メリット勲章
メリット勲章(メリットくんしょう、英語: Order of Merit)は、イギリスおよびイギリス連邦の騎士団勲章(Order)で、イギリスの君主によって授けられる。軍事での功績または科学、芸術、文学等の文化の振興、もしくは公共の福祉へ貢献があった人物に贈られる。叙勲が功績のみで評価され定員が24名と少数であることから、この勲章は大変な名誉と考えられ、現存する勲章の中で最高の栄誉とも言われている[要出典]。 概要1902年、エドワード7世の時代にプロイセン王国のプール・ル・メリット勲章に倣って制定された。当時のプール・ル・メリット勲章には軍事部門の“戦功章”(Militärklasse)と芸術・文化部門の“科学芸術章”(Wissenschaften und Künste)があったが、メリット勲章はバッジのデザインに違いがあるが同じ章とされる。そして、部門としては「公共の福祉への貢献」が加わり、政治家も対象となっている。 形式はプール・ル・メリット勲章や日本の文化勲章と同様に、中綬章の体裁を取った単一等級の勲章である。バッジは金色の王冠と赤い十字で飾られている。軍事功労者には中央に交差した剣2振りの模様を入れた記章を用意し、他の功労者と区別される。リボン(綬)の色は赤と青であり、着用の際は、男性はこの綬に通して首から下げ、女性は蝶結びの綬を左肩に付ける。 授与基準序列はバス勲章ナイト・グランドクロスと聖マイケル・聖ジョージ勲章ナイト・グランドクロスの間に位置するが[注釈 1]、授与基準を比べるとガーター勲章やシッスル勲章は身分、バス勲章は地位や役職である点に対し、この勲章は個人の功績が基準とされている。そのため、他の叙勲と比べて王族の受章者が少ない。また、授与の決定権が君主に属しており内閣の助言を必要としない事も、他の多くの勲章と異なる点である。そして、聖マイケル・聖ジョージ勲章以下のナイト・グランドクロス章やナイト・コマンダー章より上位にありながらナイト爵に叙されないため、英連邦王国において爵位を認めない国の中には、これを最高勲章とする場合もある。 上記のように、イギリスの勲章は種類により授与基準や対象がそれぞれ異なるため、フランスのレジオンドヌール勲章のように下位の章から順に勲位が上がっていくのではなく、どの種類や等級の勲章を受けるか、個人の経歴によって異なる。従って、種類が異なれば序列の低い勲章を後から受章することも珍しくなく、例えば、一方で後述するマウントバッテン伯爵はバス勲章ナイト・グランドクロスより後にこの勲章を受章している。他方、軍人以外はメリット勲章を受けてもバス勲章(軍人・官僚)はほとんど受けられず、聖マイケル・聖ジョージ勲章(外交官・行政官)やロイヤル・ヴィクトリア勲章(王族・王室関係の公職)と重なることもない。 コンパニオンズ・オブ・オーナー勲章一方の文化部門と公共福祉部門(政治家)の功労者にとって、軍事部門のないコンパニオンズ・オブ・オーナー勲章がメリット勲章の直接下位に位置付けられる。大英帝国勲章ナイト・グランドクロスとバス勲章ナイト・コマンダーの間に位置し、授与基準は軍功を除くとメリット勲章に近く定員は65名と多い。そのため、文化部門の功労者のほとんどは、コンパニオンズ・オブ・オーナー勲章を受章したのちにメリット勲章を受けている。 それに対して公共福祉部門では、首相が退任すると慣例としてメリット勲章を贈られ、首相経験者がガーター勲章を受章するために必要な勲位[注釈 2]と考えられていた。首相を除く閣僚経験者には、コンパニオンズ・オブ・オーナー勲章を授与する。退任した首相にもこの章を授ける場合があるが、これまで退職時にコンパニオンズ・オブ・オーナー勲章を贈られた首相は、その辞職の経緯が円満なものではなかった場合が多いため、それらのこととの関係も推測されている[独自研究?]。退職時にこの章を叙勲されメリット勲章は授からなかった者に、最近ならジョン・メージャーの例がある。エリザベス2世女王の反対を押し切って王室ヨット「ブリタニア」を売却したから女王の恨みを買ったとされ、女王に決定権があるメリット勲章は望めないとの憶測が流れた。メージャーにはメリット勲章の叙勲はなく、ガーター勲章を授与された。 受章者受章者はメリット騎士団へ加えられるが、定員は軍事・文化・公共福祉の全部門合わせて、国王と24人に限られている。但し、外国人へは定数外として授与される。軍事部門では海軍元帥ルイス・マウントバッテン伯爵の叙勲が最後であり、現在の騎士団員は全員、文化部門または公共福祉部門から選ばれた。 この勲章は制定時より女性にも開放されており、1907年にフローレンス・ナイチンゲールが女性としては初めて受章した。日本人としては東郷平八郎や山縣有朋が受章している[要出典]。 この勲章を受けてもナイト爵には列せられないので、受章者に“Sir”や“Dame”の敬称は付かないが、名前の後にOMのポスト・ノミナル・レターズが付される。
脚注注釈
出典
参考文献主な執筆者、編者の順。
関連項目外部リンク
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