伊丹市
伊丹市(いたみし)は、兵庫県南東部の阪神間に位置する市。阪神北県民局管轄区域。兵庫県内で尼崎市に次いで人口密度2位を擁する大阪、神戸のベッドタウンである。計量特定市に指定されている。 概要大阪国際空港(市名にちなんで「伊丹空港」の通称で呼ばれることが多い)の滑走路の大半を擁する20万人都市で、大阪・神戸の衛星都市・ベッドタウンの一つとされる。 「伊丹」の史料上の初出は嘉元元年(1303年)の多田神社文書(出雲国守等田地寄進状)であるが、「いたみ」の名はそれより古く治承4年(1180年)の『山槐記』に「伊多美」とある[1]。その語源については諸説ある[注釈 1]。その後、国人の伊丹氏が登場した[1]。 気候は温暖で、冬には昆陽池や瑞ケ池などにハクチョウやカモを始めとした多数の渡り鳥が飛来する。 大阪国際空港(伊丹空港)の地元自治体の連合である大阪国際空港周辺都市対策協議会(10市協)に加盟しており、伊丹市長がその会長を務めている。かつては大阪国際空港を発着する航空機の騒音等に悩まされ、1973年(昭和48年)には大阪国際空港撤去都市宣言を掲げていたが[2]、関西国際空港の開港後に国際線が同空港へ移り大型機が姿を消して以降は次第に空港を「市の重要都市資源」と位置づけるようになって行った。こうした情勢変化もあり、2007年(平成19年)には市議会で大阪国際空港と共生する都市宣言を採択するに至っている[3][4]。 2001年(平成13年)に兵庫県が設置する阪神県民局(第1次)の管轄区域が南北に分割されて以降は阪神北県民局管内に属しているが、県では2022年(令和4年)度を目処に阪神北県民局(宝塚市)と阪神南県民センター(尼崎市)を再統合して阪神県民局(第2次)を発足させ、その本局を県伊丹庁舎(伊丹市役所に隣接)に設置する方針である[5]。 地理兵庫県の南東に位置し、東に猪名川、西に武庫川が流れている。市域は全体に平坦で起伏のなだらかな地形であり、「伊丹台地」と呼ばれる。JR伊丹駅付近から北隣する川西市のJR川西池田駅の南にかけて猪名川により形成された段丘崖が続いている。西日本旅客鉄道(JR西日本)福知山線(JR宝塚線)と阪急伊丹線が南北に縦断している。大阪市からは約10kmと近い。 市の中央部を天神川・天王寺川が北から南へ流れ、武庫川に流れ出ている。また、駄六川が瑞ヶ池から南流し、猪名川に流れ出ている。兵庫県の市では南隣の尼崎市に続き、人口密度が2番目に高い。 隣接している自治体北は川西市、北・西は宝塚市、西宮市、南・西は尼崎市、東は大阪府池田市、豊中市に接する。 なお、西宮市との境界は武庫川上であり、橋梁はない。宝塚市との境界の一部も武庫川上であり、橋梁は武庫川新橋の1本のみである。 大阪モノレール大阪空港駅付近に、伊丹市の飛地(小阪田)が存在する[6]。 歴史サヌカイト(讃岐石)製のナイフ形石器が西摂地方[注釈 2]で発見されている。 伊丹市緑ヶ丘1丁目付近で石鏃が4個[注釈 3]、桜ヶ丘3丁目で1個[注釈 4]見つかっている。この両地域で竪穴建物が数棟発見されている。川辺郡神津村の2カ所(大阪空港A[注釈 5]・B遺跡[注釈 6])から縄文土器が出土している。「縄文のない縄文土器」が現れた時期である。 伊丹市松原で1960年代に弥生土器が地下10メートルほどから出土し、その腹部にノギ[注釈 7]のついた籾の圧痕が残っていた。この土器は畿内の弥生土器第V様式で後期に属し、今から凡そ1600年前のものである。 伊丹に関連の深い「猪名部」・「猪名県」などは『日本書紀』に表れる。古くは「摂津国」の「西摂」と呼ばれた地域。
行政歴代市長
市のシンボル
