エミレーツ航空
エミレーツ航空(エミレーツこうくう、アラビア語: الإمارات、英語: Emirates)は、アラブ首長国連邦のドバイを本拠とする航空会社。アラブ航空会社機構 (Arab Air Carriers Organization) の一員。UAEでもエティハド航空と並ぶ大きな航空会社となっている。 概要就航開始アラブ首長国連邦(UAE)のドバイをベースに1985年に2機の飛行機(ボーイング737とエアバスA300)で就航を開始した。当初は中古のボーイング747などで中東域内とヨーロッパ路線を運航していたが、その後世界最大の旅客機エアバスA380等の新型機の積極的な導入と新規路線の開設を進めた。 積極的な拡大2011年現在、日本(東京、大阪)、モスクワ、パリ、ロンドン、ソウル、北京、香港、バンコク、クアラルンプール、シンガポール、ジャカルタ、ムンバイ、シドニー、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンパウロ、ヨハネスブルグを含む全ての大陸の都市に就航している数少ない航空会社の一つである。近年ドバイは中東の経済・観光の中心地となるべく投資を進め、街には超高層ビルや高級ホテルなどが林立しているが、エミレーツ航空もそうしたアラブ首長国の政策の一端を担っており、世界各地とドバイを結んでいる。 近年ではエアバスA380-800型機、ボーイング777-200LR型機、またボーイング777-300ER型機、777-X型機など最新鋭機を大量に発注し大きな注目を集めた。航空業界では、新サービスや機体の大量発注などを大胆に行うことから『何をするか分からない航空会社』という異名を持つ[1]。 金融危機の影響2007年頃には、原油価格高による燃料費高騰などで経営難に苦しむ航空会社が多い中、エミレーツは原油高による中東諸国の好景気に支えられ、「世界で最も景気の良いエアライン」と言われていた。しかし、拡張路線を歩んできた同社も、2008年以降のアメリカを震源とする金融危機の影響を受けた。2008年には、エミレーツ航空が保有するスリランカ航空の株式をすべてスリランカ政府が引き取ることとなった。さらに、2009年3月には、利用客の減少から、使用機材を変更したり、不採算路線から運休や撤退をした。 しかし、2010年3月28日より成田国際空港へ就航を開始するなど、金融危機前に比べてより採算性が高く見込める路線には積極的に機材を投入し、再び拡大路線を強めている。 機材2023年10月現在、エミレーツ航空の平均機齢はおよそ10年である。 なお、エミレーツ航空が発注したボーイング社製航空機の顧客番号(カスタマーコード)は1Hで、航空機の形式名は777-21HER, 777-31H, 777-21HLR, 777-31HER などとなる。 エミレーツ航空は1995年以降、旅客機としてナローボディ機を保有していない。 概要積極的に最新機材の導入を行っており、世界最大の旅客機であるエアバスA380を大量発注し話題となった(エアバス社による電気系統のトラブルから納入が2008年以降に延期となった為に、一時、発注自体のキャンセルも検討したが、4機を追加発注することでキャンセルは回避され、2007年6月22日に行われたパリ航空ショーにおいて、更に8機が追加発注されて合計55機となり、同機における最大のカスタマーとなった)。その後、2010年6月8日に32機追加発注し、これにより発注数は合計で90機となった。これは民間大型旅客機部門において、一つの航空会社単位では最大の発注数となる。2019年3月時点で、全種類のボーイング777(-200,-200ER,-200LR,-300,-300ER,-X(-8,-9),-F)を導入した唯一の航空会社となっている。 なお、エミレーツ航空は、A380の最大のカスタマーであるが、同じく2階建ての旅客機であるボーイング747旅客型の所有、運航はしていない。 2008年8月1日、8月3日にドバイ〜ニューヨーク/JFK間においてエアバスA380のお披露目フライトを行った。そして、8月8日より同路線間でニューヨーク行EK201便(水・金・日曜日運航)とドバイ行EK202便(水・金・日曜日運航)の往復便として中近東の航空会社として初めて商業飛行が開始された。同社はA380を世界最大規模で保有しているため、新規就航路線の開設やデモ飛行、イベント、キャンペーンなどの時にイレギュラー的に投入されたりしていて、同社の広告塔としての役割もある模様。また、同社の拠点空港となっているドバイ国際空港には同社運用のA380専用発着のターミナル3コンコースAを設置しており、同施設では20のゲートで同時にA380の運用を行うことが出来るようになっている。(コンコースAからボーイング777運用の便が割り当てられることもある。又、A380がコンコースB及びCから発着する場合もある。) 2009年3月18日よりソフトバンクモバイルの端末に限り機内で携帯電話の利用ができる。なお、利用できるサービスは通話とSMSのみである。 