動画編集ソフトウェア (どうがへんしゅうソフトウェア)またはビデオ編集ソフトウェア (英 : video editing software )とは、コンピュータ上でデジタルビデオ を編集するアプリケーションソフトウェア である。
基本機能としては映画用語での編集(動画の時間軸でのカットや並べ替え)の機能を備えているが、多くのソフトウェアではVFX などの特殊効果の機能も備えている。
概要
最も単純な例では、1つのディレクトリ内の一連のJPEG ファイルとして格納したビデオを扱う。一般に画面上の大きな部分で1つの画像を表示し、付随してディレクトリを表示する。そのディレクトリ内の多数のファイルを扱うためにズームアウトすることができ、それによって1つのファイルはエディタの1ピクセル行やそれ未満となって表示され、大まかな加工ができる。再生ボタンを押すと自動的に次々と画像が表示されていくことで、動画として再生できる。さらにJPEG画像は可逆的に回転させたり鏡像反転させたりできるので、編集ソフトウェアでもそのような操作をサポートしている。もちろん、複数のファイルに対して同時にそのような操作が可能である。
このような動画編集ソフトウェアはスライドショー 編集ソフトウェアとよく似ている。スライドショー 編集ソフトウェアには多数の画像ファイルフォーマットのデコーダが付属しているが、同様に動画編集ソフトウェアには多数のビデオコーデックが付属している。ビデオ編集ソフトウェアは一般に動画に付随する音声 を編集する機能も持つことが多く、少なくとも音声と動画を同期させる機能を必ず持っている。
ロスレス以外の動画を無劣化でカットする場合は、GOP 単位でしか切ることが出来ない。それ以外の場合には最寄りのGOPからカット位置までが再エンコードされる(スマートレンダリング/スマートコピー)。そのため、プロ用の圧縮コーデックでは全てのフレームをイントラフレーム で構成する(AVC-INTRAやProRes[ 1] など)などして任意の位置で無劣化にカットできるようになっている。
画質が低下するという問題はあるが、特殊効果や変換を加えることもできる。また動画のフォーマットを変換することで、DVD 、Web ビデオ、携帯電話 用ビデオ、ビデオポッドキャスト などを作ることができるものもある。
ハードウェア
昔は独自の機器やワークステーションが使われていたものの、現在は一般的なPCが主流となっている。また、CPU内蔵もしくは単体GPUに搭載のグラフィックプロセッサーを使って動画処理を高速化 (GPGPU ) するソフトウェアが増えている。
また、周辺機器では収録のためにキャプチャカード が、カラーグレーディング のためにマスターモニター (マスモニ)に近いモニターが使われている。
歴史
黎明期
最初、動画編集は映像用フィルム の切り貼りで行われていた。エフェクトではオプチカル・プリンター が登場し、映像に様々な特殊効果 (SFX ) を付けることが可能となった。
1950年代、磁気テープが映像にも使われるようになった (ビデオテープ , en:Videotape )。当初、磁気テープにおいても切り貼りによる編集が行われていたが、その後、複数の素材テープからマスターテープへと録画していくリニア編集 システムが登場した。
ノンリニア動画編集の登場
1971年、コンピュータの発展と共に最初のノンリニア編集 システムであるCMX 600 (英語版 ) 登場し、1980年代にはQuantel HarryやAvid/1 (後のAvid Media Composer )が登場した。当時のノンリニア編集システムでは扱える品質に限界が存在し、ノンリニア編集した後にEDL (英語版 ) (編集決定リスト) ファイルを書き出し、その後EDLファイルに基づいてビデオテープレコーダー の自動操作を行い再現するというオフライン編集 (英語版 ) が行われた。
1991年、Apple はマルチメディアフレームワーク (英語版 ) のQuickTime を導入し、アドビシステムズ はそのフレームワークを使った動画編集ソフトウェアであるAdobe Premiere をリリースした。一方マイクロソフト も1992年にマルチメディアAPIのVideo for Windows を導入した。1993年、アドビシステムズはAdobe PremiereのWindows版をリリースした。
1992年、コダック は映画フィルム・スキャナ (英語版 ) でフィルムを取り込みデジタル編集してフィルム・レコーダー でフィルムに書き戻すというデジタル・インターミディエイト ・システムのCineon を開発した。同年、DiscreetはVFXソフトウェアのFlash (後のFlame) をリリースし[ 2] 、Cineonシステム及びDiscreet Flashは映画『スーパーマリオ 魔界帝国の女神 』の編集に使われた[ 3] [ 2] 。
また、テレビ放送向けのオンライン編集システムも登場し、1993年、QuantelはEditboxを[ 4] 、1996年、Discreet LogicはFire (後のAutodesk Smoke) を[ 5] 、1997年、SoftimageはSoftimage DS (後のAvid DS) をリリースした[ 6] 。
