MTUフリードリヒスハーフェン
MTUフリードリヒスハーフェン(MTU Friedrichshafen)とは、ドイツ、フリードリヒスハーフェンを本拠とし、大型ディーゼルエンジンの製造・販売・アフターサービスを業務とする企業である。ロールス・ロイス・グループのロールス・ロイス・パワーシステムズの子会社である。 概要MTUとはドイツ語のMotoren- und Turbinen-Union、すなわち「エンジン及びタービン連合」の頭文字を表す。 製造するエンジンは鉄道車両用、船舶用、軍用車両用、農業機械用、鉱業用、建設機械用、産業用などである。エンジン製造の他に、動力系の自動制御システムも手掛ける。 歴史設立ツェッペリン飛行船の開発者として知られるフェルディナント・フォン・ツェッペリンが、自身のための近代的な自動車を設計したヴィルヘルム・マイバッハの提案を受け入れて設立したLuftfahrzeug-Motorenbau(ルフトファールツォイク・モトーレンバウ、直訳すれば「航空機エンジン製造」)がルーツである。起業の目的は航空機エンジンの製造であるが、その技術をベースに自動車や船舶のためのエンジン開発も視野に入れていた。設立は1909年3月23日、ドイツのビーティッヒハイム=ビッシンゲンにおいてであった。初めて製造されたエンジンはヴィルヘルムの息子、カール・マイバッハが設計したものであった。 1912年、フリードリヒスハーフェンに移転し、第一次世界大戦後の1918年、マイバッハ・モトーレンバウ・フリードリヒスハーフェンと改称し、マイバッハの名の下に 自動車用エンジンの製造を開始した。同時に、アルファベットのMを重ねて三角形にした新たな企業ロゴを採用した。このロゴは意匠を変えて現在も使用されている。 ダイムラー・ベンツ傘下に1960年、ダイムラー・ベンツにより買収された。1963年、ダイムラー・ベンツはメルセデス・ベンツ・モトーレンバウ・フリードリヒスハーフェンを設立し、大型エンジン製造の機能をポルシェ・ディーゼルから引き継いだフリードリヒスハーフェンの別の工場に移転した。 1966年、マイバッハ・モトーレンバウとメルセデス・ベンツ・モトーレンバウはダイムラー・ベンツの大型エンジン部門として組織を統合し、マイバッハ・メルセデス・ベンツ・モトーレンバウとなった。 1969年7月11日、ダイムラー・ベンツとMANはフリードリヒスハーフェンとミュンヘンにMTUを設立。マイバッハ・メルセデス・ベンツ・モトーレンバウなどの事業は整理され、MTUフリードリヒスハーフェンが1000馬力から1万馬力の高速ディーゼルエンジンを、MTUミュンヘン(現MTUエアロ・エンジンズ)がより高度なエンジンの製造と開発を行うこととした。 1994年9月、MTUフリードリヒスハーフェンはデトロイトディーゼルとの協業を開始した。デトロイトディーゼルはゼネラルモーターズのディーゼルエンジン製造部門が分社化されていた企業である。 ダイムラー・クライスラー傘下からトグナム傘下に1998年、ダイムラー・ベンツがクライスラーを買収してダイムラー・クライスラーとなり、2000年にはダイムラー・クライスラーがデトロイトディーゼルを買収。傘下にエンジン製造部門を2社抱えることとなった。 2005年12月、ダイムラー・クライスラーは経営を自動車製造に集中するために、MTUフリードリヒスハーフェンとデトロイトディーゼルが製造するエンジンのうちオフ・ハイウェイ部門(民生自動車用途以外の大型ディーゼルエンジン)を、プライベート・エクイティ・ファンドのEQTパートナーズ(EQT Partners)に売却した。MTUフリードリヒスハーフェンは存続し、MTUフリードリヒスハーフェンとデトロイトディーゼルの大型ディーゼルの製造を継承した。 2006年7月、EQTはトグナムグループ(Tognum)を設立し、MTUフリードリヒスハーフェンはその最大の子会社となった。 ロールス・ロイス傘下へ2011年3月9日、ダイムラー及びロールス・ロイス・ホールディングスのジョイントベンチャーとして設立されたエンジン・ホールディングGmbHは、トグナムに対し共同で33億ユーロでの買収を提案した。提案期限の6月1日、エンジン・ホールディングGmbHはトグナムの58.35%の株を取得した。8月に株式保有率が95%となる。 2013年3月、エンジン・ホールディングGmbHはトグナムの株を100%確保し完全子会社化した。そして中速ディーゼルやガス・エンジンを得意とするロールス・ロイス・グループのベルゲン・エンジンズをトグナム・グループに移した。 2014年1月、エンジン・ホールディングGmbHはロールス・ロイス・パワーシステムズ・ホールディングGmbHに名称を変更した。トグナムはロールス・ロイス・パワーシステムズAGに名称を変更し、MTUフリードリヒスハーフェン、ベルゲン・エンジンズ、ロランジュなどの子会社は事業を継続した。 2014年8月、ロールス・ロイス・ホールディングスはロールス・ロイス・パワーシステムズのダイムラーの持ち分を買い取り、ロールス・ロイス・パワーシステムズを完全子会社化した。 MTUの舶用エンジンと採用例高速ディーゼル1600シリーズ(ボア122mm/ストローク150mm)
183シリーズ ×(ボア130mm/ストローク142mm)
S60シリーズ(ボア133mm/ストローク168mm)
2000-00/01シリーズ(ボア130mm/ストローク150mm)
2000-02/03/04シリーズ(ボア135mm/ストローク156mm)
331シリーズ ×(ボア165mm/ストローク155mm)
396シリーズ(ボア165mm/ストローク185mm)
4000-00/01シリーズ(ボア165mm/ストローク190mm)
4000-02/03シリーズ(ボア170mm/ストローク190mm)
493シリーズ ×(ボア175mm/ストローク205mm)
538シリーズ ×(ボア185mm/ストローク200mm)
595シリーズ ×(ボア190mm/ストローク210mm)
652シリーズ ×(ボア190mm/ストローク300mm)
956シリーズ ×(ボア230mm/ストローク230mm)
1163シリーズ(ボア230mm/ストローク280mm)
8000シリーズ(ボア265mm/ストローク315mm)
※製品とシリンダー寸法は資料[1]を参照した。採用艦船は資料[2]を参照した。 ※ × 印の製品シリーズは、MTUフリードリヒスハーフェンにおける生産終了品。 日本におけるMTU製品1998年より富永物産が販売・サービスの代理店契約を結び、日本国内での事業展開を開始。2001年にはMTU Japanが設立され、 海上保安庁や建機メーカーなどに製品を納入してきた。また、それらの動きとは別に、総合商社の丸紅が防衛省にそれぞれMTU製品の購入を働きかけてきたが、2008年11月17日にMTUと丸紅が合弁事業を開始することに合意[3]。2009年1月、MTU JapanをMTU-Marubeniに改称し、総代理店となった。 1962年に三菱重工業がDD91形ディーゼル機関車を試作し、日本国有鉄道がそれを試用した。その結果を踏まえて1966年から量産されたのがDD54形である。この形式にはライセンス生産のMD870形V型16気筒エンジン(国鉄形式はDMP86Z)が1基搭載された。 JR貨物は、DF200形ディーゼル機関車のうち初期(1992年以降)に製造した車両にMTU製12V396TE14型エンジンを2基搭載している。この396シリーズエンジンはMTUのベストセラーモデルで、1万基を超える数が製造されている。 2019年にダイハツディーゼルがライセンス契約を締結した[4]。 脚注
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