世界最大のエアバスA380オペレーターとなるが、中でも2015年11月4日に受領した中距離2クラス(ビジネス・エコノミー)仕様は615座席としている[2]。有償飛行開始となればかつて2クラスで世界最多座席数であった全日本空輸のボーイング747-400Dの569席を抜き、2クラスでは世界最多座席数同時に世界初の600席台の有償座席数となる。 2011年11月13日には長距離型の旅客機「777-300ER」50機、180億ドル相当の発注契約を結んだと発表し、ドル建て基準でボーイング社史上最大規模の受注となった[3]。2012年3月2日には、ボーイング社では量産1000機目となるB777を受領した(型式はB777-300ER,機体記号:A6-EGO)[4]。 2011年11月17日ドバイ航空ショーにおいて50機のエアバスA380の追加発注を発表。これにより同航空会社のA380保有数は140機を数える事となる。 2013年11月17日にも同じドバイ航空ショーにてボーイングが開発中のボーイング777Xシリーズのローンチカスタマーとなり計150機、ボーイング777-8Xが35機、ボーイング777-9Xが115機と50機の購入権が付いた契約を発表。A380も50機発注し、オプションを除く確定分だけで中型、大型機200機の発注で、金額では990億ドル(約9.9兆円)と小国の国家予算並みの民間機過去最高額の発注を行った。[5] 2016年5月、スカイマークが導入を試みたがものの財政的理由でエアバスが発注をキャンセルした2機のA380を購入。
2016年11月10日、同社運航機材からA330-200型機及びA340-300型機が引退し、同社の現役旅客機はエアバスA380型機とボーイング777シリーズに絞られることになったが、 2017年11月のドバイ航空ショーの際にボーイング787-10型機を40機発注したことを発表した。[8] 2019年2月、発注済みだったA380型機39機をキャンセルし、代わりにA330-900neo型機を40機、A350-900型機を30機発注合意したと発表した。これによってA380の生産は2021年を以て終了される[9]。その後2019年11月のドバイ航空ショーで2月契約の代わりにA350-900のみ50機購入契約に調印[10]。 尚、購入予定だった787型機についても、エンジンがドバイの気候に適さないとの理由でキャンセルした[11] が777-8/9遅延で150機を126機発注へ減らし、補償で787-9x30機発注を2019年11月のドバイ航空ショーで発表[12]。 リスト
退役機材
サービス機内サービス機内サービスの評価は高く、業界でも権威あるアメリカのOAG(Official Airline Guide)によるエアライン・オブ・ザ・イヤーなど、数々の賞を受賞している。 同社が世界最多機数を保有するA380には、航空業界としては初の試みとして、ファーストクラスの使用者を対象にラウンジバーのほかシャワーを備えた2つのバスルームが装備された[23][注釈 1]。 一部機材のファーストクラスは通路と座席がパーティションで仕切られており、個室のような空間となっている「プライベートスイート」を搭載している[24]。一部機材にはice(Information, Communications, Entertainment)というオンデマンドエンタテインメントシステムを導入。個人用座席モニターで映画、音楽、ゲームのほか、Eメール送受信やSMSを座席に居たまま利用できる。システムは標準でアラビア語、英語のほか、日本語にも対応。機内誌は「openskies」が用意される。近年の機内改修で、ビジネスクラスは全席通路アクセス可能なスタッガードシートタイプへ更新、また新規にプレミアムエコノミークラスも24席装備されており、A380型機とB777型機の就航路線で見られる[25]。 一部機材では長時間飛行の際、夜間に機内の天井に星空が広がる様なムードライティングの演出がなされている。時差ボケ解消に有効だという。 機内食は、全てハラールの食材、調理法で作られており、アルコール飲料も提供される[26]。日本路線には和食も提供される。 日本就航以前から日本人客室乗務員を採用しており、日本路線のみならずドバイ発着のヨーロッパ路線やアフリカ路線、アメリカ路線、アジア路線にも乗務している。英語が堪能である必要があり、二ヶ国語以上話すことができる乗務員も多い。現役客室乗務員が働いてみたい人気航空会社で、世界で最も就職するのが難しい難関航空会社の一つである。 ほとんどの運航路線ではOnAir社提供のWifiによるインターネット接続が可能となっている。20MBの通信までは無料で利用でき、それ以上は有料のプランが用意されているが、Emirates Skywards会員は無料で無制限に利用できたり、割引を利用できる[27]。
