遠山 和葉(とおやま かずは)は、『週刊少年サンデー』で連載されている青山剛昌原作の漫画作品、およびそれを原作とするテレビアニメなどのメディアミックス『名探偵コナン』の作品に登場する架空の人物。
アニメでの声優は宮村優子が担当している[注 1]。ドラマでの俳優は岡本玲が担当している。
概要
服部平次の幼馴染であり、初恋の人[1][注 2]。平次と同じく改方学園高等部2年に在籍[注 3]。大阪府に在住。年齢は17歳。基本的な髪型は大きなリボンで結んだポニーテールだが[注 4]、就寝前には髪を下ろしている[4][5][6]。
父は大阪府警察刑事部長・遠山銀司郎[注 5]。母は元機動隊銃器対策部隊・遠山櫻で、時々存在を言及される[8]。なお、平次とは作品を問わずセットで登場する場合がほとんどであるうえ、原作で平次が登場して和葉が登場しない事件はまれに描かれるが、その逆は一度も無い。
名前の由来は、「遠山」は遠山金四郎、「和葉」はアシスタントの夫人の名前が気に入ったから[9]。
人物
気さくで明るく面倒見の良い性格。ナンパされたり好意を持たれたりすることもあるほど可憐な容姿[10][11][12][13]。だが、気の強い一面もある。特技は2段の腕前を誇る合気道で、犯人に対して使ったこともある[14]。一人称は「アタシ」[注 6]。周囲からの呼称集は、「和葉(服部平次・遠山銀司郎・女子生徒の同級生関係者から)」、「和葉姉ちゃん(江戸川コナン)」、「和葉ちゃん(コナンが工藤新一[注 7]として・毛利蘭・鈴木園子・毛利小五郎など)」と呼ばれ、アニメでは、世良真純から「ポニテの彼女」と呼ばれたこともあり[17]、教師や男子生徒から「遠山」「遠山さん」など名字で呼ばれる場面は本編では描かれていない。
「平次の姉役」を自称している[18]。平次のことが好きだが当初はまだ告白しておらず[注 8]、その後に一度は勇気を出して告白したものの、前置きとして新一が蘭に告白したことを言ってしまったうえ、平次が途中でコナンのもとへ向かったため、不発に終わった[20][注 9]。
幼い頃、平次とつながれた手錠の鎖をお守りに入れ、彼のお守りにもこっそり入れている[21][注 10]。中学時代には、スキー上級者の平次と一緒にいたいがために自らも上級者だと偽り、その練習のし過ぎで足を捻挫したこともあった[22]。平次との待ち合わせでは、彼に忘れられてもなお4時間も待ち続けたことがある[23]。
平次の剣道の試合では、試合に出ないにもかかわらず部員たち以上に張り切ったりするなど、彼同様に負けず嫌いな面もある[24]。平次に惚れているゆえか、彼のことになると後先考えずに無鉄砲・無茶な行動に走る傾向がある[注 11]。また、負傷した平次を見た際には、近くの人が耳をふさぐくらいの大声で泣いたことがある[注 12]。
犯人の遺留品に気付いたり[4]、平次の残した暗号のメッセージを解読したり[27]と、人並み以上の推理力もある。勘も良く、蘭と共同で事件を推理することもある[28]。ヒョウタンをすぐに太閤秀吉の馬印と結びつけたりと、日本史にも詳しい[24]。一方、「風林火山」の意味は知らない[8]。
現時点で、黒ずくめの組織に関わったことは原作・アニメ共に一度もなく、存在自体もまったく知らないが、関連情報として劇場版にて灰原哀が科学者であることを阿笠博士と平次の会話から知った[26][注 13]。
意地っ張りでお化けや雷が嫌いなど、蘭と似たところがある。停電した時は近くに居た男性の腕に思わず抱きつく[29]など、意図せずに平次を嫉妬させることも多い。
料理が得意であり、蘭とともに食事を作ることも頻繁にある[5][29][30][31][注 14]。
原作での初登場は19巻で、灰原哀(18巻初登場)より後に登場したが、アニメでは118話が初登場で灰原(129話で初登場)より先に登場している。2003年時点では蘭より男性ファンからの人気が高く[32]、作中ではナンパもされている。第1回キャラクター人気投票での順位は8位(40票)。テレビ&劇場版15周年記念のキャラクター人気投票では7位。2012年の『週刊少年サンデー』連載800回記念キャラクター人気投票では11位。2020年5月7日発売の雑誌『ダ・ヴィンチ』2020年6月号で実施された「読者にしあわせを与えてくれたキャラ」ランキングでは、15位を獲得した[33]。
