キリアン・マーフィー (Cillian Murphy, 1976年 5月25日 - )は、アイルランド 出身の俳優 [ 1] [ 2] 。2020年にアイリッシュ・タイムズ紙 が彼を史上最も偉大なアイルランド映画俳優の一人に挙げた[ 3] 。
2023年 公開の『オッペンハイマー 』でアカデミー賞 を受賞。アイルランド出身の俳優で初の主演男優賞 を受賞した俳優となった。
生い立ち
文部省で働く父(ブレンダン・マーフィー)とフランス語 教師の母[ 4] の間にコーク 郊外で生まれる。叔父、叔母、祖父も教師。4人兄弟の長男で弟が1人、妹が2人いる[ 5] 。音楽好きの家系[ 6] で、自身も10歳から演奏や作曲をするようになった。弟と共にいくつかのバンドでギターを弾いていたが、中でもフランク・ザッパ に影響され、弟と結成したロックバンドThe Sons of Mr.Green genesはマーフィーがボーカルとギターを務め、レコード会社から契約のオファーが来るほどだった。しかし、当時弟がまだ中等教育にあったことや、契約条件が悪かったことなどから両親が反対、契約に至らなかった[ 6] [ 7] [ 8] 。1996年にユニバーシティ・カレッジ・コーク で法律を学び始めるが、演劇活動が忙しくなり1年で中退。
英語 、ゲール語 を操る。フランス語 に関しては、2014年のインタヴューで「嘗ては話す事が出来たが、今は違う。(中略)ヴォキャブラリーを忘れてしまった」と語っている[ 9] 。
15年ほどベジタリアン であり続けてきたが、『ピーキー・ブラインダーズ 』の役作りのため、肉食を再開した[ 10] 。ベジタリアンを志向したのは狂牛病に感染するのが怖かったからとのこと[ 11] 。その後、2024年のインタビューでは、倫理的な理由と健康上の理由からヴィ―ガン になることを選んだと答えている[ 12] 。
キャリア
1996年からコークを拠点とした劇団に参加。エンダ・ウォルシュ 作の舞台『Disco Pigs 』で主役を演じ注目を集める。当初コークのみで3週間の上演予定だったが、好評を得て最終的にヨーロッパ 、カナダ 、オーストラリア を股にかけた2年間に及ぶロングラン となった。このツアーのために大学を中退、バンド活動からも離れていった[ 13] 。(しかし大学については「入学してすぐに法律は肌に合わないと感じ、勉強する意欲を失っていた[ 13] 」と語っている)。
1990年代後半~2000年代前半にかけてアイルランドやイギリスの映画、舞台などで活動。
2001年に映画『Disco Pigs 』で舞台版と同じ役で出演。これを観たダニー・ボイル 監督が『28日後… 』の主演にマーフィーを抜擢。この作品がヒットし、国際的に名前が知られるようになった。また、この演技によりエンパイア賞 やMTVムービー・アワード にノミネートされた。2003年公開の『コールド マウンテン 』でハリウッド作品に初出演。
2005年には主演のスリラー映画『パニック・フライト 』、ジョナサン・クレイン / スケアクロウ 役で出演した『バットマン ビギンズ 』がヒット。また、ニール・ジョーダン 監督の『プルートで朝食を 』では、性同一性障害 を抱えた青年をコミカルに演じゴールデングローブ賞 主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門) にノミネートされた。翌年公開の『麦の穂をゆらす風 』(ケン・ローチ 監督、カンヌ国際映画祭 パルム・ドール 受賞作)では、アイルランド独立戦争 ・アイルランド内戦 によって運命を狂わされてゆく青年を演じ、高い評価を得た。
『ピーキー・ブラインダーズ』第2シーズンのプレミアでのキリアン・マーフィー(2014年)
2013年から2022年までBBC のテレビシリーズ『ピーキー・ブラインダーズ 』にて主人公のトーマス・シェルビーを演じており、同作はシーズン6まで制作された。2024年現在続編となる映画版の企画が進行中である[ 14] 。
2023年、クリストファー・ノーラン 監督の『オッペンハイマー 』にタイトルロールの主人公であるJ・ロバート・オッペンハイマー 役で出演。ノーラン作品にはこれまで幾度となく脇役として出演しており、この作品が満を持しての主演としての参加となった。この作品の演技で自身初となるアカデミー賞 候補の指名を受け、2024年3月10日 に行われた第96回アカデミー賞 授賞式では主演男優賞 を受賞した。また他にも英国アカデミー賞 の主演男優賞 、全米映画俳優組合賞 の主演男優賞 、ゴールデングローブ賞 の主演男優賞(ドラマ部門) 等多くの賞を受賞している。
エピソード
『バットマン ビギンズ』では、当初バットマン役のオーディションを受けていた。落選したもののクリストファー・ノーラン 監督に気に入られ、スケアクロウ役に抜擢された。ノーランは「彼はとても魅力的で稀有な眼を持っていて、僕はジョナサン・クレインが眼鏡を外しクローズアップするシーンを入れようと必死だった」と語っている[ 16] 。
演技イメージが定着されるタイプキャスト を望んでおらず、こと2005年には悪役で出演した『バットマン ビギンズ』『パニックフライト』の2作品が大ヒットしたことなどから、今後悪役を演じるのは遠慮したいと語っている[ 17] 。
私生活
2004年の夏にフランス ・プロヴァンス にて、1996年にバンド活動をしていた頃に知り合った[ 19] アーティストのイボンヌ・マクギネス(Yvonne McGuinness )と結婚。2005年に長男のMalachy、2007年に次男のCarrickが誕生[ 20] 。
俳優になった今でも、音楽は未だに人生の一部として欠かせない存在で、現在も趣味で曲作りをしたり、友人らと共に演奏したりしている[ 21] 。俳優業とミュージシャンの仕事を両立する著名人もいるが、マーフィーは新たにバンド活動を始める予定はないとしている[ 8] 。
以前はカトリック教徒 だったが、現在は無神論者 であると言われている[ 22] 。
交友関係
同じアイルランド出身のコリン・ファレル [ 23] やリーアム・ニーソン [ 24] と親しく、マーフィーが有名になる以前から親交がある[ 21] 。
出演作品
※太字 表記は主演。
映画
テレビ
放映年
題名
役名
備考
吹き替え
2001
The Way We Live Now
Paul Montague
計4話出演
N/A
2013-2022
ピーキー・ブラインダーズ Peaky Blinders
トーマス・シェルビー
計36話出演 兼製作総指揮
内田夕夜
2015
Atlantic: The Wildest Ocean on Earth
