日本青年会議所
公益社団法人日本青年会議所(にっぽんせいねんかいぎしょ、略称:日本JC、英: Junior Chamber International Japan、英語略称:JCI-Japan)は、リーダーを志す青年経済人の社会活動を目的とする日本各地の青年会議所を会員として組織した公益社団法人である。国際青年会議所加盟。 概説世界118の国と地域に活動拠点がある国際青年会議所(Junior Chamber International、JCI)に加盟している[1]。JCI本部は米国ミズーリ州セントルイスにあり、日本JC(日本青年会議所)は、JCIのNOM(National Organization Member、ノム)と呼ばれる国家青年会議所である[1]。 理念1950年(昭和25年)5月1日、行動綱領として「個人の修練(トレーニング)、社会への奉仕(サービス)、世界との友情(フレンドシップ)」の三信条が採択された。日本青年会議所(以下JC)の理念はこの三信条を基本姿勢に置き、三つの信条の下でボランティアや行政改革等に取り組むとしている[1]。 1960年JC綱領、1970年JC宣言、1980年JC運動指針、1990年新JC運動指針、2000年人間力あふれる社会起業家の育成、2010年己を律し行動するJAYCEEが提言、示されている[要出典]。 組織組織の構成国内671の地域に各地青年会議所[注 1][注 2]が組織されており、日本青年会議所は全国にあるこれらの各地青年会議所の総合調整機関として1951年に設立された。 日本青年会議所には、各地青年会議所の連携・連絡調整機関として、47都道府県ごとにブロック協議会が、ブロックの連携・連絡調整機関として地方ごとに10の地区協議会が組織されている。 日本青年会議所の会員は各地青年会議所であり、その活動は各地青年会議所から受け入れた出向会員によって行われている。 各地青年会議所は、規定の会員数を集め、各地青年会議所のうちの1つの会議所がスポンサーになり、日本青年会議所の承認を受ければ新設できる。ただし、各市区町村に1つの会議所のみという規定はない。 日本JCチャーターLOM大阪青年会議所、東京青年会議所、名古屋青年会議所、西宮青年会議所、函館青年会議所、広島青年会議所、前橋青年会議所(50音順)[2] 会員会議所の新設各市区町村に一会議所のみという規定は国際青年会議所にはないため、居住地域にある既存の各地青年会議所で希望する活動内容が行われていない場合は、規定の会員数を集め、全国671の青年会議所のうちの一会議所がスポンサーになり日本JCに申請して承認を受ければ、会員会議所として新設できる(例えば〇〇市の経済規模・地域規模が大きくなり、分割した方が合理的な場合に元々のJCがスポンサーとなり新JCが新設された例がある)。 会員資格と入会会員資格は、20歳から40歳までの男女であり、満40歳になる年の年度末(12月31日)に満期扱いとなり卒業することになる[3]。卒業後は、出身LOMのシニアクラブに所属することができ、正会員から特別会員となる。卒業年度に日本JC会頭やLOM理事長を務めた者が卒業の翌年1年間、前任者として役職を担当する例外を除き、卒業生は組織に直接関与することはできない。設立当時の年齢制限は35歳であったが、1952年に変更された[3]。 日本青年会議所には各地青年会議所より団体で入会することになっており、個人で日本青年会議所に直接入会することは出来ない。各地青年会議所に入会し、出向という形で日本青年会議所の活動に参加している。 会員数JC会員はJaycee(ジェイシー)と呼ばれ、全世界の会員総数は約140,000名、日本全国の会員総数は約30,000名(うち女性会員約2,000名)、各地青年会議から出向して組織される日本青年会議所の委員数は約1,800名。年度単位(1月~12月)で組織役職を原則一新する単年度制を採用している[3]。 会員の構成日本全国の正会員の構成割合は、製造・卸売・小売業31%、建設設備業24%、サービス業17%、不動産業4%、飲食関係3%、ホテル、IT関係、弁護士・司法書士等が各2%、医療関係、農林水産業、宗教関係が各1%、その他12%となっており、第1次産業から第3次産業まで多様な業種で構成されている[3]。 正会員の約9割が代表者・取締役・管理職である[3]。 歴史