劇場版では、第3作『世紀末の魔術師』で初登場。それ以降、第7作『迷宮の十字路』・第10作『探偵たちの鎮魂歌』・第13作『漆黒の追跡者』・第14作『天空の難破船』・第17作『絶海の探偵』・第21作『から紅の恋歌』・第27作『100万ドルの五稜星』に登場(毎回平次とペア)している。そのうち、第7作では京都の手鞠歌(京都市内の通り名の歌)を唄えることも描かれているが、歌詞の一部を間違って憶えていた[1][注 15]。また、第14作では横浜から引っ越してきた奈良在住の親戚の少年・川口 聡(かわぐち さとし、声 - 大橋のぞみ)が登場している[7]。
平次と同様、テレビアニメ版のオリジナルエピソードには殆ど登場しておらず、登場作品は2作のみ[34]で、2013年以降の劇場版のプレストーリーにも一度も登場していない(2023年現在)。
ドラマ版では、東京(警視庁管轄)で平次の父であり大阪府警察本部長である服部平蔵の名前を出して担当刑事を黙らせ、そのことを嫌がる平次には「使えるもんは使わんと」と言うなど、したたかな一面を見せている。
コナンたちとの関わり
大阪を訪れてお好み焼き店に入ったコナン一行(江戸川コナン・毛利小五郎・毛利蘭)のもとに平次がいない間、いきなりコナン一行の隣に入り込んで席に座ったのが初登場[21][注 16]。
平次との初上京以降、コナンや蘭とはさらに親交を深めている。コナンのことは可愛がっており、蘭と同様に優しい態度で接しているが、その行動力を見てただの子供じゃないと思っているふしもある。また、劇場版第7作『迷宮の十字路』では平次のことを呼び捨てにしたコナンを気にかけ、たしなめている。
蘭とは初期こそ平次との仲を疑い[注 17]、執拗にライバル心を燃やしていた[18]が、その誤解が解けた以降は良き親友となっている。また、平次との仲をからかわれるが、逆に新一との仲をからかうこともあるほか、「家族ぐるみで付き合いのある幼なじみの探偵を好きになっている」という似た恋愛事情を持つことから、互いの恋を真剣に応援し合ってもいる[注 18]。
本編に登場する時は、コナン・蘭・平次と一緒に事件に関わるという展開がおおむね定番化されており(この4人に小五郎が加わることも多い)、コナンと平次が事件を推理する傍らで蘭と一緒に行動し、事件解決のサポートを担って蘭と共にヒロイン的な役割や活躍が描かれることも少なくない[注 19]。
蘭の親友である鈴木園子とも蘭を通じて友人となっており、原作では会話するシーンが少なくテレビアニメでも多くはないが、『迷宮の十字路』などの劇場版作品やOVA作品では会話も多く意気投合している。劇場版第21作『から紅の恋歌』でも、園子は風邪のために和葉と会えなかったが、その後に和葉が競技かるたの大会へ急遽出場することになったと蘭から連絡を受けた園子は、和葉のために鈴木財閥の力で練習用のホテルの部屋や食事の手配を指示している。
脚注
注釈
- ^ 劇場版第7作『迷宮の十字路』で幼少時代の和葉が手毬歌を歌うシーンのみ、当初は正体不明との設定の都合上、宮村ではなく他の役で出演していた佐久間レイが兼務している。
- ^ ただし、和葉自身はそれが幼少期の自分だったと気づいていない。
- ^ 「改方」は、火付盗賊改方の「改方」が由来である[2]。
- ^ 作者によれば、コナンや蘭や平次の髪型同様に「キャラの特徴」として意識しているとのこと[3]。
- ^ 下の名前は劇場版第14作『天空の難破船』にて判明[7]。
- ^ 怪盗キッドの変装に利用された際には、コナンや諸伏が変装であることを見破るきっかけにもなった[15]。小説版『工藤新一への挑戦状』シリーズでは「私」と言う場合もある[16]。
- ^ OVA「10年後の異邦人」では「和葉」と1回、呼び捨てにしていた。
