MAPキナーゼキナーゼキナーゼ (英 : MAP kinase kinase kinase 、略称: MAPKKK 、MAP3K )は、MAPキナーゼキナーゼ に対して作用するセリン/スレオニンキナーゼ である。MAPキナーゼキナーゼキナーゼはMAPキナーゼキナーゼを活性化し、MAPキナーゼキナーゼはMAPキナーゼ を活性化する。MAP3Kにはいくつかの種類が存在するが、主に活性化するMAPキナーゼによって特徴づけられている。MAP3Kは、細胞増殖、細胞分化 、アポトーシス などさまざまな細胞機能を担う。MAP3Kシグナルの持続期間と強度によって、どの経路が続いて活性化されるかが決定される。また、MAP3Kとその基質を近接させて反応をさせるために、足場タンパク質 が利用される[ 1] 。MAP3Kはがん やアミロイドーシス 、神経変性疾患 の治療標的ともなっている。
種類
ヒトでは次に挙げるMAP3Kが知られている。
MAP3Kの分類と機能
MAP3Kにはいくつかの種類が存在し、それらすべてがMAPキナーゼの上流で機能する。MAPキナーゼにはERK 、JNK 、p38 MAPK という主要な3つのクラスが存在し、それぞれMAP3Kによって調節されている。ERKはRAFファミリー のMAP3Kによって調節され、細胞成長、分化 、減数分裂 を担う。おそらく最も詳細な特性解析がなされているのはRAFファミリー(RAF1、BRAF、ARAF)のMAP3Kである。これらはMAP2K1 (MEK1)とMAP2K2 (英語版 ) (MEK2)を活性化し、MAPK/ERK経路 (英語版 ) を活性化するRas シグナルのエフェクターとして機能する。JNKはMEKK1/4、MLK2/3、ASK1、TAK1、TPL2によって調節される。p38 MAPKはMEKK1–4、MLK2/3、ASK1/2、TAK1、TAO1/2によって調節され、炎症 、アポトーシス 、細胞分化、細胞周期 の調節を担う。どのカスケードが引き起こされるかは、シグナルの種類、結合強度、結合の長さに基づいて決定される[ 1] [ 5] 。
MEKK1はSEK1(MAP2K4 (英語版 ) )のリン酸化を介してMAPK8 (英語版 ) /JNKを活性化する[ 6] 。
MEKK3はSEKの活性化によってMAPK8/JNK8を、MEK1/2の活性化によってERK経路を調節する。p38経路の調節は行わない[ 7] 。
TAK1はTGF-β による転写 調節に関与している[ 8] 。
MAP3Kの活性化と不活性化
MAP3Kを活性化する上流の刺激の大部分はストレスもしくは成長因子 である。そうした因子には、分裂促進因子 、炎症性サイトカイン 、小胞体ストレス 、酸化ストレス 、紫外線照射、DNA損傷などが含まれる。大部分のMAP3KはGPCR を介して活性化される。他の機構も存在し、例えばASK1はTNF 特異的な受容体型チロシンキナーゼ によって活性化される。MAP3Kはセリン /スレオニン 残基へのリン酸基 の付加によって活性化されるため、ホスファターゼ によって不活性化される。ASK1の調節に一般的に用いられるホスファターゼはPP5 (英語版 ) である[ 9] 。MAP3Kは活性部位とは別にドッキングドメインを持ち、他の基質への接触を可能にしている。さらに、MAP3Kは特異的カスケードの利用を保証するためにいくつかの足場タンパク質を利用する。こうした足場はMAP3K、MAP2K、MAPKの結合部位を持ち、シグナルが迅速に伝達されるよう保証している[ 5] 。
臨床的意義
MAP3Kは細胞質と核の双方で生じる広範囲の細胞応答に関与しており、これらをコードする遺伝子の変異はいくつかの疾患の原因となる。ERK1/2の上流のMAP3Kの過剰発現と上皮成長因子受容体 (EGFR)の増加は、トリプルネガティブ乳癌 などの腫瘍形成をもたらす場合がある[ 10] 。JNKやp38ファミリーのMAPKもしくはそれらの上流のMAP3Kの変異はアルツハイマー病 の原因となる場合がある。同様の状況は脳内の過剰な酸化ストレス時にも観察され、これらのMAPKがアポトーシスを引き起こすことで脳細胞が破壊される。MAP3Kの1種であるMLKはパーキンソン病 と関係しており、MLK阻害薬はパーキンソン病の治療薬となる可能性がある。JNKやp38のカスケードの過剰発現はクローン病 や多発性嚢胞腎 に関与している。これらの経路の阻害薬は疾患の症状の治療に有用である可能性がある[ 11] 。
画像
出典
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関連項目
外部リンク