民生化
初期の民生向け動画編集ソフトウェアとしてはGold DiskのVideoDirector (後にPinnacleが買収[ 7] )が存在した[ 8] ものの、これはビデオデッキや民生用カメラを赤外線ポート又はLANC (英語版 ) ポート経由でコンピュータから遠隔操作することにより、テレビで確認しながら部分的にダビングしていくという安価なリニア編集向けであった[ 8] 。1993年、ビデオCD (VCD) 規格が登場したものの、先進国において広く使われることは無かった。
その後、1994年に民生用デジタルビデオのDV 規格が制定され、1995年に高速接続規格のIEEE 1394 (FireWire)が制定されると、コンピューターに映像を送ることのできる民生用デジタルビデオカメラや、それを取り込むことのできるキャプチャボードが増えていった。また、1995年に光学メディアのDVD 規格が策定され、2000年にはDVDカム も登場した[ 9] 。同年、接続規格のUSB に高速転送のためのHigh-Speedモードを追加したUSB 2.0 が登場し、USB 2.0に対応するビデオカメラも登場した。
1998年、アップルはマクロメディア が開発中のKeyGripを買収し、1999年にFinal Cutとしてリリースした。また同年、アップルはiMovie 搭載のiMac DV を発売した。一方マイクロソフトは、2000年のWindows Me よりWindowsにWindows ムービーメーカー を搭載しはじめた。
また、サードパーティーでは、Ulead が1998年にMediaStudio2.0[ 10] 、VideoStudio3.0 [ 11] をリリース。2001年にCyberLinkがPowerDirectorを[ 12] 、2003年にカノープスがEDIUS をリリースした[ 13] 。
HDR (ハイダイナミックレンジ) 動画の普及
SDR (スタンダードダイナミックレンジ) においてもディスプレイの最大輝度は徐々に上がっていった。
当初、SDTV システムにおける品質の主観的評価法であるBT.500 (Rec.500)[ 注 1] の標準観視条件では最大輝度が70nitとされていた[ 14] が、HDTV 向けの主観的評価法であるBT.710 (Rec.710)[ 注 2] では最大輝度が150-250nitへと引き上げられた[ 15] 。
その後、一般的なSDRディスプレイは250-300nitへと達した[ 16] 。ディスプレイにより最大輝度が異なっていたため、2011年、ITU-RはHDTV向け製作スタジオに向けて、互換性を保つための電気光学伝達関数 (EOTF) であるBT.1886 (Rec.1886) を定めた[ 17] 。Rec.1886のEOTFは従来通りブラウン管 (CRT)の特性に基づいていた[ 17] 。
映画においては、昔よりデジタル・インターミディエイト で広いダイナミックレンジの表現可能なLog (対数) 画像のCineon形式 (*.cin) 及びその形式を標準化したDPX形式 (Digital Picture Exchange、*.dpx) の連番ファイルが使われており、ハイエンドの動画編集システムもそれらに対応していた。
2000年、Sonyは映画『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃 』のために開発されたデジタル映画カメラ }のCineAlta シリーズを外販し[ 18] [ 19] 、2001年、パナソニックもデジタルシネマカメラのVariCam (英語版 ) シリーズを開始した。CineAltaシリーズ及びVariCamシリーズはどちらも広いダイナミックレンジでのデジタル撮影に対応した (前者はS-Log、後者はF-REC)。これにより映画フィルム・スキャナの必要性は低下したが、映写はフィルムのままでありフィルム・レコーダーは多用された。映写用の色空間であるDCI-P3 は白色点の輝度が48nitとなっている[ 20] 。
一方3DCG方面では、重いLUT による色変換処理の不要なリニアカラースペースのハイダイナミックレンジ (HDR) 画像 形式が普及していった。2002年、NVIDIA とマイクロソフトが共同開発したシェーディング言語 のCg言語 において半精度浮動小数点数 (half float) が登場し[ 21] [ 22] 、2003年、インダストリアル・ライト&マジック (ILM) は半精度浮動小数点対応の可逆圧縮HDR画像 形式「OpenEXR 」のライブラリをオープンソースで公開した[ 22] 。OpenEXR形式の連番画像は3Dレンダリングソフトとデジタル合成 (コンポジット)ソフト間の中間動画形式などとして広く使われるようになった。
