柴崎 友香(しばさき ともか、本名同じ、1973年10月20日 - )は、日本の小説家。
経歴
大阪府大阪市大正区出身。大阪府立市岡高等学校、大阪府立大学総合科学部国際文化コース卒業。
母は広島県呉市の出身で、祖父は『わたしがいなかった街で』に書かれた通り、広島市の原爆ドーム近くのホテルでコックとして働き、原爆投下の直前、呉市に移り難を逃れ、後に大阪に出た[2]。『わたしがいなかった街で』に出てくる「赤い橋」は音戸大橋を指す[2]。
小学校4年生の国語の教科書で、"たった三行でわたしに小説を書き続けるエネルギーをくれたのはジャン・コクトーの「シャボン玉」という詩だった"[3]という。高校時代から小説を書き始める。大学では写真部に所属[4]。大学で人文地理学を専攻したことは「風景」を意識する作風に大きな影響を与えた[5]。大学卒業後は4年ほど機械メーカーでOLとして勤めた。
1998年、「トーキング・アバウト・ミー」で第35回文藝賞の最終候補になる(受賞者は鹿島田真希)。1999年、短編「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が『文藝別冊 J文学ブック・チャートBEST200』に掲載されて作家デビューする。
2004年、『きょうのできごと』が田中麗奈と妻夫木聡の主演で行定勲監督により『きょうのできごと a day on the planet』のタイトルで映画化。
2006年に第24回咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞し、『その街の今は』で第23回織田作之助賞大賞を受賞。2007年、『その街の今は』で第136回芥川龍之介賞候補、第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞[6]。同年、『また会う日まで』で第20回三島由紀夫賞候補、「主題歌」で第137回芥川龍之介賞候補。
2006年より名久井直子、長嶋有、福永信、法貴信也とともに同人作家として同人活動も行なっている。作家の保坂和志から高い評価を受けるが、三島由紀夫賞選考では保坂との作風の類似も指摘されている(福田和也の評)。
2010年、「ハルツームにわたしはいない」で第143回芥川龍之介賞候補、『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞[7]。2014年、「春の庭」で第151回芥川龍之介賞受賞[8]。
2018年、『寝ても覚めても』が東出昌大主演で濱口竜介監督により映画化[9]。同作は第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された[10]。
『読売新聞』土曜夕刊3面(からだCafe)の月替わり連載「一病息災」で2024年7月、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断された体験を明らかにした。若い頃から、部屋を散らかしやすく、用事を忘れたり遅刻したりすることが多いと自覚しており、『片づけられない女たち』を読んで自分のことだと感じて約20年間、情報を集めつつ専門医の診察を受けたいと考えてきたという[11]。2024年刊行の『あらゆることは今起こる』(医学書院)は、そうした体験を振り返った著作である。
2024年、『続きと始まり』で芸術選奨文部科学大臣賞[12]と谷崎潤一郎賞[13]を受賞。
受賞歴
作品一覧
小説
- 『きょうのできごと』(2000年、河出書房新社/2004年、河出文庫)
- レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー(『文藝別冊:J文学ブック・チャートBEST200』)
- 途中で(『文藝』1999年冬号)
- ハニーフラッシュ、オオワニカワアカガメ、十年後の動物園(書き下ろし)
- きょうのできごとのつづきのできごと(文庫版のみ/『文藝』2004年春号)
- 『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?』(2001年、河出書房新社/2006年、河出文庫)
- 次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?(『文藝』2000年夏号)
- エブリバディ・ラブズ・サンシャイン(『文藝』2001年春号)
- 『青空感傷ツアー』(2004年、河出書房新社/2005年、河出文庫)
- 『ショートカット』(2004年、河出書房新社/2007年、河出文庫)
- ショートカット(『文藝』2003年秋号)
- やさしさ(『文藝』2004年夏号)
- パーティー(書き下ろし)
- ポラロイド(書き下ろし)
- 『フルタイムライフ』(2005年、マガジンハウス/2008年、河出文庫・ISBN 4309409350)
- 初出:『ウフ.』2004年5月号~2005年2月号
- 『その街の今は』(2006年、新潮社/2009年、新潮文庫・ISBN 4101376417)
- 『また会う日まで』(2007年、河出書房新社/2010年、河出文庫)
- 『主題歌』(2008年、講談社/2011年、講談社文庫)
- 主題歌(『群像』2007年6月号)
- 六十の半分(『朝日新聞』関西版2006年1月5日、12日、19日、26日)
- ブルー、イエロー、オレンジ、オレンジ、レッド(『Melbourne 1』2006年11月)
- 『星のしるし』(2008年、文藝春秋・ISBN 978-4163274805)
- 『ドリーマーズ』(2009年、講談社/2012年、講談社文庫)
- ハイポジション(『群像』2005年5月号)
