1958年のF1世界選手権(1958ねんのエフワンせかいせんしゅけん)は、FIAフォーミュラ1世界選手権の第9回大会である。1958年1月19日にアルゼンチンで開幕し、10月19日にモロッコで開催される最終戦まで、全11戦で争われた[1]。1958年シーズンはコンストラクターズタイトルが争われた初のシーズンとなった[2]。イギリス人ドライバーのマイク・ホーソーンが、ヴァンウォールを駆るスターリング・モスとの戦いの末タイトルを獲得し、コンストラクターズタイトルはヴァンウォールがフェラーリとの激しい戦いを制し獲得した。
このシーズンはF1史上最も重くかつ悲惨なシーズンの1つであった。
シーズン概要
エンジンのレギュレーションは以前と変わらなかったが、レースの最低走行距離は300kmまたは2時間へと減少した。また、アルコールをベースに特化したレース燃料に代わって、一般のガソリンを使用することが義務づけられた。コンストラクターズタイトルが与えられる初のシーズンとなったが、マイク・ホーソーンがスターリング・モスを抑えてドライバーズタイトルを獲得したものの、コンストラクターズタイトルはヴァンウォールが獲得した。
プライベートチームオーナーであるロブ・ウォーカーがリアエンジン車のクーパー・クライマックスを投入、シーズン開幕2連勝し衝撃を与えた。アルゼンチン戦にヴァンウォールは参加しなかったため、スターリング・モスはクーパー・クライマックスで参加、フェラーリに打ち勝った。モナコではモスがヴァンウォールで参戦、モーリス・トランティニアンがクーパー・クライマックスでフェラーリに勝利した。
ヴァンウォールでのモスのチームメイト、トニー・ブルックスはシーズン3勝を挙げた。イタリアグランプリではモスがホーソーンを追い抜いて勝利し、タイトル決定が最終戦のモロッコに持ち越された。モスはタイトル獲得のためにはファステストラップで勝利した場合、ホーソーンが3位以下になる必要があった。レースはモスがリードし、ブルックスともう1人のチームメイト、スチュアート・ルイス=エヴァンズがホーソーンを3位に押さえ込もうとしたが、両者ともエンジンが故障した。ルイス=エヴァンズはクラッシュ、彼の車は炎上し大火傷を負った。ホーソーンは2位でフィニッシュし初のタイトルを獲得した。ヴァンウォールはコンストラクターズ初代チャンピオンとなった。
ホーソーンはタイトル獲得を手土産に引退したが、1959年初めに交通事故で死亡した。F1決勝では初の死亡事故となったフランスでのルイジ・ムッソ、ドイツでのピーター・コリンズ、モロッコでの事故によるスチュアート・ルイス=エヴァンズの死に続いてホーソーンの死は悲劇的なシーズンを強調することとなった。
マリア・テレーザ・デ・フィリッピスは世界選手権に参加した最初の女性ドライバーとなった。
5度のタイトルに輝き、50年代のF1を支配した偉大なるドライバーのファン・マヌエル・ファンジオは、プライベイターとして2戦およびインディ500(エントリーおよび練習走行は行ったが、予選は走らず予選落ち扱い)に参加したのみで、フランスグランプリの後引退した。
開催地及び勝者
注:インディ500はF1レギュレーションに沿わない形で実施され、コンストラクターズタイトルにはカウントされなかった。
エントリーリスト
チーム
|
コンストラクター
|
シャシー
|
エンジン
|
タイヤ
|
ドライバー
|
出場ラウンド
|
スクーデリア・スッド・アメリカーナ
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
ファン・マヌエル・ファンジオ
|
1
|
カルロス・メンディテギー
|
1
|
ケン・カバナ
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
ジャン・ベーラ
|
1
|
ルイジ・タラマッツォ
|
2
|
ケン・カバナ
|
2, 5
|
ヨアキム・ボニエ
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
ハリー・シェル
|
1
|
ヨアキム・ボニエ
|
2-3, 5-7, 9
|
フィル・ヒル
|
6
|
ジュリオ・ガビアンカ
|
10
|
ハンス・ヘルマン
|
10-11
|
パコ・ゴディア
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
パコ・ゴディア
|
1-2, 5-6
|
ホレース・グールド
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
D
|
ホレース・グールド
|
1-3
|
ロブ・ウォーカー・レーシングチーム
|
クーパー
|
T43 T45
|
クライマックス L4
|
C
D
|
スターリング・モス
|
1
|
モーリス・トランティニアン
|
2-3, 7-11
|
ロン・フロックハート
|
2
|
T43 (F2)‡
|
フランソワ・ピカール
|
11
|
スクーデリア・フェラーリ
|
フェラーリ
|
246 156 (F2)†
|
フェラーリ V6
|
E
|
ルイジ・ムッソ
|
1-3, 5-6
|
ピーター・コリンズ
|
