なぞの転校生
『なぞの転校生』(なぞのてんこうせい) は、眉村卓のSFジュブナイル小説 (1967年刊)。『中学二年コース』(学習研究社)1965年から『中学三年コース』1966年4月号に連載、盛光社「ジュニアSF」シリーズ第6巻として1967年に刊行された[1]。中学校にやってきた謎めいた転校生の秘密と巻き起こす事件をめぐる学園SFで、眉村のジュブナイル小説の代表作の一つ。 およびそれを原作とする映画・ドラマなどの作品。NHK総合テレビジョン「少年ドラマシリーズ」で1975年に、テレビ東京「ドラマ24」で2014年にテレビドラマ化。小中和哉監督、新山千春主演で1998年に映画化された。 執筆背景学研の『中学二年コース』に1965年から連載開始された。当時、旺文社の『中一時代』(後に『中二時代』へ持ち上がり)で連載されていた光瀬龍の『夕映え作戦』が好評だったことを受けて、学研でもSFを連載しようという運びになり、福島正実の紹介で眉村に依頼が来たらしい[注 1]。当時の日本はSFの草創期であり、眉村のような若手の書き手には仕事がなく、SFを知らない中学生を対象に自由にSFが書けるとあり、すぐに引き受けたという。中学2年生が読者であることを考慮し、「学園を舞台に」という編集部の要請を受け、当時眉村が住んでいた団地(阪南団地)と母校(阪南中学)をモデルにして執筆することになった。タイトルは当初「白い旋風(つむじかぜ)」とするつもりだったが、編集部から「文芸的すぎる」「(子供向けに)具体的で分かり易く」と即座に却下され、編集部がほとんど一方的に「なぞの転校生」と改題した。当時はセンスのないタイトルに肩を落としたが、連載誌との兼ね合いを考えれば「なぞの転校生」が正しかったと後年になって述べている。連載は好評で、最終回直前に編集部から連載の延長と次学年への持ち上がりを要請され、抗議も通らず、「話をもう一度飛躍させてやれ」と思い直し、3回延長され、そこでまた人気が上がったという。[2] 最終回が掲載されたのは『中学三年コース』の1966年4月号だった[3]。 少年少女向きの物語だが、核戦争や科学の進歩の功罪など深いテーマを扱っている。 ストーリー
大阪の進学校として有名な阿南中学校。主人公の岩田広一は、その2年3組の人気者でリーダー格の生徒だった。 ある日曜日、広一の住む団地の隣の部屋に、いつの間にか人が越してきた気配があった。いぶかしんだ広一が様子を窺っていると、ギリシャ彫刻を思わせるような美少年、 山沢典夫に声をかけられる。彼の存在感に圧倒された広一は、覗き見していたきまり悪さも手伝って、半ば逃げだすようにエレベーターに乗り込むが、用があったのか典夫も同じエレベーターに乗り込んでくる。直後、偶然の停電でエレベーターは一時停止。すると典夫は小型のレーザーのような道具を使って扉を溶かそうとし、広一はその過剰な慌てぶりと行動に不審を抱く。 翌日、典夫は広一のクラスに転入してくる。美少年なうえに勉強もスポーツも万能な典夫は、やがて広一以上の人気者となっていく。しかし文明への批判を口にし、雨が降れば放射能が含まれていると言って極端に恐れるなど、次第にその言動と行動には周囲との違和感が目立ち始める。そして、体育祭のリレー競技中に、典夫はジェット機の爆音を聞いて逃げ出すという奇行を見せるが、奇妙な事に、彼と同じ日に転校してきたほか数人の生徒も、同じ行動をとっていた。 やがて、大阪の他の小中高校で、同じ日に東京から転校してきた生徒たちが、似たような騒ぎを起こしていることが判明する。彼らは一様にギリシャ彫刻を思わせる美貌と、万能ぶりを兼ね備えており、マスコミに「天才少年少女事件」として報道された。騒ぎが大きくなる中、典夫とその家族たちは、広一たちについにその秘密を打ち明ける。 登場人物
書誌情報
テレビドラマNHK『少年ドラマシリーズ』版
1975年11月17日から12月3日に当時人気のあったNHK「少年ドラマシリーズ」の1作としてNHK総合テレビジョンにて月曜から水曜の18時5分から18時29分に放送された[4][5]。全9話。内容は、原作とほぼ同じ。翌1976年12月27日から31日に再放送されている。 映像の現存状況NHKが所持していたマスターテープは他の撮影に使い回されたため、本作の映像は保存されていなかったが、家庭用VTRで録画された映像が全話現存し、NHKに寄贈され、NHKアーカイブスに保管されたため、再び視聴することが可能となった。VHS、のちにDVDで商品化(ソースが家庭用VTRである旨断りが入る)されたほか、2006年9月からミステリチャンネルにて再放送された。[注 3] キャスト(NHK)
ゲスト(NHK)
スタッフ(NHK)放送日程(NHK)
その他
映像ソフト
テレビ東京『ドラマ24』版
2014年1月11日から3月29日まで毎週土曜日午前0:12 - 0:52(JST、金曜日深夜)に、テレビ東京系「ドラマ24」枠[10][11][12]で放送された。中村蒼、本郷奏多、桜井美南のトリプル主演[13]。 NHK少年ドラマシリーズで主人公の広一を演じた高野浩幸は、本作で広一の父、そして異次元であるD-15世界(NHK少年ドラマシリーズの世界に相当)の広一を演じている[14]。このほかにも広一と典夫が別れる場所をNHK少年ドラマシリーズ版と同じく「団地の屋上」と設定するなど、オマージュと取れる部分がある[14]。 なお本項目では日時表記は「未明」で記載し、提出された出典内容や公式サイトの表示とは異なる場合がある。 コラムニストの亀和田武も比類なき映像美と岩井俊二によって創出された、原作にはない「アイデンティカ」という設定を称賛し、またアンドロイド役の本郷奏多や元の世界にいた時の気品を崩さない「プリンセス」然とした杉咲花の好演を評価し、不朽のSF学園ドラマであると評した[15]。 キャスト(ドラマ24)詳細な人物説明は原作部分を参照。曖昧な役名の記載は週間番組表の番組ページ(第1話)、公式HPのキャストページから引用。 東西山高等学校
D-8世界D-15世界
ゲスト複数話・単話登場の場合は演者名の横の括弧()内に表記。
スタッフ(ドラマ24)
放送日程(テレビ東京)
ネット局
映画
バンダイビジュアルによって製作され1998年12月26日に公開された。タイトルと登場人物の名前は、原作と同じだが人物設定が異なっているなど内容は全く別の作品である。 ストーリー(映画)女子高生・香川翠(みどり)のクラスに謎めいた少女・岩瀬真祐未が転校して来た。翠は転校生・真祐未と親友になり、ある日、真祐未は、自分は別の世界から来た人間であり、自分のいた世界は核燃料を搭載した人工衛星の落下で崩壊し、母と次元ジャンプによって逃げてきたのだと翠に言った。その時、真祐未は次元ジャンプできる力を身につけてしまう。翠も次元ジャンプできる能力を得た。そして、頻繁に世界崩壊後の異次元世界に行き来し、そこで真祐未たちレジスタンスと共に、「敵」と戦うことになる。 キャスト(映画)
スタッフ(映画)
脚注注釈出典
参考文献
外部リンク
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