カタクチイワシ科
カタクチイワシ科(学名: Engraulidae)は、ニシン目に属する科の一つ。総称的にアンチョビ(英語: anchovy)と呼ばれる。イタリア語でアッチューガ acciuga (複数形はアッチューゲ acciughe)、フランス語でアンショワ anchois。日本では特に塩蔵品にした食品を指すことが多い。 食用以外に肥料や飼料としても使用され、粉状に加工したものは魚粉やフィッシュミールとよばれる。煮干しや魚醤も生のアンチョビを使って作られることがある。 分類上顎骨の後端が眼の位置よりもずっと後ろまで伸びるため口が大きい。これは、ウルメイワシ科やニシン科(マイワシなど)との顕著な違いである。吻(口先)はややとがり、下顎よりも前に突き出ていることが多い。顎の歯の発達は種によってさまざまである。カタクチイワシ亜科は体が細長い円筒形に近く、外見はイワシに似る。エツ亜科はそれほどイワシに似ておらず、高く立った特徴的な背びれを持つ。背に青みがかった、いわゆる青魚である。腹側は銀色である。 約20種の淡水産種が知られ、南アメリカを中心に分布する。ニシン科とは異なり、本科魚類の化石種は極めて少数しか知られていない。ほとんどはプランクトン食だが、一部に魚食性種がある。 エツ亜科エツ亜科 Coiliinae は約6属50種を含む[1]。腹鰭の前後に稜鱗をもつ。臀鰭が長く、エツ属では尾鰭と連続する。
カタクチイワシ亜科カタクチイワシ亜科 Engraulinae は約11属100種を含む[2]。腹部の稜鱗は腹鰭の前方のみにある。臀鰭は短い。ほとんどの種は南北アメリカ大陸の沿岸に分布する。
漁獲
世界的にはペルーアンチョビ(アンチョベータ)が非常に多い。乱獲により減少しているが、それでも、種別の統計で2位のスケトウダラ (2790千トン) に数倍の差を空けて1位である。日本で主に漁獲されるのはカタクチイワシである。 利用塩蔵アンチョビ塩蔵品は、三枚におろして内臓を取り除いた小魚を塩漬けにして、冷暗所で熟成及び発酵させたものである。オリーブオイルを加え、缶詰や瓶詰にする。主にイタリアやスペイン、モロッコで生産されている。 缶詰には、三枚におろした身肉をそのまま平らに並べたフィレー・タイプのものと、その身肉をケッパーの実を芯にして渦巻状に巻いたロール・タイプのものがある。ペースト状にしてチューブに入れられた製品もある。 塩蔵アンチョビはヨーロッパの料理によく用いられる。19世紀までは高級なため、富裕層や貴族以外は食べられなかった。そのまま、あるいはペースト状にして食べるほか、サンドイッチやカナッペの具としたり、ピザ、パスタ(プッタネスカなど)、サラダ(シーザーサラダなど)の味付けに用いたりもする。この他にも、アンチョビを用いる料理にはヤンソンの誘惑やバーニャ・カウダがある。欧米のウスターソースにもアンチョビが含まれている。 なお、アンチョビと似た加工食品に「オイルサーディン」があるが、アンチョビは 「塩漬けにしたカタクチイワシ」で非加熱であるのに対して、オイルサーディンは、「油漬けにしたサーディン(鰯)」で加熱したものである。アンチョビの方がはるかに塩辛く、オイルサーディンよりも小さな魚を用いて作られる。また、オイルサーディンは普通頭と内臓を除くだけで、三枚にはおろさない。 オイルサーディンもまた高級なため、富裕層や貴族以外は食べられなかった。 イカン・ビリスマレーシアではインドアイノコイワシ属やタイワンアイノコイワシ属の小魚をゆでて塩漬けにしたあと、乾燥させた食品「イカン・ビリス(ikan bilis)」がサンバルの材料として、また、かりかりに揚げてナシ・ルマッのおかずやパンの具にして日常的に食べられている。同様のものをインドネシアでは「イカン・テリ(ikan teri)」という。 煮干し日本ではカタクチイワシを塩ゆでした後、素干ししたものを煮干しなどと呼び、食用や出汁を取るためによく利用する。 刺身日本では漁獲量のほぼ100%が加工用として出荷され、鮮魚が市場に出回ることは少ないが、取れたての物は刺身でも食べられる。青魚独特の脂があって美味である。 脚注
関連項目 |