ススキ
ススキ(芒、薄、学名∶Miscanthus sinensis)とは、イネ科ススキ属の植物[1]。尾花(おばな)や振袖草(ふりそでぐさ)ともいい秋の七草の一つ[1]。また茅(かや。「萱」とも書く)と呼ばれる有用植物の主要な一種。 野原に生息し、ごく普通に見られる多年生草本である。 特徴高さは1から2m。地下には短いがしっかりした地下茎がある。そこから多数の花茎を立てる。葉は細長く、根出葉と稈からの葉が多数つく。また、ケイ酸を多く含むため堅く、縁は鋭い鉤状になっているため、皮膚が傷つくことがある。 夏から秋にかけて茎の先端に長さ20から30cm程度の十数本に分かれた花穂をつける。花穂は赤っぽい色をしているが、種子(正しくは穎果・えいか)には白い毛が生えて、穂全体が白っぽくなる。種子は風によって飛ぶことができる。花穂はオギ(荻)に似ているがススキは株立ちになっており区別できる[2]。中秋の名月ごろに出た花穂は、晩秋のころには熟し、草体が黄色や赤色となる草紅葉が見られる[3]。 日本には全国に分布し、日当たりの良い山野に生息している。 夏緑性で、地上部は冬には枯れるのが普通であるが、沖縄などでは常緑になり、高さは5mに達する。その形ゆえに、たまにサトウキビと勘違いする観光客がいる。国外では朝鮮半島・中国・台湾に分布するほか、北米では侵略的外来種として猛威をふるっている(日本にセイタカアワダチソウが侵入したのと逆の経路で伝播)。 遷移上の位置づけ植物遷移の上から見れば、ススキ草原は草原としてはほぼ最後の段階に当たる。ススキは株が大きくなるには時間がかかるので、初期の草原では姿が見られないが、次第に背が高くなり、全体を覆うようになる。ススキ草原を放置すれば、アカマツなどの先駆者(パイオニア)的な樹木が侵入して、次第に森林へと変化していく。後述の茅場の場合、草刈りや火入れを定期的に行うことで、ススキ草原の状態を維持していたものである。 ![]() ![]() 分類本州南部以南の海岸線には、葉の幅が広く、ざらつきの少ないものがあり、これをハチジョウススキ(M. condensatus Hack.)という。変種と見なす立場もある。 同属の別種もいくつかある。やや華奢な植物で、株を作らず水辺に生え、綿毛が純白で穂先にノギの無いのものにオギ(荻、M. sacchariflorus (Maxim.) Benth.)がある。ススキよりさらに大きく、堤防などに大きな株を作るものにトキワススキ(M. floridulus (Labill.) Warb.)がある。他にもカリヤス(苅安、M. tinctorius Hack.)、カリヤスモドキ(M. oligostachyus)など数種が知られるが、多くない。 ススキはイネ科の代表のひとつと見なされているから、ススキの名を持つ植物は多く、たとえば以下のようなものはさほどススキに似ておらず、分類上も近くはないがその名を持っている。 利用かつては「茅」(かや)と呼ばれ、農家で茅葺(かやぶき)屋根の材料に用いたり、家畜の餌として利用することが多かった。そのため集落の近くに定期的に刈り入れをするススキ草原があり、これを茅場(かやば)と呼んでいた。現在では、そのような利用がされないので、その多くは遷移が進んで、雑木林となっている。そのため、ススキ草原に生育していた植物には、かつて普通種であったが、現在は稀少になっているものがある。また、カヤネズミなども同様に見かけにくくなっている。 また、未成熟の穂を食用とする地域もある。 東京・雑司ヶ谷鬼子母神では、ススキの穂をミミズクの姿に作った「すすきみみずく」が有名。 ススキとオギの交配雑種とされるオギススキなどはバイオマス作物として注目されている[4]。 文化
![]() 日本文化とススキ![]()
気象庁による観測気象庁では、全国の気象官署で統一した基準により、すすきが開花した日などの植物季節観測(生物季節観測)を行っている。 すすきの開花日とは、葉鞘から抜き出た穂の数が、穂が出ると予想される全体の約20%に達したと推定される最初の日である。気象台の構内もしくは付近で観測している。
ギャラリー
ススキに関する諸項目ススキが登場する作品ススキに関連する地名著名なススキ群生地脚注
関連項目 |