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蝦夷層群

蝦夷層群
読み方 えぞそうぐん
英称 The Yezo Group
地質時代 アプチアン - 暁新世
岩相 砂岩泥岩凝灰岩
産出化石 アンモナイトイノセラムス恐竜モササウルス類首長竜ウミガメ
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蝦夷層群(えぞそうぐん)は、北海道浦河町から稚内市宗谷岬を通りロシア連邦サハリン州西部アレクサンドロフスク・サハリンスキーまで北海道中軸部を貫くように分布する[1][2]前期白亜紀アプチアン期から古第三紀暁新世にかけて堆積した海成層の地層[3]。アジア大陸東岸の前弧海盆に堆積し、全層厚は約10,000メートルに達する[3]

層序

Takashima et al. (2004)では、蝦夷層群は下位から順に惣芦別川層シューパロ川層丸山層日陰ノ沢層佐久層鹿島層函淵層の主に7累層に区分される。また、下部日陰ノ沢層から佐久層に対応する三笠層と、鹿島層に対応する羽幌川層があり、三笠層と羽幌川層は浅海層である[3]

最下層の惣芦別川層は、蝦夷層群の下位層である空知層群尻岸馬内川層と整合関係にある。放散虫に富む惣芦別川層は主に珪質暗灰色泥岩からなり、下部には海洋無酸素事変OAE 1aの痕跡が見られる。惣芦別川層からは大型生物の化石がほぼ産出しない一方、シューパロ川層は主に砂岩と泥岩の互層からなり、アンモナイトなどの化石が産出する。シューパロ川層の中部の部層には大型有孔虫のオルビトリナを含むオルビトリナ石灰岩が見られる。当該の石灰岩白亜紀の北太平洋地域における最北の礁性石灰岩であり、当時の温暖環境を示唆している[3]

丸山層は珪長質凝灰岩と凝灰質砂岩からなり、北海道中軸部の全域に亘る鍵層として扱われる。主に暗灰色泥岩からなる日陰ノ川層の下部からは、OAE1 dに対応する海洋無酸素事変の痕跡が見られる。また、砂岩と泥岩の互層からなる佐久層ではOAE 2が確認され、同時期の三笠層からはトリゴニアカキなど浅海性二枚貝類の化石が産出する。暗灰色泥岩からなる鹿島層、シルト岩などからなる羽幌川層の上位には、三笠層と同様に多様な堆積環境を示す函淵層が堆積する[3]

化石

蝦夷層群からは生物の化石が数多く産出する。世界的なアンモナイト産地である蝦夷層群では報告されたアンモナイトの種数が数百種に上り[1]ニッポニテス[1]エゾセラス[4]などがいる。アンモナイトの他に多産する生物として二枚貝のイノセラムスがあり、示準化石として用いられている[1]

脊椎動物化石も報告されており、恐竜ではテリジノサウルス科パラリテリジノサウルス[5]ハドロサウルス科カムイサウルス[6]ニッポノサウルス[1]がいる。海棲爬虫類の化石も発見され、具体的にはモササウルス科爬虫類のタニファサウルス・ミカサエンシスエゾミカサリュウ[7]およびフォスフォロサウルス・ポンペテレガンス[8]ウミガメメソダーモケリス[9]エラスモサウルス科プリオサウルス科ポリコチルス科首長竜などが報告されている[10]

出典

  1. ^ a b c d e 辻野泰之. “世界的なアンモナイト産地:蝦夷層群”. 徳島県立博物館. 2022年5月16日閲覧。
  2. ^ Shigeta, Yasunari; Maeda, Haruyoshi (2005). “Yezo Group Research in Sakhalin—A Historical Review”. The Cretaceous System in the Makarov Area, Southern Sakhalin, Russian Far East (National Science Museum Monographs) 31: 1–24. https://www.kahaku.go.jp/english/research/researcher/papers/18151.pdf. 
  3. ^ a b c d e 高嶋礼詩、佐野晋一、林圭一「蝦夷層群下部~中部に記録された白亜紀中頃の温暖化と古環境変動」『地質学雑誌』第124巻第6号、2018年、381-389頁、doi:10.5575/geosoc.2018.0014 
  4. ^ 北海道羽幌町から白亜紀の新種アンモナイトを発見 Yezoceras elegans (エゾセラス・エレガンス) と命名』(プレスリリース)三笠市立博物館、2021年1月13日、1-6頁https://www.city.mikasa.hokkaido.jp/hotnews/files/00010100/00010197/20210110105847.pdf2021年1月18日閲覧 
  5. ^ 北海道中川町の恐竜化石を新属新種「パラリテリジノサウルス・ジャポニクス」と命名~恐竜類テリジノサウルス科の爪の進化~』(プレスリリース)北海道大学岡山理科大学中川町エコミュージアムセンター、2022年5月9日https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220509_pr3.pdf2022年5月9日閲覧 
  6. ^ むかわ竜を新属新種の恐竜として「カムイサウルス・ジャポニクス(Kamuysaurus japonicus)」と命名〜ハドロサウルス科の起源を示唆〜』(プレスリリース)北海道大学、穂別博物館筑波大学、2019年9月6日https://www.hokudai.ac.jp/news/190906_pr.pdf2022年5月17日閲覧 
  7. ^ 展示室1【白亜紀の世界と化石】”. 三笠市立博物館. 2022年5月16日閲覧。
  8. ^ Konishi, Takuya; Caldwell, Michael W.; Nishimura, Tomohiro; Sakurai, Kazuhiko; Tanoue, Kyo (2015). “A new halisaurine mosasaur (Squamata: Halisaurinae) from Japan: the first record in the western Pacific realm and the first documented insights into binocular vision in mosasaurs”. Journal of Systematic Palaeontology: 1–31. doi:10.1080/14772019.2015.1113447. http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14772019.2015.1113447. 
  9. ^ Hirayama R, Chitoku T. (1996). "Family Dermochelyidae (Superfamily Chelonioidea) from the Upper Cretaceous of North Japan". Transactions and proceedings of the Palaeontological Society of Japan. New series 184: 597-622.
  10. ^ 田原健太郎、佐藤たまき、平山廉「北海道北西部より産出した白亜紀海生爬虫類化石」『むかわ町立穂別博物館研究報告』第27号、2012年、23-33頁。 
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