地上サービスドバイ国際空港で乗り継ぐ際には、ファーストクラス、ビジネスクラスそれぞれに向けたラウンジがある。[28][29] エミレーツ航空専用となっているターミナル3には各コンコースそれぞれ4Fと5Fにある。特にコンコースAではそれぞれのラウンジ専用の搭乗口も設置され、ラウンジから離れることなく機内へ搭乗が可能である。その他にマルハバ・ラウンジという、座席クラスに関係なく利用できる有料ラウンジがある[30]。乗り継ぎ待ち時間が長時間の乗客には、無償でホテルの部屋を提供している[31]。乗り継ぎ時に、ドバイに短期滞在する乗客には、ホテルやツアーを低価格で提供している[32]。 マイレージEmirates Skywardsが独自のマイレージプログラムである。かつてはスリランカ航空と「スカイワーズ」の名称でマイレージサービスを共通化していたが、2008年3月31日をもってスリランカ航空がスカイワーズを離脱し、現在はエミレーツ航空単独のマイレージサービスとなっている。 Emirates Skywardsにはブルー、シルバー、ゴールド、プラチナの4つのティアがあり、一定期間内の搭乗回数や搭乗マイルにてティアが決まる。シルバーからは前述のビジネスクラスラウンジが利用できるなど様々な特典が用意されている[33]。 日本航空、ジェットエアウェイズ、大韓航空、南アフリカ航空、カンタス航空、ジェットスター航空、ジェットブルー航空、イージージェットなどと提携している。 受賞歴
就航都市ドバイ国際空港を中心に、全大陸の主要100都市以上へ就航している。 また、上記以外の都市へも他社とのコードシェアで運航している。 コードシェア2013年3月にブリティッシュエアウェイズとの13年におよぶ提携を解消して、替わりにカンタス航空とのコードシェアや運賃設定、販売、運航計画、ラウンジの運用などの広範囲の提携に切り替えた。また、この提携に伴いカンタス航空はドバイ国際空港でエミレーツ航空が設置運営をしているA380専用ターミナルを使用できる権利を唯一保有することになった。しかし2023年11月現在、カンタス航空の機材はドバイ国際空港には乗り入れていない。
日本路線運用の歴史
スポンサー活動スポンサー活動に積極的である。過去には、国際サッカー連盟(FIFA)アジアサッカー連盟公式パートナー、フランスリーグ・アンのパリ・サンジェルマンFC、競馬のワールドレーシング・チャンピオンシップ、F1チームマクラーレンのスポンサーでもあった。 2006年からイギリス・イングランドのサッカークラブ・アーセナルFCの本拠地エミレーツ・スタジアムの命名権を取得したのに続き、同年から同チームのスポンサーとなり、ユニフォームの胸に「Fly Emirates」の文字を見ることができる[61]。ただし2018-19シーズンからロゴが「Emirates Fly Better」表記に順次変更されている。 ラグビーユニオンでは、ワールドラグビー主催の世界大会において、ラグビーワールドカップ2007から、ラグビーワールドカップ2027まで、公式ワールドワイド・パートナー契約を結んでいる[62]。ワールドカップ男子大会は2011年から、女子大会は2018年から、レフリーたちマッチオフィシャルのジャージには「Emirates」のロゴが入っている[63][64][65][66][67][68]。あわせて、レフリー(マッチオフィシャル)のエリート育成プログラム「エミレーツ・ワールドラグビー ハイパフォーマンス マッチオフィシャル」の冠スポンサーを、2013年から2027年まで務める[69]。 また、2013年からはスペインのサッカークラブ、レアル・マドリードのスポンサーに加わった。他のサッカークラブでは、ドイツのハンブルガーSV[70]、イタリアのACミラン、フランスのオリンピック・リヨン、ポルトガルのSLベンフィカ[71]、ギリシャのオリンピアコスFC[72]、FAカップ、アメリカのニューヨーク・コスモスのスポンサーとなった。 野球のロサンゼルス・ドジャース[73] のメインスポンサーで、これらスポンサーチーム主催のホームゲーム試合開始前のエキシビションなどでも客室乗務員がパフォーマンスする様子が同社公式YouTubeなどに掲載されている。 2007年から、ヨットレースのアメリカスカップに参戦するチーム・ニュージーランドの冠スポンサーを務めており、2017年(第35回)より同レースを3連覇している。 2017年から自転車ロードレースチームであるUAE チーム・エミレーツのスポンサーとなる。 その他ATP、全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン選手権、全米オープン[74]、ICC、NBA、ワールドラグビー、ヨーロピアンツアー、クリケット・オーストラリア、ドバイワールドカップ、ドバイセブンズ、チーム・ニュージーランド、AFLのコリングウッド、ネットボールアラブ首長国連邦代表、ドバイ国際映画祭、ドバイジャズフェスティバル、メルボルン交響楽団とシドニー交響楽団、ドバイ国際博覧会などのメインスポンサー・公式エアラインとして指定されている。 またイギリスのロンドンにあるロープウェイエミレーツ・エア・ラインの命名権も持っている。
事故
脚注注釈
出典
関連項目
外部リンク
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