静岡県東部地震
静岡県東部地震(しずおかけんとうぶじしん)は、2011年(平成23年)3月15日22時31分46秒頃(日本標準時)に発生した、静岡県東部を震源とする地震[1]。静岡東部地震[3][4][5]、静岡地震ともいう。地震の規模はマグニチュード6.4。静岡県富士宮市で最大震度6強を観測した。 概要地震の概要静岡県東部の北緯35度18分30秒、東経138度42分48秒、深さ約14kmの地点を震源とする。震源は富士山南麓で、大陸プレート内地震であるが、この場所から過去に活断層は発見されていない[6]。マグニチュードは暫定値で6.4(Mw 6.0)と推定され、静岡県富士宮市では震度6強を記録した[1]。最大加速度は防災科学技術研究所が設置した富士宮観測点で1076galを記録している[7]。この地震により静岡県内で22人の負傷者などが出た[8]。 発震機構は「北北西ー南南東方向に圧力軸を持つ、北北東ー南南西走向の左横ずれ断層」である[9]。なお、国土地理院の観測結果によれば、この地震によって、静岡県裾野市は東方向に、富士宮市は西方向に、それぞれ1センチメートルから3センチメートルほど移動した[10]。また、富士山5合目の地面に長さ20mに及ぶ亀裂が生じた。これらは土砂崩落の恐れがあるため、定期的な測量が行われている[11]。 他の地震との関連東海地震との関連地震調査研究推進本部の地震調査委員会は、地震発生翌日に臨時会合を開催し、想定される東海地震との関連性について検討を重ねた。その結果、「東海地震の想定震源域の近くで発生しているが、想定東海地震とは異なる発震機構で発生した地震である」[9]と結論づけ、東海地震との関連性を否定した[12][13][14][15]。なお、地下構造とプレートテクトニクスの観点から見た場合、静岡県東部地震は横ずれ断層による大陸プレート内地震であるが、東海地震はプレート間地震(海溝型地震)が想定されている。 委員長の阿部勝征は、静岡県東部地震と東海地震の発震の仕組みについて「メカニズムが異なる」[12]と指摘し、両者の関連性を否定した。また、気象庁の観測結果の分析でも、各地に設置された歪み計には、東海地震に直結するような異常値は記録されていなかった[9][13][15]。これらに基づき、「想定されている東海地震に直接結びつくものではない」[14]との結論に至った。 東北地方太平洋沖地震との関連→「東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録」も参照
気象庁は4日前に発生した東北地方太平洋沖地震との関連性について、「地震のメカニズムや震源域が異なり直接の関係はない(余震ではない)と思われるが、それ以上は分からない」との見解を示している[16][17]。 地震調査研究推進本部の地震調査委員会は、東北地方太平洋沖地震との関連性について検討を重ねた。その結果、東北地方太平洋沖地震は「概ね東西方向に伸張、南北方向に圧縮するひずみを、広域にわたり与えて」[9]いると指摘したうえで、「今回の地震はその影響によって発生した可能性は否定できない」[9]と結論づけた。 東北地方太平洋沖地震の際には、水平方向に4メートル以上の水平変動が記録されており、大きな地殻変動が発生していた[9][13]。その結果、東西に対して伸張するとともに、南北には圧縮する歪みを、広い範囲にわたって与えていた[9][13]。委員長の阿部勝征は「具体的な関連は分からない」[14]としながらも「マグニチュード9.0という大変大きな規模の地震だったことから、何らかの影響はあったと考えられる」[14]と言及し、東北地方太平洋沖地震に誘発されて静岡県東部地震が発生した可能性を指摘した[15](なお東北地方太平洋沖地震翌日の12日には、本地震と同様に誘発されたと考えられる長野県北部地震が発生している)。さらに、阿部は「巨大な海溝型の地震の前後で被害が出るような内陸型の地震が発生するのはよく知られている」[13]と述べ、直接的な関連があると確認されていないものの、その具体例として東南海地震や南海地震の前後に鳥取地震・三河地震・福井地震が発生した事例を挙げ、警戒を怠らないよう訴えた[13]。 富士山噴火との関連火山噴火予知連絡会副会長の中田節也は、震源が富士山のマグマだまりのすぐ上、山頂の南4kmの深さ約15kmであったことから、「あのとき、富士山が噴火しなかったのが不思議でならない」と述べている。 また、歴史的類似性が専門家の憂慮の元になっている。火山噴火予知連絡会会長藤井敏嗣は「20世紀半ば以降のM9を超える5つの地震すべてで、火山の噴火が例外なく誘発されている」と述べた。千葉大学准教授の津久井雅志は「平安時代に起きて20世紀以降にない大きな地震・噴火は、富士山噴火と東海・東南海・南海の連動地震ぐらいだ[注 1]」と述べている[18]。 緊急地震速報2011年3月15日22時31分55秒(日本標準時)、気象庁により緊急地震速報(警報)が山梨県・神奈川県の全域、静岡県の東部と伊豆地方と中部に発表された[19]。地震を検知してから3.5秒後に発表されたことから、震源から離れた地域では揺れが到達する前に速報が発表された。 震度震度4以上の揺れを観測した地点は以下の通り[20]。
