のだめカンタービレ
『のだめカンタービレ』 (Nodame Cantabile) は、二ノ宮知子による日本の漫画作品。またはそれを原作としたテレビドラマ・テレビアニメ・実写映画などの作品。女性漫画誌『Kiss』(講談社)にて2001年から2010年まで連載された。クラシック音楽をテーマとしている。略称は「のだめ」。 作品概要『Kiss』2001年14号から連載を開始。作者の妊娠・出産に伴い、2008年5月10日発売の同年10号から8月9日発売の16号まで月1回の連載となった後に休載。2009年3月10日発売の6号から連載を再開し、同年20号を以って終了した。また、番外編の連載が2009年第24号より開始され、2010年17号を以って終了した。2004年、第28回講談社漫画賞少女部門受賞。2023年3月時点でコミックスのシリーズ累計発行部数は3900万部を記録している[1]。 音楽をテーマにした作品という構想は、『GREEN〜農家のヨメになりたい〜』の連載を終えていた二ノ宮自身から出された二つの案の一つだった[2]。主人公である「のだめ」に実在のモデルがいることは有名だが、彼女が「ゴミ屋敷のなかでピアノを弾いている写真」の鮮烈なイメージがきっかけだったという[3]。タイトルのカンタービレは、イタリア語を由来とする、「歌うように・表情豊かに」という意味の発想記号である[注 1]。連載開始前の二ノ宮は楽譜が読めない[4]どころかクラシックの知識がまったくなく、周囲の人間から基礎を教わりながら漫画を描いていたが、人気作となり連載が長期化するとプロの奏者や音大教授に専門知識を取材するようになった[3]。楽器についての資料も大量に集めたが、二ノ宮は演奏のシーンに「自分のイメージをつけない」ようにすることにこだわっていたという[5]。フランス留学編をはじめとして、プロットは結末近くまであらかじめ構想立てられていた[6]。 2015年6月18日、作者のTwitter上にて最終回から約1年後が描かれた2ページの番外編が公開された[7]。 2016年2月25日発売の『Kiss』4月号に、30代になったのだめと千秋が登場する読切り作品が掲載された[8]。 2021年には連載開始20周年を記念して単行本の新装版が刊行されている[9]。 2022年6月24日発売の『Kiss』8月号と7月25日発売の9月号にて、その後ののだめと千秋が描かれた「のだめカンタービレ その後」を前後編で掲載[10][11][12]。2022年10月からは東京ソラマチ5階スペース634とあべのハルカス近鉄本店ウイング館9階催会場で連載開始20周年を記念した展覧会を開催[13]。 他メディア化フジテレビでドラマ化が決定し、2006年10月から12月まで放送(全11話)され、2008年1月4日・5日の2夜連続で続編のスペシャルドラマも放送された。また、フジテレビのノイタミナ枠でアニメ化され、第1期が2007年1月11日から6月28日まで(全23話)、第2期『巴里編』が2008年10月9日から12月18日まで(全11話)、第3期『フィナーレ』が2010年1月14日から3月25日まで(全11話)、それぞれ放送された。更に2009年12月と2010年4月には、ドラマ版の続きとして完結編にあたる映画が、前・後編の2作連続で公開された。 また、高里椎奈がドラマ版のストーリーを基に小説化し、2006年12月25日に発売された。ゲーム化もされている。 韓国のテレビ局であるKBS 2TVがドラマ化し、2014年10月13日から12月2日まで放送(全16話)された。 2023年秋にはシアタークリエで初のミュージカル作品が上演予定となっている[14]。 