パスネットパスネット(英称:Passnet)は、パスネット協議会に加盟する関東地方(主に南関東)の鉄道(私鉄・地下鉄)22社局共通の磁気カードを用いたストアードフェアシステムの総称である。 2000年10月14日に導入された。2008年1月10日の終電をもって販売を終了し、2008年3月14日(一部事業者は2009年3月13日)の終電をもって自動改札機での取り扱いを終了し、2015年3月31日の終電をもって完全に利用を終了した(後述)[1]。 なお、パスネットは一般公募により制定された名称である。 概要パスネットは、磁気カードによるプリペイドカード式の乗車カードシステムで、カードを自動改札機に投入することで入・出場が可能だった。自動改札機に投入した際に自動的に運賃が精算(減額)された。ただし、入場券としての利用はできなかった。加盟22社局であれば乗り継ぎにも対応しており、最大4社局までの乗り継ぎに対応していた。 同様の関東私鉄・地下鉄による乗車用ICカード「PASMO」導入前の2006年までは加盟社局のパスネット対応路線の駅にある自動券売機、カード自動販売機、駅窓口などで1,000円・3,000円・5,000円の3種類が発売されていた。また、オーダーメイドタイプに限り500円のカードも存在し、主に記念品などの目的で使用されていた。 利用可能エリアは、PASMOと比べるとやや狭く、PASMOが利用可能な鉄道路線の中では東武鉄道の一部無人駅、西武多摩川線、東急世田谷線、横浜新都市交通(現・横浜シーサイドライン)、江ノ島電鉄、伊豆箱根鉄道、都電荒川線、および箱根登山鉄道(現・小田急箱根)の箱根湯本以西では利用できず、京浜急行電鉄もシステムの切替の関係で当初は全線で一切使えなかった。また、バスや東日本旅客鉄道(JR東日本)、東海旅客鉄道(JR東海)では一切使えず、バスと都電荒川線に関してもパスネット導入以前に首都圏でバス共通カードを発売・導入していたほか、JR東日本は東京モノレールとともにSuicaの導入を予定していたため導入されなかった。 なお、パスネットは将来の共通化を目的にJR東日本のイオカードと規格をあわせていた。しかし、結局磁気カードによる共通化は実現せず、一部のJRとの共同使用駅の自動精算機でJR線運賃の精算に使える程度だった。JRと私鉄陣営のSFの相互利用は、2007年3月18日の非接触ICカード乗車券「PASMO」の導入に伴い開始した首都圏ICカード相互利用サービスにより、Suicaとの共通利用が実現した。 使用方法カードで乗車する場合、自動改札機に直接投入するだけで入場時に初乗り運賃が前引きされた。相互乗り入れ駅などで複数の初乗り運賃がある場合、前引きはその最低額となった。運賃は加盟社・局線の最安の経路で計算し、出場時に着駅までの運賃の差額分が引き落とされた。このため、残額が初乗り運賃に満たない場合は入場できず、また着駅までの運賃に満たない場合は出場できなかった。ただし、カードの2枚投入が可能な自動改札機では残額が不足するカードと十分な残額のある別のカードとを同時に投入することで前者の残額が後者に引き継がれ入・出場することができた。出場時には自動精算機で現金または他のカードで精算することもできた。また、区間の一部に定期券などを利用した場合には同時投入によって自動精算された。このため、2枚投入が可能な自動改札機の投入口にステッカーが貼付されていた。 駅により、乗り換えなどで一度改札から出る必要がある場合は、出場駅までの運賃に足りている必要があったほか、30分以内に再入場しないと乗り継ぎや割引が打ち切られ、新たに初乗り運賃が差し引かれた。これは同一社線間の乗り換えの場合も同様だが、この場合は経路を指定するものではないので、一旦出場が不要な場合の経路との運賃差は生じなかった。ただし、最安経路計算の例外が存在していた。A駅で乗車し、B駅で一旦出場し、乗り換えてC駅に到着した場合にA駅からB駅までの運賃がA駅からC駅までの運賃より高額である場合(A→B>A→Cの場合に、A→B→Cの経路で乗車する場合)はB駅改札を経由する時点でB駅までの運賃相当額が差し引かれ、C駅で改札から出場する場合も過剰徴収分は戻らなかった。なお、このC駅が改札を通らずに直接行き来できる他社の駅である場合、超過分は他社線運賃として持ち越せた。接続駅までの運賃より多額の乗車券で入場して精算する場合と同様だった。 