北は宮城県登米市、山形県飽海郡遊佐町、西は島根県出雲市で震度1を観測するなど、東北地方から中国地方にかけて震度1以上の揺れを観測した。 被害人的被害
建物被害
産業
ライフライン
影響
本来ならば5月の大型連休前に富士山スカイラインの閉鎖解除が可能であったが、路面のヒビや盛土の損傷などにより安全を期して閉鎖解除を延期することとなった[30]。富士山スカイラインの約40か所で亀裂があり、そのうち9か所は大掛かりな補修を要する状態であったが、復旧作業が急がれ、6月2日には閉鎖解除が可能となった[31]。
東海道新幹線は品川-浜松駅間で停電が発生したが、午後10時51分に電力が復旧。11時8分に品川-新横浜間の上り線、静岡-浜松間の下り線でそれぞれ運転を再開した[32]。また、この影響で数十分の運転見合わせが発生し、最大約200分の遅れが発生した。 遅れていた東海道新幹線を利用していた乗客のために、東海道本線で静岡-浜松間に臨時列車を設定した。
全国高校選抜大会のソフトボール男子大会が富士宮市にて行われる予定であったが、中止となった[33]。 表富士自転車登山競走大会は、地震におけるコースの地割れなどにより復旧の見通しが経たないため中止となった[34]。
本地震に伴い、東京電力エリアで行われている東日本大震災による発電所被害に伴う計画停電の対象から、静岡県東部地域は外された[35]が、その2日後には再び停電対象地域となった。
静岡地方気象台は地震により土砂災害が発生しやすい状態にあるとして、地震発生から翌日の3月16日から注意報の発表基準を暫定的に変えていた。台風通過などの様子を見て、11月11日には大雨警報・注意報と土砂災害警戒情報の発表基準を通常に戻すこととした[36]。 対応中央省庁震度6強という極めて強い揺れが観測されたことから、22時45分には総理大臣官邸に緊急参集チームが集結した[37]。東北地方太平洋沖地震による震災に対応する総理大臣官邸の対策室が、静岡県東部地震についても対応することになった[37]。緊急参集チームは即座に対応策を協議し、被害情報の収集や被災者の救出に全力を尽くすとともに、状況に応じて東北地方太平洋沖地震の対応に当たる人員の転用など、臨機応変に対応することを決定した[37]。また、防災行政を統括する内閣府では、静岡県東部地震の発生を受け、22時31分に災害対策室が設置された[38]。 防衛省では、東北地方太平洋沖地震の被災地に自衛官に加え予備自衛官を投入していたが、静岡県東部地震にも対処する必要に迫られた。東北地方太平洋沖地震のため既に省内に災害対策本部が設置されていたことから、そのまま同本部が静岡県東部地震にも対応することになった[39]。陸上自衛隊は東部方面航空隊、第1飛行隊、富士教導団、静岡地方協力本部、山梨地方協力本部、神奈川地方協力本部を投入した[39]。また、海上自衛隊は、第4航空群と第21航空群を投入した[39]。同様に、航空自衛隊は百里救難隊と救難教育隊を投入した[39]。地震発生日当日の午後10時46分には海上自衛隊第21航空群から航空機が離陸、午後10時55分以降は陸上自衛隊東部方面航空隊から映像伝送機や中継機が離陸するなど、航空機が次々と投入され、情報収集活動を本格化させた[39]。また、静岡県や神奈川県など被災地にある県庁や市役所、町役場など各地方公共団体に陸上自衛隊が連絡員を派遣した[39]。 警察庁では、東北地方太平洋沖地震の対応にあたる緊急災害警備本部にて、静岡県東部地震の対応にあたることとなった[38]。静岡県警察、山梨県警察、神奈川県警察が情報収集を進めた[38]。また、神奈川県警察や静岡県警察だけでなく、警視庁のヘリコプターにも出動命令が下され、次々と離陸した[38][40]。また、消防庁では、震度4以上を観測した全ての都道府県に対し、被災者への対応と被害状況の報告を要請した[40]。さらに、横浜市消防局にヘリコプターの出動を命じた[40]。さらに、海上保安庁では、東北地方太平洋沖地震災害対策本部が、そのまま静岡県東部地震の対策にもあたることになり、ナブテックスや第三管区海上航行警報を出した[40]。 脚注注釈出典
関連項目
外部リンク
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