ビリヤード
ビリヤード(英: cue sports, billiard sports、billiards)は、室内で行われるスポーツ競技のひとつ。ビリアード、撞球(どうきゅう)、球撞き・玉突き(たまつき)とも呼ばれる。 概要ビリヤードとは、ラシャと呼ばれる布を張ったスレート(石板)にクッションで囲ったテーブル上で「キュー」と呼ばれる「タップ(皮)、先角(コツ)、シャフト、バット」で構成された長い棒状の道具を使い、静止している白や黄色の手玉(キューボール)を撞き、先玉(カラーボール)に衝突させ、それらの球が起こすアクションを自分の思い通りにコントロールすることで競い合う球技であるが、キャロム、ポケット、スヌーカーで使用するテーブルの規格が異なる。他の多くの球技と異なる点は、体力の優劣、年齢によって勝敗が左右される要素が少ないことであり、そのため子供から年配者まで幅広い年齢層のプレイヤーが楽しむことができる[1]。また各プレイヤーの実力に合わせて適切なハンデを振ることにより、初級者からプロまでが同じテーブルで直接対戦することができる。 ビリヤードは常に一人でテーブルへ向かってプレイを行い、静止した球を撞く。そのため対戦相手と直接球を撞き合うことはなく、ショットの成否は全て自らのプレイによる結果となる。また、体格や体力において優れていれば必ず勝てるとは言えず、技術の熟練度やプレッシャーに負けない精神力、集中力を備えているほうがよい結果を残す[注 1]ことが多い。技術の緻密さ、ゲームを有利に進めるための戦術を競う競技であることから、メンタルスポーツ[注 2]のひとつとされる。 ビリヤードの起源ビリヤードの起源については諸説あり、中国、イタリア、フランス、イギリス、スペインのいずれかで発明されたとされる。かつてはビリヤードは「ベルメル」と呼ばれており、中近東から戻った十字軍兵士がベルメルをヨーロッパへ持ち込んだとする説もある。また、紀元前400年頃、ギリシアの屋外スポーツで、円錐形のものへ丸い石を棒で突き当てる競技が原型という説もある。 ビリヤードは元々屋外のスポーツでクロッケー競技に似ているものだったと言われる。スペインでは「ビロルダ」というスティックでボールを転がし、2本のポールの間に入れて競技されるものが「ビラルダ」を経て、最終的に「ビリヤード」になった。 1469年、世界初のビリヤードテーブルはルイ11世のために作られた。そのビリヤードテーブルは石版にクロスが敷かれ、真ん中にひとつだけ球を落とす穴があるものだった。しかし、同世紀の他のフランス国王、教会はビリヤードを「罪深きもの」として見なし、遊ぶことを禁じていた。 なおビリヤードから派生・分化したゲームとしてはバガテル、ピンボール、スマートボール、アレンジボール、パチンコなどが存在する。詳細については各項目の歴史などを参照。 ビリヤードの分類ビリヤードは使用するテーブルの形状によって大きくキャロム競技とポケット競技に分けられ、それぞれによって使用する道具等が若干異なる。主にイギリスを中心とした旧英連邦諸国において人気が高い競技のスヌーカーもテーブルにポケットがあり、ポケット競技に含められることもあるが、テーブル表面積が2倍近くあり、使用するボールが小さく、目の付いたラシャによりボールが自然とカーブするなど競技特性が異なること、ボールをポケットへ落とすことだけではなく、相手にボールを落とすチャンスを与えないセーフティープレーにより相手のファールを誘って点数を得ることも重要な戦略となっているなど、そのゲーム性は大きく異なるためポケット・ビリヤードとは別競技として扱われる場合が多い。
これらの競技はいずれもキューを用いて行われるスポーツであることから、キュースポーツ(Cue Sport)とも呼ばれている。 器具と用語の解説テーブルビリヤードをプレイするための台のことをビリヤードテーブル、あるいはそのまま単に台と呼ぶ。テーブルの台座部分は主にスレートと呼ばれる石板やその代用品でできており、ラシャ(羅紗、クロス、ベーズ(en)とも呼ぶ)と呼ばれる柔らかい専用の布でその表面が覆われている[注 3]。 テーブルの周囲は主に木製のエプロンもしくはスカートと呼ばれる外枠で覆われている。スカートの上面はレールと呼ばれ、その上面はスレート面よりも一段高くなっており、その段差の内側にはラシャを張ったゴムの壁が三角柱を横に寝かせたような状態で貼り付けられている。このゴムの壁をクッションと呼び、球が当たると跳ね返るようになっている。このクッションの内周は長辺と短辺の比が2:1の長方形となっている。