PS2 Linux
PS2 Linux(ピーエスツー・リナックス)は、2001年5月9日に発売されたPlayStation 2用Linuxディストリビューションである。 発売元はソニー・コンピュータエンタテインメント(現: ソニー・インタラクティブエンタテインメント)。 経緯もともと、PS2の開発環境はLinuxベースであることが知られており[注 1]、「SCEIはLinuxに積極的なようだ」「PS2でもLinuxが動くのではないか」という期待が高まっていた。 そのような状況で、SCEの久夛良木健社長(当時)が、日本Linux協会の生越昌己会長に対し「(PS2で動くLinuxは)出そうと思えば明日にも出せる」と発言したことから、2001年3月4日にネット上で「PS2で動作するLinuxの発売を求める署名運動」が開始された。 沿革
ハードウェアPS2 Linuxはソフトウェア媒体だけではなく、HDDユニット、イーサネットアダプタ、USBキーボード、USBマウス、VGAケーブルとセットで販売された。後日、正式版が販売された時点でベータ版購入者には媒体のみの販売が行われた。 キーボード・マウス後に純正周辺機器として販売された物と同等品である。 一部のPS2ゲームソフトとは異なり、Linuxでは専用品であるか否かのチェックを行わないので、CPU切り替え機等に接続する等の運用も可能である。 画面出力VGAケーブルより出力される信号は、同期信号を専用の信号線に出力する一般的なタイプではなく、緑色の画像信号に重畳させて出力するSync on Greenという方式を取っている。このため、対応できるディスプレイが限られ、ユーザを悩ますこととなった。 ちなみに、プログレッシブ出力(480p)に対応する一部のPS2用ソフトもVGA出力に対応しているが、VGAケーブルは純正品としては発売されていないため、貴重なケーブルでもある。 通常はVGAケーブルでしか映像出力できないが、一般的なTVに出力させるにはSELECT+R1を押しながら起動することで、Runtime EnvironmentとCUIの映像出力をNTSCで出力できる。X Window Systemの映像出力をNTSCにしたい場合、 HDD・イーサネットアダプタ添付されているHDDユニットとイーサネットアダプタは、後に発売されたHDDユニットやPlayStation BB Unitと同じものであるが、HDDユニットに添付されている「HDDユーティリティディスク」や、BB Unitに添付されているPlayStation BB Navigatorは添付されていない。しかし、後にBB Unitのユーザー向けにBB Navigatorのバージョンアップディスクが実費で提供されたため、これを利用することでBB Unitと同等の環境を構築することも可能である。 2017年頃にはBB Navigatorのサポートは終了してしまい、PS2 Linuxの操作で可能であったBB Navigatorへのtelnetによるログインや、BB Navigatorでのメールの送受信、ネットワーク経由でのBB Navigatorのアップデートは使用できなくなった。 その他Blackrhino GNU/Linuxでは、PS2のEyeToyにも対応している。 ソフトウェアRedHat系 Kondara MNU/Linux ベースのディストリビューションである。ディストリビューションの持つ一般的なソフトウェアの他に、CPU (Emotion Engine) やGS (Graphics Synthesizer) に関するドキュメント、ツール、およびサンプルプログラムを含んでいる。また 後日Debian系のBlackrhino GNU/LinuxもPS2 Linuxの公式コミュニティで発表され、RedHat系とDebian系の共存が可能になった。これにより、2種類のディストリビューションから一方を選択して起動することができるようになった。他に Gentoo Linux もポーティングが発表された。 Blackrhino GNU/Linuxは後にKernel Loader Projectに発展し、PS2 Linux KitがなくともPS2本体とKernelLoader.elfの起動環境があればUSBメモリから起動して使えるようになった。 ブートプロセスインストール時にPS2用メモリーカードをフォーマットし、そこにLinuxカーネルと設定ファイルをインストールする。このメモリーカードとPS2 Linux Kit付属のDVD-ROMを挿入して電源を入れると、DVD-ROMから "Runtime Environment for PS2 Linux 1.0" というプログラムが起動する。ここからDVDとメモリーカード上のカーネルの二つを読み込み、起動する。カーネルをアップグレードする時は、PS2用メモリーカードにアップグレードしたいカーネルをコピーすると使用可能になる。 ブームの終焉発売前後、PS2 Linuxはブームとなり、Linux Magazine誌にPS2 Linuxプログラミングの連載が組まれるまでに至った。しかし、リリース後実際に使っていく上で、以下のようなさまざまな難点が判明した。
PS2 Linuxユーザーコミュニティの活発さは急速に衰えていった。結局、PS2 Linuxは試験的に数千本を提供したのみで販売停止されている。公式の供給は完全に停止したものの、HDDを必要としない手法で動作するPS2 Linuxは有志の活動でパッケージが発表されていった。カーネルもアップグレードしていき、Blackrhino版・Debian版・Juhutube版と数種のPS2用のLinuxが存在している。 脚注注釈
出典外部リンク
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