アメリ
『アメリ』(原題: Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulain, 「アメリ・プーランの素晴らしい運命」の意)は、2001年4月に公開されたフランス映画。 パリ・モンマルトルを舞台に、パリジャンの日常を描き、フランスで国民的大ヒットを記録した。キャッチコピーは「幸せになる」。 ストーリーや映像、美術に愛らしさがあふれる一方、ジャン=ピエール・ジュネ監督らしいブラック・ユーモアや奇妙な人間像、コミュニケーション不全の問題も描かれている。 あらすじ神経質な元教師の母親アマンディーヌと、冷淡な元軍医の父親ラファエルを持つアメリはあまり構ってもらえず、両親との身体接触は父親による彼女の心臓検査時だけだった。いつも父親に触れてもらうのを望んでいたが、あまりに稀なことなので、アメリは検査のたびに心臓が高揚するほどだった。 そんなアメリの心音を聞き、心臓に障害があると勘違いした父親は、学校に登校させずアメリの周りから子供たちを遠ざけてしまう。やがてアメリは母親を事故で亡くし、孤独の中で想像力の豊かな、しかし周囲と満足なコミュニケーションがとれない不器用な少女に育っていった。 そのまま成長して22歳となったアメリは実家を出てアパートに住み、モンマルトルにある元サーカス団員経営のカフェ「カフェ・デ・ドゥ・ムーラン」で働き始める。彼女はクレーム・ブリュレの表面をスプーンで割る、サン・マルタン運河で石を投げ水切りをする、この瞬間にパリで何人が「達した」か妄想するなど、ささやかな一人遊びと空想にふける毎日を送っていた。 ある日、自宅でダイアナ妃事故死のニュースを目にしたアメリは、驚いた拍子に持っていた化粧水瓶の蓋を落としてしまい、転がった先のバスルームのタイルの中から小さな箱を発見する。中に入っていた子供の宝物を持ち主に返そうとした彼女は、探偵の真似事をして前の住人を探し、ついに持ち主のブルトドーに辿り着く。箱を返して喜ばれたことで、初めて世界と調和が取れた気がしたアメリは、人を幸せにすることに喜びを見出すようになった。 そしてアメリは、実家にある庭の人形を父親に内緒で世界旅行させ、父親に旅の楽しさを思い出させたり、不倫相手と駆け落ちした夫を想い続ける女性マドレーヌには、夫の過去の手紙を捏造して幸せな気持ちにさせたり、時には意地悪な人間をこらしめるために家宅侵入もするなど、手段を選ばぬ小さなイタズラ(犯罪すれすれのものも含む)で、周囲の人々を幸せな気分にさせて楽しむ。しかしそれとは裏腹に、彼女に関心を持ってくれる人物は誰も現れなかった。 ところが彼女にも気になる男性が現れた。スピード写真のボックス下に捨てられた他人の証明写真を収集する趣味を持つニノである。他人を幸せにしてきたアメリだったが、気持ちをどう切り出してよいのかわからず、自分が幸せになる方法を見つけられない。 ニノの置き忘れた証明写真コレクションアルバムを手に入れた彼女は、これを返すことで彼に近づこうとする。しかし、ストレートに切り出す勇気のないアメリは、宝探しじみた謎のメッセージをニノに送る。ニノはアルバムを探してモンマルトルの丘を右往左往、アメリはアルバムを返した代わりに出会うチャンスを逃してしまった。 どうしてもニノの前に出ることができない彼女に、想像上の友人である部屋の置物たちや、アメリを見守ってきたアパートの同居人レイモンらが「思い切ってぶつかっても自分が砕けてしまうことはない」と背中を押す。一方、ニノはアルバムに入っていたメッセージの送り主の写真を頼りにアメリを探して回り、アメリのばら撒いたヒントを辿って、彼女のアパートにたどり着く。ストレートに他人と向き合うことのなかったアメリはついにドアを開け、ニノを迎え入れる。 父は、また新しい旅に踏み出した。周囲の人々の生活も少しずつ変化し、また一日が巡っていく。そんなパリの街並みの中を、アメリはニノのバイクの後席に乗り駆け抜けていくのだった。 配役
