パラトルモンパラトルモン(parathormone)(パラソルモン)とは副甲状腺(上皮小体)から分泌される84アミノ酸から構成されるポリペプチドホルモンである。 副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone, PTH)、上皮小体ホルモンとも呼ばれる。パラトルモンは、血液のカルシウムの濃度を増加させるように働き、逆に甲状腺から分泌されるカルシトニンはカルシウムを減少させるように働く。パラトルモンは、血中のカルシウム濃度を増加させるが、パラトルモン受容体(PTH受容体)は骨、腸、腎臓の3箇所の臓器に発現が見られる[1]。 機能血中カルシウム濃度の上昇
血清リン濃度の制御パラトルモンは腎臓の尿細管でリンの吸収を抑制する[3]。これはより多くのリンが尿から排出されることを意味する。またパラトルモンは腸管および骨より血中へのリンの取り込み・放出を亢進する。骨では骨吸収によってリンはカルシウムとともに放出されるが、比率としてはややカルシウムの方が多い。腸管では、活性型ビタミンD3の増加により、リンおよびカルシウムはそれぞれ異なる機構によって吸収が亢進する。 フィードバック機構血液中のカルシウム濃度が増加すると、副甲状腺の細胞上にカルシウム受容体が反応し、パラトルモンの分泌が抑制される[4]。 疾患副甲状腺ホルモン関連ペプチドパラトルモンに類似した物質に副甲状腺ホルモン関連ペプチド(Parathyroid hormone-related peptide, PTHrP)がある。これは141個のアミノ酸からなる蛋白質であるが、アミノ末端の13残基中6個がパラトルモンと同一であるために生物作用がパラトルモンときわめて類似する。生体内にもある程度は存在するが、悪性腫瘍によって大量に産生されると副甲状腺機能亢進症と類似した症状をきたす。悪性腫瘍による高カルシウム血症の80%以上がPTHrPが原因となる。 骨粗鬆症治療への応用PTH(全長84aa)のN末34アミノ酸(1-34)は、骨粗鬆症治療薬テリパラチドとして臨床応用されている。上記のとおりPTHには骨吸収促進作用があり、副甲状腺機能亢進症で見られるように持続的なPTH投与は骨密度を低下させるが、間欠的投与では逆に骨形成を促進し、骨折リスクを低下させる。ビスホスホネート等、以前の骨粗鬆症治療薬は破骨細胞による骨吸収の抑制を主たる薬理作用とするものがほとんどであるが、本剤は骨芽細胞に作用して骨形成を促進するという特徴的な薬理作用をもつ。1日1回、または週1回、静脈注射または皮下注射で使用される。 出典
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