あらすじピアノ科に在籍しながらも指揮者を目指すエリート音大学生・千秋真一は、胴体着陸の恐怖体験による重度の飛行機恐怖症に加えて海で溺れたことのトラウマのため船にも乗れないことから、クラシック音楽の本場であるヨーロッパに行くことが出来ず、将来に行き詰まりを感じて思い悩む日々を送っていた。担任の教授の教育方針に反発し、口論の末に決別。別れた彼女にもつれなくされて自暴自棄になっていた。 ある日、千秋は酔っ払って自宅の前で眠ってしまう。目が覚めると周囲にはゴミの山と悪臭、そして美しいピアノソナタを奏でる女性がいた。彼女の名前は野田恵(通称・のだめ)で、なんと千秋と同じマンションの隣の部屋に住み、同じ音大のピアノ科に在籍していたのだった。入浴は1日おき、シャンプーは3日おきというのだめだったものの、千秋はのだめの中に秘められた天賦の才を敏感に感じ取る。そしてのだめもまた、千秋の外見と音楽の才能に憧れて彼に纏わり付くようになる。この出会い以来、千秋はのだめの才能を引き出すべく、何だかんだと彼女に関わるようになる。 将来に行き詰まりを感じていたため無愛想だったが、本来は面倒見が良い性格の千秋は、のだめとの出会いを機に彼女の存在が潤滑油となり、音大の変人たちに出会い、懐かれ、順調に道を踏み外しながらも音楽の楽しさを思い出し、新しい音楽の世界と指揮者への道を一歩一歩切り拓き始める。また、千秋の存在によりのだめもより高い技術を得るための指導者や、環境に出会う機会を得て、それぞれが成長していく。 登場人物→詳細は「のだめカンタービレの登場人物」を参照
楽団一覧
小道具
曲目一覧作品中に登場した曲目の一覧(カッコ内は、曲の登場した巻数) 管弦楽曲桃ヶ丘音大
大学外
R☆Sオーケストラ
プラティニ国際指揮者コンクール
ルー・マルレ・オーケストラ
千秋 ブラジル客演編 (単行本第23巻)ピアノ曲桃ヶ丘音大(ピアノ曲)
マラドーナ・ピアノ・コンクール
パリ
コンセルヴァトワール
サン・マロ編のだめがサン・マロで行ったリサイタル曲(単行本第15巻)。
サロン・コンサート編
のだめデビュー ロンドン響編
室内楽曲桃ヶ丘音大時代
パリ編
声楽曲
その他の曲目
備考評価ドラゴンクエストシリーズなどの作曲で知られるすぎやまこういちは、同ゲームのコンサートにおいてこの漫画を絶賛し[17]、「多くの人にクラシックを楽しんでもらうためにコンサートを行ってきたが、強い味方を得ることができた」と話した。 作者の二ノ宮は本作品の連載にあたって、事前に綿密な取材を徹底して行っている。連載時も特に音楽に関する用語や演奏シーンの描写には細心の注意を払ったと言う。その研究ぶりはオーボエ奏者の茂木大輔など、プロの音楽家に作者は音大出身者だと勘違いさせるほどであった。 ヴァイオリニストの宮本笑里など、実際にプロとして活動している若手演奏家がドラマ出演したことでも話題となった。その影響でクラシックを専門に扱うCDショップの売り場や楽器店に同漫画の単行本が並べられ、読者層の幅が広がった。また、宮本は自身がパーソナリティを務めた番組「MITSUBISHI JISHO Classy Café」で、度々本作の特集を組んだ。このようにして、作中で使用された楽曲の売れ行きアップに貢献するなど、クラシック音楽の認識を広げた。また、同漫画が音楽をはじめるきっかけであると語る音楽家も後に現れ始め、第18回ショパン国際ピアノ・コンクールで歴代日本人最高位の2位入賞を果たした反田恭平は、自分が音楽をはじめたきっかけが「のだめ」であると公言している[18][19]。 一方秋山和慶からは、音楽に触れるきっかけとしては良くても、音楽を専門に学ぶ学生の質の向上には繋がっていないとの指摘もある[20]。 連載開始当初は読者アンケートの順位は最下位に近かった。峰やシュトレーゼマンが登場した頃から徐々にクチコミで読者が増えていき、第3巻が発売される頃には書店の漫画担当者間でも「面白い」と評価されるようになる。