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ツチブタ

ツチブタ
ツチブタ
ツチブタ Orycteropus afer
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
上目 : アフリカ獣上目 Afrotheria Stanhope et al, 1998
: 管歯目
Tubulidentata Huxley, 1872[2]
: ツチブタ科
Orycteropodidae Gray, 1821[2]
: ツチブタ属
Orycteropus G. Cuvier, 1798[2]
: ツチブタ O. afer
学名
Orycteropus afer (Pallas, 1766)[1][2][3]
シノニム

Myrmecophaga afra
Pallas, 1766[1][2][3]

和名
ツチブタ[4][5]
英名
Aardvark[1][3][4]
Antbear[1][4]

分布域

ツチブタ (土豚 Orycteropus afer) は、管歯目ツチブタ科ツチブタ属に分類される哺乳類。現生種では本種のみで管歯目ツチブタ科ツチブタ属を構成する[3]

なお、現生哺乳類としては1種で1目を構成する種はツチブタのみである[6][7]とされてきたが、かつて1目とされていた旧・有袋目の解体と再構成により、今では他にチロエオポッサムミクロビオテリウム目)も該当する[8]

分布

アンゴラウガンダエチオピアエリトリアガーナカメルーンガンビアギニアビサウケニアコンゴ共和国コンゴ民主共和国ザンビアシエラレオネジブチジンバブエスーダンセネガルソマリアタンザニアチャドナイジェリアナミビアニジェールブルキナファソブルンジボツワナマラウイマリ共和国南アフリカ共和国モザンビークルワンダ[1]

サハラ砂漠以南の、アフリカ大陸に分布する[4]。種小名aferは、「アフリカの」の意[3][6]

形態

全長140 - 220センチメートル[3]。尾長44.3 - 71センチメートル[3]。肩高60 - 65センチメートル[3]。体重40 - 100キログラム[3]。体色は淡黄灰色で、頭部や尾は灰白色や淡黄白色[4]

耳介は長い[4][5]。吻は長い[4]。鼻孔は体毛で被われ、土を掘る際に砂塵が侵入しづらくなっている[4]門歯犬歯はなく、セメント質で覆われた歯根のない臼歯(小臼歯上下4本ずつ、大臼歯上下6本ずつ)がある[4]。目名Tubulidentataは、臼歯の微細構造に由来する[3]。舌は細長く粘着質で覆われ、唾液腺が発達する[4]。胃の幽門部は筋肉質となっており、咀嚼をしなくても獲物をすりつぶすことができる[4]。これ以外に内臓では真獣類には珍しく(有袋類には普通に見られる)子宮が2つある[7]

前肢に4本の指、後肢に5本の趾がある[4]。爪は長くスプーン状になり、外縁は鋭い[4]。属名Orycteropusは、「(土を)掘る足」の意[3][6]で前足で土を掘り後足で土をかき出しながら掘り進むが、極めて力が強く動作が敏捷なため、この時あたかも体が地中に沈んでいくように見えるという[6]

分類

歯が貧弱なことから、かつては貧歯目(現在のアリクイ目(異節目))に分類されていた[6]が、体制が第三紀初めに絶滅した髁節目に似ていることから独立した原始的な有蹄類の「管歯目」として分類され直された。管歯目自体は第三紀の地層からはヨーロッパや北アメリカからも発見されているが、その後それらの地域では絶滅し現在はアフリカのみに生息している[9][7]

上述のように古い有蹄類の特徴を持っているため、有蹄類が単系統とされていた当時は猛獣有蹄区(食肉目と有蹄類をまとめたグループ)を5つの上目[10]に分けたうちの古い形態に近い「原蹄上目」唯一の生き残りで、髁節目から分離したものとされていた[11]

しかし近年の遺伝子解析に基づく研究により、長鼻目、カイギュウ目、イワダヌキ目などとともに、白亜紀のアフリカで分化したアフリカ獣類と呼ばれる系統に属すことがわかっている[12]

多くの亜種に分ける説があるが、根拠に乏しく亜種の分類は疑問視されている[1][4]

生態

開けた森林や低木林・草原などに生息する[4]。単独で生活する[3][4]夜行性[5][5][4]。採食や一時的な隠れ家・住居として巣穴を掘る[3][5]。出産などに用いられる巣穴とは別に、行動圏内には臨時の際に避難場所となる巣穴をいくつも掘る[4]。古巣は他の動物に利用されたり、野火の際の避難場所を提供している[3][5]。南アフリカ共和国での発信機を用いた調査では一晩に2 - 5キロメートル以上の距離を移動していたという報告例があり、10時間で15キロメートルを歩いた例もある[4]。一晩で30キロメートルもの距離を歩いた例もある[3][4][5]

