少年犯罪各国の刑事手続日本→詳細は「少年保護手続」を参照
日本では、少年法2条1項に定義されている少年、すなわち20歳に満たない者(男女とも)が犯した、または犯したとされる犯罪に対して、少年犯罪という言葉を用いる。 14才以上で罪を犯した少年を犯罪少年、14才未満で罪を犯した少年は触法少年、性格や環境などから将来罪を犯す可能性が高い少年は虞犯少年(ぐはんしょうねん)と区別される[1]。 法務省が発行する犯罪白書では、殺人と強盗を「凶悪犯」としている。一方、「警察白書」では、殺人、強盗、放火、不同意性交等罪を「凶悪犯罪」としている。 少年法により、大人とは違った特別の措置が講ぜられる(2007年(平成19年)11月1日改正)。
家庭裁判所の審判の結果により、審判不開始、保護観察、児童養護施設、里親、児童自立支援施設、少年院、検察官送致から、最もふさわしい処分が選択される。特に凶悪な場合は、検察官送致が行われ検察官により起訴され、大人と同様に地方裁判所にて公開の刑事裁判として執り行われる。また、重い罪を犯したときに16才以上の場合は、原則として検察官送致が行われる[2]。 なお、少年院に送致可能な年齢の下限を設け、おおむね12歳以上とすることを盛り込んだ。11歳は「おおむね12歳以上」に含まれ少年院に送致される可能がある。 1997年以降、マスコミでは少年犯罪の凶悪化が報じられることが多くなった。また、犯罪被害者の心情を重視する論調が強まるようにもなっている。以上の背景から、現行の少年法は抑止力にならないのではないかという傾向の世論が強まり、司法の現場においてもそれを受ける形でいわゆる厳罰化の傾向にある。産経新聞の2006年12月30日記事によると、死刑判決が急増した理由としてある現役裁判官は「平成12年(2000年)の改正刑事訴訟法施行により、法廷で遺族の意見陳述が認められたことが大きいと思う。これまでも遺族感情に配慮しなかったわけではないが、やはり遺族の肉声での訴えは受ける印象がまったく違う。」とコメントしている[3]。 アメリカ合衆国アメリカ合衆国の少年事件に対する刑事手続は州ごとに異なる[4]。 少年裁判所が扱う事件の対象年齢は多くの州で18歳を上限としている[4]。重大犯罪については、少年裁判所の管轄から外して刑事裁判所の専属管轄とする州や少年裁判所から刑事裁判所への移送を定めている州もある[4]。 少年事件に対する処遇としては、保護観察、矯正施設送致、助言、違反金、社会奉仕活動などが定められる[4]。 イギリスイギリスでは少年裁判手続の対象年齢は10歳から17歳までである[4]。 少年裁判手続の管轄は青少年裁判所であるが、非公開手続と両親などの出頭の特則があるほかは手続の流れは成人とほぼ同様である[4]。 青少年裁判所の構成は3人以下の治安判事または1人の有給治安判事による[4]。 青少年裁判所の科刑範囲は犯罪が1個の場合は6か月以下、犯罪が2個以上の場合は合計12か月以下に限定されている[4]。青少年裁判所による有罪認定の後、一定の事件(15歳から17歳までの事件で6か月を超える拘禁刑に相当する罪)については量刑の審理のため刑事法院に移送でき、特定の重大犯罪等(拘禁刑14年以上の法定刑の犯罪)は量刑は刑事法院で審理される[4]。 少年裁判手続における処遇としては、無条件釈放、条件付釈放、罰金、社会内処遇、親の誓約及び施設収容処分などが定められている[4]。 フランスフランスでは被疑者が18歳未満であるときは、少年係判事、少年裁判所及び少年重罪院のいずれかの管轄となる[5]。 少年係判事は少年の軽罪、第5級違警罪の予審及び審判を管轄する[5]。少年係判事が単独で判決を行う場合には非公開とされ、教育的又は監護的措置のみ言い渡すことができ、保護施設等への収容を決定することはできない[5]。 少年裁判所は少年の軽罪、第5級違警罪、16歳未満の少年の重罪にあたる事件を管轄する[5]。少年係判事及び参審員2名の合議による[5]。13歳以上の少年に対しては刑事処分を選択できる[5]。 少年重罪院は16歳以上18歳未満の重罪にあたる事件を管轄する[5]。