その後、HDRに対応するデジタルシネマが登場した。2014年、ドルビーラボラトリーズ はDolby Vision採用の映画館認証であるドルビーシネマを開始した[ 23] 。Dolby Visionではドルビーが開発して標準化したSMPTE ST 2084 (PQカーブ 、知覚量子化曲線) を採用した[ 24] 。PQカーブは人間の知覚に基づいており、規格上10,000nitまで対応している[ 25] 。ただし、ドルビーシネマにおける白色点の輝度は、映写にしては高い108nitとなっている[ 26] 。
2015年、通信規格のHDMI が2.0aでHDR映像の転送に対応し、同年、光学メディアもUltra HD Blu-ray でHDR動画へと対応した。
2016年、ITU-RはHDR動画の標準として、PQカーブ方式及びハイブリッド・ログ=ガンマ (HLG) 方式に対応するRec. 2100 を定めた。HLG方式はPQカーブ程ではないものの、SDRテレビとの互換性を維持しながらHDRに対応するものとなっている[ 25] 。同年、動画投稿サイトのYouTube もHDR動画へと対応し[ 27] 、民生向けでもHDR動画が普及していった。そのため、オンライン編集向けでない動画編集ソフトウェアもHDR動画の編集が強化されていった。
この頃にHDR動画への対応が強化された動画編集ソフトウェアは、2015年のPremiere Pro 2015.1[ 28] 、2016年のAvid Media Composer 8.5[ 29] 、2017年のEDIUS 9.0[ 30] 、同年のFinal Cut Pro X 10.4[ 31] などがある。
広い色空間の普及とカラーコレクションの統合
アナログTVのNTSC 仕様はAdobe RGB (英語版 ) に近い広い色空間を持っていた[ 注 3] が、デジタルTVの色空間は、SDTV向けのRec. 601 、HDTV向けのRec. 709 共に狭い色空間となっていた。
一方、アナログフィルムはフィルムの種類ごとに異なる広い色空間を持っており、フィルムの入出力を行うデジタル・インターミディエイト において、各種映像フィルム間の色補正を行うためのカラーコレクション 用システムが登場した。ワークフローでは、動画編集ソフトで狭い色空間のプロキシ動画のオフライン編集を行って編集定義リスト (EDL) 形式を出力し、カラーコレクションシステムでコンフォーム及び色補正を行い、フィニッシングシステムで残りのオンライン編集 (英語版 ) を行うワークフローが構築された。
2002年、デジタルシネマ 標準化団体としてDigital Cinema Initiatives (英語版 ) (DCI)が設立され、2005年、DCIはデジタルシネマのための標準であるDigital Cinema System Specification (DCSS)を制定した。
DCSSでは広い色空間であるDCI-P3 (P3DCI)が採用された。また、全米撮影監督協会 (ASC) はカラーグレーディングの標準交換形式である色定義リスト (ASC CDL (英語版 ) ) を定めた。動画編集ソフトウェアの開発企業は色補正ソフトウェアの買収などを行い、動画編集ソフトウェアと色補正ソフトウェアのバンドルを行うようになった。
この頃リリースされたものには、2007年のFinal Cut Studio 2 (色補正のColor (英語版 ) (旧Silicon Color製FinalTouch)付属)、2010年のAutodesk Flame Premium(色補正のLustre (英語版 ) (旧Colorfront製Colossus[ 32] )付属)、2012年のAdobe Creative Suite 6 (動画編集のPremium Pro及び色補正のSpeedGrade(元IRIDAS製)付属)、同年のPowerDirector 11 Ultimate Suite(色補正のColorDirector付属)などがある。
2010年、広い色空間のDCI-P3はSMPTE (米国映画テレビ技術者協会)においても標準化されたが、当時デジタルシネマの外で広く使われることは無かった。
2012年、UHDTV のための広い色空間であるRec. 2020 が登場した。また、2014年、様々な用途に特化した新たな色空間群を含むAcademy Color Encoding System (英語版 ) (ACES) 仕様が登場した。この2010年代には、色補正ソフトウェアの機能が動画編集ソフトウェアへと移植されていき、オフライン編集とオンライン編集の融合が進んでいった。移植された動画編集ソフトウェアには、2011年のFinal Cut Pro X (Colorの統合[ 33] )、2015年のPremiere Pro CC 2015 (Lumetriカラーパネル。SpeedGradeの統合)、2018年のAutodesk Flame 2019 (MasterGrade Matchbox。Lustreの技術を拡張[ 34] ) などがある。また、2013年には逆に色補正ソフトウェアへ動画編集機能を追加した形のDaVinci Resolve 10も登場した。その他の動画編集ソフトウェアもカラーグレーディング機能が強化されていった (VideoStudio Pro 2019以降[ 35] 、Vegas Pro 17以降[ 36] など)。
