野月 浩貴(のづき ひろたか、1973年7月4日 - )は、将棋棋士。棋士番号は221。北海道札幌市北区出身[1]。勝浦修九段門下。妻は女流棋士の渡部愛[2]。
棋歴
小学1年の冬、担任教諭から将棋を習った[1]。1985年、札幌市立光陽小学校6年生の時に第10回小学生将棋名人戦で優勝。これがきっかけで、中学1年のときに単身上京、横浜市の知人宅に居候しながら[1]勝浦修門下で新進棋士奨励会に入会する。同期入会に木村一基や金沢孝史、屋敷伸之(「同郷で2歳年上の屋敷は目標であり憧れであった」と後年語っている[3])がいる。森内俊之は兄弟子である。20歳で上がった奨励会三段の頃[1]は、NHK杯戦の記録・秒読み係として頻繁に出演した。
1996年、前期の奨励会三段リーグで11勝7敗の成績2位となり、2年半で[1]四段昇段(プロ入り)をする。11勝7敗での四段昇段は低成績昇段のタイ記録(野月が初)であり、このときのリーグでは野月と同星は6名いた(野月は前期リーグで12勝6敗の好成績を収めていたため、リーグ表での順位が2位であったことが利いた)。
第17回(1998年度)早指し新鋭戦で、久保利明との決勝を制して優勝。
順位戦では、第59期(2000年度)にC級1組、第62期(2003年度)にB級2組、第63期(2004年度)にB級1組へ昇級。第65期(2006年度)にB級2組へ降級。
第56回(2006年度)NHK杯戦で、渡辺明(当時竜王)、島朗らを破りベスト4進出。
2010年10月22日に行われた竜王戦3組3位決定戦で勝ち、自己最高の2組へ昇級[4]。
2017年1月20日、第43期棋王戦予選の2回戦で小倉久史七段に勝利し、勝数規定で八段に昇段した。
2017年2月1日に開設されたAbemaTV将棋チャンネルでプロデューサー役を務めているが、2017年度は盤上でも好調であった[5]。第76期順位戦B級2組では開幕から連勝し、2018年1月11日の8回戦(対 阿部隆)に勝利した時点で[6] 12期ぶりにB級1組への昇級(復帰)を決め[5][6]、最終的に10戦全勝となった。
第59期(2018年度)王位戦で予選を勝ち抜き、挑戦者決定リーグに進出。リーグ戦白組では豊島将之や澤田真吾等の若手棋士に苦戦し0勝5敗に終わった。
第77期順位戦B級1組では3勝9敗のクラス最下位でB級2組へ降級することとなった。さらに第78期順位戦B級2組では1勝9敗のクラス最下位となった。第79期順位戦B級2組は4勝6敗であったが、前期最下位による順位差と、この期より降級点付与枠が拡大されたことが響いて2つ目の降級点がつく結果となり、C級1組へ降級した。
棋風
居飛車党の棋士で、相掛かりや後述の横歩取りなど激しく攻め合う戦法を好む。
ただし、持ち時間の短いテレビ棋戦などで後手番となった場合は、飛車を振ることもある。
横歩取り8五飛の産みの親は中座真、育ての親は野月浩貴といわれる。同じ部屋で対局していた中座の同戦法初採用局をたまたま目撃しすぐに有用性を認識、以後連採して高勝率を収めた。
優勝した早指し新鋭戦(1998年度)の対・飯塚祐紀戦では、対局前のインタビューで「秘策を考えてきた」と語った。その「秘策」とは、初手▲1六歩と突いて、先手番で無理矢理、横歩取り8五飛の形にするというものであった。
人物
サッカー
将棋界随一のサッカーファンとして知られる。自身が横歩取り8五飛を駆使するようになったのも、イングランドのテンポの速いサッカーにヒントを得たといわれるほど[7]。将棋とサッカーの間には、自分の得意な戦法を生かすことが大前提の上で、それを阻止しようとしてくる相手をどう上回っていくかという駆け引きの部分などで共通項が多いという[8]。
その他
- 幼少期は勉強もでき、小6で高校数学を解いて「天才少年」としてテレビに出たこともある。「ぜひ東大へ」と周囲の期待を浴びた[1]。
- 将棋の棋士としては珍しい金髪ヘアスタイルをトレードマークとしていたが、2006年5月に放映された小学生将棋名人戦に解説者として出演するにあたり、自らの判断で黒髪に戻した。
- 瀬川晶司とは奨励会時代から仲が良く、編入試験の際は裏方として尽力した。
- 熊坂学とも仲が良く、熊坂の現役最後の対局が行われた2015年5月7日には、その終局直後に自身のTwitterで熊坂を労う文章を発信し、昔の写真をアップロードした上で、若き日の熊坂との思い出(日本将棋連盟サッカー部の活動に関するもの)を語った。
- 2000年に結婚したが周囲にまったく悟られず、後日大変驚かれた。