売り場に平積みされて手描きポップが添えられ、増刷されるようになった。また、2009年にはフランスで販売されることが決定。マンガ専門出版社・Pikaから本作を翻訳した単行本が出版された。しかし、同社社長アラン・カンは「販売部数は少なすぎて公表できない」と漏らしており、マンガに対する認識が土壌から違うフランスではあまり受け入れられなかったことを明かした[21][22]。 その他2009年3月の連載再開を記念して、本作では初となる展覧会「のだめ カンタービレ♪ワールド」が2009年4月30日から5月6日に東京・丸ビルホールにて行われた。2012年12月15日から2013年5月31日まで作者の実家がある埼玉県秩父郡皆野町と秩父鉄道のコラボ企画、『のだめと巡るフォト&スタンプラリー』が開催された[23]。2015年4月27日から、コカ・コーラがカラーイラストのキャラクターを描いたパッケージラベルを使用した紅茶花伝を期間限定で発売した[24]。 一部の登場人物(特に外国人)の名前や音楽祭の名称は、サッカー選手の名前に由来(例としてマラドーナ、プラティニ、カントナ、ヴィエラ、マルレ、デシャン、ウィルトールなど)している。また、作中でのだめが度々口にしている「同情するなら金をくれ」という台詞は、1990年代にヒットしたテレビドラマ『家なき子』からのネタ(パロディ)である。 書誌情報単行本本編は第1巻から第23巻。第24巻および第25巻は番外編の「アンコール オペラ編」。
新装版
未単行本化以下は新装版第13巻にのみ収録されている。
小説
関連書籍
CD
ゲームコンシューマーゲーム
モバイルゲーム
他にも、クイズなどが提供されていた。
ドラマ・映画2006年から2010年にかけてテレビドラマおよび映画として日本国内で実写展開された。2014年には韓国ドラマ化、2020年には中国ドラマ化されている。 →詳細は「のだめカンタービレ (テレビドラマ)」および「のだめカンタービレ 最終楽章」を参照
アニメーションテレビアニメは第3期まで、フジテレビ『ノイタミナ』枠で放送された。オーケストラの部分などの集団が演奏するカットでは、3DCGにより制作された人物・楽器により、集団がリズムに合わせて動くように制作されている。テレビアニメ版は、原作に存在したシーンがカットされていたり、変更されている。カットされたシーンのひとつで、のだめ達がニナ・ルッツ音楽祭に向かう前に立ち寄った新潟での海水浴シーンは、放送後に発売されたDVDの映像特典にて収録されている。 また、原作コミックの第22巻と第24巻にはオリジナルアニメDVDが同梱された。 テレビアニメ
スタッフ
主題歌・挿入歌第1期
第2期
第3期
各話リスト
放送局
オリジナルアニメ2009年8月10日に発売された原作第22巻初回限定版に付属のOAD(〜オリジナルアニメーション)。テレビアニメ第3期放送を前にテレビでは放送できなかった松田幸久が主役のエピソードを収録。 2010年4月26日に発売された原作第24巻初回限定版には『のだめカンタービレ特別番外編』が収録。卒業を迎えたパリでの千秋があることで嫉妬するエピソードを収録。
備考(アニメ)
連動企画→詳細は「のだめオーケストラジオ」を参照
Webアニメ『チャンネル5.5』は、DLE製作によるカロリーメイトをスポンサーに名作漫画を原作無視でアニメ化する「名作マンガ コラボプロジェクト!」第3弾として配信のFLASHアニメ。全4話。
ミュージカル2023年10月3日から29日にシアタークリエにて[88]、同年11月3日・4日にサントミューゼ 上田市交流文化芸術センターにて上演された[89][90]。また、10月29日の公演は動画配信された[91]。 キャスト(ミュージカル)
スタッフ(ミュージカル)
関連項目
脚注注釈
出典
参考文献
外部リンク |