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適時開示

適時開示(てきじかいじ)とは、公正な株価等の形成および投資者保護を目的とする、証券取引所上場した会社(以下、「上場会社」)が義務付けられている「重要な会社情報の開示」のことをいう。

なお、東京証券取引所が適時開示制度をリードしてきたため、本稿は東京証券取引所を主に参考としている。

意義

投資者が自己責任により投資を行うため、また、証券取引所の機能が十分に活かされるためには、投資判断材料として、証券市場に上場されている株式等に関する重要な会社情報適時・適切に提供される必要がある。

会社法では、決算公告をはじめとする公告や登記等により、会社の情報が開示される。また、金融商品取引法では、法定開示と呼ばれる有価証券報告書四半期報告書臨時報告書といった書類の提出が上場会社をはじめとする一部の株式会社に義務付けられているものの、日々刻々と変化する経済情勢下においては、法定開示のみを投資判断材料とするには不十分と考えられ、また、法定されることによる制度変更等の機動性低下を補う観点から、法定開示のギャップを埋める意義が適時開示にあり、その重要性が高まっているといわれている。

法定開示のギャップを埋める一例として四半期決算制度が挙げられる。四半期決算制度は、証券市場の自主規制下で法制度に先立ち試験的に開始され、一定期間を経た後、金融商品取引法で法制度化された。このように、法制度化のクッションとしての機能も、証券取引所の自主規制は担っているといえる。同様の事例としては、有価証券報告書等の適正性に関する確認書と、金融商品取引法確認書が挙げられる。

なお、会社法・金融商品取引法のいわゆる法令を「ハード・ロー」、証券取引所の自主規制を「ソフト・ロー」と呼ぶことがあり、これは証券取引所の自主規制が持つ柔軟性・弾力性・機動性等を表した用語と言える。

沿革

以下は、東京証券取引所のもの。

会社情報とは

適時開示が求められる会社情報とは、投資者の投資判断に重要な影響を与える会社の業務、運営又は業績等に関する情報のことをいう。会社情報は「上場会社に関する情報」、「子会社に関する情報」および「非上場親会社に関する情報」の各々「決定事実・発生事実・決算情報」に区分される。

「投資判断に影響を与える」とは

投資判断に影響を与えるとは、「株価に影響を及ぼす(変動させる)」ことをいう。とはいえ、株価は人気投票的な側面もあり、既存の開示情報等に基づく判断によって株価形成が織り込み済みでなされることもあることから、「株価に影響を及ぼす可能性が『高い』」と考えた方が適切な場合もある。

「適時・適切」とは

適時・適切とは適時開示の要諦となる要素で、これらが充足されることで適切な株価形成や市場の公正性が担保される。

  • 適時(タイムリー)
即時性:会社が決定をしたタイミング、会社が事実認識をしたタイミング
  • 適切(フェア)
普遍性:提供する方法や内容に偏りのないこと
明瞭性:表現等が誤解を生じさせないこと
正確性:実態に即し必要・十分なものであること
公式性:裏付けを会社が行う

会社情報の構成

証券取引所で定めている会社情報は、主に次のもので構成されている。

  1. インサイダー取引規制上の重要事実(金融商品取引法166条・167条、金融商品取引法施行令28条・28条の2・29条・29条の2)
  2. 臨時報告書提出義務のある事実(金融商品取引法24条の5・企業内容等の開示に関する内閣府令19条)
  3. 上記のほか、投資判断材料として有用なもの(定款変更等)

なお、開示義務のある会社情報に関し報道等があった場合で証券取引所が必要と認めたときは、証券取引所上場会社に対し照会を行うことができるようになっており、照会結果によっては開示を求めることができる。