ナレーター
計3話出演
N/A
舞台
日本語吹き替え
『プルートで朝食を 』以降、主に内田夕夜 が大半の作品で担当している。
このほかにも、遊佐浩二 、三木眞一郎 、小山力也 、関俊彦 、津田健次郎 なども声を当てている。
脚注
^ Denby, David. "Taking Sides" , The New Yorker , 19 March 2007. Accessed 18 July 2007.
^ Dudek, Duane. "Actor sets sight on role variety" , Milwaukee Journal Sentinel , 11 September 2005. Accessed 24 September 2007.
^ Clarke, Donald; Brady, Tara (13 June 2020). “The 50 greatest Irish film actors of all time” . Irish Times . オリジナル の5 August 2020時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200805112424/https://www.irishtimes.com/culture/film/the-50-greatest-irish-film-actors-of-all-time-in-order-1.4271988 14 June 2020 閲覧。
^ Walsh, John. "Murphy's lore: Meet the action hero who looks on the verge of tears" , The Independent , 31 March 2007. Accessed 18 July 2007.
^ a b c Wolf, Matt. "Acting Up" , Strut , March 2004. Accessed 18 July 2007.
^ a b O'Donoghue, Donal. "Western Hero", RTÉ Guide , 6 February 2004.
^ Kaufman, Anthony. "Blue Streak" , Time Out New York , 10 November 2005. Accessed 19 July 2007.
^ a b O'Hagan, Sean. "'I just want to challenge myself with each role'" , The Observer , 11 June 2006. Accessed 8 August 2007.
^ “AROUND THE WORLD WITH CILLIAN MURPHY ”. October 25, 2017 閲覧。
^ “CILLIAN MURPHY DITCHED VEGETARIAN DIET TO BULK UP ”. July 4, 2017 閲覧。
^ “CILLIAN MURPHY DITCHED VEGETARIAN DIET TO BULK UP ”. July 4, 2017 閲覧。
^ “Cillian Murphy reveals that he's adopted a vegan diet after being vegetarian for a decade - as he shares the one item he misses the most ”. 20240907 閲覧。
^ a b Jackson, Joe. "From Cork to Gotham", Sunday Independent Life Magazine , 8 February 2004.
^ “人気ドラマ「ピーキー・ブラインダーズ」が映画化 キリアン・マーフィ主演で9月撮影開始 ”. eiga.com (2024年3月26日). 2024年3月29日 閲覧。
^ Brady, Tara. "Here Comes the Sun" , Hot Press , 19 April 2007. Accessed 18 July 2007.
^ Itzkoff, Dave. "Cillian's Irish Dread", Spin , June 2005.
^ Naughton, John. "Actor of the Year – Cillian Murphy", GQ UK , October 2006.
^ O'Sullivan, Michael. "For Cillian Murphy, A Transformative Year" , The Washington Post , 23 December 2005. Accessed 18 October 2007.
^ McLean, Craig. "A Close Shave", Telegraph Magazine , 24 December 2005.
^ Maher, Kevin. "Cillian Murphy:"I'm not ambitious" , The Times , 19 March 2010. Accessed 19 March 2010.
^ a b Cashin, Declan. "Reluctant Hero" , Irish Independent , 6 April 2007. Accessed 15 May 2012.
^ Fulton, Rick. "Danny's New Golden Boy" , The Daily Record , 30 March 2007. Accessed 18 July 2007.
^ Didcock, Barry. "The Man Behind the Mask: The Scarecrow Speaks" , The Sunday Herald , 12 June 2005. Archived on FindArticles.com , accessed 21 July 2007.
^ Halper, Jenny. "Interview: Cillian Murphy on Breakfast on Pluto " , Cinema Confidential , 15 November 2005. Accessed 20 July 2007.
外部リンク
1928–1940 1941–1960 1961–1980 1981–2000 2001-2020 2021-現在
1943–1960 1961–1980 1981–2000 2001–2020 2021–現在
1994-2000 2001-2020 2021-2040