事件・不祥事
1979年富士スピードウェイ廃止騒動1979年7月、(社)御殿場青年会議所(静岡、御殿場JC)が周辺道路の渋滞、富士グランチャンピオンレース観戦の暴走族が周辺で集会や暴走行為を繰り返す環境の悪化による青少年への影響、省エネルギー時代にそぐわないことを理由に富士スピードウェイの廃止、サーキットからの転用を静岡県に陳情した。それに加えて、1983年(昭和58年)に富士GCで起きた高橋徹の死亡事故により、サーキットを廃止しゴルフ場などのレジャーランドへの転用が発表される事態となった。 モータースポーツ業界は「日本モータースポーツ振興会」を設置し、廃止に反対の立場を表明したが、1984年再び廃止転用の動きが表面化し、1985年スピードウェイの親会社である三菱地所がサーキットの廃止について言及する。 レース業界は更に「FISCO廃止問題連絡協議会」を設置し、大御神レース村ガレージや富士GC選手会も参加し、一般レースファンへのPR活動などを活発に行い、激しく反対運動を展開した。漫画家のしげの秀一も『バリバリ伝説』(『週刊少年マガジン』)のタイトル頁で、主人公巨摩郡が「FISCOなくなったら困るぜ!みんなで反対しよう!」と呼びかけるかたちで反対運動に賛同した。 1986年1月、地権者である富士スピードウェイ協力委員会が反対の意を示し、連絡協議会主催により東京でシンポジウムが開催され、神田から丸の内の三菱地所まで東京都内をデモ行進した。同年6月、小山町長に三菱地所から廃止問題についての地権者との調停依頼があり、同年7月30日、廃止問題は白紙とする旨の小山町長の裁定が下され、存続が決定し廃止騒動は収束した[5][6]。 1998年旭川女体盛事件1998年2月14日、1998年度日本JC「地球市民づくり情報循環会議」、日本青年会議所(日本JC)建設部会[7]、一般社団法人旭川青年会議所(北海道、旭川JC)の3団体幹部ら合計33人が、北海道旭川市駅前のホテル地下の居酒屋でハレンチな猥褻行為を目的とした「懇談会」を行なった。旭川JCメンバーと日本JC会議スタッフが「今日はバレンタインデーなので、旭川では女体盛りを用意しました」と幹部にコンパニオンを全裸にし刺身を盛り付けたパーティーを企画。その場にいた日本JC議長と副議長4人を含むメンバーらは、「一瞬「おおっ!」と驚きの声を上げ、次いで蜜にたかる蟻のように女体盛りに群がった」や「初め女の子はサングラスをかけていたが、乗ってくるとそれをはずし、脚も開いた。なかには刺身を股や乳首にくっつけてから食べる」JCメンバーもいたと週刊紙に書かれた。事件は6月になってコンパニオンしていた少女が補導され、パーティーを話したことで発覚。実はコンパニオンが未成年と判明したことで10月に議長らは旭川中央警察署で事情聴取を受けた。16歳の未成年に懇談会のために依頼した4人が逮捕された。そのうちの一人である不動産会社役員の東京JC会員(27)は売春防止法違反と北海道青少年保護育成条例違反で逮捕され、東京JCを除名処分となった。1998年11月3日と17日発売の写真週刊誌『FLASH』に「「女体盛り」逮捕犯」「あ!日本青年会議所(JC)議長のハシが乳首を!!刺身「女体盛り」ハレンチ写真」などの表紙見出しで、現場写真が2号連続で掲載された[8][9]。日本JCは「懇親会としては不適切で、反省すべきもの」という内容の見解表明をした。 横浜セクハラ事件1998年7月25日午後4時頃、日本青年会議所ファッション部会が神奈川県横浜市で開催された「日本JCサマーコンファレンス1998」会場で、客席100人ほどのステージにビキニ姿のコンパニオン2人が水着ショーの後、体にバスタオルを巻きつけてビキニを脱ぎオークションにかけていたとして市民団体などに苦情があった。