開示基準

会社情報の開示基準は、複数の要素で構成されている。

発生プロセスによる区分

情報種別:情報の発生プロセスにより、以下の3つに区分される。

  1. 決定事実:取締役会常務会経営会議および代表取締役等による決議・決定等の自己決定されたもの(内部要因・自律要因)
  2. 発生事実:災害、事件、事故、訴訟提起および行政処分等の自己の意思と無関係に発生したもの(外部要因・他律要因)
    • 訴訟の提起、行政処分、災害による損害、業務遂行の過程で生じた損害、上場廃止の原因となる事実等
  3. 決算情報:

業績に及ぼす影響による区分

軽微基準:内容により、以下の3つに区分される。なお、上場会社・子会社とも企業グループ(連結決算上)の財務諸表の数値を参照し、軽微基準の判定を行う。ただし、上場会社については、インサイダー取引規制上の重要事実に該当する場合は、上場会社の財務諸表の数値を参照する。(2010年6月28日までは、上場会社は、一律、上場会社の財務諸表の数値を参照することとされていた。)

  1. 軽微基準なし:必ず開示しなければならない。
  2. 軽微基準あり:財務諸表の情報に基づき算出される「軽微基準」のいずれかに該当した場合には、必ず開示しなければならない(=全てに該当しない場合のみ、開示不要)。軽微基準として使用されるもののうち、代表的なものは以下のとおり。
    • 売上高基準:当該事実により、売上高が10%以上増減する場合など。
    • 資産基準:当該事実により、純資産が3%以上増減する場合など。(30%以上増減もある。)
    • 利益基準:当該事実により、経常利益または当期純利益が30%以上増減する場合など。
  3. 任意開示など:軽微基準とは無関係に会社が任意で行う開示。なお、PR情報と呼ばれる報道機関へのみ伝達される手段も存在する。

発生源による区分

会社情報の発生源によっても開示基準が異なる。

  1. 上場会社上場会社の最終事業年度の財務諸表に基づき、開示基準が決定される。
  2. 子会社:上場会社グループの最終事業年度の連結財務諸表に基づき、開示基準が決定される。
  3. 非上場親会社親会社が国内外いずれの金融商品取引所にも上場していない場合に、当該非上場親会社に関する事項の開示が義務付けられる。

開示の求められる会社情報

  • 上場会社に係る情報・子会社に係る情報・非上場親会社等に係る情報の3表に列挙されているものが開示の求められる会社情報になる。各々の末尾には「その他~会社の運営、業務、若しくは財産又は当該上場株券等に関する重要な事項・事実」というものがあり、これをバスケット条項と呼ぶ。インサイダー取引規制上の重要事実にも同様のものがあり、「列挙されたものに限定して開示すればよいというものではない」ことに十分注意する必要がある。ただし、インサイダー取引規制上の重要事実と異なる点は、一部軽微基準が設けられていることである。
  • 有名な重要事実としては、裁判の結果、薬の副作用に関する情報がインサイダー取引規制上の重要事実に該当するとされた例があり、現行制度では、適時開示を行うべき事実に該当するといえる。また、社債の発行は通常、重要事実に該当しないとされているものの、D/Eレシオを大幅に変動させるような規模で発行がなされた場合については、重要事実に該当する可能性があるとされる。他に、発行済株式総数の10%以上の自己株式を消却する場合や反対株主買取請求を受けた場合なども、重要事実に該当する可能性があると考えられる。

共通して開示すべき内容

  • 2009年12月に、原則として共通して開示すべき内容が、以下のとおり明確化された。(有価証券上場規程施行規則第402条の2)
    1. 上場会社が決定事実を決定した「理由」または発生事実が発生した「経緯」
    2. 決定事実または発生事実の「概要」
    3. 決定事実または発生事実に関する「今後の見通し」
    4. その他東京証券取引所が「投資者の投資判断上重要と認める事項」

