賃金台帳
賃金台帳(ちんぎんだいちょう)とは、労働基準法等を根拠とする、事業場に備えておかなければならない法定帳簿の一つで、労働者の賃金額やその計算の基礎となる事項等を記した書類のことである。
概要
労働基準法による、いわゆる法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)の一つで、労働者の適切な労務管理に必要な書類である。賃金計算の基礎となるほか、源泉徴収・年末調整などの会計・税務処理の基本データとなる重要な文書でもある[1]。 賃金台帳は、事業場の規模などに関係なく、労働者を雇い入れているすべての事業場に作成・整備が義務づけられる。また対象となる労働者は正社員、パート・アルバイト等雇用形態を問わず、全ての労働者であり、労働者名簿とは異なり日々雇い入れられる者についても調製は必要である。労働組合専従者については、当該組合に使用され賃金を支払われる労働者であるならば、組合専従者の賃金台帳は当該組合に備え付けなければならない(昭和24年11月9日基収2747号)。 一般に多くの企業では賃金の支払いの都度、労働者に対し、賃金(給与)に関する明細書(いわゆる給与明細(書))を発行している。労働基準法の本則では給与明細を発行する義務は規定されていないが、賃金を金融機関への振り込みによって支払う場合には給与明細を発行することが求められる(平成10年9月10日基発第530号)。さらに、所得税法では給与明細の交付を義務付けていて(所得税法第231条、所得税法施行規則第100条[2])、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の各保険料を控除したときは、使用者は計算書を発行する義務があることから(健康保険法第167条3項、厚生年金保険法第84条3項、労働保険徴収法第31条1項)、実際には給与明細に一括記載することが慣行となっている。もっとも、一般的な給与明細では労働時間数等は記入されていないことが多いため、下記の記載事項が網羅されていない限り、給与明細の発行を以て賃金台帳の作成に代えることはできない。 記載事項賃金台帳に記載しなければならない事項は、労働者各人ごとに以下の各号である(施行規則第54条1項)。常時使用される労働者(1ヶ月を超えて引続き使用される日々雇い入れられる者を含む。)については様式第20号、日々雇い入れられる者(1ヶ月を超えて引続き使用される者を除く。)については様式第21号によって、これを調製しなければならないとされるが(施行規則第55条)、必要事項が記載されていれば異なる様式を用いることを妨げるものではない(施行規則第59条の2)。必要記載事項を分割して別紙に記載し数冊の賃金台帳とする場合には、同一労働者に対する記載事項について総合的に監督しうるものであれば差し支えない(昭和25年1月13日基収4083号)。
使用者は、労働者名簿と賃金台帳をあわせて調製することができる(施行規則第55条の2)。派遣労働者については、労働者名簿、賃金台帳、派遣元管理台帳(労働者派遣法第37条)については、法令上記載しなければならない事項が具備されていれば、必ずしも別個に作成しなければならないものではなく、労働者名簿等を合わせて一つの台帳を作成することとしても差し支えない(昭和61年5月6日基発333号)。なお第108条は必ずしも書面であることを求めていないため[3]、以下の要件を満たす場合は賃金台帳を電子データによって作成・保存することも認められる(平成7年3月10日基収94号、平成17年3月31日基発0331014号)。この方法を用いれば、本来事業場ごとに備え付けておかなければならない賃金台帳を本社で一括管理することも可能になる。
使用者は、作成した賃金台帳を3年間保存しなければならない(第109条、第143条)[4]。起算日は最後の記入をした日である(施行規則第56条2号)。もっとも、第115条において退職手当の請求時効が5年とされているため退職金の支払いについて疑義がある場合に備えて5年間保存することが望ましい。 罰則第108条、第109条の規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処する(第120条)。 脚注
外部リンク
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