Inkscape(インクスケープ)はオープンソースで開発されているベクター画像編集ソフトウェア(ドローソフト)。
概要
InkscapeはXML、SVG、CSS などの標準に完全に準拠したグラフィックツールとなることを目標としている。クロスプラットフォームなソフトウェアであり、Linux、Unix系オペレーティングシステム (OS)、macOS、Windows などで動作する。
開発の主体はLinuxで行われている。今後 SVG、CSSの標準への準拠をさらに完全にしていくことが可能で、それにはSVGアニメーションの対応も含まれる。現在も活発に開発中であり、新しい機能が定期的に加えられている。
歴史
Inkscapeは、2003年にベクター画像編集ソフトSodipodiのフォークとしてスタートした。元となったSodipodiは2004年2月のバージョン 0.34 より事実上開発が停止している[2][3]。さらにそのSodipodiはGill (Gnome Illustration app[4])という、ラファエル・レヴィーン(Raph Levien)が書き1999年にスタートしたドローソフトのフォークである。
Sodipodiの開発者であったTed Gould、Bryce Harrington、MenTaLguYが、プロジェクトの目的の差異、外部からのコントリビューションに積極的でないこと、技術的な意見の差異などから、2003年にSodipodiから分かれてInkscapeプロジェクトを立ち上げた。彼らはSVGの完全準拠を目的にすることにした。
開発はトップダウン方式ではなく、多くの開発者が平等かつ活発に参加する方式を取っている。このような方式であるために多くの新規開発者が加わった。SodipodiはGIMPに似たControlled Single Document Interface (CSDI) を採用していたが、開発者の一人のBulia Byakは、現在のInkscapeのユーザインタフェースのアーキテクチャを作成した。
Inkscapeは元のSodipodiのコードに対して数多くの変更が加えられている。例えば、開発言語をCからC++に変えたこと、GTKベースからそのC++バインディングであるgtkmmベースに変えたこと、ユーザインタフェースをデザインしなおして改善したこと、そのほか数多くの新機能を追加したことなどである。
リリース履歴
Sodipodiのリリースについては示さず、フォーク後のInkscapeのみ以下に示す。
バージョン
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リリース日
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備考
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サポート終了:0.35
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2003年10月14日
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Inkscapeの最初のリリース。この時点ではSodipodiからのフォーク直後であり、非常に類似したソフトであった。
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サポート終了:0.36
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2003年12月11日
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メニューバーやツールバーをドキュメントウィンドウごとにあるユーザインタフェースに変更した。
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サポート終了:0.37
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2004年2月10日
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パスのインセットやアウトセット、論理演算 (boolean operator) を追加した。
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サポート終了:0.38.1
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2004年4月8日
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バグフィックスの他、テキストのカーニングやトラッキングや多段グラデーションのサポートの他、使い勝手を向上させた。
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サポート終了:0.39
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2004年7月15日
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Pango を使った最初のリリースで他言語の取り扱いがよくなった。また、マーカーやクローンやパターンをサポートした。
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サポート終了:0.40
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2004年11月28日
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レイヤーやビットマップ画像のトレース機能やテキストをパスに乗せる機能を追加。
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サポート終了:0.41
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2005年2月10日
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グリッド配置やカラートレースを追加。
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サポート終了:0.42
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2005年7月24日
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テキストのフロー配置(テキストをフレームに挿入)を追加。テキストスパンのサポート。グラデーションツールを新しくした。
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サポート終了:0.43
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2005年11月19日
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コネクターツール、ホワイトボード機能の追加。タブレットのサポート、ノードツールの使い勝手を向上した。
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サポート終了:0.44
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2006年6月22日
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レイヤダイアログ、クリッピング、マスキングのサポート、透過 PDF 出力の改善。OpenDocumentフォーマットのエクスポートに対応。
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サポート終了:0.45
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2007年2月5日
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ガウスぼかしのサポート。
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サポート終了:0.45.1
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2007年3月23日
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バグフィックスとユーザインタフェースの翻訳の改善。
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サポート終了:0.46