ステレオ3D動画
立体映画 (ステレオ3D映画) はアナログ映画時代より存在しており、デジタル・インターミディエイト登場後はステレオ3D映画のデジタル編集も行われるようになった。デジタルシネマでもDCIのDCSS仕様にステレオ3D映画の仕様が盛り込まれており、DCSSの登場した2005年内にはステレオ3D対応のデジタル映画『チキン・リトル 』が登場している。
民生用においても主にゲーム向けとしてNvidia 3D Vision (英語版 ) のようなステレオ3D表示技術が存在しており、サイド・バイ・サイド などの方式でステレオ3D映像を扱うことは行われていた。2009年、ステレオ3D動画向けのMPEG-4 MVCコーデック を用いたBlu-ray 3D が登場し、その後ステレオ3D動画に対応するTVが増えていった。
この頃ステレオ3D動画の編集へと対応した動画編集ソフトウェアには、2009年のAvid Media Composer 3.5[ 37] 、2010年のVegas Pro 10[ 38] 、2012年のEDIUS Pro 6.5[ 39] などがある。
テープレス化
放送では、アナログ放送 時代、VTR テープの再生により収録映像の送出を行っていた[ 40] 。その後デジタル放送 が登場すると、デジタル放送の規格に合わせた送出用ビデオサーバーが登場し、ソニーや松下電器 (パナソニック)もデジタル放送向けビデオサーバを発売した[ 41] [ 42] 。
2006年、放送用ファイル交換形式のMXF (Material Exchange Format )がSMPTEで標準化され (SMPTE ST 436M)、送出用ビデオサーバはMXF形式からの送出に対応していった。
また、収録でも当初はテープメディアが用いられていたが、その後ディスクメディアを用いたコンシューマ向けのDVDカム や業務向けのProfessional Disc 対応XDCAMなどが登場し、その後P2 やSxS (英語版 ) などの高速なフラッシュメディア対応のビデオカメラが登場した。これらファイルベースの収録メディアもMXF形式を採用した[ 43] 。
これらによりテープレスシステムにおいてMXF形式が普及し、各種動画編集ソフトウェアもMXF / AAFワークフローに対応していった。また、オープンソースのテープレスシステムも登場した。英国放送協会 (BBC) はテレビプロダクション向けテープレスシステムとしてIngex (英語版 ) を開発し、オープンソースとして公開した。Ingexは既に番組のEastEnders とDragons' Den (マネーの虎 のイギリス版)でテストされており、今後高性能PCやテープのバックアップキットと共に商用パッケージを作るとしている[ 44] 。
なお、テープメディアの使用率は下がったものの、アーカイブ目的では逆に大容量のLTO テープが用いられるようになっている[ 45] 。
GPUアクセラレーションの普及
汎用的なGPUアクセラレーションが登場する前にも動画編集用ビデオカード は存在した。例えばAvid Media Composer やAvid Symphony (英語版 ) は汎用コンピュータと専用ビデオカード (Truevision NuVistaカードやAvid ABVBボード[ 注 4] やAvid Meridienボード) の組み合わせとなっていた[ 46] 。Data Translation社のMedia 100 (英語版 ) は独自のビデオカードをセットとしていた[ 46] 。また、TruevisionやMatroxのビデオカードはAdobe Premiereの幾つかのエフェクトを高速化することが可能であった[ 47] [ 48] 。
その後、GPU用のプログラミング言語が登場した。2007年、NVIDIAは同社製GPU向けに汎用プログラミング言語のCUDA を提供し、2008年、標準化団体クロノス・グループ はベンダーニュートラルなGPU向け汎用プログラミング言語のOpenCL を策定した。そのため、動画編集ソフトウェアもCUDAやOpenCLを用いてGPUアクセラレーションに対応していった (2008年のTMPGEnc 4.0 XPress以降[ 49] やAdobe Premiere Pro CS4以降[ 50] やPowerDirector 7以降[ 51] など)。
業務用のオンライン編集システムもソフトウェア版がリリースされるようになった。2009年、AutodeskはMac向けとしてソフトウェアのみのSmokeをリリースし[ 52] [ 53] 、2010年、AvidもAvid DS 10.5のソフトウェア版をリリースした[ 54] 。
可変フレームレート (VFR) の登場