上場会社に係る情報

決定事実
:有価証券上場規程第402条1号
発生事実
:有価証券上場規程第402条2号
決算情報・その他
  1. 発行する株式、処分する自己株式、発行する新株予約権、処分する自己新株予約権を引き受ける者の募集又は株式、新株予約権の売出し(※1)(※2)(※4)
  2. 発行登録及び需要状況調査の開始
  3. 資本金の額の減少(※2)
  4. 資本準備金又は利益準備金の額の減少(※2)
  5. 自己株式の取得(※2)
  6. 株式無償割当て(※2)又は新株予約権無償割当て
  7. 株式の分割(※2)又は併合
  8. 剰余金の配当(※2)
  9. 株式交換(※2)(※4)
  10. 株式移転(※2)(※4)
  11. 合併(※2)(※4)
  12. 会社分割(※2)(※4)
  13. 事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け(※1)(※2)(※4)
  14. 解散(合併による解散を除く。)(※2)
  15. 新製品又は新技術の企業化(※1)(※2)
  16. 業務上の提携又は業務上の提携の解消(※1)(※3)
  17. 子会社等の異動を伴う株式又は持分の譲渡又は取得その他の子会社等の異動を伴う事項(※1)(※3)(※4)
  18. 固定資産の譲渡又は取得(※1)(※3)
  19. リースによる固定資産の賃貸借(※1)
  20. 事業の全部又は一部の休止又は廃止(※1)(※3)
  21. 上場廃止の申請(※3)
  22. 破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立て(※3)(※4)
  23. 新たな事業の開始(※1)(※3)
  24. 公開買付け又は自己株式の公開買付け
  25. 公開買付け等に関する意見表明等
  26. ストック・オプションの付与
  27. 代表取締役又は代表執行役の異動(※4)
  28. 人員削減等の合理化
  29. 商号又は名称の変更
  30. 単元株式数の変更又は単元株式数の定めの廃止若しくは新設
  31. 決算期変更(事業年度の末日の変更)
  32. 預金保険法第74条第5項の規定による申出(※3)
  33. 特定調停法に基づく特定調停手続による調停の申立て(※1)
  34. 上場債券等の繰上償還又は社債権者集会の招集その他権利に係る重要な事項
  35. 公認会計士等の異動(※4)
  36. 継続企業の前提に関する事項の注記
  37. 重要な欠陥又は評価結果不表明の旨を記載する内部統制報告書の提出
  38. 株式事務代行機関への株式事務の委託の取止め
  39. 定款の変更(※1)
  40. その他上場会社の運営、業務、若しくは財産又は当該上場株券等に関する重要な事項(※1)(※2)(※4)
  1. 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害(※1)(※2)(※4)
  2. 主要株主又は主要株主である筆頭株主の異動(※2)(※4)
  3. 上場廃止の原因となる事実(※2)
  4. 訴訟の提起又は判決等(※3)(※4)
  5. 仮処分命令の申立て又は決定等(※1)(※3)
  6. 免許の取消し、事業の停止その他これらに準ずる行政庁による法令等に基づく処分又は行政庁による法令違反に係る告発(※1)(※3)
  7. 親会社の異動、支配株主(親会社を除く。)の異動又はその他の関係会社の異動(※3)
  8. 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行の申立て又は通告(※3)(※4)
  9. 手形等の不渡り又は手形交換所による取引停止処分(※3)(※4)
  10. 親会社等に係る破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行の申立て又は通告(※3)
  11. 債権の取立不能又は取立遅延(※1)(※3)(※4)
  12. 主要取引先との取引停止(※1)(※3)
  13. 債務免除等の金融支援(※1)(※3)
  14. 資源の発見(※1)(※3)
  15. 株式又は新株予約権の発行差止請求
  16. 株主総会の招集請求
  17. 保有有価証券の含み損(※1)
  18. 社債券に係る期限の利益の喪失
  19. 上場債券等に係る繰上償還又は社債権者集会の招集その他権利に関する重要な事項
  20. 公認会計士等の異動
  21. 有価証券報告書又は四半期報告書の提出遅延
  22. 財務諸表等の監査報告書における不適正意見、意見不表明、継続企業の前提に関する事項を除外事項とした限定付適正意見
  23. 内部統制監査報告書における不適正意見意見不表明
  24. 株式事務代行委託契約の解除通知の受領等
  25. その他上場会社の運営、業務、若しくは財産又は当該上場株券等に関する重要な事実(※1)(※2)(※4)

