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この項目では、秋に東京競馬場で2000mで行われる競馬の競走について説明しています。春に京都競馬場で3200mで行われる競馬の競走については「天皇賞(春)」を、天皇賞全体の歴史などについては「天皇賞」をご覧ください。 |
天皇賞(秋)(てんのうしょうあき)は、日本中央競馬会(JRA)が毎年秋に施行する中央競馬の重賞競走(GI)である。通称「秋天(あきてん)」。
正式名称は「天皇賞」であるが、JRAでは施行距離が短縮された1984年(昭和59年)以降「天皇賞(秋)」と表記している[3]。
正賞は天皇賞、日本馬主協会連合会会長賞。
概要
3歳以上の馬(外国産馬・外国馬を含む)による重賞競走(GI)。施行距離は1938年(昭和13年)から1983年(昭和58年)まで、春と同様に芝3200mであった。1984年(昭和59年)から芝2000mに短縮された。距離変更には賛否両論があった[4]が、短縮後は中距離の最強馬決定戦として位置づけられた[3]。施行時期も長年11月下旬で定着していたが、1981年(昭和56年)から10月下旬 - 11月初旬に繰り上げられた。
2000年(平成12年)よりジャパンカップ・有馬記念とともに「秋の古馬三冠競走」とされ、同一年に行われる3競走を全て優勝した馬に褒賞金が贈られるようになった。
競走条件
以下の内容は、2024年(第170回)のもの[2]。
出走資格
3歳以上のサラ系競走馬(出走可能頭数:最大18頭[5])
- JRA所属馬
- 地方所属馬(優先出走権を得た馬のみ)
- 外国調教馬(優先出走)
出馬投票を行った馬のうち、以下の優先出走権を得ている馬から優先して割り当て、その他の馬は「通算収得賞金」+「過去1年間の収得賞金」+「過去2年間のGI・JpnI競走における収得賞金」の総計が多い順に割り当てる。出馬投票締切の結果、出走申込頭数が出走可能頭数を超えた場合は、別に定めた方法または抽選で出走馬を決定する[6]。
賞金
優先出走権を得られる条件
- 出馬投票を行っている外国調教馬
- レーティング順位の上位5頭[注 1]
- 当該年に行われる以下の競走のいずれかで1着となった馬(中央・地方の所属は問わない)[6]
- 当該年に行われる以下の競走のいずれかで2着以内に入着した地方競馬所属馬[6]
負担重量
定量(3歳56kg・4歳以上58kg、牝馬2kg減[2])
3歳馬は負担重量が軽減されており、4歳以上の馬に比べ重量面で優遇されている。
コース
東京競馬場の芝コース、2000mを使用[2]。
スタート位置は第1コーナーの奥に設けられた「ポケット地点」と呼ばれる。スタートから120mほどで第2コーナーにかかり[7]、第2コーナーから向正面にかけての700mは落差2mの緩やかな下り勾配となる[7][8]。その後、向正面の半ばから約1.5mの急な上り坂になる[7][8]。これを上りきるとまもなく第3コーナーに入り、カーブを回りながら約1.8m下る[7][8]。第4コーナーからは上り勾配に転じ、直線に入る[7][8]。ゴールまでの直線は約525mで、JRAの競馬場では新潟競馬場(外回り:658.7m)に次いで2番目に長い[9][7][8]。直線の中ほどにも高さ2mの長い上り坂があり、坂を登り切ったあともゴールまで約250mの平坦路がある[7][8]。
スタートから最初のカーブまでが短く[注 2]、序盤から前へ行きたい馬が外側の枠に入った場合、スタートからすぐに先行できなければ、カーブで大きく外を回ることになり、距離を余計に走ることになるため、スタート直後の先行争いがひとつの見どころとなる[8][注 3]。
歴史
年表
- 1937年(昭和12年) - 「帝室御賞典」を再編し年2回の施行に改め、秋の競走を東京競馬場で施行。
- 1938年(昭和13年) - 施行距離を芝3200mに、出走条件を5歳(現4歳)以上に変更[10]。
- 1944年(昭和19年) - 太平洋戦争の影響で中止[10]。
- 1947年(昭和22年) - 名称を「天皇賞」に変更[10]。
- 1971年(昭和46年) - 外国産馬が出走できなくなる。
- 1981年(昭和56年) - 勝ち抜き制を廃止[10]。
- 1984年(昭和59年)
- グレード制導入、GIに格付け。
- 施行距離を芝2000mに変更[10]。
- 1987年(昭和62年)
- 出走資格を4歳(現3歳)以上牡馬・牝馬に変更[11]。
- 「天皇賞競走施行50周年記念」の副称を付けて施行[11]。
- 皇太子・同妃夫妻の行啓により台覧競馬として開催。
- 1995年(平成7年) - 指定交流競走となり、地方競馬所属馬も出走が可能になる[11]。
- 2000年(平成12年) - 外国産馬が2頭まで出走可能になる。