神奈川人権センターはセクハラ問題として日本JCに対し事実調査と公表を求める申し入れ書を提出し、抗議した。後援した横浜市も事実関係の調査に乗り出し、日本JC側は事実を確認し、謝罪した[10]。 2003年東京JC日本振興銀行事件2003年2月12日、(社)東京青年会議所(東京JC)が第一ホテル東京で開催した例会で、パネリスト木村剛が「20億円集めれば銀行をすぐに作れる」と発言したことをきっかけに、東京JC入会希望者として出席していた消費者金融の資金元である卸金融を手がけるノンバンク「オレガ」の落合伸治が20億円用意し、木村にアドバイスを受け「中小新興企業融資企画株式会社」を設立して銀行設立準備に入った[11]。 また、2003年度東京JC理事長であった平将明も銀行設立計画に賛同し、さらにJC会員約90人から1億円が集められた。同年8月20日に予備免許申請が金融庁に受理され、同日夕刻、落合、木村、平の3人が「日本振興銀行設立」記者会見を行った。以降、新聞や雑誌など多くのメディアが「東京JCが新銀行をつくる」と報道した。2日後の8月22日、平は「公益法人は営利企業の設立はできない。個人の立場で記者会見に臨んだ」と東京JCメルマガを通じて見解を明らかにし、一部の報道は事実に反するとした[12]。 その後、設立資金20億円出資者の設立発起人で社長に就任していた落合は、木村や平を含む役員らに銀行役員を解任され、木村を告発するに至った[13][14][15][16]。 強制わいせつ事件2003年10月17日午後10時頃、(社)釧路青年会議所(北海道、釧路JC)会員ら5人が、JCの月例会後に来店した釧路市末広町3のスナックで、共謀の上、女性従業員(26)に服を脱ぐよう強要したが拒否されたため、スーツと下着を強制的に脱がせ全裸の体を触ったほか、カメラ付き携帯電話で撮影するなどわいせつ行為をした。2004年5月12日までに、釧路警察署は強制猥褻の疑いで逮捕、翌13日、道東経済センタービルの記者会見で2004年度、2003年度、2002年度の釧路JC理事長3人が会員の不祥事を謝罪した[17]。 2006年八尾JC傷害致死事件2006年10月7日午後9時50分頃、(社)八尾青年会議所(大阪、八尾JC。旧法人)会員20人が、日本JC全国会員大会で集まった郡山市熱海町・磐梯熱海温泉のホテルで宴会中、会員(35)が「盛り上げようと思って」寝ていた新入会員(38)の頭髪にアルコール度数96%で引火性の強いウォッカをかけ、ライターで火を付け顔や全身に重度のやけどを負わせ、死亡させた傷害致死容疑で逮捕された。また、現場にいた八尾JC監事が同専務理事に、ウォッカ瓶を近くの川に捨てるよう指示していたことも発覚し、証拠隠滅容疑で逮捕された[18]。大やけどを負った新入会員は、2006年10月27日に呼吸不全で死亡した。2007年5月31日、福島地裁郡山支部の判決公判で裁判長は「あまりに幼稚で不謹慎極まりなく、酌量の余地はない」として被告に懲役2年6月(求刑懲役6年)の実刑を言い渡した。弁護側は「ライターで体毛を焦がす行為は前から宴会の座興として行われており、やけどを負わせる意図はなく過失だった」と無罪を主張していた。2006年12月、八尾JC旧法人は、公益社団法人日本青年会議所(当時)から除名処分となり、直後に解散した。なお、2012年には新たな「八尾青年会議所(八尾JC・新法人)」が設立され日本青年会議所にも参加し、2019年には一般社団法人の資格も取得しているが、あくまでも旧法人の除名・解散後に改めて結成された別組織[注 3]としているため、公式サイトにて本事件への言及は一切されていない[注 4]。なお、八尾JC会員OBによる「八尾青年会議所シニアクラブ」は、合同懇親会を行うなど新法人と関係があるが、旧法人時代のOBとの関係は不明である。 