決算情報

  1. 決算短信
    :有価証券上場規程第404条
  2. 四半期決算短信
    :有価証券上場規程第404条
  3. 業績予想の修正等(※1)(※2)(※4)
    :有価証券上場規程第405条第1項
  4. 配当予想の修正等(※1)
    :有価証券上場規程第405条第2項

その他の情報

  1. 投資単位の引下げに関する開示
    :有価証券上場規程第409条
  2. MSCB等の転換又は行使の状況に関する開示
    :有価証券上場規程第410条
  3. 支配株主等に関する事項の開示
    :有価証券上場規程第411条
  4. 財務会計基準機構への加入状況に関する開示
    :有価証券上場規程第409条の2
  5. 上場廃止等に関する開示
  6. コーポレート・ガバナンスに関する開示(コーポレート・ガバナンス報告書:決算短信から分離独立)
    :有価証券上場規程第419条
(※1)軽微基準あり
(※2)インサイダー取引規制上の重要事実(金融商品取引法)であるため、上場会社の個別決算数値も開示義務の判断材料となる。
(※3)インサイダー取引規制上の重要事実(金融商品取引法施行令)であるため、上場会社の個別決算数値も開示義務の判断材料となる。
(※4)臨時報告書提出義務のある事実

子会社に係る情報

決定事実 発生事実 決算情報・その他
  1. 株式交換(※1)(※2)(※4)
  2. 株式移転(※1)(※2)(※4)
  3. 合併(※1)(※2)(※4)
  4. 会社分割(※1)(※2)(※4)
  5. 事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け(※1)(※2)(※4)
  6. 解散(合併による解散を除く。)(※1)(※2)
  7. 新製品又は新技術の企業化(※1)
  8. 業務上の提携又は業務上の提携の解消(※1)(※3)
  9. 孫会社の異動を伴う株式又は持分の譲渡又は取得その他の孫会社の異動を伴う事項(※1)(※3)
  10. 固定資産の譲渡又は取得(※1)(※3)
  11. リースによる固定資産の賃貸借(※1)
  12. 事業の全部又は一部の休止又は廃止(※1)(※3)
  13. 破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立て(※3)
  14. 新たな事業の開始(※1)(※3)
  15. 公開買付け又は自己株式の公開買付け
  16. 商号又は名称の変更(※1)
  17. 預金保険法第74条第5項の規定による申出(※3)
  18. 特定調停法に基づく特定調停手続による調停の申立て
  19. その他上場会社の子会社の運営、業務又は財産に関する重要な事項(※1)(※2)
  1. 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害(※1)(※2)(※4)
  2. 訴訟の提起又は判決等(※1)(※3)(※4)
  3. 仮処分命令の申立て又は決定等(※1)(※3)
  4. 免許の取消し、事業の停止その他これらに準ずる行政庁による法令に基づく処分又は行政庁による法令違反に係る告発(※1)(※3)
  5. 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行の申立て又は通告(※3)
  6. 手形等の不渡り又は手形交換所による取引停止処分(※3)(※4)
  7. 孫会社に係る破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行の申立て又は通告(※1)(※3)(※4)
  8. 債権の取立不能又は取立遅延(※1)(※3)(※4)
  9. 取引先との取引停止(※1)(※3)
  10. 債務免除等の金融支援(※1)(※3)
  11. 資源の発見(※1)(※3)
  12. その他子会社の運営、業務又は財産に関する重要な事実(※1)(※2)(※4)
  1. 業績予想の修正等(※2)
(※1)軽微基準あり
(※2)インサイダー取引規制上の重要事実(金融商品取引法)
(※3)インサイダー取引規制上の重要事実(金融商品取引法施行令)
(※4)臨時報告書提出義務のある事実