- 2001年(平成13年) - 馬齢表記を国際基準へ変更したことに伴い、出走条件を「4歳以上牡馬・牝馬」から「3歳以上牡馬・牝馬」に変更。
- 2004年(平成16年) - 「日本中央競馬会創立50周年記念」の副称をつけて施行[12]。
- 2005年(平成17年)
- 「エンペラーズカップ100年記念」の副称をつけて施行[13]。
- 国際競走に指定され、外国調教馬は5頭まで出走可能となる[13]。
- 外国産馬の出走枠制限を撤廃[10]。
- 天皇・皇后が臨席、天皇賞史上初めての天覧競馬。
- 2006年(平成18年) - 「悠仁親王殿下御誕生慶祝」の副称をつけて施行[14]。
- 2008年(平成20年) - 出走条件を「3歳以上牡馬・牝馬」から「3歳以上」に変更[15]。
- 2012年(平成24年)
- 「近代競馬150周年記念」の副称をつけて施行[16]。
- 出走馬選定方法を変更、レーティング上位5頭に優先出走を認める。
- 天皇・皇后が臨席、天皇賞史上2回目の天覧競馬。
- 2014年(平成26年)
- 「JRA60周年記念」の副称をつけて施行[17]。
- トライアル制を確立し、指定した競走の1着馬に優先出走権を付与。
- 2019年(令和元年) - 「天皇陛下御即位慶祝」の副称をつけて施行[18]。
- 2023年(令和5年)
- 「競馬法100周年記念」の副称をつけて施行[19]。
- 天皇・皇后が臨席、天皇賞史上3回目の天覧競馬[20]。
歴代優勝馬
競走名は第13回まで「帝室御賞典」[10]、第16回以降は「天皇賞」。
天皇賞(秋)の記録
- レースレコード - 1:55.2(第168回優勝馬イクイノックス)なお、このタイムは芝2,000メートルのJRAレコードである。
- 優勝タイム最遅記録 - 2:08.3(第156回優勝馬キタサンブラック)
- 最年長優勝馬 - 8歳
- 最多優勝馬 - 2勝
- シンボリクリスエス(第126回・第128回)、アーモンドアイ(第160回・第162回)、イクイノックス(第166回・第168回)
- 最多優勝騎手 - 7勝
- 保田隆芳(第5回・第20回・第22回・第24回・第34回・第36回・第54回)、武豊(第100回・第116回・第120回・第136回・第138回・第156回・第170回)[23]
- 最多優勝調教師 - 7勝
- 尾形藤吉(第5回・第9回・第22回・第24回・第34回・第36回・第54回)[24][25]
- 最多優勝馬主 - 4勝
- (有)シルクレーシング(第160回・第162回・第166回・第168回)
- 最多勝利種牡馬 - 5勝
- クモハタ(第18回・第20回・第22回・第24回・第28回)、サンデーサイレンス(第114回・第120回・第130回・第132回・第134回)
- 最年少勝利騎手 - 江田照男(第104回・19歳8ヶ月19日)[26]
- 最年長勝利騎手 - 武豊(第170回・55歳7ヶ月12日)
- 親子制覇
- トウメイ - テンメイ
- メジロアサマ - メジロティターン
- スペシャルウィーク - ブエナビスタ
- キタサンブラック - イクイノックス
[27]
- 兄弟制覇
- フジノパーシア・スリージャイアンツ(チエクイン産駒)
[28]
- 騎手・調教師の両方で優勝
- 中島時一(第3回(調騎兼業))、小西喜蔵(第7回・第13回、第44回)、保田隆芳(第5回・第20回・第22回・第24回・第34回・第36回・第54回、第62回)、境勝太郎(第28回、第80回・第94回・第112回)
世界のなかの天皇賞(秋)
- ワールド・ベスト・レースホース・ランキング委員会(WBRRC)による評価
世界の競走や競走馬の順位付けを行う国際機関国際競馬統括機関連盟(IFHA)では、毎年、世界の主要競走の結果に基づいて競走の得点(レースレート、RR)を算出し、上位100競走を発表している[29][注 4]。
これにより、2021年の天皇賞(秋)は、世界総合順位で4位、芝の中距離部門[注 5]では世界1位となった[30]。
年
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RR
|
総合順位
|
芝部門
|
中距離部門
|
芝中距離部門
|
出典
|
2017
|
120.25
|
22位
|
19位
|
08位
|
06位
|
[31]
|
2018
|
120.75
|
17位
|
16位
|
09位
|
08位
|
[32]
|
2019
|
120.75
|
13位
|
12位
|
07位
|
07位
|
[33]
|
2020
|
123.75
|
04位
|
04位
|
03位
|
03位
|
[34]
|
2021
|
123.00
|
04位
|
03位
|
02位
|
01位
|
[35]
|
2022
|
