病めるバッカス
『病めるバッカス』(やめるバッカス、伊: Bacchino malato、英: Young Sick Bacchus)、または『バッカスとしての自画像』(バッカスとしてのじがぞう、英: Self-portrait as Bacchus)は、1593-1594年に制作された、バロック期の巨匠、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョによる初期の自画像である。現在、ローマのボルゲーゼ美術館に展示されている。カラヴァッジョの最初の伝記作家、ジョヴァンニ・バッリオーネによると、画家が鏡を使って描いたキャビネット(個人収集家の居室用)絵画であった[1]。 歴史絵画は、1592年半ばにカラヴァッジョが故郷のミラノからローマに到着した最初の年度に制作された。この時期の情報は決定的なものではなく、おそらく不正確であるが、一時期、カラヴァッジョが大病を患い、サンタ・マリア・デッラ・コンソラツィオーネの病院で6か月間過ごしたことは一致して認められている[要出典]。アメリカの医療関連の雑誌である『臨床感染症 (Clinical Infectious Diseases)』の2009年の記事によれば、本作におけるカラヴァッジオの身体的な病気は、マラリアの可能性があることを示唆している。黄疸による皮膚の外観や黄疸の目は、高レベルのビリルビンを引き起こす、何らかの重い肝疾患の症状なのである[2]。フェラーラ大学の血管外科のパオロ・ザンボーニ教授によると、絵画に見られる貧血、褐色の皮膚、黒色表皮腫の明らかな兆候は、1800年代にアディソンによって説明された、副腎に影響を与える慢性原発性副腎皮質機能低下症であると診断できる[3][4]。 『病めるバッカス』は、カラヴァッジョの初期の雇用主であったジュゼッペ・チェーザリのコレクションを構成する多くの作品のうちの一点であった。1607年に、そのコレクションは、チェーザリの甥であった美術品収集家シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿により、『果物を剥く少年』、『果物籠を持つ少年』とともに獲得された。 様式おそらく自画像であるという性質は別として、この初期の作品は、カラヴァッジョにより自分を売り出すために利用された可能性がある。静物画や肖像画といった絵画ジャンルにおける自身の妙技を示し、古代の古典的な人物を描く能力を示唆したのである。顔の4分の3正面向きの角度は、後期のルネサンスの肖像画に好まれたものの一つであったが、印象的なのは渋面と傾げられた頭部、そして非常にリアルな苦しみの感覚である。それは、ほとんどのバロック期の芸術が共有する特質である。 は、『果物籠を持つ少年』や『トカゲに噛まれた少年』など、少し後の作品に描かれている静物と比較することができる。しかし、これら後の作品では、カラヴァッジョの心身ともにより健康であった状態を間違いなく反映して、果物はずっとみずみずしい状態で描かれている。 本作は、強張った筋肉の描写において、カラヴァッジョの師であったベルガモのシモーネ・ペテルツァーノの影響と、写実的細部への関心において、厳格なロンバルディア派の様式的影響を表している。 コメントシンディ・シャーマンは、自身の歴史の肖像画シリーズ(1989–90)の一部として、無題#224という名前の皮肉な写真の自画像で、『病めるバッカス』のパロディーを制作した[5]。 2018年のNPRのインタビューで、バンド 『セント・ポール・アンド・ザ・ブロークン・ボーンズ』(St. Paul&The Broken Bones) の ポール・ジェーンウェイ (Paul Janeway)は、ニュー・アルバムのタイトル『病めるカメリア』(Young Sick Camellia) は、カラヴァッジョの『病めるバッカス』 (カメリアはバンドの故郷のアラバマ州の花) へのオマージュであると述べた[6]。 脚注
参考文献
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