- 日本将棋連盟サンフランシスコ支部の師範を務めており、定期的に現地を訪れていて英語が堪能である。
- 現在は当たり前となっているタイトル戦などの公式対局のネット中継も、その端緒は野月と西尾明が開いたとされる。西尾が企画したUstreamでの2010年のタイトル戦(棋聖戦)[1]中継のライブストリーミング配信を実現するため、当時の将棋連盟会長であった米長邦雄に直接掛け合った。米長は「どういうものか良くわからなかったが、テストケースで許可した」ところ、この試みは成功裏に終わり、後に米長は「ニコニコ動画の(将棋界への)参入も、この成功があったからだと言える」と総括している[11]。また、AbemaTV将棋チャンネルの立ち上げ期から携わっている[12]。
- 対局の際、盤の位置からかなり後ろに下がって座る。これは相手陣の1段目のマス目に手が届く、ほぼ限界の位置である。
- 将棋世界2009年1月号より、対局観戦エッセイ「熱局探訪」を連載。これは、河口俊彦の「新・対局日誌」や先崎学の「千駄ヶ谷市場」の系統を引き継ぐものである。
- 競馬評論家の能勢俊介と交友があり、しばしば野月の家に能勢が訪れ酒を酌み交わす仲である[13]。
- 2020年10月に札幌市に開設された日本将棋連盟「北海道研修会」の幹事を同郷棋士5名(屋敷伸之、中座真、広瀬章人、石田直裕)と務めるなど、地元への普及活動にも熱心である。
- 同郷の女流棋士である渡部愛女流三段に乞われ、コーチとして指導した。その結果、渡部女流三段は2018年5月に行われた女流王位戦で里見香奈に勝ち初の女流タイトルを獲得するなどの実績を残している[14]。野月と渡部は2024年1月に結婚[15]、日本将棋連盟と日本女子プロ将棋協会(LPSA)を通じて同年2月14日に結婚発表をした[2]。ともに北海道出身の将棋棋士・女流棋士同士の結婚は初[16]。
昇段履歴
- 1985年00月00日 :6級 = 奨励会入会
- 1991年00月00日 :初段
- 1996年10月01日 :四段 = プロ入り
- 2000年10月10日 :五段(勝数規定 /公式戦通算100勝)
- 2004年04月01日 :六段(順位戦B級2組昇級)
- 2005年04月01日 :七段(順位戦B級1組昇級)
- 2017年01月20日 :八段(勝数規定 /七段昇段後公式戦通算190勝)[17]
主な成績
棋戦優勝
- 優勝合計 2回
在籍クラス
年度別成績
公式棋戦成績
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
1996
|
11 |
8 |
3 |
0.7273 |
[20]
|
1997
|
39 |
21 |
18 |
0.5385 |
[21]
|
1998
|
38 |
23 |
15 |
0.6053 |
[22]
|
1999
|
46 |
32 |
14 |
0.6957 |
[23]
|
2000
|
44 |
26 |
18 |
0.5909 |
[24]
|
1996-2000 (小計)
|
198 |
110 |
88 |
0. |
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2001
|
37 |
25 |
12 |
0.6757 |
[25]
|
2002
|
52 |
33 |
19 |
0.6346 |
[26]
|
2003
|
41 |
28 |
13 |
0.6829 |
[27]
|
2004
|
29 |
16 |
13 |
0.5517 |
[28]
|
2005
|
32 |
18 |
14 |
0.5625 |
[29]
|
2006
|
35 |
16 |
19 |
0.4571 |
[30]
|
2007
|
27 |
8 |
19 |
0.2963 |
[31]
|
2008
|
26 |
13 |
13 |
0.5000 |
[32]
|
2009
|
39 |
23 |
16 |
0.5897 |
[33]
|
2010
|
32 |
16 |
16 |
0.5000 |
[34]
|
2001-2010 (小計)
|
350 |
196 |
154 |
|
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2011
|
34 |
21 |
13 |
0.6176 |
[35]
|
2012
|
29 |
12 |
17 |
0.4138 |
[36]
|
2013
|