120.75
|
17位
|
12位
|
10位
|
07位
|
[36]
|
2023
|
123.50
|
06位
|
06位
|
01位
|
01位
|
[37]
|
脚注
注釈
- ^ 牡馬・騸馬は110ポンド、牝馬は106ポンド以上が条件。
- ^ スタートしてから最初のカーブまでの距離は約120mで、JRAの平地の芝コースの中では最も短い設定である。ほかに最初のカーブまでの距離が短いコースとしては、東京競馬場の1800m(約160m)、小倉競馬場の1700m(約170m)などの設定がある。
- ^ a b 1991年の第104回天皇賞では、外寄りの13番ゲートから発走したメジロマックイーンがスタート直後に内側へ急斜行して他馬の進路を妨害した。メジロマックイーンは2:02.9で1位入線したものの、「メイショウビトリア(16位入線)、プレジデントシチー(18位入線)およびムービースター(10位入線)の進路を妨害した」と裁決され、プレジデントシチーの18位まで降着となり、2位で入線したプレクラスニーが繰り上げとなった。その後2002年にコース改修が実施され、以前よりはカーブが緩和されている。
- ^ その競走の着順位4位までの馬の、当該年の最高レーティング(得点)の平均値となる[29]。牝馬の場合には一律に4点を加算する[29]。このため競走直後に発表されるレースレート(その競走での上位4着馬のレートの平均値)とは異なる。
- ^ 「中距離」はS(Sprint)・M(Mile)・I(Intermediate)・L(Long)・E(Extended)のSMILE区分のうちの「I」にあたり、1900メートルから2100メートルの競走が該当。
出典
参考文献
- 「天皇賞」『中央競馬全重賞成績集【GI編】』日本中央競馬会、1996年、543-697頁。
- 『日本競馬史』日本中央競馬会、1969年。
- 若野章『日本の競馬』恒文社、1974年。
- 松本ヒロシ監修『勝ち馬的中!!競馬の基本』成美堂出版、2012年。
各回競走結果の出典
- 馬主名義を含む競走結果
- 『中央競馬全重賞成績集【GI編】』 1937年 - 1995年
- JRA年度別全成績
- 天皇賞(秋)
- (2024年)“第4回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2024年10月28日閲覧。(索引番号:27095)
- (2023年)“第4回 東京競馬 第9日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2023年10月30日閲覧。(索引番号:27107)
- (2022年)“第4回 東京競馬 第9日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2022年11月28日閲覧。(索引番号:27107)
- (2021年)“第4回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2021年11月11日閲覧。(索引番号:27095)
- (2020年)“第4回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2021年6月7日閲覧。(索引番号:27095)
- (2019年)“第4回 東京競馬 第9日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2020年5月3日閲覧。(索引番号:27107)
- (2018年)“第4回 東京競馬 第9日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2020年5月3日閲覧。(索引番号:27107)
- (2017年)“第4回 東京競馬 第9日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2017年10月30日閲覧。(索引番号:27107)
- (2016年)“第4回 東京競馬 第9日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2016年10月31日閲覧。(索引番号:27107)
- (2015年)“第4回 東京競馬 第9日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:27097)
- (2014年)“第4回 東京競馬 第9日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:27107)
- (2013年)“第4回 東京競馬 第9日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:27107)