職業裁判官3名(うち少年係判事2名)及び陪審員9名の合議による[5]。 ドイツドイツでは少年裁判所法が制定されており、行為時を基準に14歳以上18歳未満の少年(Jugendlicher)と18歳以上21歳未満の年長少年(Heranwachsender)には少年裁判所法が適用される[5]。 少年に対する手続は非公開であり、処分としては教育措置や懲戒手続、少年刑が定められている[5]。 年長少年に対する手続は原則公開であるが、少年に対する手続や処分を広く適用できる[5]。 フィリピンフィリピンでは、2016年6月に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領が厳罰化を提案、刑事責任を問う年齢を15歳から9歳に引き下げる改正法案が提出された。 中華人民共和国中華人民共和国刑法によると,満16歳に満たない者であっても、殺人や傷害致死、強姦、放火、麻薬密売(販毒)等の一定の犯罪に関しては、満12歳以上であれば刑事責任を負う。なお、18歳未満の者に対しては、できるだけ罪を軽くするか、刑を減軽しなければならないとされる。 1999年,中華人民共和国少年犯罪の防止法が公布され、施行された。 ロシア連邦2001年には、少年裁判所の創設を目的としたパイロットプロジェクト「少年司法の実施の支援」[6]がロストフ地域で開始された。 2003年、ロストフ地方裁判所では、未成年者の破毀院を考慮した刑事事件の司法コレギウムに、少年事件の特別司法構成が形成された。[7] 2004年3月、ロシアで最初の少年裁判所がタガンログに開設されました。 本質的に、アイデアは別の建物にある未成年者のための特別裁判官の割り当てに限定されていました。 法廷の仕事の特徴は、法廷審問への参加への子供たちの積極的な関与でした。 2010年7月の初めに、ロシアの一般管轄裁判所における未成年者の事件に関する以下の10の専門司法委員会[8]: ロストフ州:タガンログ市裁判所(2004年)、シャクチンスキー市裁判所(2005年)、エゴルリク地方裁判所(2006年)、アゾフ市裁判所(2010年) イルクーツク地方:アンガルスク市裁判所(2006年) ハカシア共和国:アバカン市裁判所(2006年) カムチャツカ半島:ペトロパブロフスク-カムチャツカ市裁判所 リペツク地方:エレツキー地方裁判所(2008年) ブリャンスク地方:ブリャンスク市のヴォルダルスキー地方裁判所とベジツキー地方裁判所、ドゥブロフスキー地方裁判所。 2012年、記者へのインタビューで、連邦院のワレンチナ・マトビエンコ議長は、ロシアでの少年裁判所の創設に反対し、次のように述べた。
日本の現状→少年刑法犯の検挙人員の推移(総数)については「日本の犯罪と治安 § 20歳未満の刑法犯罪の検挙人数と検挙人員人口比および検挙人員に占める割合」を参照
→少年刑法犯の検挙人員の推移(暴力犯罪)については「日本の犯罪と治安 § 20歳未満の刑法犯罪の暴力犯罪の罪種別の検挙人員と検挙人員人口比」を参照
→少年刑法犯の検挙人員の推移(非暴力犯罪)については「日本の犯罪と治安 § 20歳未満の刑法犯罪の非暴力犯罪の罪種別の検挙人員と検挙人員人口比」を参照
窃盗・横領は1980年代まで増加し、その後減少している。実際の横領は、「ほぼ100%遺失物等横領であり、その大半は放置自転車の乗り逃げ」(平成9年版 犯罪白書、p.118[13])だという。 2022年で特殊詐欺で検挙される少年が446人おり、2014年(355人)と比べて、約1.26倍と増加している[9]。 2023年9月に警察庁発表の"令和4年中における少年の補導及び保護の概況"と2024年3月発表の"令和5年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況"によれば、刑法犯(交通事故、道路交通法除く)少年(14~19歳)人口比の数字が2010年~2021年の間は12年連続で減少しており、2021年の人口比は1,000人当たり2.2人であり、1949年以降最小であった。