28 |
15 |
13 |
0.5357 |
[37]
|
2014
|
29 |
14 |
15 |
0.4828 |
[38]
|
2015
|
32 |
20 |
12 |
0.6250 |
[39]
|
2016
|
35 |
16 |
19 |
0.4571 |
[40]
|
2017
|
31 |
19 |
12 |
0.6129 |
[41]
|
2018
|
30 |
9 |
21 |
0.3000 |
[42]
|
2019
|
39 |
19 |
20 |
0.4872 |
[43]
|
2020
|
40 |
23 |
17 |
0.5750 |
[44]
|
2011-2020 (小計)
|
327 |
168 |
159 |
|
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2021
|
37 |
19 |
18 |
0.5135 |
[45]
|
2022
|
30 |
17 |
13 |
0.5667 |
[46]
|
2023
|
33 |
15 |
18 |
0.4545 |
[47]
|
2021-2023 (小計)
|
100 |
51 |
49 |
|
|
通算
|
956 |
525 |
431 |
0.5491 |
[48]
|
2023年度まで
|
著書
単著
共著
監修
脚注
関連項目
外部リンク
日本将棋連盟所属棋士 ( 現役棋士 および 2024年度引退棋士) |
---|
タイトル 保持者 【九段 6名】 【七段 1名】 |
|
---|
九段 【26名】 | |
---|
八段 【33名】 | |
---|
七段 【45名】 | |
---|
六段 【27名】 | |
---|
五段 【21名】 | |
---|
四段 【15名】 | |
---|
2024年度 引退棋士 |
- 九段 青野照市 (2024年6月13日 引退)
- 八段 室岡克彦 (2024年6月18日 引退)
- 八段 中座真 (2024年6月19日 引退)
- 七段 伊奈祐介 (2024年5月10日 引退)
|
---|
現役棋士 全174名(2024年11月6日時点、日本将棋連盟所属) / △は2024年度の昇段 / 引退棋士の()は引退日 / 詳細は将棋棋士一覧を参照 |
|
---|
竜王 | |
---|
1組 【 ▼降級 4名 】 | |
---|
2組
| |
---|
3組
| |
---|
4組
| |
---|
5組
|
【在籍 31名(棋士30名・奨励会員1名) / 定員 32名 (欠員1) 】
|
---|
6組 【 △昇級 5名 】 |
|
---|
次期から出場 |
- 2025年4月昇段者(2-3名)
- 2025年10月昇段者(2-3名)
- (いずれも第39期からの出場)
|
---|
★挑戦者 / △次期昇級 / ▼次期降級 / 初 初参加棋士(棋士として初参加) / 詳細については将棋棋士の在籍クラスを参照。 |
|
---|
名人 | |
---|
A級 | |
---|
B級1組 | |
---|
B級2組 | |
---|
C級1組 | |
---|
C級2組 | |
---|
フリー クラス
|
| 宣言 | |
---|
棋戦限定 出場 | |
---|
2024年度 引退者 |
- 伊奈祐介 (2024年5月10日 引退)
- 青野照市 (2024年6月13日 引退)
- 室岡克彦 (2024年6月18日 引退)
- 中座真 (2024年6月19日 引退)
|
---|
|
---|
次期から の出場者
|
フリークラスからの昇級者 | |
---|
2024年10月1日昇段者 | |
---|
|
---|
先頭の数字は順位(名人、フリークラス以外)/ フリークラスの数字は在籍可能残り年数(2024年度開始時点) B級2組 - C級2組の * は降級点の数(B級2組・C級1組は降級点2回で降級、C級2組は降級点3回で降級) 詳細については将棋棋士の在籍クラスを参照 |
一般棋戦優勝 2回 |
---|
|
---|
早指し 将棋選手権 優勝者 |
|
---|
早指し 新鋭戦 優勝者 |
|
---|
関連項目 | |
---|
2002年(第36回)で終了。 |
|
---|
5連勝以上 勝抜者 | |
---|
関連項目 | |
---|
()内は連勝数。5連勝以上で公式棋戦優勝相当。連勝が次年度に継続した場合も勝抜きの対象。2003年(第22回)で終了。 |
|