広島電鉄1000形電車 (2代)
広島電鉄1000形電車(ひろしまでんてつ1000がたでんしゃ)は、広島電鉄が2013年から運用を開始した路面電車である。 概要広島電鉄およびその前身会社で「1000形」を名乗る電車としては、1922年(大正11年)に導入された宮島線用高床車C形[5]を、1939年(昭和14年)に改番して誕生した[5]1000形に次ぐ2代目となる。 2013年2月14日に千田車庫で出発式を開催[6][7][8]し、翌15日から7号線(横川駅 - 広電本社前間)・8号線(横川駅 - 江波間)と、9号線の白島 - 江波間直通運用で運行開始している[3]。 2014年2月1日の2編成の増備に合わせて、5号線(広島駅 - 比治山下 - 広島港)でも運行開始[9][10][11]。さらにその後も増備されており[12]、2016年1月29日の1009号の投入時から3号線(広電西広島 - 広島港)での運用を開始した[13]ことにより、広電のすべての路線で超低床車両(1000形、5000形、5100形、5200形)が運行されることになった。 導入までの経緯2012年5月11日発表の『広島電鉄サービス向上計画』において、超低床車両の増備と運行路線の拡大が発表された[14]。2012年8月24日に広電の運賃値上げが報道されたときに、広電の車両124両のうち、48編成が製造から45年以上経過し、2027年までに40編成を超低床車両に置き換えたいとした[15][補足 1]。 2012年9月11日付け中国新聞は、これまで超低床車両を運行していなかった白島線と横川駅-江波間において、2013年1月から2月を目処に「短い編成の」超低床車両の運行を始めると報道した[18][19]。そのときに発表された、導入される車両の仕様は、現行の超低床形車両である5100形をベースに、編成長を5両編成30メートルから3両編成18.6メートルに短縮し前中扉に変更[18][19]。三菱重工業三原製作所・近畿車輛・東洋電機製造が製造[18][19]。1編成の値段は2億7000万円で、一部広島市と国の補助金の活用も検討し[18][19]、当時の計画では2027年時点で超低床車両を62編成にし、半数の編成を超低床車両にすることを目指すとしていると報道された[18][19]。また、2013年2月1日付けの日刊工業新聞も、納入する新車のうち半数近くの編成を18メートル級にしたいと報道した[20]。 2012年11月23日付け中国新聞では、白島線の運行を、これまで回送電車しか走行していなかった八丁堀交差点を通過し、本線および江波線に乗り入れ、白島-江波間を1日3往復から4往復直通運行するため、広島県警と調整していると報道[21][22]。同日開催された『電車開業100周年記念祭』で、越智秀信社長(当時)が新車両を公表した[21][22]。 2012年12月18日に、編成の車番および愛称がイタリア語で「小さい」を意味する『PICCOLO』(ピッコロ、1001号)、『PICCOLA』(ピッコラ、1002号)と決定し[23][24][25]、試運転中、1編成をアンデルセン(アンデルセングループ)とのコラボレーションラッピング塗装(アンデルセンの新商品の告知ラッピング)とすることが明らかにされた[25]。翌日の新聞で、2013年1月10日ごろから試運転を開始し、2月15日から営業運転に投入されることと、2013年度にも3編成程度導入することが報道された[23][24]。 1001号車は、2013年1月8日に三菱重工業三原製作所から搬入[26]。同月下旬には1002号車も搬入された[26]。納入後は、営業運転では使用予定がない、宮島線でも試運転が行われた[2]。 2013年2月6日に、形式名が1000形になることと運行路線および運行本数が正式発表された[27]。 導入後の動き2013年度は、3編成を導入[28]。2013年11月に、1003号以降が『GREEN MOVER LEX』(グリーンムーバー・レックス)になることが明らかになった[29]。愛称の『LEX』は『Light Excursion』[補足 2]から作られた造語[30]。同月、第13回ひろしまグッドデザイン賞の特別賞を受賞した[31][32]。 12月より試運転を開始[33]。2014年1月27日に、同年2月1日より1003号・1004号[9]。2014年2月14日に、2月17日より1005号が運行開始することを発表した[12]。2020年2月までに1018号までが導入されている。 2018年5月10日より、1000形限定でICカード利用者に限り通常は乗車専用となる中扉からも降車が可能となるICカード全扉降車サービスが開始された。 車体概要製造は、5100形同様に近畿車輛・三菱重工業・東洋電機製造が行い、広島電鉄と共同開発した[34][補足 3]。5100形に続くJTRAMシリーズの一つとしている文献もある[36]。 5100形をベースにしつつ、機能性・静粛性・メンテナンス性を向上を目的に、制御装置・補助電源装置・空調装置・車両情報装置を新設計している[1]。外観は5100形に近いデザインとなっている。なお、前照灯及び尾灯は修理交換の安易化のため、日野自動車がセレガ(兄弟車のいすゞ・ガーラを含む)やプロフィアなどで採用したヘッドライトと同型の物を装備している。定員86人(着席定員33人)で[34]、乗車口を中央部に[34]、降車口を運転席側前方に設置した[34]。 1001号・1002号の塗色は「広島電鉄電車開業100周年記念車両」との位置づけから、開業当時の初代100形をイメージした『アニバーサリー・レッド』と称する葡萄色系の塗色[補足 4]のオリジナル塗装となっていた[1]。1001号と1002号とでは若干色合いが異なっていた[34]。車体中央部に『100周年の祝杯』をイメージしたという杯をモチーフとしたアクセント塗装が施されていた[1]。2012年11月の導入発表時には車体色は白色で公開され[21][22]、さらに輸送時・試運転中はラッピング塗装されたことで本来の塗装が非公開だったため、この塗装は2月14日の出発式で初公開となった[6][7]。2020年までには全ての車両 (GREEN MOVER LEX) の塗装が、白地に前面・側面の窓周りが黒で、車体下部と運転台(前面窓の周囲)に緑の帯を入れたものとなっている[40] 車体は5100形の5車体3台車に対して、3車体2台車の連接構造となっており、台車は両端の先頭車にそれぞれ1台ずつある。中間車は台車がなく浮いた状態となっており、両端の先頭車との連接により支えられている[34]。本形式と従来車との大きな違いとして、車掌台が当車両には設置されていないことが挙げられ、連接車でありながらワンマン運転を主眼に置いた設計となっている[41]。このためワンマン運転を円滑に行えるよう、運転席にはモニターが設置され、車内をモニタリングできるようになっている[41]。シートは、5100形同様にもみじ柄が描かれたが、1001号・1002号については色調をブラウン系に変更[34]し、1003号以降は、濃緑色に変更されている。座席配置は、先頭車はクロスシート、中間車はロングシートにした[34]。 さらに当車両には、これも広電では初めてデジタルサイネージ機能を持つ液晶モニターが設置された。双方の運転台すぐ裏に設置され、乗客に到着電停案内や乗り換え案内、運賃の案内などを行う[34]。また1016号までの連接部の天井部分には電光表示装置が取り付けられている(5100形と同様)。環境への配慮もあり、車内灯はすべてLED化されている[1]。
各車状況
※AR色 =『アニバーサリーレッド』(広島電鉄100周年記念塗装)[1]。1001号と1002号とでは若干色合いが異なる[34]。 ラッピング塗装
脚注補足
出典
参考文献
外部リンク
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