Share to: share facebook share twitter share wa share telegram print page

 

入破音

調音方法
気流の妨害度
阻害音
破裂音
破擦音
摩擦音
共鳴音
ふるえ音
はじき音
接近音
気流の通路
中線音
側面音
口蓋帆の状態
口音
鼻音
気流機構
肺臓気流
吸気音
呼気音
非肺臓気流
放出音
入破音
吸着音
調音部位

入破音(にゅうはおん、: implosive)は子音のタイプのひとつで、発声可能な状態の喉頭の押し下げによる気流始動と声帯の振動、および閉鎖の開放と空気の流入によって特徴づけられる、有声声門気流吸気閉鎖音である(キャットフォード 2006:62f)。放出音吸着音と並んで、からの呼気を用いない非肺気流機構の子音である。

調音過程

喉頭より上部の調音点で閉鎖を作り、声門は声帯が振動可能な状態にする。喉頭を急激に押し下げると口腔内の気圧が低下し、声門の下の空気が上向きに流れ出て声帯を振動させる。同時に外との気圧差がある状態で調音点の閉鎖が開放され、外から弱い内向きの気流が作り出される。

特徴

入破音の場合は、口腔内に完全な閉鎖を形成しておく必要があるので、摩擦音的な調音は行いにくい。

なお、入破音(implosive)は内破音(ないはおん、implosive)と英語の呼称は同じであるが、内破音は肺臓気流音の一種の無開放閉鎖音(unreleased stop)を指し、この両者はまったく異なる音であり、無関係である。

言語

入破音はシンド語、アフリカのナイル・サハラ語族ニジェール・コンゴ語族の諸言語、アメリカの諸言語など、多くの言語で音素として破裂音と対立をなす。一方、ベトナム語チワン語海南語広西チワン族自治区広東語などでは、無気両唇破裂音[p]や無気歯茎破裂音[t]に代わって、それぞれ両唇入破音[ɓ]歯茎入破音[ɗ]が使われる場合があるが、異音であって、意味の区別には用いられない。

無声の入破音を発音するのは難しくないが、空気力学的な理由から通常有声音である[1]。西アフリカのセレール語のように無声入破音を持つ言語も見られる。このため、1989年に無声の入破音のための国際音声記号(ƈ ƙ ƥ ʠ ƭ)が定義されたが、1993年に廃止された[1]

国際音声記号

国際音声記号では以下の音が区別される。

現行(2005年版)の国際音声記号には存在しないが、以下の記号が使われることがある[2]

脚注

  1. ^ a b プラム・ラデュサー(2003) pp.32,100,152,158,177-178
  2. ^ プラム・ラデュサー (2003) p.40

参考文献

  • J.C.キャットフォード (2006)『実践音声学入門』竹林滋・設楽優子・内田洋子(訳)大修館書店。
  • ジェフリー・K・プラム、ウィリアム・A・ラデュサー 著、土田滋福井玲中川裕 訳『世界音声記号辞典』三省堂、2003年。ISBN 4385107564 
子音
肺臓気流
両唇 唇歯 歯茎 後部歯茎 そり舌 硬口蓋 軟口蓋 口蓋垂 咽頭 声門
破裂 p b () () () () t d ʈ ɖ c ɟ k ɡ q ɢ ( ʡˤ) ʔ
() m (ɱ̊) ɱ (n̪̊) () () n ɳ ɲ ŋ ɴ
ふるえ (ʙ̥) ʙ () r ʀ
はじき (ⱱ̟) ɾ ɽ (ɟ̆) (ɢ̆) (ʡ̆)
摩擦 ɸ β f v θ ð s z ʃ ʒ ʂ ʐ ç ʝ x ɣ χ ʁ ħ ʕ h ɦ
側面摩擦 ɬ ɮ
接近 (β̞) (ʋ̥) ʋ (ɹ̥) ɹ ɻ j ɰ
側面接近 () l ɭ ʎ ʟ
非肺臓気流
吸着 ʘ ǀ ǃ 𝼊 ǂ ǁ (ʞ)
入破 ɓ ɗ̪ ɗ () ʄ ɠ ʛ
放出 (t̪ʼ) ʈʼ c’ ()
その他
同時調音 ʍ w ɥ ɕ ʑ ɧ
(k͡p) (ɡ͡b) (ŋ͡m)
喉頭蓋音 ʜ ʢ ʡ
舌唇音 () () () (θ̼) (ð̼)
その他側面音 ɺ (ɭ̆) (ɫ)
破擦音 p͡ɸ b͡β p̪͡f b̪͡v t͡θ d͡ð t͡s d͡z t͡ʃ d͡ʒ ʈ͡ʂ ɖ͡ʐ t͡ɕ d͡ʑ c͡ç ɟ͡ʝ k͡x ɡ͡ɣ q͡χ ɢ͡ʁ t͡ɬ d͡ɮ ʔ͡h
記号が二つ並んでいるものは、左が無声音、右が有声音。網掛けは調音が不可能と考えられる部分。
丸括弧内はIPA子音表(2005年改訂版)に記載されていないもの。
国際音声記号 - 子音

関連項目

Kembali kehalaman sebelumnya