男女共同参画伊丹市男女共同参画施策市民オンブードという組織を設置している。 副首都構想副首都構想とは、首都東京に大地震やテロなどが起こったことを備え、伊丹市と大阪府豊中市・池田市にまたがる大阪国際空港を廃止し、空港跡地に副首都をつくり、危機管理専門の省庁をおく構想である。この構想について2005年4月6日には危機管理都市推進議員連盟が結成され、これには、民主党の石井一(比例近畿ブロック選出)を筆頭に、自由民主党の青木幹雄元官房長官(島根県選挙区選出)や民主党の菅直人元代表(比例東京ブロック選出)らが名を連ねている。ただ、これらの動きを含む大阪国際空港の廃止は、現存する空港施設の撤去にかかる莫大な費用・時間、アクセスの不便な関西国際空港では代替空港として心もとないこと(もちろん、関西国際空港のアクセス改善に要する費用・時間も問題である)、万一大阪国際空港を閉鎖した場合の北大阪経済に与える打撃、新幹線(将来的にはリニア中央新幹線)に対抗できる航空交通手段確保の必要性、そして、航空利用者の利便性の確保などの観点から、現実的ではないとの意見もあり[18]、実現に至らなかった。 議会市議会→詳細は「伊丹市議会」を参照
兵庫県議会
衆議院
警察・消防警察は、兵庫県伊丹警察署が置かれ市内全域を管轄する。消防は、伊丹市消防局が市内全域を管轄する。 自衛隊市内には陸上自衛隊中部方面総監部および第3師団司令部があり、阪神・淡路大震災やJR福知山線脱線事故における災害復興や救助活動が特筆される。 産業市北部の東野地区は苗木職人が多いことで知られ、歴史的には土佐藩士の児島晴海の尽力があった(東野地区には顕彰碑がある)[1]。隣接する宝塚市の山本地区と合わせて、全国三大植木産地のひとつとなっている。アメリカ合衆国のポトマック川の川沿いに植樹されているサクラは伊丹のサクラを台木、東京の荒川堤の五色桜を穂木にして成長させたものである[1]。また、東野地区などではマイヤーレモンを「たみまるレモン」の名で生産・販売している[1][19]。 江戸時代から酒造が盛んであった。近代になっても全国に先駆けて酒造り産業として清酒醸造法を確立している。現在も、小西酒造(白雪本社)、伊丹老松酒造がある。 1919年(大正8年)に日本初の国産リノリウム(床材)を製造販売する「東洋リノリューム株式会社(現在の東リ)」が創業した。臨空都市としての利点を生かしたハイテク産業の住友電工、三菱電機などの企業がある。 2002年10月10日、市東部にオープンしたダイヤモンドシティ・テラス(現・イオンモール伊丹)と、2011年3月25日、市西部にオープンしたイオン伊丹昆陽ショッピングセンター(現・イオンモール伊丹昆陽)は、その規模の大きさ、店舗の多様さ、営業時間の長さで、近隣の大規模店舗に様々な影響を与えている。 金融
主な企業
主な商業施設
なお伊丹市は兵庫県の阪神地区の市で唯一ダイエーやデパートの出店歴が一切無かった[注釈 8]。 姉妹都市・提携都市日本国内
海外
なお、ミクロネシア連邦が名誉総領事館を市内に設置していたことがある[注釈 9]。 地域人口2010年(平成22年)国勢調査より前回調査からの人口増減をみると、2.03%増の196,160人であり、増減率は県下41市町中6位、49行政区域中10位である。
教育市内には私立の小学校・中学校は無く、全て公立(伊丹市立)である。このほか、各種学校(非一条校)として日本の幼稚園・小学校に相当する民族教育を行う伊丹朝鮮初級学校がある。 高等学校についても私立学校は存在せず、全て公立学校(伊丹市立または兵庫県立)である。高校入試は1953年(昭和28年)から1959年(昭和34年)および1971年(昭和46年)から2008年(平成20年)まで総合選抜を実施し、現在は複数志願選抜のシステムをとっている。 小学校中学校高等学校
通信制課程障害者職業能力開発校特別支援学校
大学・短期大学
ライフライン
住宅団地