1-3, 5-8
|
マイク・ホーソーン
|
1-3, 5-11
|
ヴォルフガング・フォン・トリップス
|
1-2, 6-10
|
オリヴィエ・ジャンドビアン
|
5, 10-11
|
フィル・ヒル
|
8-11
|
スクーデリア・セントロ・スッド
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
マステン・グレゴリー
|
1, 3, 5, 10
|
ヨアキム・ボニエ
|
1, 8
|
ジェリーノ・ジェリーニ
|
2, 6-7, 10-11
|
モーリス・トランティニアン
|
5
|
キャロル・シェルビー
|
6-7, 10
|
トロイ・ラットマン
|
6, 8
|
パコ・ゴディア
|
8
|
ハンス・ヘルマン
|
8
|
クリフ・アリソン
|
9
|
ヴォルフガング・ザイデル
|
5, 11 8
|
クーパー
|
T43 (F2)
|
クライマックス L4
|
D
|
オスカ・オートモビリ
|
オスカ
|
F2
|
オスカ L4
|
P
|
コリン・デイヴィス
|
1
|
ジュリオ・ガビアンカ
|
2
|
ルイジ・ピオッティ
|
2
|
フロイラン・ゴンザレス
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
フロイラン・ゴンザレス
|
1
|
ロベルト・ミエレス
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
ロベルト・ミエレス
|
1
|
ルイジ・ピオッティ
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
ルイジ・ピオッティ
|
1
|
キース・キャンベル
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
キース・キャンベル
|
2
|
オーウェン・レーシング・オーガニゼーション
|
BRM
|
P25
|
BRM L4
|
D
|
ジャン・ベーラ
|
2-3, 5-11
|
ハリー・シェル
|
2-3, 5-11
|
ロン・フロックハート
|
5, 11
|
モーリス・トランティニアン
|
6
|
マステン・グレゴリー
|
7
|
ヨアキム・ボニエ
|
10-11
|
バーニー・エクレストン
|
コンノート
|
B
|
アルタ L4
|
A
D
|
バーニー・エクレストン
|
2
|
ブルース・ケスラー
|
2
|
ポール・エメリー
|
2
|
ジャック・フェアーマン
|
7
|
アイヴァー・ビューブ
|
7
|
クーパー・カー・カンパニー
|
クーパー
|
T45 T44 T45 (F2)†‡
|
クライマックス L4
|
D
|
ジャック・ブラバム
|
2-3, 5-11
|
ロイ・サルヴァドーリ
|
2-3, 5-11
|
イアン・バージェス
|
7
|
ブルース・マクラーレン
|
8, 11
|
ジャック・フェアーマン
|
11
|
チーム・ロータス
|
ロータス
|
12 16 16 (F2)†
|
クライマックス L4
|
D
|
クリフ・アリソン
|
2-3, 5-11
|
グラハム・ヒル
|
2-3, 5-11
|
アラン・ステイシー
|
7
|
ヴァンウォール・プロダクツ・リミテッド
|
ヴァンウォール
|
VW 5
|
ヴァンウォール L4
|
D
|
スターリング・モス
|
2-3, 5-11
|
トニー・ブルックス
|
2-3, 5-11
|
スチュアート・ルイス=エヴァンズ
|
2-3, 5-11
|
マリア・テレーザ・デ・フィリッピス
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
マリア・テレーザ・デ・フィリッピス
|
2, 5, 9-10
|
ジョルジオ・スカルラッティ
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
ジョルジオ・スカルラッティ
|
2-3
|
アンドレ・テステュ
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
アンドレ・テステュ
|
2
|
ルイ・シロン
|
2
|
エキュリー・マールスベルゲン
|
ポルシェ
|
RSK RS550 (F2)
|
ポルシェ F4
|
D
|
カレル・ゴダン・ド・ボーフォール
|
3, 8
|
ファン・マヌエル・ファンジオ
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
ファン・マヌエル・ファンジオ
|
6
|
ディック・ギブソン
|
クーパー
|
T43 (F2)
|
クライマックス L4
|
D
|
ディック・ギブソン
|
8
|
ポルシェ KG
|
ポルシェ
|
RSK (F2)
|
ポルシェ F4
|
-
|
エドガー・バース
|
8
|
ハイ・エフィシエンシー・モータース
|
クーパー
|
T43 (F2)
|
クライマックス L4
|
D
|
イアン・バージェス
|
8
|
エキュリー・エペロン・ドール
|
クーパー
|
T43 (F2)
|
クライマックス L4
|
E
|
