光触媒効果について述べられた最初期の記述は1911年に遡る。ドイツの化学者アレクサンダー・アイブナー(ドイツ語: Alexander Eibner)博士が、酸化亜鉛 (ZnO) に照光すると濃青色の色素プロイセン・ブルー (Prussian blue) の漂白が起こる現象についての研究において、光触媒の概念を用いた[4][5]。同年にBruner and Kozakはウラニル塩の存在下で光を照射すると起こるシュウ酸の劣化について議論した論文を発表した[5][6]。1913年には、Landauは光触媒現象を説明する論文を発表した。この理論は光化学反応における光量子束を決定する基礎となる感光計測法の開発につながった。[5][7]。1921年には、Baly et. al は可視光線の下で水酸化鉄とコロイド状ウランを触媒とするホルムアルデヒドの生成についての論文を発表した[5][8]。1938年になって、Doodeve and Kitchenerが安定性が高く毒性のない酸化物TiO2が、酸素の存在下で染料を漂白するための光増感剤として働くことを発見した。これは、TiO2によって吸収された紫外線がその表面で活性酸素種の生成を導き、光酸化を通じて有機化学的なしみを生じる現象である。これは不均一系光触媒(反応物と触媒の相が異なる)の根源的な性質が観察された最初の事例である[5][9]。
その後25年以上、実用性のある応用が見つからなかったことから、研究者の関心は薄れ光触媒の研究は停滞した。1964年になって、V.N. FilimonovはZnOおよびTiO2からのイソプロパノールの光酸化に関して研究成果を発表した[5][10]。また同時期に、Kato and Mashio (1964)、Doerffler and Hauffe (1964)、そしてIkekawa et al. (1965) は、ZnO発光からの二酸化炭素と有機溶媒の酸化/光酸化の研究成果を発表した[5][11][12][13]。1970年、Formenti et. alおよびTanaka and Blyholdeは、様々なアルケンの酸化と亜酸化窒素 (N2O) の光触媒による腐食を観察した[5][14][15]。
1972年、本多健一と藤嶋昭は酸化チタンTiO2と白金の電極の間で水の電気化学的光分解が発生していることを発見した。この現象では、紫外線が電極に吸収され白金電極(陰極:酸化側)から酸化チタン電極(陽極:還元側)へ電子が流れ、水素の生成が陽極で発生する。これは、有用な物質である水素を効率的に生成することができるため、大きな成果となった。この研究結果は、さらなる光触媒の発展を促した。1977年、Nozikは電気化学的光分解の過程で貴金属(白金や金など)を組み込むと感光性が増大し、外部は必要としないことを発見した[5][16]。さらに、Wagner and Somorjai (1980)およびSakata and Kawai (1981) はチタン酸ストロンチウム (SrTiO3) の表面で光生産を通じて水素の生成が起こること、そしてTiO2とPtO2の照光からエタノール中で水素とメタンの生成が起こることを発見した[5][17][18]。
^Bruner, L.; Kozak, J. (1911). “Information on the Photocatalysis I The Light Reaction in Uranium Salt Plus Oxalic Acid Mixtures”. Elktrochem Agnew P17: 354–360.
^Landau, M. (1913). “Le Phénomène de la Photocatalyse”. Compt Rend156: 1894–1896.
^Goodeve, C.F.; Kitchener, J.A. (1938). “The Mechanism of Photosensitization by Solids”. Faraday Soc34: 902–912. doi:10.1039/tf9383400902.
^Filimonov, V.N. (1964). “Photocatalytic Oxidation of Gaseous Isopropanol on ZnO + TiO2.”. Dokl. Akad. Nauk SSSR154 (4): 922–925.
^Ikekawa, A.; Kamiya, M.; Fujita, Y.; Kwan, T. (1965). “Competition of Homogeneous and Heterogeneous Chain Terminations in Heterogeneous Photooxidation Catalysis by ZnO”. Bull Chem Soc Jpn38: 32–36. doi:10.1246/bcsj.38.32.
^Doerffler, W.; Hauffe, K. (1964). “Heterogeneous Photocatalysis I. Influence of Oxidizing and Reducing Gases on the Electrical Conductivity of Dark and Illuminated Zinc Oxide Surfaces”. J Catal3 (2): 156–170. doi:10.1016/0021-9517(64)90123-X.
^Kato, S.; Mashio, F. (1964). “Titanium Dioxide-Photocatalyzed Oxidation. I. Titanium Dioxide Photocatalyzed Liquid Phase Oxidation of Tetralin”. Kogyo Kagaku Zasshi67: 1136–1140. doi:10.1246/nikkashi1898.67.8_1136.
^Formenti, M.; Julliet F., F.; Teichner SJ, S.J. (1970). “Controlled Photooxidation of Paraffins and Olefins over Anatase at Room Temperature”. C R Seances Acad, Sci Ser C270C: 138–141.
^Tanaka, K.I.; Blyholde, G. (1970). “Photocatalytic and Thermal Catalytic Decomposition of Nitrous Oxide on Zinc Oxide.”. J. Chem. Soc. D18: 1130.