- クラップ・ユア・ハンズ!(『Иркутск2』〔イルクーツク2〕2007年12月)
- 夢見がち(『esora vol.2』2005年7月)
- 束の間(『esora vol.3』2006年4月)
- 寝ても覚めても(『esora vol.5』2008年8月)
- ドリーマーズ(『群像』2009年6月号)
- 『寝ても覚めても』(2010年、河出書房新社/2014年、河出文庫)
- 『ビリジアン』(2011年、毎日新聞社/2016年、河出文庫)
- 『虹色と幸運』(2011年、筑摩書房/2015年、ちくま文庫)
- 『わたしがいなかった街で』2012年、新潮社/2014年、新潮文庫)
- 『週末カミング』2012年、角川書店/2017年、角川文庫)
- 蛙王子とハリウッド(『野性時代』2006年8月号)
- ハッピーでニュー
- つばめの日(『野性時代』2008年12月号)
- なみゅぎまの日
- 海沿いの道
- 地上のパーティー
- ここからは遠い場所
- ハルツームにわたしはいない(『新潮』2010年6月号)
- 『星よりひそかに』(2014年、幻冬舎)
- 『春の庭』(2014年、文藝春秋/2017年、文春文庫)
- 春の庭(『文學界』2014年6月号)
- 糸(文庫版のみ/『新潮』2013年5月号)
- 見えない(文庫版のみ/『窓の観察』2012年9月)
- 出かける準備(文庫書き下ろし)
- 『パノララ』(2015年、講談社/2018年、講談社文庫)
- 『きょうのできごと、十年後』(2016年、河出書房新社/2018年、河出文庫)
- 『かわうそ堀怪談見習い』(2017年、KADOKAWA/2020年、角川文庫)
- 『千の扉』(2017年、中央公論新社/2020年、中公文庫)
- 『公園へ行かないか?火曜日に』(2018年、新潮社)
- 『つかのまのこと』(2018年、KADOKAWA)
- 『待ち遠しい』(2019年、毎日新聞出版/2023年、毎日文庫)
- 『百年と一日』(2020年、筑摩書房/2024年、ちくま文庫)
- 『続きと始まり』(2023年、集英社)
随筆
- 『ガールズファイル:27人のはたらく女の子たちの報告書』(マガジンハウス、2007年)
- ガールズファイル(『ハナコ・ウエスト』2005年6月号~2007年8月号)
- 毎日、寄り道。(『ハナコ・ウエスト』2004年5月号~2005年5月号)※小説
- 『見とれていたい わたしのアイドルたち』(マガジンハウス、2009年)
- 『よそ見津々(しんしん)』(日本経済新聞出版社、2010年)
- 『よう知らんけど日記』(京阪神エルマガジン社、2013年)
- 『宇宙の日』(ignition gallery、2020年)
- 『あらゆることは今起こる』(医学書院〈シリーズケアをひらく〉、2024年)ISBN 978-4-260-05694-6
対談集
- 『ワンダーワード』(小池書院、2008年)ISBN 978-4862253071
- ワンダーワード(『大阪芸術大学 大学漫画』vol.1~vol.9)特別編含む。
- 京都観光 2024原作/柴崎友香・作画/田雜芳一(『河南文藝 漫画篇』vol.3)
- 上條淳士とふたたび and 2008 Now――(新録書き下ろし)
共著
- 『いつか、僕らの途中で』(ポプラ社、2006年)共著・イラスト:田雜芳一
- 田雜芳一との往復書簡。『河南文藝 漫画篇』2004年初夏号~2005年新春号連載。
- オールマイティのよろめき(extra flight!)(Иркутск2〔イルクーツク2〕)
- 『大阪建築:みる・あるく・かたる』(京阪神エルマガジン社、2014年)共著:倉方俊輔
- 『大阪』(河出書房新社、2021年/河出文庫、2024年)共著:岸政彦
アンソロジー
ムック
- 『もうひとつの、きょうのできごと』(河出書房新社、2004年)ISBN 430901626X
- 映画出演者によるイメージ写真と、柴崎友香の書き下ろし短編小説から成っている。
単行本未収録作品
- ランドスケープ(『文藝』2003年夏号)
- あと少し(『文藝』2004年冬号)
- 小さな覗き窓(『集英社WEB文芸RENZABURO』連載中)※フォトエッセイ
- お餅の焦げたところ(『ODD ZINE』Vol.4)
- 知らなかった、と人々は言った(『文學界』2021年2月号)
- 現在の地点から(『文藝』2024年秋季号)
出演
ウェブ番組
脚注
- ^ 【BOOKセレクト】柴崎友香著「春の庭」スポーツ報知(2014年8月4日15時0分配信)2024年7月8日閲覧
- ^ a b “論ステーション:戦争は遠いけれど 野樹かずみさん/柴崎友香さん. 毎日新聞 2013年08月09日 大阪朝刊. <オピニオン opinion>”. 毎日新聞 (2013年8月9日). 2014年7月28日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 柴崎友香『よそ見津々』(日本経済新聞出版社)p.232で書いている。
シャボン玉の中には
庭は入れません
周囲(まわり)をくるくる回っています
同時に、コクトーが初めて書いた小説『ポトマック』もこの詩と同じ"世界のきらめきへの感動に満ちた眼差し"があるという。
- ^ “あの頃が作品に生きている(作家・柴崎友香)|わたしの20代|ひととき創刊20周年特別企画|ほんのひととき”. note(ノート) (2021年10月12日). 2024年7月8日閲覧。
- ^ “作家の読書道 第91回:柴崎友香さんその4「風景に興味を持つ」”. WEB本の雑誌(本の雑誌社) (2009年5月8日). 2024年7月8日閲覧。