映像のフレームレートでは当初、連続的と感じるために最低16fpsが必要とされ[ 55] 、サイレント映画 (無声映画)において16fpsが使われていた。その後、発声映画(トーキー )が登場し、発声映画において24fpsが主流となった。テレビのアナログ放送 が登場すると、PAL 及びSECAM 地域において50i (50fpsのインターレース 映像)が、NTSC 地域(日本を含む)において59.94i (60000/1001fps (≒59.94fps) のインタレース映像)が用いられるようになった。マルチメディア (CD-ROM 等)やインターネット配信 などのPC向け映像では、30fpsや60fpsも使われるようになった。
歴史的に映像のフレームレートは様々であったが、PCモニターはリフレッシュレート の変更が可能であり、映像編集では編集する映像のフレームレートの倍数 がPCモニターのリフレッシュレートとして使われていた (例えば24fpsの映像編集に72Hzのリフレッシュレートを使うなど)。
また、途中でフレームレートが切り替わる可変フレームレート (英語版 ) (VFR) の映像も登場した。可変フレームレートは発熱などで制限のあるモバイルデバイスでの動画撮影や、eラーニング (電子学習)のようなスライドショー動画で使われている[ 56] 。そのため動画編集ソフトウェアにおいても可変フレームレートへと対応するものが登場している(Final Cut Pro X[ 57] 、Premiere Pro 12.0.1以降[ 56] など)。
PCモニタでもリフレッシュレートを可変にする技術が登場した。可変リフレッシュレートの画面キャプチャ映像は可変フレームレートとなる。2013年にGPU メーカーのNVIDIAがG-SYNC 技術を発表し、2014年にG-SYNC対応の製品が登場した[ 58] 。一方、NVIDIAに対抗するAMD は対抗技術であるFreeSync を発表し、そのFreeSyncはAdaptive-Syncとして標準化団体VESA のDisplayPort 1.2aで標準化された[ 59] 。2017年にはHDMI でもGame Mode VRRとして可変リフレッシュレートが標準化された[ 60] 。
360°動画/VR動画の登場
2012年、民生用ヘッドマウントディスプレイ (HMD)デバイスであるOculus Rift の開発キットが登場し、バーチャル・リアリティ (VR) が注目を集めた。
2014年にはスマートフォンを安価にHMDデバイス化できるGoogle Cardboard も登場した。それらHMDデバイスに向けて360°動画の撮影が可能なカメラが多数登場した。
2015年3月、GoogleはYoutubeを360°動画へと対応させ[ 61] 、同年9月、Facebook社もFacebookを360°動画へと対応させた[ 62] 。そのため、動画編集ソフトも360°動画やVR動画へと対応していった (2016年リリースのPremiere Pro 2015.3以降[ 63] 、Pinnacle Studio 20 Ultimate以降[ 64] 、Videostudio X10以降[ 65] 、PowerDirector 15以降[ 66] 、HitFilm Pro 2017以降[ 67] など)。
2017年、Googleは180°のVR動画であるVR180を発表し[ 68] 、Adobe Systemsと連携して動画編集ソフトのVR180対応に取り組み始めた[ 68] 。同年、AdobeはMettleよりVR動画編集プラグイン群のSkyBoxを買収し[ 69] 、Premiere Pro 12.0にそのSkyBoxを搭載し始めた[ 70] 。同年、AppleはVR動画編集プラグイン360VR Toolboxの開発者を雇い入れ[ 71] 、Final Cut Pro 10.4にその機能を追加した[ 71] 。
ニュース編集向け
報道局 向けのニュースルーム・コンピュータ・システム (NRCS) としてENPS (英語版 ) (AP通信)、iNEWS(Avid製、旧Basys)、Octopus(Octopus Newsroom製)などが登場し、それらと連携する動画編集ソフトウェア(Avid NewsCutterなど)も登場した。Avid NewsCutterはその後Avid Media Composer | NewsCutter Optionとなり[ 72] 、Avid Media Composer | Ultimateにも付属されるようになった[ 72] 。
2015年、EDIUSの開発元であるGrass Valleyは、管理システム「GV STRATUS」の報道局向けバンドル「GV STRATUS Newsroom Bundles」を導入した[ 73] 。
2019年、BlackMagic DesignはDavinci Resolve 16でニュース編集向けのカットページを追加した[ 74] 。
ファイル交換形式
初期のノンリニア編集システムは扱える品質に限界が存在し、ノンリニア編集した後にビデオテープレコーダー の自動操作で再現処理を行うオフライン編集 (英語版 ) が必要となっており、その自動操作のための中間形式としてEDL (英語版 ) (編集決定リスト)形式が登場した。AvidやFinal Cut Proなどの各ノンリニア編集システムが各EDL形式へと対応した[ 75] [ 76] [ 注 5] ため、ノンリニア編集システム同士のファイルのやりとりにもEDL形式が使われるようになった。EDL形式には次のものがある:
CMX3600形式 - CMX編集システム (英語版 ) のCMX3600で使われていたEDL形式。CMX3600よりも前のCMX 340/3400形式なども存在する[ 77] 。
GVG (Grass Valley Group) 4 Plus形式 - Grass Valley のシステムで使われていた形式[ 77] 。GVG 4 Plus形式よりも前のGVG 4形式なども存在する。
Sony BVE 9100 EDL形式 - Sony BVE 9100システムで使われていた形式。Sony 9100形式よりも前のSony 9000形式やSony 5000形式なども存在する[ 78] 。
なお、EDLの標準としてはSMPTEによるSMPTE-EDL (SMPTE 258)が登場したものの、広く使われることは無かった。
その後、ファイルベースのプロキシ編集が使われるようになり、レコーダーの自動操作のためにEDL書き出しを行うことは減っていった。しかし、オフライン編集ソフトとオンライン編集(コンフォーム・カラーコレクション・フィニッシング)システム間のやりとりではEDL形式が使われ続けたが、その後、ファイル交換に特化した形式が登場した。一部の形式は埋め込みメディアにも対応している。
ALE (Avid Log Exchange, *.ale) - Avidにより開発されたテキストベースのファイル交換用形式[ 79] 。
OMF (英語版 ) (Open Media Framework Interchange, *.omf) - Avidにより開発された[ 80] 古い規格。埋め込みメディアにも対応している。
AAF (英語版 ) (Advanced Authoring Format, *.aaf) - Advanced Media Workflow Association (AMWA)が制定した編集用ファイル交換用形式。AMWAにはAvidも参加している。AAF形式にはOMF形式よりも多くの情報を埋め込むことが可能[ 81] 。埋め込みメディアにも対応している。なお、姉妹形式として放送用ファイル交換形式のMXF (Material Exchange Format , *.mxf)も存在する[ 82] 。
FCPXML (Final Cut Pro XML, *.fcpxml) - アップルが制定したXML 言語ベースのファイル交換用形式[ 83] 。
しかし、これらの交換形式も互換性に限界があるため、各動画編集ソフトウェアのオールインワン化が進んでいる。
編集に使われる動画コーデック
編集ソフトウェアでは編集中に一時書き出しを行うことがあり、繰り返し再エンコードしても劣化の起こりにくい中間コーデックを使用することも行われている。動画編集に使われる中間コーデックには以下がある。
また浮動小数点動画に対応する中間コーデックも登場した。
また高画素数な動画の編集においては、解像度を下げて編集したあとで本来の解像度にその編集を適用する「プロキシ編集」が行われているが、このプロキシ編集に用いるプロキシ動画に特化したコーデックも存在する。一部のカメラは撮影時にプロキシ動画を作ることが可能となっている(プロキシ記録/デュアルコーデック記録)。
Apple ProRes 422 Proxy
Avid DNxHRにおけるHD解像度[ 84]
XAVC Proxy(ソニー)
AVC-Proxy(パナソニック)
なお、素材の動画形式については映像記録方式 を参照。
ソフトウェアパッケージ
ソフトウェアの対応状況
ソフトウェア
360°球体オーディオ
スピーチ分離・強調
自動文字起こし
テンポ検出
ビート検出
音声プラグイン
VST
AU
Flame
?
?
?
?
?
?
?
NUKE STUDIO
?
?
?
?
?
No
No
HitFilm Pro
?
?
?
?
?
No
No
Avid Media Composer
Yes[ 128]
?
Yes[ 129] [ 130]
?
?
(AAXプラグイン経由)
Adobe Premiere Pro
Yes[ 131]
24.2以降[ 132]
Yes
?
?
Yes
Yes
DaVinci Resolve
Yes[ 133]
Yes[ 133]
Yes[ 134] [ 133]
?
?
Yes
Vegas Pro
?
?
Yes[ 135]
22以降[ 136]
22以降[ 136]
Yes
?
Final Cut Pro
?
?
?
?
?
No
Yes
EDIUS
?
?
?
?
?
Yes
?
PowerDirector
?
Yes[ 137]
Yes[ 137]
?
?
WaveEditor側
?
Blender (VSE機能)
No
No
No
No
No
No
No
VideoStudio Ultimate
?
?
Yes[ 138]
?
?
部分的
?
