毛利小五郎
毛利 小五郎(もうり こごろう)は、『週刊少年サンデー』で連載されている青山剛昌原作の漫画作品、およびそれを原作とするテレビアニメなどのメディアミックス『名探偵コナン』の作品に登場する架空の人物。 アニメでの声優は神谷明(1 - 548話、劇場版第1作 - 第13作)→小山力也(553話 - 、劇場版第14作 - )が担当する。ドラマでの俳優は陣内孝則が担当[注 1]。 人物毛利蘭の父親で江戸川コナンの保護者[注 2]。妻(蘭にとって母)は妃英理。「毛利探偵事務所」を経営する私立探偵で、前職は警視庁捜査一課強行犯係の刑事。現在はコナンが彼に成り代わって推理することにより、世間では「眠りの小五郎」と評される有名な名探偵とされているが、実態は「ヘボ探偵」「迷探偵」であり、作中におけるコミックリリーフでもある。 オールバックの髪型とちょび髭がトレードマーク[注 3]。仕事では紫色のスーツを着用する。年齢は38歳[2]。 徐々に切れ者としての一面も見せるようになり、これまでの経験に基づいてコナンも驚かせるような名推理を披露することもある[3]が、基本的には的外れなものであることが多い。 一人称は基本的に「オレ」であるが、身内でない人や目上の人には「私」を使う[注 4]。周囲からの呼称は、「(小五郎の)おじさん(コナン・吉田歩美から。コナンが心の中では『(小五郎の)おっちゃん』)」、「おっちゃん(新一[注 5]・小嶋元太・服部平次・遠山和葉)」、「お父さん(蘭)」、「あなた(英理[注 6])」、「毛利君(目暮警部[注 7]・阿笠博士)、「毛利さん(他の警察関係者・他人など)」、「煙の小五郎(横溝重悟)」、「小五郎君(工藤有希子)」、「オッサン・ボケナス[7](悪口を言う時)(服部平次)」、「小五郎さん(遠山和葉・大和警部など)」、「(毛利の)おじさま・おじさん(鈴木園子)」、「毛利先生(安室透)」、「毛利探偵・おじさん(灰原哀・円谷光彦)」がある。また、灰原はコナンと話した時「迷探偵」と呼んだことがある。 短気で若干暴力的な性格で、コナンが事件の捜査中に介入したりすると、ゲンコツを食らわせたり[注 8]、依頼人に対して怒鳴ったりすることもある。また、平次が自分に予測できない推理を披露した[注 9]際には納得できないことを理由に殴りつけた[8]ことがある。 極めつけには、テレビ局の企画を装った犯人によってコナンと平次が無人島に拉致監禁され、無理心中に巻き込まれかけた事件で、結果的に殺人の共犯者になったとはいえ金で雇われていただけの漁師を拷問にかけ、コナンと平次の監禁場所を突きとめたこともある[9][注 10]。また、睡眠中は大いびきをかいて寝ることが多いという設定で、アニメ版の初期は同じ部屋で寝ているコナンはよく彼のいびきに悩まされていた。 アニメでは周囲から褒められたり自信満々に推理を披露したりすると調子に乗って舌を出し、「ナーッハッハッハ!」という高笑いを頻繁に見せる(原作でも後に見せるようになる)。 本人曰く先祖は「毛利元就」とのこと[10]であるが、真相は不明。若い頃に俳優になりたい夢を抱いたこともある[11]。 出身高校は新一や蘭と同じ帝丹高校(英理や工藤有希子とは同級生)[12]で、 大学は米花大学卒業[13]。中学校の同級生に女優の雨城 瑠璃(うじょう るり、声 - 島津冴子)がいる[3]。本人は高校時代は「硬派で通っていた」と語っているが、中学時代を知る瑠璃曰く、その頃からスケベだったらしい。大学が帝丹ではなく米花なのは柔道の腕がいいためスポーツ推薦や一芸入試の可能性や、内部進学(とみられる)に必要な成績が不足していた説がある[14]。 有名になってからはテレビやメディア出演により収入を得ることも増えたが、それに比例する形で金遣いも荒くなっており、酒やギャンブル、遊興等への浪費が多い。とある依頼で一千万円という多額の金が入る可能性が出た際は前祝いで300万円も使い込んだ挙句、それを取り戻そうと競馬や競輪によって500万円もすってしまったことがあった[12]。彼のせいで家計が然程潤わないのは蘭の悩みの種になっており、彼女から小遣いを厳しく管理されているようで「やりくりが大変」と窘められている。