B級戦法B級戦法(びーきゅうせんぽう)とは、将棋の戦法のうち、プロやアマチュア全国大会などの棋戦で、たまにみられるがまず指されない、普段頻繁に指される居飛車や振り飛車将棋ではない、専門家(プロ棋士)からみるとやや筋悪であるが一風変わっているユニークな戦法とされているものを指している。 2020年NHK将棋講座「阿久津主税の楽しく勝とうB級グルメ戦法」というタイトルでわかるとおり、「B級」としているのは、B級グルメで使用するB級の意味と同様な意味でつかわれている。順位戦の「B級」の意味ではない。 将棋世界2016年11月号に掲載した「魅惑のB級戦法「常識の先に何かがある」」を再構成した対談:瀬川晶司六段×今泉健司四段「B級戦法は こんなに楽し」[1]で、B級戦法といってもこれは立派な戦法で、ナメてかかると痛い目に遭う、いまはプロの将棋も何でもありの時代で、何をもってB級というのか、定義が難しいとしている。瀬川も今泉もアマチュア大会に出ていたときは元獎(元奨励会出身者)で、B級戦法は指すより食らう側であり、初対戦でデータのない、何をやってくるかわからない相手と当たるのはとても嫌であり、とくにB級戦法を指しこなす人は、自分のペースで戦えることも大きいとしている。またB級戦法のひとつの狙いとして、相手を怒らせる、平常心をなくさせるということもあるとしている。そして、B級戦法は間違いなくアマチュアの間で作られていき、プロが見ると理論づけすることで発展、したがって発案はアマ、理論づけはプロの仕事、ということはあるとしている。 ハメ手や奇襲戦法のことを指しているように見えるが、必ずしもハメ手や奇襲戦法というわけではない。B級戦法を専門に紹介した棋書『B級戦法の達人』で、その初期版である1997年に出た時の紹介戦法は#主な戦法の通り。このうち、「平美濃返し」と「逆襲!変幻飛車」の2つは、その後前者は飯島流引き角、後者は角交換四間飛車として、それぞれプロの将棋でも採用され大活躍している。さらに「平美濃」は対振り飛車左美濃では、2010年代後半以降、特に後手番角道不開の△2二玉型として天守閣美濃に変わって多く指されるようになっている。 また「魅惑のB級戦法」ではプロの戦法に昇華したB級戦法に、升田幸三賞特別賞を受賞した立石勝己の立石流四間飛車を上げられているが[1]、立石流は四間飛車の変化でも常に含みとしてあるため優秀で、▲7六歩△3四歩▲7五歩スタートでも、立石流のように進むこともあることから、もはやB級ではなく市民権を得た戦法とみている。 類似の言葉のうち、そのひとつには斜陽戦法、マイナー戦法がある。これは幾つかの意味があり、そのひとつはいわゆるマイナー化した戦法で、以前は頻繁に指されていた戦法・戦術であったが、ある時期から指されなくなった戦法の呼称。但しこれも、ある時期から復活し始めるということもある。他には、末永く使われてはいるが使う棋士は限られていることでマイナーである、という戦法を指す。 他の類似の言葉では「珍戦法」(後述)がある。こちらは手段から陣形に至るまで、通常の将棋から照らしても珍奇であるとわかる戦法のことで使用される言葉。 主な戦法2020年NHK将棋講座「阿久津主税の楽しく勝とうB級グルメ戦法」で紹介されている戦法は以下の通りであった。
『B級戦法の達人』で対振り飛車のB級戦法として紹介されているのは次の通り。
同書で振り飛車のB級戦法として紹介されているのは次の通り。
同書で相居飛車のB級戦法として紹介されているのは次の通り。 その後『将棋・B級戦法の達人プラス』(2002年初版)、『将棋・B級戦法の達人』 (2016年、マイナビ将棋文庫、週刊将棋 (編集)では、以下の戦法が追加紹介されている。
これら一部はもともと江戸時代に発明された戦法で、現代風にアレンジして紹介している。 B級戦法はこの他、「痛快! ワンダー戦法(週将ブックス)」にも掲載されている。「ワンダー戦法」のタイトルはさらに可能性を秘めているの意味が込められている。紹介されている戦型は以下の通り。このうち矢倉・左美濃や中飛車左穴熊などは公式棋戦でも頻繁にみられるようになった戦型。
珍戦法具体的には雲隠れ玉や袖飛車#棒玉袖飛車といった珍玉等が有名であるが、『神戸発 珍戦法で行こう』(島本亮 2006年 毎日コミュニケーションズ)では以下の戦術が紹介されている。 「第1章 一発芸戦法」では、
と、番外で端角#▲9八香戦法 などが紹介されている。 「第2章 天空の城戦法」では(1)対美濃編 (2)対穴熊編として居玉#居玉戦法などを紹介している。 「第3章 駒落ち上手」では(1)二枚落ち編と(2)飛車落ち編などで、上手の定跡外し的な戦法を掲載。 「第4章 浮雲戦法」では(1)~(4)金開き(金開き戦法VS四間飛車、中飛車穴熊、中飛車、三間飛車)など。この他に、
脚注出典本文の書籍を参照。 |