一般的なビリヤードテーブルのサイズは長辺の長さで示される。レール上にあるマークは、ポイントと呼ばれる。 ポケット競技やスヌーカーで使用されるテーブルには四隅と長辺の真ん中の合計6箇所に「ポケット」と呼ばれる穴が開けられており、ボールがそこへ入ると落ちるようになっている。このような台をポケットテーブルと呼ぶ。一方、キャロム競技に使用されるポケットのないテーブルをキャロムテーブルと呼ぶ。ポケットテーブル、キャロムテーブル共にそれぞれの競技によって大きさの違うテーブルが存在する。なお、スヌーカー競技用のテーブルをスヌーカーテーブルと言って呼び分ける場合もある。 ビリヤードテーブルは非常に大きく重量がある[注 4]ため、分解して室内へ運び入れて組み立てられる。しかし、ビリヤードは球同士を衝突させて、それらの球のアクションを支配しようとするという競技であるため、ボールが偏った動きをしないようにスレート面が限りなく水平かつ平滑であることが求められる。そのためビリヤードテーブルの脚はそれぞれ高さを微調整できるようになっており、複数枚で構成されるスレート面はスレート[注 5]同士の継ぎ目に段差ができないよう慎重に設置される。 また、ビリヤードをストレスなくプレイするためにはテーブル端でキューを振るだけの余分な空間と幾つかのインテリアを置くための空間が必要となるため、例えば長辺が9フィートのポケットテーブル1台を設置するためには最低でも20畳ほどの空間が必要となる。 ボール→詳細は「ビリヤードボール」を参照
ビリヤードで使用するボール(玉、球、ともに「たま」と読む)はフェノール樹脂などの硬質なプラスチックで作られ、大きさは競技によって異なるが概ね5~7cm程度のサイズである。ボールがどの方向にも正しく転がっていく必要があるため、非常に精密に作製されている。プラスチックが実用的になる以前は木材や象牙で作られていた。 ビリヤードではキューを振って先端のティップでボールに触れて転がす。この一連のアクションを指して「撞く」、「突く」と表現する[注 6]。また、競技中においてはボールに接触が許されているのはキュー先に取り付けられたティップのみであり、ティップ以外の部分で触れたり、ボールを置き直すなどの必要がない場合に手で直接ボールに触れることはファールとなる。 手球プレイヤーがキューで撞く球を手球又はキューボール (cue ball) と呼ぶ。手球の色は競技によって異なるが、概ね白やクリーム色をしている[注 7]。基調は無地だが、ポケット競技で使用される手球には赤または青で小さな丸印、三角印、あるいはブランドマークなどが描かれているものをよく見かけられる。また、競技を観戦している視聴者にも手球の回転が理解できるように大きめのドット(点)を描いた「ドットボール」もよく利用されている。手球をポケットに入れてしまうとスクラッチの反則が適用される。 その他、狙った位置を撞くことができているかをチェックできるようにある面から見て同心円を描いてある「プラクティスボール」など練習用の手球が数種類ほど発売されている。ただし、実際の競技で利用されることはない。 的球手球を転がして狙い当てようとするボールを的球、オブジェクト・ボール(object ball)と呼ぶ。的球は手球と区別しやすいように、手球とは異なる色に着色されている。白色の手球に対して様々な色に着色されていることからカラーボールと呼ぶこともある。ポケット競技で使われる的球には通常、表裏の対極となる2箇所に1から15までの番号が描かれているが、キャロム競技やスヌーカーで使用される的球には番号は描かれていない。 通常のプレイで的球をキューで撞いてはならないが、ナインボールなどで先行権を決めるための「バンキング」、またポケット競技の1つであるスクラッチ・ゲームにおいては的球を直接撞くこともありうる。ただし、的球をキューで撞くことは的球にチョーク汚れをつけることになるため、店によって禁じている場合が多い。上記ゲームをプレイする場合は店に一言断りを入れておくなどの注意が必要である。 キュー→詳細は「キュー_(ビリヤード)」を参照
補助器具など