別居している妻の英理からも、彼女の弁護士としての手腕と人脈にて金銭や収入面で助けられる事がある[15]。 コナンがやってくるまでや以後の収入面は報酬についての話があまりなく、調査料やメディア出演や講演などの副業収入の推計を連載年数(週刊少年サンデー2003年2号まで)で割ると少なすぎるため、事務所は2、3階が内部で繋がるメゾネットタイプながらそれぞれ別に玄関がある特殊な造りであることから、この建物は持ちビルで親から相続してテナント収入を得ていたとする考察がある[16]。また家計は別居しているとはいえ英理くらいしか管理していると思われる人物はおらず、報酬を得ても一旦英理のところへ行ってから小遣いが渡されているためという説が提唱されている[17]。仕事嫌いの小五郎が警察を辞めて探偵として独立したのは、上司であった目暮から「自分も辛い」もしくは「英理の弁護士としてのキャリアに傷がつく」などでも言われて心情を分かり辞職、黒木昭雄が話す「家が商売をしているなど収入のアテがある刑事が辞めさせやすい」ことから目暮もそれに触れて別の道へ進むのを促した可能性を挙げた[18]。 「眠りの小五郎」として、睡眠薬のCMの出演依頼が来たことがある[注 11]。原作では話を聞くなり憤慨して断っていた[19]が、劇場版第10作『探偵たちの鎮魂歌』では1千万円のギャラを提示され、「ぜひ!やらせていただきます!」と快諾していた。 英語はあまり得意ではなく、ロンドンを訪れた際にコナンや蘭の不在中はかなり困っていた[20]。文学作品に関する知識としては、『三国志』や『シャーロック・ホームズ』についてはコナンや蘭に比べるとあまり詳しくないようだが、『南総里見八犬伝』[21]や武田信玄[22]については詳しい[注 12]。コナンとは対照的に、シャーロック・ホームズのことは好きではない。そのうえ、ホームズ愛好家たちの前で「紙の上の人間」と露骨に侮蔑した結果、睨まれている。また、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』をタイトル名を間違えたうえに『ホームズ』シリーズの作者であるアーサー・コナン・ドイルの作品と勘違いしていた[8]。ただし『オリエント急行殺人事件』は気に入っているようであり、ベルツリー急行(ミステリートレイン)に乗った際には、エルキュール・ポアロにちなみ「毛利ポア郎」と上機嫌で自己紹介をしていた[2]。 OVA『10年後の異邦人』で描かれた10年後では現在とほとんど変わらぬ容姿で登場しているが、これはコナンの夢オチであるため実際にそうなるかは不明。「集められた名探偵!工藤新一VS怪盗キッド」[23]では怪盗キッドに、『ルパン三世VS名探偵コナン』ではルパン三世にそれぞれ変装されているが、これは高木刑事と並ぶ経験でもある[注 13]。 氏名の由来は姓がモーリス・ルブラン、名が明智小五郎[25]。 蘭との関係娘の蘭に対して普段は毅然とした態度で接している。一方でケチでもあり、蘭に碌に私物を買い与えようとせず(彼女の私物の殆どは別居中の英理が買い与えた物らしい)、個人的嗜好から沖野ヨーコの関連商品をこっそり買った時等は蘭に「わたしがどんな気持ちで生活費を切り詰めてると思ってるの?」と言われることもあった[26]。また、家で怠惰でいるところを蘭に叱られることもしばしばあり、このように蘭に生活態度や性格について諌められることが多い。 蘭の証言に対して「ガキは黙ってろ!」と言うなど、未だ蘭を子供扱いしていると見られる発言もあった。 しかし、親子仲は決して悪くはない。また、小五郎の心の奥底は父親としての愛情にあふれており、以下の様に蘭が窮地に陥った時には危険な状態へ身を挺してまで助けようとしたり、蘭が恥ずかしい思いをした際には激しい怒りを露わにしたりする。