^ VRヘッドマウントディスプレイ などに向けたステレオ3D 360度動画
^ パナソニックのVariCamには対応
^ 古い独自プラグインAPIのSparksは廃止された。
^ 以前はCARA VRが必要であった
^ GPU対応の新エンジンはAdobe Mercury Playback Engine と呼ばれている
^ a b 過去にはStereo3D Toolboxプラグインも存在した
^ October 2017でSkyBox Studioプラグイン (元Mettle製) が統合された
^ 360VR Toolbox (元Dashwood Cinema Solutions製)が統合された
^ 8.1以降はOFX-bridgeプラグイン経由で対応していた[ 109]
^ 単視点は対応
^ 当該色空間での入力または出力等に対応し、その色空間より広い作業用色空間に対応する場合はYes、入力または出力のみであれば「部分的」、それ以外はNo
^ 2019でAutodesk Lustre (旧Colossus、元Colorfront製) のアルゴリズムを拡張した「MasterGrade Matchbox」も搭載された
^ 「Media Composer | Symphony Option」内蔵
^ Adobe Speedgrade (Adobe←IRIDAS)の技術を使用
^ a b 入出力はDCI-P3やRec.2020対応、作業色空間はRec.2100 HLG/PQのみ
^ Apple Color (英語版 ) (Apple←Silicon Color)の技術を使用
^ 入力はDCI-P3対応、作業色空間はRec.2020のみ
^ a b Rec.2020のHDR動画は読み込み時にRec.709のSDR動画へと変換される。
^ 以前は単体版のDVD Studio Proもあった
商用ソフトウェア
3Dコンポジット内蔵
3Dコンポジット別売
その他
開発停止中
フリーウェア(クローズドソース)
3Dコンポジット内蔵
DaVinci Resolve (ブラックマジックデザイン。Studio版及びAdvanced Panelは有償)
Nuke Non-commercial(Foundry。非商用利用のみ)
その他
開発終了
フリーソフトウェア(オープンソース)
なお、Linuxの中にはUbuntu Studio のようなマルチメディアの編集を主目的とするディストリビューションが存在する。Ubuntu Studio では低レイテンシなカーネルを採用している。
開発終了
オンラインソフトウェア
エフェクト/トランジションプラグイン集
これらはプラグインに対応する動画編集ソフトウェアで使用可能となっている。エフェクトプラグインの標準仕様としてOpenFX (英語版 ) (OFX) が存在する。
Boris FX Suite (Boris FX) - 下記の他にCrumplePop、Mocha Pro、SynthEyes、Silhouette、Optics (旧DFT[ 162] ) も付属する[ 163] [ 164] 。
Boris Continuum (Boris FX) - Particle Illusion、Title Studio、Primatte Studioも含んでいる。また2021でDigital Film Toolsの一部エフェクトも統合された[ 165] 。
Sapphire (Boris FX[ 166] ←GenArts)
Red Giant[ 167] (MAXON[ 168] ←Red Giant) - 旧Red Giant Complete。同社製のUniverse[ 167] 、Trapcode[ 167] 、VFX[ 167] 、Magic Bullet[ 167] をバンドルしたもの。以前はShooter Suite[ 167] [ 169] とPluralEyes[ 169] [ 170] もバンドルしていた。
Effections (RE:Vision Effects) - 同社製のプラグイン集。通常版とPLUS版が存在する。
TotalFX (New Blue←NewBlueFX) - 同社製のFilters、Stylizers、Elements、Essentials、Titler Pro、Transitionsをバンドルしたもの。
Krokodove - Fusion向けの無料プラグイン集[ 171] 。8.10でDaVinci Resolveにも対応した。
開発終了
DigiSuite (Digieffects) - 旧Digieffects Megasuite[ 172] 。
DFT for Video/Film (Boris FX←Digital Film Tools[ 173] ) - 旧Digital Film Tools。
Ignite Pro(Artlist←FXホーム )- エフェクトプラグイン集。Hitfilm Proに標準搭載されていた。無料版のIgnite Expressも存在していた。
動画変換・簡易編集ツール
動画変換においてもテレシネ やインターレース解除 などのフィルタによるビデオ処理 (英語版 ) が行われている。また、CMカット等のために簡易的な編集が出来るものもある。
商用ソフトウェア
フリーウェア(クローズドソース)
SUPER
AVI Trimmer+ (Solveig Multimedia)
フリーソフトウェア(オープンソース)
オンラインソフトウェア
コマンドライン
フリーソフトウェア (オープンソース)
開発終了
商用
フリーウェア(クローズドソース)
フリーソフトウェア(オープンソース)
リモート編集 / メディアアセット管理 (MAM)
メディアアセット管理 (MAM) は映像等の素材ファイルを管理するためのシステムであり、これにより素材管理やリモート編集が容易となる。一部の管理システムはWebベースの映像編集フロントエンドも備えている。また、パブリッシュに対応するシステムも存在する。
