急性アルコール中毒
急性アルコール中毒(きゅうせいアルコールちゅうどく、英: acute alcohol intoxication)は、短時間に多量のエタノール(アルコール)を摂取することによって生じる中毒(オーバードーズ)である。 急性アルコール中毒になると、意識レベルが低下し、嘔吐、呼吸状態が悪化するなど危険な状態に陥る。血中アルコール濃度の上昇に伴う呼吸・循環中枢の抑制、あるいは吐物による窒息で死亡する場合もある。また、足元のふらつきなどによって転倒する、電車や車に轢かれる、水場で溺れる、朦朧状態での言動によってトラブルに巻き込まれるなどの危険性も高まる[1]。 かつての医学用語ではアルコール依存症のことを、「慢性アルコール中毒」と表現されることもあるが、本状態とは異なる[2]。継続的なアルコールの使用による影響については、アルコール飲料の項を参照。 なお純度99%エタノールのLDLo(最少致死量)は、ヒトで1,400mg/kgに設定されている[3]。 血中アルコール濃度と症状急性アルコール中毒は、「アルコール飲料の摂取により生体が精神的・身体的影響を受け、主として一過性に意識障害を生じるものであり、通常は酩酊と称されるものである」と定義される[1]。 アルコールは大脳を麻痺させる性質を持っている。アルコールを摂取すると、麻痺は大脳辺縁部から、呼吸や心臓の働きを制御する脳幹部にまで進み、最終的には生命維持にかかわる脳の中枢神経までもを麻痺させてしまい、呼吸機能や心拍機能を停止させて死に至る。
血中アルコール濃度が0.4%を超えた場合、1〜2時間で約半数が死亡する。急性アルコール中毒患者の45%は20代の若者で、2⁄3が男性、1⁄3が女性である。 上述のように急性アルコール中毒は、エタノールによる脳の麻痺が原因であり、その症状は摂取したエタノールの量と血中のエタノール濃度に比例する。 急性アルコール中毒の発生は、この「お酒に強い体質」と「お酒に弱い体質」とは関係がない。あくまでも血中のアルコール濃度、つまり飲んだアルコールの量に比例し、誰でもが陥る急性中毒である。なお一般的に、エタノールの体内での代謝過程で生成されるアセトアルデヒドのフラッシング反応(アセトアルデヒド脱水素酵素による代謝能力の差からくる)の有無を指し「お酒に強い体質」と「お酒に弱い体質」と定義する場合がある。 通常、飲酒すると「ほろ酔い期」「酩酊期」「泥酔期」「昏睡期」という順で、徐々に血中アルコール濃度が上がるので、本人も酔ってきたという自覚がある。また、飲みすぎると足元がふらつく、吐き気がするなどの症状も出るので、自分自身である程度は飲酒量をコントロールできる。しかし、飲酒開始から血中アルコール濃度の上昇までには時間差があるため、短時間で大量の酒を飲むと、酔っているという自覚なしに危険な量のアルコールを摂取してしまうことがある。この場合、「ほろ酔い期」「酩酊期」を飛び越えて一気に「泥酔期」や「昏睡期」に到達してしまう。 どの程度からが急性アルコール中毒となるのか明確な基準はないものの、泥酔以上の状態では意識レベルが低下し、嘔吐・血圧低下・呼吸数の低下などが起こり、生命に危険をおよぼす可能性がある[1]。 飲み始めてから1時間以内に泥酔状態になった場合、および酒量として、1時間に日本酒で1升(1800ml)、焼酎で1080ml、ビールで10本(5000ml)、ウイスキーでボトル1本(750ml)飲んだ場合は、急性アルコール中毒が強く疑われる[注釈 1]。放置すると死亡するため、こういった飲み方は絶対しないこと。 予防
適量の判断
管理エタノールの急性中毒に解毒薬はない。したがって、病院では対症療法として強制利尿(輸液と利尿)を施して、エタノールを体外に排出させることを目的とした治療法が行われていることが多い。しかし、輸液によって、エタノールの対外排出が早まることはないし、急性アルコール中毒からの回復が早まることもない[注釈 2][4]。 日本中毒学会の公式ウェブサイトにも、急性アルコール中毒での強制利尿の安全性と有効性が確立されていないことが記載されている[注釈 3][5]。 応急処置時間の経過以外、病院内外での効果的な対処法はほとんどないため、頭と体を横にする回復体位をとらせ目を離さず様子をみることが第一である[6][7]。その際、呼吸の確保と体温の維持が留意点である。吐瀉物で窒息する危険があるので“応急処置の目的”で嘔吐させてはならない。
法律
急性アルコール中毒が発生した状況において、刑事責任の追及と損害賠償の請求がされる場合がある。例を次に掲げる
→他にも飲酒に関する法令についてはアルコール飲料の項を参照
脚注注釈
出典
関連項目 |