コナン・工藤家との関係コナンとの関係コナンを「小僧」や「ガキ」、また「坊主」と呼ぶ事が多く、名前で呼ぶ事は少ない。また前述の通り、ゲンコツを食らわせるなどの横暴で容赦のない面が目立つ。また、コナンや少年探偵団のような子供が捜査に加わることには否定的で[注 15]、事件の第一発見者であるコナンを目暮警部などの現場責任者の許可も得ないまま、勝手に追い返したこともある[27][28]。 しかし、コナンとババ抜き[29]や将棋[30]をして楽しんでいる描写があり、彼の事を嫌っているわけではない。また、コナンが拳銃強盗に撃たれたり、爆弾事件に巻き込まれて負傷した際には彼の身を案じ、病室で付きっきりで見守っている[注 16]。そして、自分の代わりを頼んだことになっている新一や、命の危険にさらした犯人に「てめぇー、蘭を一体どうする気だ!!」と激怒するなど、コナンに対する優しさをのぞかせている[31]。 自分を陰から補佐するようなコナンの行動については何度か勘付いた[注 17]が、大抵は周囲の称賛を受けて忘れてしまう[32]か、たまたま見せたコナンの幼稚なミスに考え過ぎだと判断してしまい[33][34]、現在もコナンのことを並の小学1年生とは比較にならない頭脳や知識、観察力の持ち主であると悟っているものの、それを完全に日常の出来事として認識した状態が続いている。 新一との関係工藤新一のことは、有希子の一人息子であり蘭の幼馴染として幼少時からよく知っているが、新一が高校生探偵として活躍していた時は一時期、探偵の仕事を奪われたと思い込んでおり[注 18]、あまりいい印象を持っておらず、蘭との交際についても批判的な言動が多い[注 19]。ただし、新一の推理力の高さは認めており、蘭が新一に想いを寄せていることにも気付いている模様で、「大事な娘をたぶらかしやがって」などと文句を言いつつ内心では新一への愛情を大切に見守ってもいる[20][注 20]。「探偵坊主」などと嫌味を込めて呼ぶことも多いが、名前の呼び方は蘭と同様「新一」。 新一の両親との関係新一の父親であり自身の刑事時代に目暮が捜査協力を依頼していた工藤優作のことも「所詮は小説家」と、目暮ほど信頼はしていなかった[12]。 工藤有希子とは高校生時代から妻の英理共々友人であり、「有希ちゃん」「小五郎くん」と呼び合うほど親しく、毛利家と工藤家は家族ぐるみの長い付き合いとなっている[12]。 警察関係者や学生時代の同級生などとの関係作中では学生時代または現役刑事だった当時の関係者と事件の現場に鉢合わせることも多く、彼らとは基本的に良好な関係であり、男女を問わず友人関係も豊富である。 普段は「眠りの小五郎」で解決するケースばかりであるが、後述通り昔の学友たちが絡んだ事件では若干ながらコナンのフォローが入りながらもほとんど自力で解決しており、友人たちが関わる事件では彼らへの想いが原動力にもなっている。 アニメオリジナルストーリーや劇場版では、大学時代に家庭教師をしていた教え子やゼミの後輩だった女性とも個人的な交友を続けるなど、教師や先輩として慕われるケースが強調されている[35][36]。 上下関係に関しても厳しく、目暮や松永、弓長、小田切警視長といった警察官時代の上司達には「警部殿」と呼ぶなどひたすら低姿勢であるのに対し、コナンや少年探偵団、服部平次や高木、千葉などの目下・年下に対しては高圧的に接することもあり、少しでも自分の推理に反論されれば、腹癒せ交じりに暴力まで振るって八つ当たりしたこともある。このように、目上への態度と目下への態度の差が大きくなることがある。こういった自己中心的な振る舞いもあって、周囲から大人としてはあまり信頼されておらず、目暮達警察官の面々からも時に白い目で見られることがある。ただし、腕っぷしの強さに関してはかなり信頼されている。 度重なる的外れな推理で捜査を混乱させる傾向から、横溝重悟や大和勘助からは半ば厄介者扱いされる形で鬱陶しがられ、諸伏高明に至っては推理しても聞き流され、むしろコナンの意見の方を聞き入れている。 ただし、警察関係者の中では、山村ミサオと横溝参悟のみは小五郎を信奉しており、いくら彼が的外れな推理をしても信じてしまうことがある[37]。 また、平次の推理力も認めてはいるが、自分の方が優れていると思い込んでいる[7]。 探偵業初登場時は無精ひげを伸ばし酒浸りで過ごしていた[38][39]。その上、無名だった頃は名乗っても誰だかわかってもらえなかったり[40]、明智小五郎や毛利衛と間違われたりすることもあった[41]。また、知名度が上がっても、依頼が来ない日が続いた際には、コナンに「暇なんだなおっちゃん…」と思われている[33][42]。 