K-300P バスチオン-P は、ロシア が開発した沿岸防衛用地対艦ミサイル システムである。 愛称はロシア語で「要塞 」のこと。NATOコードネーム では SS-C-5 ストゥージ (Stooge:密告者)と呼ばれる。GRAUインデックス は3K55 (3К55)
概要
K-300Pは、空母打撃群 ・輸送船団・揚陸艦 艇等の水上艦を沿岸から攻撃することを目的とし、ベラルーシ のTekhnosoyuzproekt社 と共同で開発された。
典型的なユニット編成は、指揮・射撃管制車両(KAMAZ 43101 6×6トラック)1~2両、支援車両1両、ランチャー車両(MZKT-7930 8×8)4両、弾薬運搬・再装填車両4両である。
コテリヌイ島 において発射を行うK-300P
ランチャー車両は3名の乗員によって運用される。1両につき2発のミサイルが搭載されており、指揮・射撃管制車両からは最大で25km離れて布陣できる。ミサイルは5分以内に発射準備状態にでき、搭載している2発は2〜5秒間隔で発射することが可能である。 布陣後は通常編成ユニットで3〜5日間、戦闘支援車両を伴う場合は最大30日間、発射即応状態とすることができる [ 2] [ 3] 。
使用するミサイルはP-800 である。発射時は固体燃料ロケットブースター を使用してランチャーから垂直に射出された後、ミサイル先端に装着されたスラスターユニットにより目標に指向する。その後スラスターユニットの分離が行われ、固体ロケットで超音速まで加速し、その後、ラムジェットに切り替える。固体ロケットの推進剤を燃焼させた後の空間が、ラムジェットエンジンとして使われ、マッハ2.5で巡航し目標へ飛翔する。
射程は飛行プロファイルによって変化する。射程は、高度2万メートルの高空をマッハ 2.5で飛行し、目標の手前で降下、低空で突入した場合で約300キロメートル、低空のみを飛行した場合で120キロメートルとされるが、速度はマッハ1.6に低下する上に空力加熱によって探知される可能性が上がる。
巡航時はGLONASS を使用し、 終末誘導はアクティブレーダーホーミングである。 通常、3発1組で運用され、その場合には「リーダー機」である1発のみがレーダー を作動させ他のミサイルに指示を下す。これはソ連・ロシアの対艦ミサイル共通の特徴である。またレーダー警戒装置が搭載され、必要に応じて回避運動も行う。対艦攻撃が主任務であるが、この他に地上攻撃も可能とされている。
最大飛行高度14,000m、シースキミング高度5mで、 シーステート 7の気象条件でも運用可能である [ 2] [ 3] 。
セルゲイ・ショイグ 国防相はウラジーミル・プーチン 大統領と国防省の代表者との会談で「K-300Pは、海上で350キロメートル、陸上で約450キロメートルの距離で海と地上の標的を破壊することができる」と述べた[ 4] 。
配備と運用
2011年 3月2日 、ロシアは千島列島 にK-300Pを展開すると発表し [ 5] 、 展開は2016年 までに実施された [ 6] 。
2015年 3月15日 、ロシアはクリミア にK-300Pを展開した [ 7] [ 8] 。サイロ発射型は、2020年 までにObject 100(元々旧ソ連 時代に整備された対艦ミサイル部隊)に配備される[ 9] 。
2015年、ロシア北部艦隊司令官 ウラジミール・コロレフは、ロシア北方艦隊 の沿岸部隊が、既存のS-400 に加え、K-300Pを受け取ると述べた [ 10] [ 11] [ 12] 。
2016年11月15日 、ロシアはシリアへのK-300P配備を発表し、シリアでのロシア軍の介入 の一環として、地上標的に向けて発射した[ 13] 。ミサイルは修正された誘導ソフトウェアにより、指定目標に命中した [ 14] [ 15] 。
派生型
K-300P
TEL型
K-300S
ミサイルサイロ型
Bastion E
運用国
K-300P運用国(青色)
関連項目
ロシアの自走式地対艦ミサイルシステム
出典
^ https://sputniknews.com/military/201611151047466677-russia-syria-bastion-missiles/
^ a b Bastion-P Costal defense missile system - Military-Today.com
^ a b 3K55 Bastion - Weaponsystems.net
^ “This is How Russia Could Use Bastion Systems Against Ground Targets in Syria” (英語). Sputnik. (2016年11月15日). https://sputniknews.com/military/201611151047466677-russia-syria-bastion-missiles/
^ “Russia to deploy Bastion coastal missile systems at Kurils ”. Rusnavy.com (2011年2月3日). 2013年9月3日 閲覧。
^ “Russia Deploys Bal, Bastion Coastal Missile Systems to Kurils ”. Sputnik.com (2016年11月22日). 2016年11月23日 閲覧。
^ Smith-Spark (2015年3月16日). “Russia was ready to put nuclear forces on alert over Crimea, Putin says ”. CNN . 2015年3月16日 閲覧。 “In the documentary, Putin said Russia's Bastion high-precision coastal missile defense systems had been deployed to Crimea to protect the territory -- 'in such a way that they were seen perfectly well from outer space.'”
^ “Russia deployed Bastion coastal missile systems on Crimean peninsula ”. spiegel.de (2015年3月15日). 2015年3月15日 閲覧。
^ В Крыму восстановлена боеготовность шахтного берегового ракетного комплекса "Утес"
^ Sputnik. “Russia to Deploy Anti-Ship Bastion Missile Complexes in Arctic in 2015 ” (英語). sputniknews.com . 2019年7月19日 閲覧。
^ Bora (2015年6月1日). “Russian Military To Deploy Bastion Anti-Ship Missile Complexes In Arctic In 2015 ”. International Business Times . 2019年7月19日 閲覧。
^ Henderson (2019年7月18日). “Cold Ambition: The New Geopolitical Faultline ” (英語). The California Review . 2019年7月19日 閲覧。
^ https://www.middleeastobserver.org/2016/11/15/putin-orders-bombing-aircraft-carrier-syria-hours-after-call-with-trump/
^ “Russia reveals Bastion-P deployment, land attack role in Syria ”. Jane's Information Group (16 November 2016). 16 November 2016 閲覧。
^ Bastion coastal defense missile system proves land attack capability in Syria - Armyrecognition.com, 25 November 2016
^ http://thediplomat.com/2016/08/vietnam-deploys-precision-guided-rocket-artillery-in-south-china-sea/
外部リンク