乾季には主にアリ類を、雨季には主にシロアリ類を食べる[3][4][5]。ある程度大型の虫ではイナゴ類も食べ、飼育下ではひき肉・卵・牛乳・米飯も食べることが確認されており、野生でも糞からある程度は植物質も摂取していることが確認されている[6]。少なくとも、ウリ科キュウリ属Cucumis humifructus の地中で熟する果実を摂取していることは確認されており、同種は種子の拡散をツチブタに依存する形となっている。嗅覚と聴覚を頼りに獲物を探すと考えられている[4][5]。前肢で蟻塚を破壊したり地面を掘り返し、長い舌を伸ばして獲物を捕食する。主な捕食者はブチハイエナだと考えられているが、チーターヒョウライオンリカオン・大型のニシキヘビ類に襲われることもある[3][7]

繁殖様式は胎生。妊娠期間は7か月[3][4][5]。1回に1頭の幼獣を産むが[4]、まれに2頭の幼獣を産むこともある[3][5]

人間との関係

英名Aardvarkは、アフリカーンス語に由来したオランダ語で「地・土のブタ」の意[3]

肉が美味なため生息地では、食用とされることもある[7][1]。爪・歯・体毛・皮膚などが装飾品とされたり、薬用になると信じられていることもある[1][3]。一例としてコンゴ民主共和国では部族によっては歯が魔除けやお守りに、粉末にした体毛が薬用になると信じられていることもある[4]

分布が非常に広いため、種として絶滅のおそれは低いと考えられている[1]。一方で地域によっては農地開発による生息地の破壊、食用の狩猟などにより、生息数が減少している[1]。1975年のワシントン条約発効時からワシントン条約附属書IIに掲載されていたが[3][5]、1992年に掲載は抹消されている[13]

日本では静岡市立日本平動物園で飼育下繁殖例がある[5]

その生息圏はイスラム圏にもおよび、アラビア語でもヒンズィール・ル・アルドゥ(大地の豚)と呼ばれている。系統的には一般の豚とはかけ離れているが、ツチブタも豚の一種と考えられ、イスラム圏では普通の豚同様、その食用が禁忌される。(仮に豚ではないと解釈されても、ツチブタのような肉食動物を食用にすることはイスラムでは禁じられている。)[要出典]

古代エジプトの神、「セト」の頭部はツチブタとされる[要出典]

画像

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k Taylor, A. & Lehmann, T. 2015. Orycteropus afer. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T41504A21286437. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-2.RLTS.T41504A21286437.en. Downloaded on 06 March 2021.
  2. ^ a b c d e Jeheskel Shoshani, "Order Tubulidentata," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Page 86.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v Jeheskel Shoshani, Corey A. Goldman, J. G. M. Thewissen, "Orycteropus afer," Mammalian Species, No. 300, American Society of Mammalogists, 1988, Pages 1 - 8.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y Rudi J. van Aarde 「ツチブタ」犬塚則久訳『動物大百科4 大型草食獣』今泉吉典監修・D.W.マクドナルド編、平凡社、1986年、22 - 23頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 三宅隆 「地中の穴の臆病者 ツチブタ」『動物たちの地球 哺乳類II 5 ゾウ・サイ・シマウマほか』第9巻 53号、朝日新聞社、1992年、151頁。
  6. ^ a b c d e f 『標準原色図鑑全集20 動物II』、林壽郎、株式会社保育社、1968年、p.92-93。
  7. ^ a b c d e 今泉忠明『世界珍獣図鑑』人類文化社、ISBN 4-7567-1188-X、2000年、p.112-113。
  8. ^ 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ3 中央・南アメリカ』講談社、2001年3月1日。 
  9. ^ 『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、1968年、p.560
  10. ^ 詳細は真獣下綱#過去の分類参照。
  11. ^ 『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、1968年、p.398-400。
  12. ^ 長谷川政美「分子情報にもとづいた真獣類の系統と進化」『哺乳類科学』、哺乳類科学60巻記念特集1 哺乳類高次分類群の拡散―分子系統学と古生物学の最近の進展―第60巻、第2号、日本哺乳類学会、269-278頁、2020年。doi:10.11238/mammalianscience.60.269ISSN 0385-437XNAID 130007884430 
  13. ^ UNEP (2021). Orycteropus afer. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. [Accessed 06/03/2021]

関連項目

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