クリスチャン・ゲータルズ
|
8
|
エキュリー・デミ・リットル
|
ロータス
|
12 (F2)
|
クライマックス L4
|
D
|
アイヴァー・ビューブ
|
8
|
ブライアン・ネイラー
|
クーパー
|
T45 (F2)
|
クライマックス L4
|
D
|
ブライアン・ネイラー
|
8
|
トニー・マーシュ
|
クーパー
|
T45 (F2)
|
クライマックス L4
|
D
|
トニー・マーシュ
|
8
|
リチャード・アトリー
|
トジェイロ
|
F2 (F2)
|
クライマックス L4
|
-
|
リチャード・アトリー
|
8
|
テンプル・ビューエル
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
キャロル・シェルビー
|
9
|
マステン・グレゴリー
|
11
|
カジミロ・デ・オリヴェイラ
|
マセラティ
|
250F
|
マセラティ L6
|
P
|
カジミロ・デ・オリヴェイラ
|
9
|
エメリソン・カーズ
|
エメリソン
|
56
|
アルタL4
|
D
|
ポール・エメリー
|
11
|
アンドレ・ゲルフィ
|
クーパー
|
T45 (F2)‡
|
クライマックス L4
|
D
|
アンドレ・ゲルフィ
|
11
|
ブリティッシュ・レーシング・パートナーシップ
|
クーパー
|
T45 (F2)‡
|
クライマックス L4
|
D
|
トム・ブリッジャー
|
11
|
ロベール・ラ・カズ
|
クーパー
|
T45 (F2)‡
|
クライマックス L4
|
D
|
ロベール・ラ・カズ
|
11
|
†:ドイツグランプリに参加(ブルース・マクラーレン、ジャック・ブラバムがクーパーで、フィル・ヒルがフェラーリ、グラハム・ヒルがロータスで)
‡:モロッコグランプリに参加(アンドレ・ゲルフィ、ジャック・ブラバム、ブルース・マクラーレン、トム・ブリッジャー、ロベール・ラ・カズがクーパー・T45sで、フランソワ・ピカールがクーパー・T43で)
1958年のドライバーズランキング
ポイントは1位から順に5位まで 8-6-4-3-2 が与えられた。ファステストラップを記録したドライバーにもポイントが与えられた。ベスト6戦がポイントランキングに数えられた。
|
色 |
結果
|
金色 |
勝者
|
銀色 |
2位
|
銅色 |
3位
|
緑 |
ポイント獲得
|
青
|
完走
|
† 完走扱い(全周回数の90%以上走行)
|
規定周回数不足(NC)
|
紫 |
リタイア(Ret)
|
赤
|
予選不通過(DNQ)
|
予備予選不通過(DNPQ)
|
黒 |
失格(DSQ)
|
白
|
スタートせず(DNS)
|
レース中止(C)
|
水色
|
プラクティスのみ(PO)
|
金曜日テストドライバー(TD) 2003年以降
|
空欄
|
プラクティス出走せず(DNP)
|
除外 (EX)
|
到着せず (DNA)
|
欠場 (WD)
|
|
- 斜体:ファステストラップ (1ポイントが与えられた。同タイムのドライバーがいた場合平等に割り当てられた。)
- 太字:ポールポジション
- † 順位は同じ車両を使用したドライバーに配分された
- ~ 同じ車両をドライブし、ポイントは与えられなかった
1958年のコンストラクターズランキング
ポイントは1位から順に5位まで 8-6-4-3-2 が与えられた。ベスト6戦がポイントランキングに数えられた。各コンストラクターとも最上位の車両にポイントが与えられた。
ノンタイトル戦結果
参照
- ^ FIA Yearbook, 1974, Grey section, page 118
- ^ FIA Yearbook, 1974, Grey section, page 120
- ^ a b ベスト6戦がポイントランキングに数えられた。ポイントは有効ポイント、括弧内は総獲得ポイント。
外部リンク
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1950年代 | |
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1960年代 | |
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1970年代 | |
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1980年代 | |
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1990年代 | |
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2000年代 | |
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2010年代 | |
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2020年代 | |
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