神の国 (アウグスティヌス)『神の国』(かみのくに、ラテン語:De Civitate Dei contra Paganos 異教に対する神の国)は、5世紀初頭に書かれたアウグスティヌス後期の主要著作である。 世界の創造以来の歴史を、地の国とそれに覆われ隠されている神の国の二つの歴史として叙述する。全22巻より成り、前半10巻で地の国を、後半12巻で神の国を論ずる。アウグスティヌスは410年のゴート族によるローマ陥落を機に噴出したキリスト教への非難に、この著作によって応えた。 構成全22巻から成り、第1巻から第10巻までの第1部と、第11巻から第22巻までの第2部に大別される。
内容第1巻-第5巻
マルセリヌスの求めに応じ、神の国を創立者である真の神を誹謗する異教徒たちに対して弁護すると述べる。神の国の最高の法は、「神はおごるものに抗い、へりくだる者に恩寵を給う」ところにある。偶像教は道徳を支持するどころか、背徳汚行を宗教的行事において是認推奨している。また、異教徒によるクリスチャンへの迫害、クリスチャン婦女への暴行について考察する。[1][2]
ローマの歴史を考察し、キリスト教の広まる前、偶像教の神々が崇拝されていた時、ローマに多くの災害があったと指摘する。その災害の第一は、道徳的堕落である。これらの神々は、いまだかつてローマ人に道徳を与えなかったばかりでなく、淫猥な祭典すら要求した。アウグスティヌスは彼らの女神の祭礼について描写し、このような醜悪な祭典を好む神々は、不浄の汚鬼に違いないと断言する。アウグスティヌスの訴えは、異教を捨てて、キリスト教に回心しなければならない。神々は悪霊だというものである。[3][4]
ローマの歴史。異教崇拝の時期にも、戦争や災害は多かった。
ローマの発展は真の意味においては、神々ではなく、唯一真の神の御旨によると述べる。ユダヤ人が世界に散らされたのは、これによって、虚偽の神々の偶像、祭壇神殿等が、毀たれるためである。[5]
アウグスティヌスは偉大なローマの魂を、キリスト教の信仰のために死をも辞さなかった殉教者の群れのうちに発見する。 [6][7] 第6巻-第10巻
異教の神々への崇拝は、現世にも来世にも役にたたない。
ユピテルなどの異教神からは、永遠の命は与えられない。
ギリシア哲学史。最高善は神であるとしたプラトン神学の優秀さと限界。
ダイモーンは神と人を仲介できるか。キリストのみが仲介できる。
礼拝の意味。真の救いはキリストによる。それ以外の犠牲は必要ない。 第11巻-第14巻
世界の創造時の、神の国と、堕天使による地の国の起源。
悪はどこから来たか。悪は意志から起こる。神は人を創造し、人の罪と救済を予見した。
アダムの原罪の問題。人間の罪と、その刑罰として人間に与えられる死について。[8]
地の国は自己への愛から、神の国は神への愛から生まれた。 第15巻-第18巻
弟を殺したカインから地の国が始まった。ノアの方舟は神の国の象徴。
アブラハムの子孫に神の国は保存された。ダビデの即位まで。
異邦の歴史。預言者たち。キリスト教会の誕生と迫害。地上で神の国と地の国がせめぎあう。 第19巻-第22巻
最高善は永遠の生命と平和である。神の国にはそれが来る。地の国には第二の死が来る。
最後の審判が来る。黙示録を解説。新たなエルサレムが天から下る。
悪魔の国の終焉、すなわち永遠の刑罰について。[9]
聖徒に対する永遠の祝福と他の者にたいする永遠の刑罰の約束について。天において聖徒は罪を犯すことのできない自由意志を受ける。祝福された者は自分自身について知るとともに、滅ぼされた者たちの永遠の苦しみを知る。[10] 脚注書誌情報
参考文献関連文献
外部リンク
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