本来の小五郎はお世辞にも優秀とはいえない探偵だったが、コナンが阿笠博士からもらった腕時計型麻酔銃と蝶ネクタイ型変声機を使い、小五郎に成り済まして事件を解決してきたため、「眠りの小五郎」と呼ばれて一躍全国的に有名になった[注 21]。名前の由来はうつむいた状態で淡々と推理をするため、まるで眠っているように見えることから付けられた[38]。しかし、事情を知らない人からは「居眠り小五郎」[36]「煙の小五郎」[45][46]「踊りの小五郎」[47]など呼び名を間違われたことも多々ある。自分が眠らされている間に勝手に事件が解決するというあまりにも不自然過ぎることに関しては、時に疑問は抱きつつ、「自分が無意識に本当に解決しているのだ」と得意気になっており、有名になってからは何かと「この名探偵・毛利小五郎が」と自称してはしゃぐ一方、エルキュール・ポアロにちなみ「毛利ポア郎」と自称したこともある[2]。劇場版第17作『絶海の探偵』では、金ピカ(金メッキ)の名刺を大量に持ち歩き、その後のアニメオリジナルストーリーでも使用している[48]。 「元・警視庁所属の刑事」というキャリアのある経歴にもかかわらず、探偵に最も求められる「多角的な視野に基づいた考察」をせず、「単純明快による解決」をする傾向が非常に強く、その上足を使った捜査も嫌って僅かな状況証拠や勘だけに頼ろうとする怠惰さからコナンにも心中で呆れられている[33]。その為、事件に遭遇した時は、行き当たりばったりかつ見当違いな推理で頭ごなしに犯人を決め付けてしまうことが多い上に[49][50][51][52][53][36]、密室殺人等の不可能犯罪に遭遇した場合は大抵自殺か事故死と即断して捜査を打ち切るといった、ずさんな傾向もあり[43][54][47][55][56]、それによって真犯人に付け入れる隙をみすみすと与えてしまう事も少なくない。仮にコナンを始めとする周囲から不自然な点を指摘されても、名探偵としてのプライドを傷つけられたとしか考えない為、「捜査の邪魔をするな」「細かいことでいちいちうるさい」[57]や「ただの偶然」[58][56]と言うが、それでも反論されると逆ギレして怒鳴る[59][44][60]等、非常に 探偵業に関する根気や責任感にも欠けている面が多く見られる。仕事よりも酒やギャンブル、アイドル鑑賞といった趣味嗜好の方を優先する為、平次の母親である服部静華が身分を偽って依頼をしてきた際は競馬中継の観戦を理由に追い返そうとしたり(静華が美人であった事でやる気は出している。)[62]、電話に出る事すら鬱陶しがって電話線コードを抜いてしまうこともあった[63]。莫大な依頼料が掛かったり依頼主が美人であればやる気を出すが、それでも酒盛り等で歓待されれば仕事などそっちのけで夢中になったり、捜査が行き詰ってしまうとあっさり投げ出すか適当に切り上げてしまう等、無責任ぶりを見せている。また依頼者が男性の場合だと冷淡さや薄情さまで見せる事があり、あっさり手に平返しな対応をして見捨てる事もあった[61]。沖縄での依頼の際も、コナンや蘭が危機的状況に陥っていた事実など知る由も無く、酒盛りの歓待に夢中になっていた結果、その間にコナンと平次の二人が事件を解決してしまうという不甲斐なさを露呈させてしまった[64]。自らのいい加減な推理が原因で、大勢の犯人ではない容疑者に対し冤罪未遂へと陥れかけているが、コナンが「眠りの小五郎」として活躍している事で致命的失敗にならずには至っている。そのため自分のやってしまった見当違いな推理について反省する様子は見られず、結局は同じ展開の繰り返しとなっている。だが、ある事件で容疑者を間違った推理で追い詰め、その件が一因で容疑者が自殺してしまった際には、流石に目暮からも厳しく咎められ、探偵事務所の看板を下ろして責任を取ろうとするといった、責任感を見せた事もあった(ただし、この件に関しては、自殺した被害者とされる人物が捜査を混乱させる行動に出た上、小五郎が疑うのも当然であった根拠や理由も十分にあり、事実とも結局は全く異なっていた。)[65]。 一方、コナンに影から補佐されつつ小五郎が事件を解決することもある[34]。コナンが解けなかった謎や正しく推理できなかった部分までも完璧に解いている場合すらある[注 22]。