀には▲5八金右として、第2-1図への局面に持ち込むことになる。
第2-1図は、上記第2図から後手が△5五歩▲同歩△同銀と仕掛け、以下▲5七銀右に△5六歩とするが、先手は▲6六銀とかわす。以下△6六銀▲同歩から△5七銀にも▲6七金として、△6八銀▲同金に再度△5七銀としても▲5八歩で攻めは続かない。 評価上記の受け定跡が存在するため、対プロ棋士・アマ有段者に効果的な戦法と見做されていない。 かつて『将棋世界』1983年2月号で「定跡実験室」のシリーズ企画で堀口弘治(先手、中飛車側)対室岡克彦(後手、居飛車側)が角道開型で後手居飛車側が有利な指定局面として指させて、結果は先手中飛車側が勝利している。ただし中飛車側をもって指した堀口は観戦記ではやはりこの中飛車側の戦型は指しにくい、としている。 脚注
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