- ^ 監禁された際には「背中で震えるお前にこの言葉を」という平次からの告白ともとれる言動に期待し、彼が自分を残して犯人に連行されていく際には、「もし助かったら…さっき言お思てたこと、聞かしてくれる?」と甘えたり、平次の「きっとオレは…お前の事を……」と言う思わせぶりな態度に期待してみたりするが、平次からは表面上子分扱いされて肩を落としている[19]。
- ^ なお、和葉は平次と二人きりのつもりで目を瞑って告白したため、平次が途中で駆け出したことにも気付かずに「めっちゃ好っきやねん!!」のくだりを偶然居合わせた高木刑事に聞かれてしまっている。
- ^ 実際は、平次はお守りの中の手錠の鎖には気づいていたようである。その鎖が、犯人の凶刃からコナンを救ったこともある[21]。また、自身のお守りには平次の写真も入れてあり、そのことから「平次に見せられない」と考えていたが、平次と和葉の仲に嫉妬()した国末に落書きをされてしまい、この落書きされた写真が見せられない原因だと平次から勘違いされた[11]。
- ^ 崖から落ちそうになった平次を庇った結果、2人とも落ちそうになる。その際に持っていた矢で平次の手の甲を刺し、自分の命を捨ててまで彼を助けようとした。しかし、平次はそれでも手を離さず、「絶対助ける」と気合を入れる結果となった[25]。
- ^ 平次曰く、かすり傷程度の怪我だったにもかかわらず、大声で泣いていたとのことである[26]。
- ^ 灰原が幼児化していることを知らない周囲の関係者で、彼女を科学者と知ったのは現在まで和葉のみである。
- ^ ドラキュラの恐怖に怯えた際には、その気晴らしも兼ねて蘭と共に小麦粉から餃子の皮を作った[30]。
- ^ 「姉さん」を「嫁さん」と間違えていた。
- ^ 厳密には、最初の通天閣からコナン一行を見張っていた。
- ^ 蘭と平次の服装が偶然ペアルックだったことが原因。19巻の初登場時には、平次から新一のことを聞かされていたが、平次が常に名字で「工藤」と呼んでいたため、その「工藤」が男であることを知らずに蘭のことだと勘違いし、彼女に詰め寄った[21]。26巻の学園祭の事件で新一と初対面した際には「ホンマに男やったんや…」と驚き、誤解は解けた[35]。
- ^ 恋愛面以外でも、蘭は「父が元刑事で自分は空手の有段者で家事もこなす」など、「父が刑事で自分は合気道の有段者で家事も得意」な和葉とは、その特徴や境遇などがよく似ている。
- ^ 劇場版では第7作『迷宮の十字路』・第21作『から紅の恋歌』などでメインの活躍を担っており、特に『から紅の恋歌』ではヒロインとして描写されている。
出典
- ^ a b 劇場版第7作『迷宮の十字路』。
- ^ 青山 剛昌 (2000年9月27日). “Vol.4”. サンデーまんが家BACKSTAGE. 小学館. 2016年12月1日閲覧。
- ^ “『名探偵コナン』青山剛昌によるキャラクター豆知識 鈍感王は…平次、お前やっ!!”. シネマトゥディ (シネマトゥディ). (2017年4月16日). https://www.cinematoday.jp/page/A0005456 2020年5月14日閲覧。
- ^ a b 単行本25巻File.4「蜘蛛屋敷」 - File.8「言葉にできない」(アニメ166話 - 168話「鳥取クモ屋敷の怪」)。
- ^ a b 単行本39巻File.1「誘う赤馬」 - File.5「愚かなる模倣」(アニメ325話 - 327話「炎の中に赤い馬」)。
- ^ 単行本70巻File.5「魔犬」 - File.11「仁義八行」(アニメ611話 - 613話「犬伏城 炎の魔犬」)。
- ^ a b 劇場版第14作『天空の難破船』。
- ^ a b 単行本59巻File.5「百足」 - File.10「陰と雷」(アニメ516話 - 517話「風林火山」)。
- ^ 少年サンデー特別編集プロジェクト「コラム7 元ネタは…これかーー?」『コナンドリル』小学館、2003年5月1日、153頁。ISBN 4-09-179402-5。
- ^ 単行本35巻File.11「デス・アイランド」 - 36巻File.4「姫と龍宮城」(アニメ291話 - 293話「孤島の姫と龍宮城」)。
