アウトサイダー (1983年の映画)
『アウトサイダー』(The Outsiders)は、1983年に公開されたアメリカの青春映画。 当時、アメリカで人気のあったYA(ヤング・アダルト)小説のベストセラーとなったS・E・ヒントンの同名小説(日本語訳は集英社コバルト文庫刊)をフランシス・フォード・コッポラが映画化した[1]。『ランブルフィッシュ』、『コットンクラブ』と続く、コッポラのYA三部作の第一作であり、マット・ディロンは本作に続き『ランブルフィッシュ』に、紅一点のダイアン・レインは三部作すべてに出演した[1]。主役を演じたのはC・トーマス・ハウエルであり、それ以外に、後にYAスター(ブラット・パック)と呼ばれることになるロブ・ロウ[3]、トム・クルーズ[4]、ラルフ・マッチオといった若手人気俳優が出演した[5]。 ストーリーオクラホマ州タルサでは、貧困層の若者のグループ「グリース」と、富裕層のグループ「ソッシュ」が対立していた。 「グリース」のダラスは施設帰りで、常にタフガイとして振る舞っていた。14歳の少年ポニーボーイは両親を失い、兄2人と共に生活している。ジョニーは「ソッシュ」のメンバーに殴られた時の傷が残っている。3人はドライブインシアターに潜り込み、チェリーと出会う。彼女は「ソッシュ」の仲間だったが、ポニーボーイ達に興味を持つ。帰り道、「ソッシュ」のメンバーが現れて一触即発となるが、チェリーの仲裁で喧嘩にはならなかった。その後、ジョニーは両親の喧嘩が嫌で家に帰らず、ポニーボーイと一緒に空き地で過ごす。帰りが遅くなったポニーボーイは、長兄ダリーにきつく叱られたため家を飛び出し、ジョニーと公園に行く。そこで2人は「ソッシュ」に絡まれ、リンチにかけられたポニーボーイを助けようとしたジョニーが、「ソッシュ」のメンバーのボブを刺殺してしまう。 ダラスのアドバイスで、ポニーボーイとジョニーは街から逃げ、古い教会に身を潜めた。2人は読書やトランプをしながら日々をやり過ごす。ポニーボーイは、美しい朝焼けを見ながら、ロバート・フロストの詩を暗唱した。「黄金の色はあせる」。ある日、ダラスが教会を訪れ、3人で外出。その間に、教会に子ども達が来ていたが、教会が火事になってしまう。ポニーボーイとジョニーは、取り残された子ども達を助けるため、ダラスの制止を振り切って、燃える教会へ走る。ダラスの協力もあって子ども達は救出されたが、ジョニーは重傷を負った。 「グリース」の不良少年が英雄になったというニュースは、タルサで知れ渡る。「ソッシュ」のランディも戸惑いを覚え、仲間に聞かれないよう車の中にポニーボーイを誘い、腹を割って話す。一方、ジョニーの体には障害が残り、かつては自分の境遇を嘆き自殺したいと思っていたジョニーが、ポニーボーイに「死にたくない」と語る。 「ソッシュ」の決闘を前にして、ポニーボーイはチェリーと会う。彼女は、ポニーボーイへの好意と、ボブを殺したジョニーを憎む気持ちで揺れ動いていた。両グループの決闘には、教会で負った怪我が完治していないダラスも駆けつけ、激しい喧嘩の末「グリース」が勝つ。しかし、ダラスとポニーボーイがジョニーの病室に行くと、ジョニーはダラスに「喧嘩はよせ」、ポニーボーイに「Stay gold」と言い残して息を引き取る。 ジョニーの死に激しいショックを受けたダラスは、日頃のようにタフな振る舞いもできず、ポニーボーイは悪い予感を抱く。そして、自暴自棄になったダラスは、衝動的に強盗をしてしまい、警官に射殺される。ポニーボーイは、ジョニーが残した手紙を読む。ジョニーは、子ども達のために自分が犠牲になったことを後悔せず、子どもはみな黄金で、その心を持ち続けてほしい、ダラスにもそれを分かってほしいというジョニーの気持ちが綴られていた。 キャスト
製作フランシス・フォード・コッポラは、ある高校生の勧めで小説を読み、この作品は若者だけのためではなく青春を過ごしたすべての人々のためだと確信したという[6]。撮影は原作の舞台であり、原作者であるS・E・ヒントンの出身地でもある、オクラホマ州タルサで行われた[7]。前作『ワン・フロム・ザ・ハート』の失敗で自らのスタジオを売却することになったコッポラは、再起を目指して撮影を行った[1][8]。主役を演じたC・トーマス・ハウエルは、3,000人のオーディションの中からコッポラが選んだ[9]。ロブ・ロウは撮影中、映画の勉強として黒澤明のファンであるコッポラから、毎週のように『七人の侍』を見せられたという[10]。コッポラの娘、ソフィア・コッポラ[11]、ヒントンも端役で出演した[1]。 主題歌「ステイ・ゴールド」は、カーマイン・コッポラ作曲、スティーヴィー・ワンダーが作詞と歌を担当した[12]。 日本での公開は1983年8月27日[1]。主人公と同じティーンエージャー向けに、ジョニーが最期に残した台詞「Stay gold」をどう訳すかという公募があった[13]。 2005年、未公開シーンを大幅に加え、サウンドトラックも一新した113分のディレクターズカット版が製作され、タルサでプレミア公開された[7]。 評価公開直後の朝日新聞の批評記事では、中途半端でどうしようもないシロモノだとされ、カーマイン・コッポラの音楽を含めて酷評された[8]。読売新聞は、型通りのストーリー展開であり、最後に死んだジョニーの顔がクローズアップでオーバーラップして現れるという、昔のハリウッド映画でよく見られた手法が使われるなど、定石を守って手堅くできた映画だとした[9]。日本の映画雑誌『スクリーン』の読者選出ベスト10では第1位に輝いている。 垣井道弘は、自身の好きな映画の一つであり、ジョニーの台詞が印象に残っているといい、おかむら良はスティービー・ワンダーが歌った主題曲の歌詞がよくて感動したとしている[14]。フランスの雑誌『GQ』は、フランシス・フォード・コッポラが監督した知名度の低い傑作5作の一つに選んだ[15]。 脚注
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