そういった場合、解決する事件は旧友や妻など自身にとって重要な人物が関わる他人事ではない事件が多いことから、本人にやる気さえあれば、これまでコナンが解決した事件も自力で解決できた可能性があり、コナンもそれを指摘している[注 23]。実際に「眠りの小五郎」が誕生する前、つまりコナンと出会う前に、探偵として自力で殺人事件のトリックを暴いたこともある[70]。 コナンが探偵事務所に同居するようになってから、小五郎が行く場所では何かしらの事件がよく起こるため、目暮警部らからは「疫病神」「死神」呼ばわりされることが多くなる[4][5][注 24]。青函トンネルで起きた殺人事件では、北海道警察の田村刑事に「行く先々で事件が起きる呪われた探偵」と呼ばれた[75]。また、コナン(新一)や平次と違って自分とは無関係な事件に興味本位で首を突っ込んだりはしないことが信条と述べており、蘭に対してもそれをしないよう戒めている[注 25][77]。その一方、コナン(新一)や平次同様、自己顕示欲・英雄願望が強く、作中世界の民放の日売テレビから番組出演の依頼を易々と受け[注 26]、カメラの前で堂々とVサインをしたりとほかの出演者よりも目立っており、高校時代の同級生がそれを理由に小五郎には頼まず安室透に依頼したこともある[78]。しかし、尾行や偽名で調査対象の家に侵入する[注 27]などの本来の探偵としての仕事は正体が気づかれないことも多くあり、探し物や素行調査などの業務は無難にこなしている。 かつて警視庁捜査一課強行犯係[注 28]に勤めていた刑事時代には庁内でも有数の拳銃の腕前だったとの証言がある[80][注 29]。しかし刑事時代も的外れな推理で捜査を混乱させることが多かったらしく、目暮警部からは「お前のおかげでほとんど迷宮入りになったがな」と呆れられている[39]。ただし阿笠博士は、「あれでも昔は敏腕刑事じゃったんじゃから」と評している[38]。刑事時代の経験から捜査の基本は熟知しており、大体の死因や死亡推定時刻は鑑識・司法解剖を待たずに自力で特定できる。また、携帯電話と盗聴の関連性について説明したこともある[32]ほか、事件が起きたと見るや「全員その場を動くな!」と叫ぶ[81]など[注 30]、刑事としての基本的な知識や業務遂行能力は備えている。 以上のことから、お調子者で的外れな推理を繰り返すことはあるものの、落ち着いて真面目に推理した時はそれなりの成果を見せることもあり、所轄署の刑事から本庁の捜査一課にまで上り詰めた経歴も含めて一概に無能とは決め付けられない優秀な面がある。また、物語に世良真純や安室透、沖矢昴といった推理力に優れた面々が登場するにつれ、「眠りの小五郎」を披露する場面はやや少ない傾向になっている[注 31]。それに伴い、小五郎が落ち着いて真面目に推理する場面も増えてきている。なお、劇場版第9作『水平線上の陰謀』では途中で少し脱線してしまったが、普段の小五郎からは想像できない見事な名推理を披露している[注 32]。 劇場版でも的外れな迷推理をすることが多く「眠りの小五郎」を披露しない作品も多いが、第1作『時計じかけの摩天楼』の冒頭、第2作『14番目の標的』、第17作『絶海の探偵』、第21作『から紅の恋歌』、第26作『黒鉄の魚影』で披露している[注 33]。 探偵としての弟子に安室透と脇田兼則がいるが[注 34]、彼らは後述の経緯から弟子入りを装って小五郎の調査のために潜入している(小五郎は2人の素性を一切知らない)。 犯人と対峙する探偵という立場上、何度か生命の危機に瀕している。2020年現在、一度だけ黒ずくめの組織に誤解されて命を狙われたことがあるが、小五郎本人にその自覚がないままFBIの赤井秀一らによってその計画は阻止されたため、助かっている[83][注 35]。また、小五郎に恨みを持つ脱獄犯が雇った殺し屋にワイヤーで首を吊られて殺されかけたこともあるが、コナンにより間一髪で救出されている[84]。劇場版第3作『世紀末の魔術師』では、ラスプーチンの悪口を言ったことが原因で犯人から狙撃されたが、未遂に終わっている。 英理との関係「妃法律事務所」を経営している弁護士の妃英理を妻に持つが、彼女とはある経緯[注 36]により離婚こそしていないものの、10年前より別居している。 