- ^ a b 単行本66巻File.8「お守り奪還作戦!」 - File.10「意地悪」(アニメ573話 - 574話「恥ずかしいお守りの行方」)。
- ^ 単行本83巻File.7「探偵の師匠」 - File.9「麻薬取引現場」(アニメ763話 - 764話「コナンと平次 恋の暗号」)。
- ^ 劇場版第27作『100万ドルの五稜星』。
- ^ 劇場版第10作『探偵たちの鎮魂歌』、他。
- ^ 単行本96巻File.4「氷中」 - File.7「遺品」(アニメ983話 - 984話「キッドvs高明 狙われた唇」)。
- ^ 小説「工藤新一への挑戦状」シリーズ単発作品『対決!! 工藤新一VS服部平次』、15頁、他。
- ^ 単行本74巻File.5「どっちが名探偵なんだ?」 - File.7「魔法の料理」(アニメ651話「コナンVS平次 東西探偵推理勝負」 )。
- ^ a b 単行本21巻File.11「東京日和」 - 22巻File.3「かかった獲物」(アニメ141話 - 142話「結婚前夜の密室事件」)。
- ^ 単行本38巻File.8 - File.10「服部平次絶体絶命!」(アニメ323話 - 324話「服部平次絶体絶命!」)。
- ^ 単行本74巻File.8「EYE(イーワイイー)」 - 75巻File.2「親子の間の錯視」(アニメ652話 - 655話「毒と幻のデザイン」)。
- ^ a b c d 単行本19巻File.5「食いだおれの街」 - File.8「免許証の秘密」(アニメ118話「浪速の連続殺人事件」)。
- ^ 単行本50巻File.8「平次の思い出」 - 51巻File.1「吹雪の中の復讐」(アニメ490話「服部平次VS工藤新一 ゲレンデの推理対決」)。
- ^ 単行本34巻File.2「反撃の糸口…」 - File.4「あんた何者や」(アニメ277話 - 278話「西の名探偵vs.英語教師」)。
- ^ a b 単行本31巻File.8「浪速の剣士」 - File.10「裁きの剣士」(アニメ263話「大阪ダブルミステリー 浪速剣士と太閤の城」)。
- ^ 単行本28巻File.6「人魚の呪い?」 - File.10「報われぬ心」(アニメ222話 - 224話「そして人魚はいなくなった」)。
- ^ a b 劇場版第17作『絶海の探偵』。
- ^ 単行本54巻File.9「東の高校生探偵」 - 55巻File.2「熱血探偵」(アニメ479話「服部平次との3日間」)。
- ^ 単行本43巻File.6「どっちの料理ショー!?」 - File.9「仕組まれたメッセージ」(アニメ381話 - 382話「どっちの推理ショー」)。
- ^ a b 単行本47巻File.8「出現マジック」 - File.11「奇術師(マジシャン)失格」(アニメ406話 - 408話「コナン平次の推理マジック」)。
- ^ a b 単行本79巻File.6「吸血鬼の館」 - 80巻File.1「殺人鬼の計画」(アニメ712話 - 715話「服部平次と吸血鬼館」)。
- ^ 単行本92巻File.11「喫茶ポアロで暇潰し」 - 93巻File.2「喫茶ポアロで謎解きを」(アニメ885話 - 886話「謎解きは喫茶ポアロで」)。
- ^ 少年サンデー特別編集プロジェクト「ファン投票 コナン THE ベスト」『コナンドリル』2003年5月1日、205頁頁。
- ^ 五十嵐 大 (2020年5月22日). “『コナン』ファンに“しあわせ”をくれたキャラランキング! トップ争いを制したのは、やはりあの男⁉”. ダ・ヴィンチニュース (KADOKAWA). https://ddnavi.com/review/619798/a/ 2020年5月26日閲覧。
- ^ アニメ554話 - 555話『こうのとりミステリーツアー』・アニメ965話 - 968話『大怪獣ゴメラVS仮面ヤイバー』
- ^ 単行本26巻File.3「覆われた真実」 - File.4「命懸けの復活」(アニメ191話「命がけの復活 黒衣の騎士」)。
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