非上場親会社等に係る情報

決定事実 発生事実 決算情報・その他
  1. 資本金の額の減少
  2. 株式交換
  3. 株式移転
  4. 合併
  5. 会社分割
  6. 事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け(※1)
  7. 解散
  8. 新製品又は新技術の企業化(※1)
  9. 業務上の提携又は業務上の提携の解消(※1)
  10. 子会社の異動を伴う株式又は持分の譲渡又は取得その他の子会社の異動を伴う事項(※1)
  11. 固定資産の譲渡又は取得(※1)
  12. 事業の全部又は一部の休止又は廃止(※1)
  13. 破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立て
  14. 新たな事業の開始(※1)
  15. 公開買付け又は自己株式の公開買付け
  1. 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害(※1)
  2. 主要株主又は主要株主である筆頭株主の異動
  3. 手形等の不渡り又は手形交換所による取引停止処分
  1. 非上場の親会社等の決算内容
(※1)軽微基準あり

不適正開示に対する処分

従来から、不適正開示があった場合には口頭注意処分・改善報告書の提出等の制裁的措置を行っていた。しかしながら上場会社の情報開示全般において不正が横行したことを受け、2005年より「宣誓書制度」と「有価証券報告書等の適正性に関する確認書制度」が開始された。さらには、市場に対する株主及び投資者の信頼を毀損したと取引所が認めたときには、上場契約違約金を求めることができるようになっている。(制度変更に伴い、経緯書が廃止となった)

処分

  1. 口頭注意処分
    • 不適正開示を行ったとして、その度合いが最も軽微な場合に受ける注意処分のこと。口頭注意処分の件数は集計され、統計データとして公表。
  2. 改善報告書
    • 不適正開示を行ったとして改善の必要性が高いと認められるときは、上場会社は、その経緯及び改善措置を記載した報告書(以下「改善報告書」という。)の提出が求められる。改善報告書を提出した上場会社は、会社名等が公表される。
  3. 開示注意銘柄指定
    • 不適正開示を行った上場会社が改善報告書の提出を速やかに行わない場合には、証券取引所が開示注意銘柄に指定して公表するもの。
  4. 特設注意市場銘柄
    • 上場会社が証券取引所との契約に違反した場合、証券取引所はその上場会社に対して内部管理体制等について改善の必要性が高いとして、特設注意市場銘柄に指定すこととができる。指定された上場会社は、内部管理体制確認書を提出しなければならない。
  5. 上場契約違約金
    • 上場会社は、上場の際に証券取引所と契約を取り交わし、証券取引所の定める規程・規則を遵守することを約する。従来は、上場会社が契約に反したとしても社会的制裁がなされる程度であったが、証券取引所が違約金を徴求できるようになった。特設注意市場銘柄に指定された上場企業は指定と同時に徴求される。違約金額は程度により異なる。
  6. 上場廃止
    • 適時開示に係る宣誓書で宣誓した事項について重大な違反をした等の場合には、上場契約違反の処分として上場廃止とされる。

廃止となった処分

  1. 経緯書
    • 不適正開示を行ったとして、口頭注意処分よりも深刻であるものの、改善報告書の提出を求めるほどでない場合に提出を求められていた書類のこと。規則変更に伴い、改善報告書に吸収・統合されたことで廃止となった。