チョークはティップと手球の摩擦係数を増加させるために使用される道具のことである。チョークをティップへ塗り付けないとティップが手球表面を滑りやすくなり、ショットミス(キューミスという)を起こしやすくなる。十九世紀初頭、イギリス・ロンドンのバートレーという人が経営するバス・ビリヤードの主任ジャック・カーは、ショットミスを防ぐためにキュー先にチョークの粉を付けることを考え出した。これによってティップの滑りを防ぐことができるようになった[2]。 一般にチョークの主成分は筆記用のチョークと同じ炭酸カルシウムであり、1辺2 - 3cm程度の立方体に固められた状態で販売されている。ビリヤードで使用するチョークには研磨剤も配合されており、これがティップの表面に食い込むような形で付着するようになっている。この研磨剤によりティップは少しずつではあるが摩耗していく。 (筆記用のチョークには研磨剤が配合されていないため、ビリヤード用のチョークの代用品として使用してもティップにはあまり付着しない) チョークを使用する際、指へチョークが付着しないように使用面を除いた5面が包装されており、使用面にはわずかに窪みがつけられているものが多い。青や緑、赤、ベージュなどに着色されているものが販売されているが、ラシャに付着してもあまり目立たない色を選んで使うことが推奨される。
ビリヤードのプレイビリヤードのゲームのほとんどは二人(それ以上のこともある)で行い、一方のプレイヤーがミスショットをすることによってプレイヤーが交代する。言い換えると相手が失敗しない限り自分がプレイすることはできないし、自分が失敗しない限り主導権を握り続けることができる。それはすなわちビリヤードとはいかにミスショットをしないゲームかということを表すともいえる(ここでいうミスショットとは、ファウルのほかに得点とならないショットを含む)。ナインボールで例えるならば、バンキングによって先攻を得た後、1番から9番までノーミスで突き切り、それを定められたセット数繰り返すことが一番確実な勝利方法といえる。 ミスショットをしないためには常に正確な狙い(エイミング)、ショットを毎回行う必要があるが、非常に強いプレッシャーのかかる場面においては普段どおりのショットができないことも多い。どのような局面であっても一定の精神状態を保ち続けることが安定したショットをする上で重要となることから、ビリヤードはメンタル・スポーツであるとされている。 またあるショットによって得点を上げたとしても、その次のショットを行うに当たってどの位置に手球を持っていくと自分にとって有利になるのかを考えておく必要があり、これをポジショニング・プレーと言う。 ポケット競技では的球をポケットし、手球を次の的球を狙いやすい位置に持っていくことを「ネキストを出す」と表現する。ネキストとは「next」(ネクスト)がなまったものと考えられており、「ネキ」と省略することも多い。ポジショニング・プレイを「ネキ出し」と言うこともある。ポケットすることを「入れ」、ポジショニングプレーを「出し」と言うこともある。 キャロム競技ではポケット競技と異なり、テーブルの上から的球が消えることはないため手球の止まる位置だけではなく、的球が止まる位置や、それぞれの球が走るコースなども考慮しなければならず、より高度なポジショニング・プレーが求められる。3つ球、4つ球競技において極力球の位置を動かさずに連続して得点を上げるセリー突きもポジショニング・プレーの一つといえる。 マナー各ゲーム共通のマナーとして以下のようなものがあげられる。
体格差についてビリヤードは非常に大きなテーブルを使用するため、どうしても手の届かないところに手球が行くことがある。身長の高い人間・手足の長い人間は小柄な人間・手足の短い人間よりもそういう場合は普段と同じフォームでプレイできる範囲が大きくなるため、若干有利になるといえる。また威力のあるブレイクや強い回転をかけるショットを求める場合は、ある程度の筋力と体重があったほうがのぞましいとされる。 しかしどれほど大柄な人間であっても手球と的球の位置によってはレスト(メカニカル・ブリッジ)を使わざるを得ない状況になるため[注 8]、大柄な人間が小柄な人間より圧倒的に有利であるとは言い切れない。また車椅子を使用するプレイヤーもいることから、プレイヤー自身の努力によって肉体の体格差をかなりのところまで跳ね返すことができると考えられる(これはプロのビリヤード選手をみても、体格などに統一性が見られないことからも推測できる)。 ビリヤードにおいては体格差よりも、正確なショット、プレッシャーに負けない精神力の方が重要といえる。