地域安全犯罪の抑止、事件・事故の早期解決等を目的として、H27.9に伊丹市安全安心まちづくりのためのカメラ設置に関する条例を施行し、市内全域の道路や公園に「安全・安心見守りカメラ」を1200台整備。カメラと共にビーコン受信器を整備し、子どもや徘徊する認知症高齢者等の位置情報を保護者に知らせる「安全・安心見守りネットワーク事業」を展開している。[26] この取り組みは、2022年2月アメリカ・ニューヨークタイムス・ビジネスに取り上げられた[27]。 交通市内は市バスで結ばれる。市域は伊丹台地を擁するものの、特に大きな山はなく、起伏がなだらかで市内を端から端まで自転車で走ることも容易であるため、自転車の利用が大変に多い[28]。市域東側に広がる大阪平野には大阪国際空港もある。鉄道にも囲まれており、近距離・遠距離の移動ともに交通の便は大変良い。 空港大阪国際空港は、滑走路の大半を伊丹市が占めているため一般に伊丹空港と呼ばれている(IATA空港コード:ITM ICAOコード:RJOO)。従って、空港内の出張所には大阪府警と兵庫県警とが詰めている。また、警備のための機動隊員の派遣も交代で行なわれている。 1994年の関西国際空港の供用開始に伴い、国際線および比較的遠距離の国内線が同空港に移るなどして、大阪国際空港の相対的な地位は一時的に下がったが、数年後に国内線の多くが伊丹空港に戻るなどして、かつての賑わいを取り戻したほか、大阪市の主要部から10km圏内であるという地の利の良さが見直されつつある。伊丹空港のほか関西・神戸とあわせてマルチエアポートの関西三空港として、一体的な空域として扱われている。橋下徹(当初は大阪府知事、元大阪市長)をはじめとする日本維新の会などは、航空路線の関西国際空港への統合を掲げて、大阪国際空港の廃港論をたびたび打ち上げるなど、議論の的となっている。(2013年には市長選挙の争点の一つにもなった。) →「大阪国際空港 § 橋下大阪府知事に関する動き」も参照
→「2013年伊丹・宝塚市長選挙」も参照
鉄道中心となる駅:伊丹駅 (JR西日本) 市の代表駅として中心的な立場にあるのは、長らく伊丹駅 (阪急)であったが、JR東西線開業に伴う福知山線(JR宝塚線)内の大幅増発と大型ショッピングセンターの進出に伴い、現在は伊丹駅 (JR西日本)がこれに代わっている。 駅はないが、山陽新幹線が市南部を通過している。
空港連絡鉄道構想現在、大阪国際空港には大阪モノレールが乗り入れているが、JRの路線は乗り入れていない。そこで大阪国際空港に近いJR伊丹駅から大阪国際空港までの空港アクセス路線を建設する「JR福知山線分岐線構想」がある。1990年代に入ってから計画され、実現に向けて取り組まれているが、膨大な費用がかかるため実現の可能性は低くなっている。 また、2007年に大阪国際空港とJR伊丹駅や阪急伊丹駅、伊丹市街地にアクセスできる大阪国際空港広域レールアクセス構想の検討が始められ、上記「JR福知山線分岐構想」の半分以下の費用で実現できるとされることなどから、現在では最も実現可能性が高い構想となっている。 また、上記に加えて、阪急電鉄が、2017年9月の会見で、阪急大阪空港線の計画を発表。この場合、乗り入れ開始場所は、阪急電鉄宝塚本線曽根駅からと言われている。 路線バス
道路
名所・旧跡・観光スポット・施設・催事・スポーツ名所・観光
施設
催事
スポーツチーム
歌枕(いなの)しながとり ゐなのをくれば ありま山 ゆふぎりたちぬ やどりはなくて
当市に関連する主な人物※印は伊丹大使に任命されている。 出身者
ゆかりの人物
脚注注釈
出典
参考文献
関連項目外部リンク
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