不適正開示防止のため求められる上場会社の対応

現行

取引所規則の遵守に関する確認書

2010年6月29日に施行された改正有価証券上場規程により、株式等を上場する会社等の代表者が提出を義務付けられる書類。

提出書類および記載事項

取引所規則の遵守に関する確認書

  • 予め以下の定型文が用意されており、そこに会社名を入れるとともに、代表者(社長・CEO等)が署名・捺印することで完成する。(前身の適時開示に係る宣誓書と同様。)
    • 私は、当社が、その発行する株券を上場するについて、株式会社東京証券取引所(以下「取引所」という。)が定めた次の事項を承諾したことを確認します。
      1. 取引所が現に制定している及び将来制定又は改正することのある業務規程、有価証券上場規程、その他の規則及びこれらの取扱いに関する規定(以下「諸規則等」という。)のうち、当社及び上場される当社の株券(以下「上場株券」という。)に適用のあるすべての規定を遵守すること。
      2. 諸規則等に基づいて、取引所が行う上場株券に対する上場廃止、売買停止その他の措置に従うこと。
提出義務
  1. 新たに上場する場合
  2. 代表者の異動があった場合

廃止

適時開示に係る宣誓書

上場会社は、その代表者が、投資者への会社情報の適時適切な開示が健全な証券市場の根幹をなすものであることを十分に認識し、常に投資者の視点に立った迅速、正確かつ公平な会社情報の開示を徹底するなど誠実な業務遂行に努めることについて真摯な姿勢で臨む旨を宣誓した「宣誓書」と、その添付書類として適時開示に係る社内体制の状況を記載した「適時開示体制概要書」の提出が求められる。なお、宣誓書制度は2005年に開始されたが、2010年、提出義務のひとつである「前回提出から5年間が経過するとき」を初めて迎えることから、代表者の異動がなかった上場会社においても見直しが入った。
一方、2010年の制度変更に伴い適時開示に係る宣誓書は取引所規則の遵守に関する確認書へ、適時開示体制概要書はコーポレート・ガバナンス報告書の内容とすることとなり、適時開示に係る宣誓書制度は終焉を迎えた。

提出書類および記載事項
  1. 適時開示に係る宣誓書
    • 予め以下の定型文が用意されており、そこに会社名を入れるとともに、代表者(社長・CEO等)が署名・捺印することで完成する。
      • (会社名)は、投資者への適時適切な会社情報の開示が健全な金融商品市場の根幹をなすものであることを十分に認識するとともに、常に投資者の視点に立った迅速、正確かつ公平な会社情報の開示を適切に行えるよう添付書類に記載した社内体制の充実に努めるなど、投資者への会社情報の適時適切な提供について真摯な姿勢で臨むことを、ここに宣誓します。
  2. 適時開示体制概要書
    • 宣誓書のような定型文はなく、ガイドラインでは適時開示体制の整備のポイントとして紹介される事項に基づき記載する。ただし、機械的に項目を網羅する必要はなく、メリハリをつけて適時開示体制の「概要」を記載することで足りる。適時開示体制の整備のポイントは以下のとおり。
    1. 適時開示業務を執行する体制の整備にあたり検討すべき事項
      1. 経営者の姿勢・方針の周知・啓蒙等
        1. 経営者の姿勢・方針の明示
        2. 経営者の姿勢・方針の周知・啓蒙
        3. 経営者による姿勢・方針の実践
        4. 適時開示体制との関連を考慮したコーポレート・ガバナンス
      2. 自社の適時開示に関する特性・リスクの認識・分析
        1. 適時開示に関する自社の特性の認識・分析
        2. 適時開示に関するリスク及びその原因となる事項の認識・分析
    2. 適時開示業務を執行する体制
      1. 開示担当組織の整備
        1. 開示担当部署の整備
        2. 全社的な対応体制
        3. 開示関する教育
        4. 体制の整備の範囲
      2. 適時開示手続の整備
        1. 開示手続と開示プロセス
        2. 開示対象情報の種類
        3. 整備した手続の社内への周知徹底
        4. 適時開示手続の要点
          1. 情報収集プロセス
            1. 迅速性:適時開示すべき情報を迅速に収集する
            2. 網羅性:適時開示すべき情報を網羅的に収集する
            3. 適時性:適時開示すべき情報を適時に開示できるよう開示業務を管理する
          2. 分析・判断プロセス
            1. 適法性:関連法令、有価証券上場規程等を遵守して適時開示業務を実施する
            2. 正確性:適時開示すべき情報の正確性を確保する
            3. 公式性:情報の正確性や適法性に加えて、開示資料の内容の十分性、明瞭性等を確認した上で、会社として公式な承認・決定等を行う
          3. 公表プロセス
            1. 公平性:開示資料の公表にあたり、公平性に配慮する
            2. 積極性:開示資料の公表にあたり、積極的に対応する
        5. 適時開示手続と密接に関連する他の社内手続との関連性
      3. 適時開示体制を対象としたモニタリングの整備
        1. 内部監査部門等によるモニタリング
        2. 監査役又は監査委員会によるモニタリング
      4. 適時開示体制概要図
提出義務
  • 宣誓書
  1. 新たに上場する場合
  2. 代表者の異動があった場合
  3. 前回提出から5年間が経過した場合
  • 適時開示体制概要書
  1. 新たに上場する場合
  2. 代表者の異動があった場合
  3. 前回提出から5年間が経過した場合
  4. 適時開示に係る社内体制が変更になった場合
開示場所
  • 宣誓書及び適時開示体制概要書は、証券取引所のWebサイトで公衆の縦覧に供される。
関連資料