標準でアセット共有を搭載しているソフトウェアも存在する(DaVinci ResolveのPostgreSQLサーバーによるプロジェクト共有[ 91] 、Adobe Creative Cloudのグループ版以上のPremiere Proなどで使用可能なTeam Projects[ 174] [ 175] 、SCRATCH、Autodesk FlameのStone及びWireなど)。
Blackbird (英語版 ) (Blackbird plc.←Forbidden Technologies)
旧Forscene。Webベースの動画編集ソフトウェア。MAM[ 176] / リモート編集[ 177] に対応している。
Avid NEXIS | EDGE (Avid)
Media Composer | Enterprise及びPremiere Pro向けの共同製作ツールであり、専用Webクライアントも内蔵している[ 178] [ 179] 。Media Composer | Enterpriseに付属している[ 180] 。ワークフロー及びメディアアセット管理ソフトウェアであったAvid Editorial Management(旧MediaCentral | Editorial Management)の後継[ 181] 。
姉妹ソフトウェアとしてMediaCentralもある。かつてはクラウド版のAvid NEXIS | Cloudspaces[ 182] 、大規模向けのMediaCentral | Production Management (Avid Interplay | Productionの後継[ 183] )、アセット管理向けのMediaCentral | Asset Management (Avid Interplay | MAM及びAvid Interplay | MAM Foundationの後継[ 184] [ 185] )も販売されていた。
Flow (EditShare)
LightworksがFlowとの連携に対応している[ 186] 。
GV STRATUS(グラスバレー )
EDIUSがGV STRATUSとの連携に対応している。
Frame.io (Adobe←Frame.io, Inc.)
多数の動画編集ソフトウェア用の連携プラグインが用意されている。またDaVinci Resolveは標準で連携に対応している[ 122] 。
Cantemo Portal (Codemill←Cantemo AB[ 187] )
Webベースのメディアアセット管理ソフトウェア。旧MediaBox。Final Cut Pro及びPremiere Proとの連携に対応している。Final Cut Serverのディスコンと共に登場し[ 188] 、その置き換えとして使われた。
Media Solutions Toolkit (ソニー)
Media Backbone NavigatorXの後継であり、マイクロサービスで構成されている[ 189] 。
Iconik (Backlight←iconik Media)
開発終了
Final Cut Server (アップル←Proximity)
旧artbox。メディアアセット管理ソフトウェア。バージョン管理に対応していた[ 190] 。バックエンドにPostgreSQLを使用していた[ 191] 。
プリプロダクション向け
収録素材のインジェスト、ログ記録、トランスコーディングなど。
Catalyst Browse / Catalyst Prepare[ 192] (ソニー)
開発終了
脚注
注釈
^ CCIR (現ITU-R ) 規格
^ ITU-R規格。対応する日本の技術資料はARIB BTA S-1002。
^ NTSC色空間はディスプレイのNTSCカバー率として今でも使われている。ただし日本のNTSC-Jは海外と異なりホワイトポイントがD93(色温度が9300K)であったため、D65のNTSCやAdobe RGBとはズレが存在する
^ Truevision Targa 2000ベース
^ Avid Media Composerでは当初EDL Managerが必要であったが、その後List Toolとして内蔵された。
^ Lumetriカラーパネル。単体ソフトのSpeedGradeは廃止された。
^ Master Grade機能。単体ソフトのAutodesk Lustre (英語版 ) もあり、Autodesk Flame Premiumに含まれている。
^ 旧Softimage Marquee
^ 旧Avid FX。Avid Media Composer v7以前に付属していた。
^ フル機能にはPro Tools が必要となる。
^ EDIUS OFX Bridgeに付属。なおEDIUS本体には2DテキストのみのQuick Titlerがある。
^ 単体ソフトのColor (英語版 ) が統合された。
^ フル機能にはLogic Pro が必要となる。
^ 以前は単体ソフトのDVD Studio Pro (英語版 ) が存在した。
^ 以前はFinal Cut Server が存在した。
^ 以前は単体ソフトのPowerProducer も存在した。
^ 単体ソフトのHieroも存在する。
^ 単体ソフトのNukeX及びそのサブセットのNukeも存在する。
^ a b HitFilm Proのサブセット。なお以前はVegasの最上位版にVegas Pro Suiteがあり、HitFilm Proそのものが付属していた。
^ 3Dタイトラーは2020年8月以降
^ 以前は単体ソフトのVegas Audioも存在したが、Vegasに一本化された。
^ Boris Title Studio、NewBlue Titler Pro、NewBlueFX Titler EXも付属している
^ 以前は単体ソフトのMovieWriter も存在した。
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