キャロム・ビリヤードキャロム・ビリヤード(俗にキャロム)はビリヤード競技のひとつ。手球を撞きワンショットで手球を2つ以上の異なる的球に当てるキャロム・ショット(英:キャノン・ショット)を行うことを競技の目的としている。キャロム・ショットが成立した場合は得点となり、競技者は続けて撞く事ができる。 キャロム・ゲームは白球2つと赤球1つ(競技によっては2つ)を用い、2人で行うものが多い。白球は競技者がそれぞれの球を自分の手球として保持し、他方の手球を的球として用いることができる。競技者が撞くことのできる手球はゲーム終了まで変更できない[注 9]。ふたつの手球は同色・同型で判別がつかなくなる場合もあるので一方の白球に黒い印を付けることもあった。この黒い印をつけた手球は俗に「黒球」と呼ばれた。日本ビリヤード協会が制定した統一ルールでは、一方の手球は黄色く着色されたものを利用することになっている[3]。 キャロム・ショットが成立するまでに必要な条件を設ける事で競技にはバリエーションがあり、それぞれの競技ごとに難易度が異なっている。公式競技には四つ玉、ボークライン(カードル)、スリークッション、バンドゲーム(ワンクッション)などがある。 キャロム・ビリヤードを行うテーブルはキャロム・テーブルと呼ばれ、球を落とすためのポケットはなく、四方が完全にクッションで囲われている。キャロム・テーブルには競技別にいくつかのサイズが存在する。
大台にはヒーターが内蔵されており常時保温されている。これはラシャを湿気から守りコンディションを一定に保つためである。ラシャは湿気が少なく乾燥しているほどボールが転がる距離が長くなるため、スリークッションなどで用いる重量のある手球を安定して長い距離走らせる必要が多い競技では外気に影響されないよう、ヒーターによる温度コントロールが必要となる。 ポケット・ビリヤードポケット・ビリヤード(pocket billiards)は種目ごとに定められたルールに従ってボールをポケットへ落としていく競技。ポケット・テーブルには四隅と両長辺中央の計6つのポケットが設けられており、ここへボールを落としていく。それぞれのポケットにはネットが張られているものがある。ボールが落ちるとこのネット内に溜まる(pool)ことからプール・ビリヤード(pool billiards)(俗にプール)とも呼ばれる。 アメリカでは「ビリヤード」と言えばキャロム・ビリヤードを指すことが多いため、ポケット・ビリヤードについてはプール[注 10]という呼び方がされることがある。日本においてはこのようなネットが張られたポケットはあまり見かけられず、ポケットへ落ちたボールがレール下に備え付けられたドレーンを伝って自動的に一箇所に集められるボール・リターン構造になっているものを見かけることができる。 ポケットの形状は種目や国によって異なることがあり、ロシアン・ピラミッドで利用されるテーブルのポケットは逆ハの字、中国のポケットテーブルはスヌーカーのようにカーブ状になっているものが存在[4]している。また、2008年現在においてプロトーナメントで利用されるテーブルは9フィートが公式サイズ[注 11]となっている。 公式競技にはナインボール、エイトボール、ローテーション・ゲーム、ストレートプール(14-1、フォーティーン・ワン)、ワンポケット・ゲームなどがある。ほか、日本人が考案した種目に、ボウリングの採点方式を取り入れたボウラード、サッカーのコンセプトを融合させたFUJIYAMAがある。ボウラードは日本プロポケットビリヤード連盟のプロ認定試験において実技種目として採用されている。FUJIYAMAは1998年頃に開発され歴史が短いものの、世界のトッププレイヤーであるエフレン・レイズがオープン戦に参加した。 ブレイクショット→詳細は「ブレイクショット」を参照
スヌーカーも含め、ポケットビリヤードではセットの開始時に、複数の的球が決まった形に固めてセットされる。そのままでは的球をポケットすることが困難なため最初のショットはこれを崩す(散らす)ために行われる。これをブレイクショットと呼ぶ。1つの手球で複数の的球を散らす必要があるため、通常のショットよりも非常に大きなエネルギーを手球に与える必要があり、そのためキューやキュー先(ティップ、フェラル)へ大きな力が加わる。そのためティップの劣化が進むためにタッチが変わることを嫌い、ブレイクショットには専用のキュー(ブレイク・キュー)を用いるプレイヤーが多い。ブレイク・キューを個人で所有していないプレイヤーのなかには、ハウスキューで代用する人も多い。また場合によってはティップやシャフトを破損することもある。