高校時代、有希子と英理のミスコン対決の折、当時小五郎はミスコンの「ミス」を「ミステイク(mistake)」の意味と勘違いしており、「ドジな女の方」として英理の名前を書いていたが、小五郎曰く「本当の意味が分かっていたら有希子の方に投票していた」とのことで、結局は馬鹿馬鹿しくなって投票しなかった[注 37]が、開票の結果は両者が1万票で引き分けたため、小五郎の持っていた残り1票の行方を巡って大混乱になり、その後にミスコンは中止になったというエピソードがある[12]。 英理とは学生結婚という形で結婚した。アニメ版では新婚当時は生活が苦しく、収入を得るために家庭教師のアルバイトをしていた描写がある[35][注 38]。 英理とたまに会ってもお互いに悪口を言い合っている[注 39] 。英理からは「グズで不潔で女たらしで飲んだくれでいいかげんな男」と散々な評価を下されている[67]上に、夫婦だけあって普段から一変して冴え渡った推理を見せる「眠りの小五郎」に関しても、次第に疑いを強められている[85]。 だが、英理が紛失した指輪をひそかに見つけ出したり[67]、英理がファンだった野球選手のサインボールを渡そうとしたり[86]、誕生日に5万円のネックレスを贈ったり[87][注 40]、英理が犯人の罠によって重体に陥った時[80]や、病気で入院した時[85]には、大慌てで病院に駆け付けたり[注 41]、英理が誘拐された際には、発見時にビルの4階まで雨樋を伝って駆け上がったりする[88]など、憎まれ口を利いてはいても、内心では英理を想っている。英理に戻ってきて欲しいと願い出たこともあるが、彼女は聞いていないふりをして小五郎の発言をMDで録音していた[89]。英理へのプロポーズの言葉は、「お前のことが好きなんだよ、この地球上の誰よりも」[90]である。 良識前述の通り、コナンや蘭の容体を心配するなどの優しさを見せることも多いが、阿笠博士などから旅行やパーティを招待された際に、招待主がそばにいるのにもかかわらず平気で不満や文句を述べるなど、良識が有るのか無いのか判別できない疑わしい面もある[91][注 42]。また、普段の酒と女とお金にだらしない面や自分の問題点を潔く認められない器の小ささが目立つ為、大人としての威厳はあまりなく、ずる賢い子供達からは馬鹿にされた上で園子から毅然とした態度で彼らを叱った別の人物と比較されてしまった事すらある[92]。 『コナンドリル』では、表面上はダメ人間のように描かれつつ、主要キャラクター中唯一の成人であり、柔道や射撃の高い技能に加え、実娘の蘭だけでなく突然現れたコナンを養育する優しさも併せ持ち、浮気を知った英理に頭が上がらない姿も実は妻を立てる男の気配りで、正義だけで世の中が成り立っていないことを把握しているような思考が精神的な行き違いを生み夫婦別居の要因となった可能性を指摘している[93]。 「どんな理由があっても殺人者の気持ちなんて解りたくない」[注 43]という信念を持っており、被害者に落ち度があったりやむを得ない事情があったりしても、犯人を絶対悪と決め付けて非難するという態度を取る[注 44]。そのため、「犯人が被害者を殺害したことによって、結果的に良い結末となった」ことに対して蘭が擁護した際には、冷静に諭すこともあった[99]。無論、昔の依頼人や旧友など親しい人物や知人に対しても同様である[94]。また、犯人に対して一喝したり、説教したりすることもある[100]、コナン(新一)や平次と同様に、犯人を死なせることはしない[65][注 45]。本作ではコナンがほとんどの推理を披露し、小五郎自身もほとんどが探偵役として眠らされて推理内容を把握できていないこともあり、コナンの居候後に逮捕された犯人や関係者へのアフターケアなどは基本的には行っていないが、刑事時代に逮捕した犯罪者に対しては、仮出所の際に出迎えるなどのアフターケアを行っており[101]、自身の推理によって犯行を暴かれた犯人に改善の見込みがある場合はアフターケアを行うつもりとも述べている[35][注 46]。 