CENP-A
CENP-A(centromere protein A)は、ヒトではCENPA遺伝子にコードされるタンパク質である[5]。CENP-AはヒストンH3のバリアントであり、ヒトを含む大部分の真核生物において各染色体上のキネトコアの位置の決定に重要な因子である[6]。 機能CENP-Aは、各染色体上のセントロメアの位置をエピジェネティックに定義するタンパク質であり[7]、有糸分裂時のキネトコアの組み立ての位置と姉妹染色分体間の最終的な接着部位を決定する。CENP-Aタンパク質はヒストンH3のバリアントであり、セントロメアクロマチン内の一部のヌクレオソームで典型的ヒストンH3に置き換わって存在している[8][9]。このタンパク質はセントロメアに恒常的に存在しており、セントロメアヘテロクロマチンと関係した典型的ヒストンの変化が付随していることが多い[10]。CENP-AはヒストンH3のバリアント中で最も配列多様性が高く、典型的ヒストンH3と比較して48%の配列類似性がみられるのみである。また、そのN末端テールも高度に多様化しており、H3K4、H3K9、H3K27など詳細な特性解析がなされているヒストン修飾部位の多くを欠いている[11]。 ヒストンとしては異例なことであるが、CENP-A含有ヌクレオソームはDNA複製とともにロードされるわけではなく、ヒトではG1期[12]、ショウジョウバエではM期[13]、分裂酵母ではG2期[14]など、生物種によってさまざまな細胞周期段階でクロマチンへロードされる。この特殊なローディングを行うためにCENP-A特異的なヒストンシャペロンが存在し、ヒトではHJURP、ショウジョウバエではCAL1、分裂酵母ではScm3がその役割を担っている[15]。大部分の真核生物では、CENP-Aは高度反復サテライトDNAの大きなドメインへロードされる[16]。サテライトDNA内のCENP-Aの位置はタンパク質レベルで、完全にエピジェネティックな機構で遺伝する[17]。すなわち、ゲノム内でのCENP-Aの結合位置はDNA配列とは無関係に細胞分裂時に娘細胞へコピーされる。CENP-Aが染色体から失われた場合に備えてヒト細胞にはフェイルセーフ機構が存在することが記載されており、CENP-BがサテライトDNA結合ドメインを介してCENP-Aをリクルートし、セントロメア内にCENP-A含有ヌクレオソームを再導入する[18]。 CENP-Aはキネトコアのinner kinetochoreと呼ばれる領域でCENP-C、CENP-Nなどのタンパク質と直接相互作用する[19][20]。こうした相互作用を介して、有糸分裂時に微小管は染色体を正確に分離することができるようになる。 出典
関連文献
外部リンク
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