但し、2022年以降は、2019年コロナウイルス感染症対策の行動制限緩和により外出する人が増加し、人と出会う機会が増えたことから前年より増加して、2023年は2.9人となった[10][9]。 また、14歳未満と過失運転致死傷等(2002年以降は危険運転致死傷含む)を含んだ場合の人口比は2021年で1,000人当たり1.5人となり1946年以後最少となっている。但し、2022年は同じ1.5人であるものの2021年と比べ増加している。そして、戦前の1936年まで遡った場合1937年の1.4人が最少であり、2022年は1936年以後で統計でデータがない年を除いて6番目に低い値となる[10][14][12]。 1997年以降の過熱報道の影響1980年代のニューアカデミズムの勢いに乗っておたく批判や消費社会世代批判などの若者に批判的な言説が流行してきており、1990年代になると若者をダシにして社会を語る「俗流若者論」が流行、若者の異常性がことさら強調される風潮ができていた[15]。 そんな中、1997年に神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇聖斗事件)が発生する。これ以降の少年犯罪過熱報道の影響により、「少年犯罪は増えて凶悪化している」「現代の少年はキレやすく、ちょっとしたことに我慢ができず、重大事件を起こす」「欧米のようにVチップを導入しテレビ番組を規制すべき」などとして、少年犯罪の増加・凶悪化がマスコミ等において主張されたことがある[16][17][18]。しかし実際には「少年犯罪が増加、凶悪化しているとは一概に言えない」ことは碓井真史(新潟青陵大学教授)らから指摘されていた[19]。 『Q&A犯罪白書入門'98』(1998年、法務省法務総合研究所刑事政策研究会)においても、「長期間にわたっておおむね減少ないし横ばいの傾向が続いており、近年の数値も、ピーク時と比較すれば低い水準にあると言えます。」としている。また、「昭和30年代後半以降の増加は、交通関係業過によるところが大きい」という(平成9年版 犯罪白書、p. 113[13])。 また、「殺人等の凶悪な犯罪を犯した少年の予後(再犯率など)」は、「凶悪事犯で保護処分になった者の予後は、その他のものと比較して概して悪くないといえます」としている(前掲『Q&A犯罪白書入門'98』のQ52)。また、保護処分ではないが、凶悪犯罪を犯した少年院出院者の再犯率は窃盗及び粗暴犯罪を犯した少年院出院者より刑事処分を受けた者の割合は低く、実刑になった者の割合も顕著に低い。また、凶悪犯罪を犯した少年院出院者が再び凶悪犯罪を犯した者の割合は、約2.3%(87人中2人)であった[20]。 刑法犯検挙は、人数、比率ともに1998年時点で減少傾向で[21]、殺人、放火、強姦などが特に減少しているが、「1995年(平成7年)になって傷害致死や強盗傷人の非行が目立っている。」という[22]。 賠償の停滞少年犯罪被害当事者の会が2023年に公表したアンケート調査によれば、加害者側からの賠償が請求額の2割以下しかないとする回答が半数に達しており、少年院での更なる矯正教育や被害者支援の拡充などが求められている[23]。 有名な少年犯罪1940年代
1950年代
1960年代
1970年代
1980年代
1990年代
2000年代
2010年代
2020年代
少年犯罪者の個人情報日本では少年法第61条により、家庭裁判所の審判に付された少年または少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事または写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならないとされている。 →詳細は「実名報道 § 少年法61条と実名報道」、および「私刑 § インターネットにおける私刑」を参照
少年犯罪を扱った作品(漫画・映画・ドラマ・アニメ・etc)
上記以外にもその問題点から小説・映画・ドラマ・漫画を問わず、頻繁に題材にされている。 脚注
関連項目
関連文献
外部リンク |