親の権威を他人に振りかざす人間を嫌悪している描写もあり、蘭が探偵の真似事をした際には、親の名を出さなかったかについて普段より厳しく問い詰めた[76]ほか、新聞社の社長である父の権威と情報収集力を盾に役者仲間やスタッフに傍若無人な態度を取る俳優が殺された事件では、隠し子の情報隠滅という動機を掴んでいたにもかかわらず、共演者である息子への度重なる暴行に対する報復という加害者の言い分を追認し、被害者の非を公表すると同時に加害者の家族を守っている[3][102]。 金の力に弱いことを思わせる描写も多いが[注 47]、汚いお金の稼ぎ方は嫌っており、金のために犯罪に走った知人に対しては「そこまでして金が欲しいのか」と軽蔑していた[104]。加えて、埋蔵金伝説には関心すら示さない[105]。「そして人魚はいなくなった」では、通夜で事件について聞けると喜んでいる平次を諭している[106]など、倫理的な面がある。人命を尊重している面もあり、目の前で事故が起きた際にはその不審点をすぐ指摘したコナンに対し、「今はそんなことを言ってる場合じゃない」と叱っている[107]。また、事件解決のヒントとなることでも遺族や被害者にとって辛いことや立ち入ったことなどは聞かないようにしており[108]、この配慮が事件を解決から遠のかせる一因ともなっている。 コナン(新一)や平次同様、自分が犯した罪に対する責任能力が欠落している面もあり、立ち入り禁止の場所で釣りをしたり[109]、拾った万馬券を警察に届けず、寿司屋で豪遊したこともある[110]。 特技蘭が空手の達人であるのに対し、小五郎は柔道の達人である。本編では犯人を捕らえるときにその技の切れを見せており、特に決め技の一本背負いは大柄な男性すらあっさり投げ飛ばすほど[94]。劇場版第2作『14番目の標的』、第9作『水平線上の陰謀』、第14作『天空の難破船』では犯人確保の決め手となったほか、劇場版第7作『迷宮の十字路』では相手を叩きつけた衝撃で地面がめり込むほどの威力を見せた。第23作『紺青の拳』でも腕に覚えがある海賊を倒している。なお、妻の英理にもこの一本背負いを伝授しているが、彼女には「小五郎と出会って得たものは、娘の蘭と一本背負いくらい」とぼやかれている[111]。 大学時代に所属していた柔道部では全国大会優勝経験者も在籍していたにもかかわらず、小五郎が一番の腕前だった。しかし、肝心の試合になると気合が空回りして調子が狂ってしまい、公式戦で勝ったことはほとんど無かったらしい[94]。 「霧にむせぶ魔女」では、作中で魔女[注 48]と恐れられている白いRX-7(FD3S)に対し、ランサーエボリューションXで勝負している[112]。その際、ハンドルを素早く回してドリフト走行している場面もあることから、車の運転技術は高いことが示唆されている。 嗜好無類の酒好きだが、味にはほとんどこだわらず、高価なワインを味わう知識やマナーなどは殆ど知らず[113][114][115][80]、それが原因で時に酒を提供した相手の不興を買ってしまう事もある。酒の飲みすぎが原因で医師からアルコール性肝機能障害と診断され、酒量を制限するよう忠告されたこともある[116]。酒癖の悪さから泥酔したり寝ぼけていたりする事が多いが、その状況下でも事件に遭遇すると一瞬で覚醒し、緊張した状態になる[58][117][118]。ヘビースモーカーでもあり、作中で吸っているのはハイライトであったが、後にメビウス(マイルドセブン)に変更されている。趣味は競馬・競輪などのギャンブル、麻雀で、依頼が来ない時は大抵事務所でテレビを見たり、競馬中継のラジオを聞いたりして過ごしているが、日頃は負けることが多い[注 49]。金が絡まないことには勘が働くようで、ババ抜きなどハズレを引くと負けになるゲームには強い[119]。 サッカーファンのコナンとは対照的に野球好きで、小五郎が所属している町内野球チームでは、準優勝の経験もあるとの事だが、それ以上に女性への執着が強い為、甲子園観戦の際は、蘭や和葉に注意されるまで選手達を応援するチアガールのスカートを双眼鏡で除く不純さを見せている。美人[注 50][注 51]には目がなく、いつもすぐに鼻の下を伸ばしている。ただし、事件が起きたときは下心を一切出さず、女性の全裸や半裸を見ても冷静に対処することもある。事件中でも、女性の下着を見て反応したこともある[120]。