スタッフ
製作当初はアメリ役にエミリー・ワトソンを想定して脚本が書かれたが、彼女が妊娠によって降板したため、オドレイ・トトゥに役が回ってきた[3][4]。 アメリの実家はパリ市北部(伝統的に低所得者や移民の多い街)にあるという設定で、作中でも八百屋の小僧を演じるジャメル・ドゥブーズはモロッコ系であり、またアメリがパリ北駅で電車から降りたあと黒人に声をかけられるシーンが描かれている。 映画の中でアメリの部屋に飾ってある絵のほとんどが、ミヒャエル・ゾーヴァの作品である。また映画の色彩はブラジルの芸術家、ファレス・マチャドの絵画(緑、黄、赤の基調)にインスパイアされている。 オドレイ・トトゥは運河での水切りができなかったため、CG処理によって解決されている。 劇中のカフェ、ドゥ・ムーランとコリニヨンの八百屋は実在する。 アメリがTVで観ている白黒映像は往年の女優、サラ・ベルナールの葬儀の模様である。 ジュネ監督は当初、映画音楽をマイケル・ナイマンに依頼したが実現しなかった。代わりに多様な楽器を操り、映画の世界観によく合うヤン・ティルセンを知り、彼にオファーしたところ、既存曲のどれでも使って良いと許諾を得た。また、ヤンは「アメリのワルツ」という新曲を映画に提供した。 映画の大ヒットを受けて、モンマルトルの地価が高騰した。 ロケ地
公開日本ではシナリオ段階で購入をしたニューセレクト株式会社(アルバトロス・フィルム)が配給。 結果的に興行収入16億円を突破する同社で初めての大ヒット作品となり、それ以降、同社がアート作品を配給するきっかけとなった。 当時同社で買付を担当した叶井俊太郎によれば、当初は「『エイリアン4』の監督の次回作」として注目し、企画書の時点では「女ストーカーの話」のように読めたことから、ホラー・サスペンス寄りの作品と目論んで買い付けたところ、実際には全く違う方向性の作品であり、日本でのヒットは「本当に棚ぼた」だとしている[5]。 2023年9月、デジタルリマスター版を本作品の日本公開から22年目となる同年11月17日に劇場公開することを発表した[6]。 評価フランス映画の中で、『アメリ現象』と呼ばれる国際的なヒット、社会現象を記録した。アメリのような前髪を短く切ったおかっぱのヘアスタイルや、作中に出てくるクリームブリュレ、インテリア、赤い壁紙の部屋等、当時映画の世界観を真似る女子たちが急増した。 先述の通りパリの中でも移民の多い地区を舞台にしていながら、劇中には黒人やアラブ系の人々の登場がきわめて少ない。そのため、偏ったフランス社会の描写だという批判が左派系新聞として有名な『リベラシオン』誌に掲載された[7]。DVDの特典映像として、この批判に対する監督の回答が収録されている。 賞
ミュージカル映画を基にしたミュージカル (Amélie_(musical)) は、2015年9月11日から10月4日までアメリカ・カリフォルニア州のバークレー・レパートリー・シアターで上演された[8]。演出はパム・マッキノン、脚本はクレイグ・ルーカス、音楽はダン・メッセ、作詞はネイサン・タイセンが担当[8]。主演はサマンサ・バークスが務めた[8]。 2017年には、ブロードウェイにおいてフィリッパ・スーを主演として上演された[9][10]。演出はパム・マッキノン、脚本はクレイグ・ルーカス、音楽はダン・メッセ、作詞はダン・メッセとネイサン・タイセンが担当[9]。 日本版 (Japanese production) も2018年5月から6月にかけて東京と大阪で上演されることが決定し、演出は児玉明子、主演に渡辺麻友が起用されることが2018年1月に発表された[10]。渡辺は初のミュージカル作品出演となる[10]。 上演日程[11]
なお、ブロードウェイ版の役名を併記している。
主催および企画・制作[14]
脚注出典
関連項目外部リンク |