ジャンプ・ショットジャンプ・ショットとは手球が的球を飛び越えるように放つショットのことである。14-1やワンポケット、スヌーカー競技においてはジャンプショットは禁止されている。 ジャンプ・ショットはキューをやや上方より突き下ろすことで手球をラシャに叩きつけるようにショットし、手球の反発力を利用してジャンプさせる。キューを上から突き下ろすという独特のフォームを取るため、通常よりも若干短いキュー(ジャンプキュー)を使用することが多い。 かつてはそのフォームから、キューのシャフトをバットから取り外し、シャフトだけでジャンプショットを放つプレイヤーが多かった。しかしBilliard Congress of Americaによってキューの長さは最低40インチ(約101センチ)以上と定められ、シャフト単体ではこの長さに足りないため、シャフトに通常のバットよりも短いバットを付け加えたものが、ジャンプキューの始まりと言われている。 各キュー・メーカーよりさまざまなタイプのジャンプキューが発売されており、バットよりもシャフトの方が短いもの、バットの方が短いもの、非分割タイプのもの(ワン・ピース・キュー)、ブレイクキューと兼用のもの(バット部分がさらに分割できる)などがある。 なお、ビギナーが手球の下端を強く突くことで故意にキューミスさせ、手球をジャンプさせるシーンを見かけるが、故意のキューミスによるジャンプはルール上ファウルであることに注意されたい。
またジャンプさせた手球を狙った的球の上部に当て、その的球をさらにジャンプさせる高等テクニックもある(的球ジャンプ)。 ジャンプキューの使用はナインボールやエイトボールの一部のルールでしか認められていない。例として、WPA主催の世界ナインボール選手権および世界エイトボール選手権では使用可能だが、USオープンやIPT、APA・JPA等ジャンプキューが使用できない大会もある。USオープンとAPAでは、レギュレーションを満たすキューによるジャンプショットをすることはルール上問題ない。 アール・ストリックランド等一部のプレーヤーは、高度な技術を必要とするためプレーの妙味であったセーフティの応酬が、誰でも簡単にジャンプショットを可能にするジャンプキューの出現によりつまらなくなってしまったとしてジャンプキューに批判的な立場をとっている。 アーティスティック・ビリヤードアーティスティック・ビリヤードはビリヤード競技のひとつ。俗に曲球、トリックショットとも呼ばれる。ポケット・テーブル(ここではスヌーカー・テーブルも含む)で行われるものと、キャロム・テーブルで行われるものがある。JPBFではアーティスティック・ビリヤード選手権を開催している。 ポケット・テーブルで行われるものは複数の的球を定位置に置き、ワンショットで全ての的球をポケット・インさせるというものが多く、的球を決まった位置に置くことからセットボールと呼ばれる。日本ではこの分野においては木村義一プロなどが有名である。 日本ではTV番組「新春かくし芸大会」において堺正章(2004年)、恵俊彰(2007年)などがプロより技術指導を受けて挑戦したこともある。 キャロム・テーブルで行われるものは決まった位置に2個の的球と1個の手球を置き、マッセや「切り押し」「切り引き」と呼ばれる、他の競技よりも手球に鋭い回転を賭けるショットを多く用いて全ての的球に手球を当てることを目的とする。配置によって難易度が変わり、その難易度によって5-10点の得点が与えられる。日本ビリヤード協会(NBA)のキャロムビリヤード競技規定によると、一つの配置を規定条件と呼び、複数の規定で得た合計得点によって勝敗が判定される。一つの規定においてプレイヤーは3回の連続した試技が許され、一度成功するとその規定の得点が与えられる。[5][6] 世界のビリヤードアメリカ日本と違い、アメリカ英語では billiards と言った場合キャロムを指すことがあり、ポケットのあるゲームは pool、pocket billiard などと呼んで区別する場合があるので注意が必要である。 日本ではあまり見かけないが、アメリカではバー等に設置されたコイン式の有料ビリヤード台を良く見かける。この台はコインを入れると手球を含む16個のボールが貸し出されるようになっており、このような台ではもっぱらエイトボールが、ゲームに負けた方が次のゲームのゲーム代を置いて次のプレーヤーと交代し勝者が続けてプレーするというスタイルで気軽な娯楽として楽しまれている。 しかし、ゲーム中に手玉がポケットされてしまうとゲームが続行できないため、この様な台では的球と違うサイズの手玉を用いる事により機構上対応されている。とはいえ、手球以外の玉は一度ポケットされる次にコインを入れるまで出すことができない。