2007年日本共産党による靖国神社アニメ制作への批判2007年5月17日の衆議院教育再生特別委員会で、日本共産党衆議院議員・石井郁子は当時の内閣総理大臣・安倍晋三に、日本JCが制作した『誇り~伝えようこの日本のあゆみ~』と題されたDVDアニメをつかった新しい教育事業を文部科学省が採択したことは「靖国神社の戦争観を子どもに刷り込むための教育プログラム」であると述べた[19]。日本共産党は「侵略戦争を正当化する」と主張したが、日本JC側は「真意は共産党の言っていることと全く逆だ」と反論した。日本共産党機関紙『しんぶん赤旗』は連日、「日本の侵略戦争と植民地支配を正当化する」などのように報じた[19]。 2018年「宇予くん」問題2018年の年初から、日本青年会議所国家戦略グループの内部組織である憲法改正推進委員会が、「宇予くん」と称するキャラクターを用いたTwitterアカウントを、同会議所が運営することを明らかにしないまま、「対左翼を意識し、炎上による拡散も狙う」というコンセプトの元で運用[20]。NHKや朝日新聞などの報道機関、国会議員や、中国、韓国への誹謗中傷が多数投稿された[21][22][23][24][25][26]。このことがネットで明らかになると[27]、日本青年会議所は2月27日にTwitterアカウントを削除し、翌2月28日に公式ウェブサイトに「お詫び」を掲載[21]。宇予くんが、日本青年会議所が企画したものであることを認めるとともに、憲法改正論議活性化の目的に反し、誹謗中傷や品性を欠いた内容ばかり投稿されていたとして謝罪した[28] [29]。 これに対して、全国紙等の報道では、他者を中傷する投稿の内容や、投稿が日本青年会議所によるものであることを隠していたこと、コンプライアンスが機能していなかったことに対して批判が相次いだ[21][22][23][24]。また、ネットメディア等では、フォロワー数が65人に過ぎなかったこと等を挙げて、ソーシャル・マーケティングの稚拙さやネット・リテラシーの低さが指摘された[30][31]。 職員への不当解雇裁判女性職員が職場の受動喫煙によりぜんそくが再発し、改善を求めても拒否されたため、2016年9月より体調不良で休職。女性職員は職場復帰の条件として、受動喫煙対策が必要という医師の診断書を提出したにも関わらず、2017年4月に「休職中に出勤命令に応じなかった」という理由で解雇されたため、2018年5月に東京地方裁判所に労働審判を請求。同年7月、JCは対応の不手際を認め、解雇を撤回し、440万円の解決金を支払うことで調停が成立した[32][33][34] 2020年Twitterとの協定2月10日、日本青年会議所のメディアリテラシー確立委員会のアカウントが「情報・メディアリテラシーの確立に向けて」という協定をTwitter JAPAN社と締結したことを発表した。『女性自身』は、ネットでは非難の声が殺到しているとし、荻上チキは「特定の思想に偏ったリツイートを繰り返している」とし、「リテラシーの理解やモラルを高めるのに役立つ情報」という趣旨と異なるとして批判した[35]。 2022年米子JC理事長による無免許ひき逃げ事件2022年2月16日の午前6時30分頃、(一社)米子青年会議所(鳥取、米子JC)の理事長が無免許にもかかわらず同市内の国道を乗用車で運転し、自転車と衝突する事故を起こしたうえ救護をせず現場から逃走した。その夜、無免許ひき逃げで逮捕された。米子JCは同18日付でホームページに謝罪文を掲載した。 3月16日には、理事長を除名し、新理事長を任命したことを発表した[36]。 2023年青森JC会員による青森ねぶた祭における暴力行為2023年8月6日に行われた青森ねぶた祭において、(一社)青森青年会議所(青森、青森JC)男性会員1名と男性ボランティアスタッフ1名が曳き手に対して暴力行為を行なった。青森JCは8月18日に臨時総会を開き、男性会員の除名と関係断絶、男性ボランティアスタッフとの関係断絶、2024年の青森ねぶた祭への参加自粛を発表した[37][38]。 脚注注釈出典
関連項目
外部リンク |