カードは直接自動改札機に投入できたほか、自動券売機での乗車券・回数券(事業者によっては特急券も)を購入する時にも利用できた。残額不足の場合は現金や別のカードを追加すれば購入できたが、この場合、PASMOやSuicaとは併用できず、残額不足のパスネットを挿入した後にPASMO・Suicaを入れるとPASMO・Suicaの受付が拒否された。また、パスネットではPASMOの購入ができなかったが、その後一部事業者の自動券売機などでカード残額を全額PASMOに移し替えることが可能になった(Suicaへの移し替えは不可)。 イオカードと異なり、自動改札機での入・出場時のみならず、有人改札での入・出場時および自動精算機と自動券売機、有人改札窓口などでの使用時には、それぞれカードの裏面に日付・金額・社局名略称・利用駅名などが印字された。 カードを挿入する向きは一応指定されているが、自動改札機に関してはどの向きで挿入しても問題はない。2枚投入の際に同じ面に合わせ上下逆にして挿入しても問題はなく、同じ向きに揃った状態で出てくる。ただし、通常より処理に少々時間がかかる。 カード名称について「パスネット」はシステムの名称であり、パスネット協議会ではカードの名前に使わないようにと決めている。そのため、一部の発行元では「SFメトロカード」「Tカード」などカードに固有の名称を付けている。なかには「SFとーぶカード」「SFレオカード」などのように従来のカード名称に「SF」を付ける事業者もあった。しかし、このような固有名称を付けなかった鉄道事業者も多く、これらの各社では案内上「パスネットカード」または「パスネット」という呼称が使われており、それが定着した。また、固有名称を持つ一部の事業者でも後に標記を取りやめている。また、固有名称のロゴがパスネットロゴより縮小されている事業者もある。 歴史
導入事業者一覧
パスネットが使用できた最端駅2007年6月現在。経緯度はGeocodingで検索したもの。
サービスの終了2007年3月18日からPASMOが導入され普及したことで[注 15]、パスネット導入各社では記念カードの発売を終了したり、カード自動販売機を撤去したり、記念図柄の通信販売・オーダーメイドカードの受付を終了したりするなどサービスを縮小していった。PASMO開始以前からSuicaを導入・発売している東京臨海高速鉄道ではパスネットをカード自動販売機でのみ販売していたが、PASMOサービス開始時にあわせ自動販売機を撤去し、大井町 - 東京テレポート間の窓口のみでの発売となっていた。 2007年12月21日には、パスネットカードの発売と自動改札機での利用の終了が発表された[3]。 パスネットの販売は2008年1月10日の終電をもって終了し、自動改札機の取り扱いも同年3月14日で終了した。発売は前述のとおり「2008年1月10日の終電まで」であるが、在庫がある場合は同日24時以降も終電時刻までは発売されていたので、券売機で発売されたカードには、発行日が「2008年1月11日」になっているものも存在する(券売機の日付は0時に変更される)。また、舞浜リゾートラインについてはPASMOの導入が遅れたため、ディズニーリゾートライン内の自動改札機での取り扱いをPASMOの導入前日の2009年3月13日まで継続したが、カードの発売については他の事業者と同様に2008年1月10日をもって終了した。 自動券売機・自動精算機などでの利用はこれ以降も継続してきたが、2015年3月31日の終電をもって、これらについてもすべて終了した[1]。また自動改札機での取り扱いを終了した翌日の2008年3月15日より、パスネットで残額のあるカードについて、手数料なしで払い戻しを開始したほか、一部の事業者では手数料なしでカードからPASMOへ残額の移し替えが可能な自動券売機を設置したが、残額移し替えについては自動券売機・自動精算機と同様に2015年3月31日に終了し、払い戻しについては2018年1月31日限りで終了した[1]。 パスネット発売終了以降の取り扱いは、下表の通りである。
特徴のある発売所通常、パスネットカードは導入事業者の対応路線の駅の自動券売機・窓口や構内売店などで発売されていたが、以下に挙げる場所でも購入することができた。カッコ内はその場所で発売されていたパスネットカードの発行事業者である。
脚注注釈
出典
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