- (2012年)“第4回 東京競馬 第9日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:27107)
- (2011年)“第4回 東京競馬 第9日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:29107)
- (2010年)“第4回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 11. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:28083)
- (2009年)“第4回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 11. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:28095)
- (2008年)“第4回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 11. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:28095)
- (2007年)“第4回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 11. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:28095)
- (2006年)“第4回 東京競馬 第8日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 11. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:28095)
- (2005年)“第4回 東京競馬成績集計表” (PDF). 日本中央競馬会. pp. 3164-3165. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:28094)
- (2004年)“第4回 東京競馬成績集計表” (PDF). 日本中央競馬会. pp. 3181-3182. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:28095)
- (2003年)“第3回 東京競馬成績集計表” (PDF). 日本中央競馬会. pp. 3153-3154. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:28095)
- (2002年)“第3回 中山競馬成績集計表” (PDF). 日本中央競馬会. pp. 3000-3001. 2016年3月9日閲覧。(索引番号:27095)
- 馬主名義を除く競走結果
- 馬主名義
- 『競馬 - 国営競馬6年のあゆみ』高陽書院、1954年。 - 春:第2回から第29回、秋:第1回から第28回
- 日本馬主協会連合会(編)『日本馬主協会連合会40年史』日本馬主協会連合会、2001年。 - 春:第43回から第121回、秋:第44回から122回
- 日本馬主協会連合会(編)『日本馬主協会連合会50年史』日本馬主協会連合会、2011年。 - 春:第123回から第141回、秋:第124回から142回
- netkeiba.com - 2024年10月28日閲覧。
- JBISサーチ - 2020年5月3日閲覧。
- ^ 毎日新聞1954年11月22日付「オパールオーキツトに栄冠 天皇賞 雨中に十頭が激戦」
- ^ 毎日新聞1955年11月21日付「天皇賞ダイナナホウシユウに」
- ^ 毎日新聞1956年11月26日付「天皇賞はミツドフアーム」
- ^ 毎日新聞1957年11月24日付「ハクチカラ一位 天皇賞レース」
- ^ 毎日新聞1958年11月24日付「天皇賞・セルローズが優勝」
- ^ 読売新聞1959年11月24日付「天皇賞はガーネット」
- ^ 読売新聞1960年11月24日付「天皇賞はオーテモン」
関連項目
外部リンク
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正式に認定されていた八大競走 | |
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八大競走と同格として扱われる場合があった競走 | |
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関連項目 | |
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