座頭市 (2003年の映画)
『座頭市』(ざとういち)は、2003年に製作された北野武監督、ビートたけし主演の日本映画。 北野武初の時代劇であり、盲目というハンデキャップを背負った謎の侠客「市(いち)」の活躍を描いた作品。勝新太郎の代表作である時代劇『座頭市シリーズ』を題材にしたが、「盲目でありながら居合抜きの達人」という座頭を主役にしている設定以外、子母澤寛が執筆した原作や前述のシリーズとは全く趣きが異なる[2]。いわゆるリブート(再始動)作品である。 日本国内の観客動員数は200万人で、北野映画最大のヒット作となった。本作は日本国外でも上映され、複数の賞を受賞した。 公開時のキャッチコピーは「最強。」 物語盲目の剣客である市が、とある宿場町にやって来た。その町はやくざの銀蔵一家に支配され、人々は苦しい生活を強いられていた。偶然知り合ったおうめの家に厄介になることになった市は、賭場にておうめの甥である遊び人の新吉と出会う。博打に勝った二人は、金を狙った芸者の姉妹(弟)に襲われそうになる。二人はある商家の子供だったが、幼少時に盗賊に両親を殺害され、その親の仇を探して旅をしていると打ち明ける。一方、脱藩して職を失った浪人・源之助夫妻もまたこの町に流れ着き、彼は剣術の腕を買われて銀蔵一家の用心棒を務めることになる。町の飯屋で市と源之助は出会い、互いに相手の剣術の凄さを見抜くのだった。 ある日、市は賭場の博打のイカサマを見抜いたことから、やくざと大殺陣を演じてしまう。やがて姉妹の親の仇が銀蔵と扇屋の主人だと判明し、姉妹は復讐を遂げるために銀蔵の家に乗り込む。 出演者
スタッフ
製作浅草ロック座の会長である斎藤智恵子は、勝が昔から金銭的に世話になった存在であり、勝の債権者の一人でもあった。座頭市の映像化権は他社に譲渡されていたが買い戻し、昔からの付き合いであるビートたけしにオファーをかけた[3]。 準備段階でたけしは勝の座頭市をTV・映画を全て観た上で全く新しいイメージで創りあげ、「『キル・ビル(Vol.1)』も『ラスト サムライ』も全くの偽物。本作こそ正真正銘の本物」と自負した。それでも「勝さんは超えられない」と謙遜していた。一方で、「時代劇ってのは近代の産物というか、フィクションじゃない。だから古きよき時代をお手本にすると、出発点で間違えることになる」と述べ、製作当初から近代の時代劇にないものを盛り込むという強い意気込みをもって製作にあたっていた[2]。 市の正体市は身元も年齢も全く不明である。冒頭で「市」という名で呼ばれ、やくざの親玉のみが中盤で「座頭市」というあだ名を口にしたぐらいである。後は「按摩さん」としか呼ばれていなかった事から、知る人が限られた謎の存在であることがわかる。勝新版と異なり金髪をしている。最後の場面で、実は碧眼をしており、その混血らしき様相を目を閉じて隠していたとわかる(当人曰く「目が見えないほうが都合がよい時もある」)。ただし、最後の場面では「見える」という言葉が一般的な視力の意味ではなく、物事の実態を把握する能力という基準で語られており、市の目が実際に見えているわけではないとする解釈もある[2]。 公開アクションシーンで流血描写などがグロテスクに表現されている箇所があるため、R-15に指定されての劇場公開となったが、地上波での放映時は、放送コードに抵触した一部のシーンやセリフをカットされ、WOWOWでは本作に手を加えることなくそのままR-15指定として放送されている。 R-15指定にもかかわらず、15歳未満でもDVDはレンタル可能である(VHSビデオは一般作品制限付き)。 評価従来の作品よりも娯楽的要素が強く、主演のたけしが金髪だったり、劇中で農民が田畑を耕す音や大工が作業をする音などにリズムをつけて独創的な音楽を演出し、祭りのシーンでは大人数が下駄を履いて、一斉にタップダンスを披露するなどミュージカル的なシーンがあった[2]。また、女性の方が男性よりも男らしく設定される、盲目の市が誰よりも正確に物事を把握する、おせいの性別や市の視覚のあいまいさといった、従来の時代劇の常識を覆す発想や仕掛けが多数盛り込まれていた[2]。 映画界においては、第60回ヴェネツィア国際映画祭で監督賞(銀獅子賞)を受賞したのをはじめ、国内外の各映画賞で高い評価を受けている[2](下記参照)。監督・主演を務めたビートたけしが2014年にテレビの特別番組[6]でルーヴル美術館を訪れジャン=リュック・マルティネズ館長と対面した際、館長が「私だけでなく子供たちも大ファン」と『座頭市』のDVDパッケージを見せて歓迎したエピソードがある[7]。 一方で、多くの時代劇で活躍してきた千葉真一と松方弘樹は、二人が出演した映画『新・影の軍団 第参章 〜地雷火〜』の初日舞台挨拶の後に行われた記者会見で本作について、千葉は「時代に媚びた時代劇は作るべきじゃない。妙な時代劇が定着してしまうのは恐ろしいこと」、松方は「外国の賞狙いを意図している。タップとか金髪とかね…。だからこそ我々は『それだけが時代劇じゃない』ってことを伝えていかなきゃ」とコメントし[8]、その様子は複数のワイドショー・メディア・マスコミに取り上げられた。 受賞
その他
脚注
外部リンク |