ハウサ語
ハウサ語(ハウサご)は、ハウサ人の言語。主にナイジェリア北部からニジェール南部にかけて用いられる。さらにナイジェリア各地や周辺諸国の共通語として2,000万人以上の話者を抱える。アフロ・アジア語族のチャド諸語に属する。 音韻子音
/c ɟ cʼ k ɡ kʼ kʷ ɡʷ kʷʼ/の9つの子音は/a/(長短を問わない)の前にのみ現れる(例:/cʼaːɽa/(草), /kʼaːɽaː/ (増やす)、/kʷʼaːɽaː/ (シアーバターノキの実))。前舌母音の前には硬口蓋音と唇音化した軟口蓋音のみが現れる(例:/ciːʃiː/ (嫉妬)、/kʷiːɓiː/ (体の側面))円唇母音の前には唇音化した軟口蓋音のみが現れる(例:/kʷoːɽaː/(白癬)) [1][2]。 母音
短母音/i, u/は長母音と比べると中舌寄りになり、[ɨ ~ ʉ]に中和されることもある。[3] 短母音/e, o/は/a/によって中和される。[4] 短母音/a/は長母音/aː/に近いことも、シュワー/ə/に近いことも、その間の[ɐ ~ ɜ]程度のこともある。[4] 声調ハウサ語は声調言語であり、 五つの母音 a, e, i, o, u それぞれに低位トーン、高位トーン、下降曲線トーンがある。 トーンを表すためにアクセント記号が使われている。 これらの声調は相対的なものであり、全体的には声調の変化に伴い徐々に全体的な音高が低くなっていくダウンドリフトが見られる。ただし疑問文の場合、疑問詞を用いない諾否疑問文では文末の高位トーンあるいは下降トーンのみ一時的にイントネーションを上げてから急激に下げる。また疑問詞疑問文では全体的に高めの音高が保たれ、文末のみ音高が下がる[5]。 表記ラテン文字系現代のハウサ語にはボーコー (boko) と呼ばれる表記法があり、これが公式な正書法とされている。 イギリス植民地統治により1930年代に導入され、ラテン文字を基にしている。
これらの文字のうち ƴ はニジェールでしか使わない(ナイジェリアでは ʼy と書く)。 声調、母音の長短、および /r/ と /ɽ/ の区別(全話者が区別するわけではない)は、表記には表れない。そのため、例えば /daɡa/ (…から)と /daːɡaː/ (戦い)はどちらも daga と綴る。 アラビア文字系ハウサ語でアジャミ (ajami) と呼ばれるアラビア文字系の表記法もある。17世紀初頭より使われてきたが、標準が定まっておらず、音価と文字との対応は人により揺れがある。 下表では、母音はアラビア文字の t との組み合わせで例示している。
その他ハウサ語の表記法にはこれまでに提唱されたもの、あるいは「発見」されたと称するものなどが上記以外に少なくとも三通りあるが、いずれも広く普及するには至っていない模様である。
典拠・脚注
参考文献
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