エイトボールのルール上8番ボールをミスポケットすると即負けとなるのは、このコインテーブルの機構に由来する。 (近年のナインボール・ルールで理由を問わず的球を台上に戻さないようになったのは、主にアメリカにおけるテレビ放送の都合によるスピードアップを目的としてのものであり、上記コインテーブルの仕組が原因ではない) フィリピンフィリピンではビリヤードは「貧者のゲーム」と言われており、安い料金でプレイできる。料金は1ゲームごとに精算する店舗が多く、ナインボールが7ペソ/ゲーム、エイトボールが10ペソ/ゲームとなっている。そのため、ゲームがすぐに終わってしまい結果として割高な料金を支払うことになるナインボールよりも1ゲームのプレイ時間が長いエイトボールが好んで遊ばれている。近年は時間ごとにゲーム代を支払う場所が増えた。 また国内で広く一般的に浸透しているため、ゴーゴーバーでは水着の女性とビリヤードが遊べるサービス産業が存在したり、スラムでは線路を不法占拠してビリヤードに興じるなどの問題が起きている。 日本での試合形式の概要ここでは日本における試合形式について言及する。 キャロム・ビリヤード
ポケット・ビリヤード一般にはシュートアウトなしのテキサスエクスプレスのナインボールが最も多くプレイされているが、レベルに応じてプレイヤー同士でルールを取り決めてゲームを行うのが普通である。日本の住宅事情から、自宅にはテーブルを持たず、ビリヤード専門店に通うのが愛好者の間で一般的である。店ごとに決められた時間あたりの料金を支払ってプレーする。客のほぼ全員が現金を賭ける麻雀ほどではないが、ギャンブルを行う者がいる。ただ、近年、ギャンブル禁止を謳う店舗も散見され、純粋なスポーツあるいは競技として取り扱われる傾向は増えつつある。
日本におけるクラス(級)とハンディキャップアマチュア・プレイヤーの技量は「クラス」(「級」とも言われる)に分けられる。 キャロム・ビリヤード各個人が「持ち点」と呼ばれる点数を持ち、その持ち点によってハンデが決定する。 ポケット・ビリヤードアマチュアプレイヤーはビギナー、C、B、A、SAなどのクラスに分類される。これらの分類の中で唯一SA級だけが「アマチュア全国大会の優勝者」と定められている[7]が、他のクラスに関しては明確な基準は定められておらず、クラスはプレイヤーからの自己申告に基づく。そのため、参加者の実際の技量を絶対的に示す基準になりえておらず、「異なる技量の参加者が拮抗したゲームを行う」という本来の機能を果たしていないと指摘する意見[要出典]もある。 一度クラスを申告してしまうと、以降は下位のクラスとしては試合などへ出場することは認められないことが多いため、明らかに上のクラスの実力があっても下のクラスから昇格しようとしない人間もいる。例えば、ある店舗で開催される月例会(マンスリーハウストーナメント)において、一度A級として出場した場合、翌月以降もA級での出場が義務付けられるという意味である。なお、それ以外の試合(他店での試合)へ出場する場合はこの限りではないが、クラスを偽ることになるため推奨されない。 店舗によっては女性クラスを示すL級を設けることがあり、LA級、LB級、LC級と分類しており、ハンデを多く与えることがある。そのため、公平に見て女性よりも実力の劣る男性が、女性へハンデを振らなければならない状況が生まれることがある。例えば、ナインボールの試合であれば、男性A級プレイヤーが6セット先取であるのに対し、LA級は男性のB級と同じハンデの4セット先取というハンデが与えられる(体力・体格・腕力面よりもプレイ人口比率面からの優遇と考えられる[要出典])。 またプロがアマチュアのハウストーナメントなどにゲストとして参加する場合、Pクラスが設けられることがある。 ビリヤードのプレイは数値に表せるものではないため、万人に通用する明確な基準を作成するのは非常に困難である。また、クラスをあまり細かく分けすぎるとハンデの振り方が煩雑になり、大雑把過ぎると異なった実力の2人が同クラスとなり不公平感が生まれるなど、調整が非常に困難な部分である。 競技ごとのハンデの振り方競技によってさまざまなハンデの振り方がある。以下に一例を挙げる。
玉突きというたとえ表現「玉突き」という言葉は、自動車が次々と連なって衝突事故を起こすさまにも使われ、「玉突き衝突」「玉突き事故」と表現される[8]。 ビリヤードを題材とした作品映画
漫画→「スポーツ漫画 § ビリヤード漫画」も参照
小説
ゲーム
記念切手
脚注注釈
出典参考文献
関連項目
外部リンク |