また、女性の見た目だけでなく身体にも興味を持っており、女性たちの水着姿に興奮したり[67]、依頼人と一緒にバニーガールが働いているお店に来た際は従業員のお尻を触るといったセクハラ行為を行った事もある[121][注 52]。特にアイドル・沖野ヨーコの熱狂的ファンであり、ドラマやCDなど彼女が関わるものは逃さずに押さえているうえ、出演した作品に限って原典となる作品やモデルとなった史実について調べたりしている[21][注 53]など、自身にとって別格の存在である。しかしながら、それでも女性としては最終的に英理を選ぶ。 未だにマイカーを所有しておらず、遠出するときはいつもレンタカーを借りている[注 54]うえ、壊すことが多い[注 55]。 高収入の依頼が来ると、後先考えずに前祝いとして近所の人たちと派手な飲み会を開催し、借金まみれになって蘭どころか英理にまで尻拭いをさせる体たらく振りを見せてもいる[12][注 56]。高級品に対しての認識も低く、資産価値の高い骨董品などをぞんざいに扱って持ち主などに価値を知らされると、すくみ上がったりしている[54]。 高所恐怖症アニメなど原作以外のメディアでは高所恐怖症というオリジナル設定が追加されており、高い場所が苦手とされている。 劇場版では当初こそ平気だったもののコナンの指摘で高所と気づくと、急に アニメで設定が定着した後は、高所恐怖症を中心に据えたアニメオリジナルのエピソードも制作されている[123][注 60]。 声優交代2009年9月18日、それまで小五郎の声を担当していた神谷明が「9月26日をもって『名探偵コナン』の毛利小五郎役を解任させられた」と、自身のブログで明かし[124]、この際には具体的な理由が明かされなかったため、ファンの間ではさまざまな噂や憶測が飛び交った。神谷は詳細については触れず「契約上の問題と信・義・仁の問題」であるとし、原作者の青山剛昌、共演者、APUスタジオ、読売テレビ、小学館に対し、お詫びと長年の愛顧についての感謝の言葉を述べている[124][125][126]。神谷自身は19日、自身のブログで降板の理由について、契約交渉においてその相手である制作会社の人物が守秘義務のある契約内容を音響プロダクションや俳優団体、出演者の一部に悪意を持って伝えたこと、さらに降板を決意した後、その人物が発表前にインターネットへリークするという背信行為に馬鹿馬鹿しさを覚え、別の人物に役を引き続き演じさせて欲しいと仲裁を担ってもらったものの叶わなかったことを明かしていたが、翌日にその内容を削除している[127]。 降板の経緯としては業界の顔として声優の地位向上のために活動していた神谷が2001、2年頃に日本俳優連合を退会して個人で出演料の交渉を行い、出演作品のソフト化による二次使用料などをめぐって強く出ることもあったともされるが、折り合いがつかず、この結果になったとの報道があり、神谷は「報道自体間違いではありません」としている[128][129]。 これにより、小五郎の声優はアニメ553話(2009年10月31日放送分)[101]から、小山力也に変更となった。小山は2000年に放送されたアニメ199話・200話[89]にゲストとして初出演しており、それ以後も何度かゲストを経て、初出演から9年後に2代目小五郎を担当することになった。神谷は翌2010年4月2日に小山と会う機会があり、上述した自身のブログにて「ボクの小五郎にとらわれずに、自分の小五郎を作って欲しい」と語った事を記している。 なお、神谷が担当した期間のエピソードや劇場版は、その後もデジタルリマスター版や『金曜ロードショー』などで問題なく放送されている[注 61]ほか、彼の過去に演じた役が紹介される際には小五郎の名前を出しており、2代目の小山やコナンの出演者ともイベントや他のアニメで共演している。また、劇場版第23作『紺青の拳』のキャンペーンでは『北斗の拳』とのコラボレーション動画に参加し、小五郎役を退いてから10年振りに『コナン』に関わることとなった[130]。 脚注注釈
出典
参考文献
外部リンク
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