有価証券報告書等の適正性に関する確認書

上場会社の有価証券報告書および半期報告書について、上場会社の代表者が、不実の記載がないと認識している旨およびその理由を記載した書面(有価証券報告書等の適正性に関する確認書)の提出が求められる。

提出義務

旧証券取引法では任意提出だった確認書を提出した場合には、当該有価証券報告書等の適正性に関する確認書の提出は不要とされていた。そのため、本制度は、任意の確認書を提出していない上場会社のためにあったといえる。
金融商品取引法が施行され四半期報告書制度や内部統制報告書制度とともに、確認書制度が提出が義務化されたことに伴い、「有価証券報告書等の適正性に関する確認書」の提出は実質不要となった。

開示場所
  • 有価証券報告書等の適正性に関する確認書は、証券取引所のWebサイトで公衆の縦覧に供される。

証券取引所での取扱い

根拠規程

開示システム

TDnet

  • TDnet(ティー・ディー・ネット)と呼ばれるシステムに上場会社が適時開示する(べき)会社情報を登録し、開示担当者と内容・様式等の確認に関するやりとりを経た後、証券取引所のWEBサイトにおいて開示される。
  • TDnetは、東京証券取引所が開発・導入し、その後、名古屋証券取引所をはじめとする他の証券取引所も同様の動きを見せ、遂には2005年12月から大阪証券取引所TDnetを採用することとなり、これにより投資者の情報取得の利便性向上と上場会社側の事務負担軽減に貢献したと言われている。
  • EDINETXBRLが採用されることに伴い、先駆けてTDnetにおいてもXBRLで作成された計算書類を決算単信の内容とするよう求められ、この結果、計算書類の作成事務が効率化されたといわれている。もっともXBRL導入のため、一時的な負担は発生した。

ED-NET

  • かつては大阪証券取引所が独自システムED-NET(イー・ディー・ネット)を運用し、大証上場会社に対し適時開示する(べき)会社情報を登録させていた。ED-NETで閲覧できたのは、大証上場会社の情報のみであった。

EDINET

  • EDINET(エディネット)は、金融庁が運営している金融商品取引法に基づくいわゆる法定開示書類が公衆の縦覧に供されているシステムで、適時開示とは直接の関係はないものの、ディスクロージャーの観点で相関がある。TDnetの開示情報と組み合わせて利用すると、より適切な投資判断をしやすいといわれている。

適時開示情報閲覧サービス

なお、いずれも最終的には同じ適時開示情報閲覧サービスへと繋がるようになっている。

関連

外部リンク

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