- ^ “芸術選奨、文部科学大臣賞に森山良子さんら17人”. asahi.com (朝日新聞社). (2007年3月16日). http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200703160291.html 2018年5月9日閲覧。
- ^ “野間三賞の受賞作品がそれぞれ発表、野間文芸新人賞に柴崎友香と円城塔”. CINRA.NET (株式会社 CINRA). (2010年11月5日). https://www.cinra.net/news/2010-11-05-204832-php 2018年5月9日閲覧。
- ^ “第151回「芥川賞」は柴崎友香氏の『春の庭』 「直木賞」は黒川博行氏『破門』”. ORICON NEWS (oricon ME). (2014年7月17日). https://www.oricon.co.jp/news/2039912/full/ 2018年5月9日閲覧。
- ^ “東出昌大、主演映画「寝ても覚めても」で初の一人二役 ヒロインは唐田えりか”. スポーツ報知 (報知新聞社). (2017年7月5日). https://web.archive.org/web/20170706131533/http://www.hochi.co.jp/entertainment/20170704-OHT1T50234.html 2018年4月5日閲覧。
- ^ “是枝裕和&濱口竜介が、世界的名匠たちと競い合う!第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品決定”. NewsWalker (KADOKAWA). (2018年4月12日). https://moviewalker.jp/news/article/143566/ 2018年5月9日閲覧。
- ^ [一病息災]ADHD(1)小説家 柴崎友香さん:日常の困り事 発達障害?『読売新聞』夕刊2024年7月6日3面
- ^ 芸術選奨 文化庁 2024年8月27日閲覧
- ^ 第60回「谷崎潤一郎賞」は、柴崎友香さんの『続きと始まり』 中央公論新社 2024年8月27日閲覧。
- ^ “2016年度日本地理学会賞受賞者 - 日本地理学会”. 日本地理学会 - 公益社団法人日本地理学会は,地理学に関する学理及びその応用の研究に関する事業を行い,地理学の進歩普及を図り,もってわが国の学術の発展と科学技術の振興に寄与するとともに,地理教育の推進,社会連携の推進,国際協力の推進を図り,社会の発展に資することを目的としています. (2021年5月18日). 2022年4月29日閲覧。
- ^ "岸政彦×柴崎友香 共著エッセイ『大阪』(河出文庫)、第12回大阪ほんま本大賞特別賞に決定!."時事ドットコム(2024年10月4日). 2024年10月10日閲覧。
関連項目
外部リンク
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野間文芸新人賞 |
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- 第42回 李龍徳『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』
- 第43回 井戸川射子『ここはとても速い川』
- 第44回 町屋良平『ほんのこども』
- 第45回 朝比奈秋『あなたの燃える左手で』、九段理江「しをかくうま」
- 第46回 豊永浩平『月ぬ走いや、馬ぬ走い』
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1930年代 - 1950年代(第1回 - 第42回) |
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1960年代 - 1970年代(第43回 - 第82回) |
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1980年代 - 1990年代(第83回 - 第122回) |
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1980年代 |
- 第83回 該当作品なし
- 第84回 尾辻克彦「父が消えた」
- 第85回 吉行理恵「小さな貴婦人」
- 第86回 該当作品なし
- 第87回 該当作品なし
- 第88回 加藤幸子 「夢の壁」/ 唐十郎「佐川君からの手紙」
- 第89回 該当作品なし
- 第90回 笠原淳「杢二の世界」、高樹のぶ子「光抱く友よ」
- 第91回 該当作品なし
- 第92回 木崎さと子「青桐」
- 第93回 該当作品なし
- 第94回 米谷ふみ子「過越しの祭」
- 第95回 該当作品なし
- 第96回 該当作品なし
- 第97回 村田喜代子「鍋の中」
- 第98回 池澤夏樹「スティル・ライフ」/ 三浦清宏「長男の出家」
- 第99回 新井満 「尋ね人の時間」
- 第100回 南木佳士「ダイヤモンドダスト」/ 李良枝「由煕」
- 第101回 該当作品なし
- 第102回 大岡玲「表層生活」/瀧澤美恵子「ネコババのいる町で」
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2000年代 - 2010年代(第123回 - 第162回) |
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2020年代 - 2030年代(第163回 - ) |
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