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2008年3月24日
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サポート終了:0.47
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2009年11月24日
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自動保存、スペルチェッカー機能の追加。フィルタの追加。PS、EPS出力の改善。
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サポート終了:0.48
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2010年8月23日
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スプレーツール、マルチパス編集、上付き・下付きなどのテキスト関連の強化。
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サポート終了:0.91
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2015年1月30日
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レンダリングエンジンcairoの採用、OpenMPによるマルチスレッド処理への対応、テキストツールの改良、ものさしツール、タイプデザイン機能、シンボルライブラリとVisioステンシルのサポート、WMF/EMFのインポートおよびエクスポート、実世界での単位(ミリメートルなど)のサポート、メモリ消費量の大幅な減少、反応性の向上、他[5]
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サポート終了:0.92
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2017年1月4日
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SVG2、CSS3への対応の改善[6]。 Inkscapeのデフォルト解像度を90dpiから96dpiに変更[6]。
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サポート終了:0.92.3
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2018年3月22日
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双方向テキストに対応[7]。 windowsユーザーに対する起動パフォーマンスの改善[7]。
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サポート終了:0.92.4
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2019年1月17日
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安定性の向上、バグ修正[8][9]
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サポート終了:0.92.5
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2020年4月9日
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安定性の向上、バグ修正、エクステンションを Python 2 と 3 で互換[10][11]
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サポート終了:1.0
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2020年5月4日
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安定版リリース[12]
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サポート終了:1.1
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2021年5月24日
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新しい起動時ウィンドウ、コマンドパレット、ノードツール時でのパスのコピー及びペースト、ダイアログの新しいドッキングシステム、画像のエクスポート(PNG/JPEG/TIFF/WebP)、機能拡張マネージャー(ベータ版)など[13]。
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サポート終了:1.1 |
2021年5月24日 |
コアとGUIに目立つ改訂、サポートはPython 3拡張機能に限定、ライブパスエフェクト改善 (LPE)[14][15][16]。
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サポート終了:1.1.1 |
2021年9月27日 |
バグ修正及び GUI の改善[17]。
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サポート終了:1.1.2 |
2022年2月5日 |
バグ修正その他改善[18][19]。
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サポート終了:1.2 |
2022年5月16日 |
複数ページ対象のページツール、編集可能なマーカとダーシのパターン、レイヤとオブジェクトのダイアログを統合、オブジェクトの位置合わせと移動に複数の改善、gradient 編集のオプション追加、エクスポートのオプション追加により対象に複数のファイル形式を指定可能、SVG フォントエディタの改善、タイリングに新しいライブパス効果、パフォーマンス改善、バグ修正、GUI の改善[20][21]。
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サポート終了:1.2.1 |
2022年7月14日 |
バグ修正その他改善[22]。
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サポート終了:1.2.2 |
2022年12月5日 |
バグ修正その他改善[23]。
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現行バージョン:1.3 |
2023年7月23日 |
シェイプ ビルダー キャンバス上にシェイプを構築するためのツール (ブール ツール)、フォントコレクション、パターンエディター、「ドキュメントリソース」ダイアログ、完全非同期のマルチスレッドレンダリングによるパフォーマンスの向上、LPE ダイアログの再設計、キャンバス上のパターン編集の改善、PDFインポートの改善、ページの余白と裁ち落とし、[レイヤーとオブジェクト]ダイアログの検索、不透明度、ブレンド モードと、オプションの永続スナップ バーが復活、XML エディターでの構文の強調表示、バグ修正[24]。
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凡例 サポート終了 サポート中 現行バージョン 最新プレビュー版 将来のリリース
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USBメモリなどの上で動作可能なポータブルアプリケーションとしてInkscape Portableも開発されている。
Adobe Illustrator の代替ソフトとして
Adobe Illustrator の代替ソフトとして紹介されることも多い。入門書は多く、ウェブデザインなどの用途に限定すれば代替になりうる。
一方で、印刷物の作成を目的として作られたソフトではないため、商業印刷では完全な代替にはならない。ほかに次のような違いがある。
- Linux系のユーザインタフェース・メニューの階層構造が独自体系であるため使い勝手に違いがある
- 処理速度が遅い[要追加記述]
- 安定性にやや難がある[要追加記述]
- aiファイルの再現性に難がある[要追加記述]
- CMYKカラーでの出力に非対応
- 日本仕様のトンボの出力に非対応
- 縦書きの対応は不完全
- 実務で多用する便利な各種機能の不足[要追加記述]
- 実践的な使用方法を紹介した書籍はAdobe llustratorと比べると少ない
関連書籍
- 水上淳嗣『Inkscapeパーフェクトガイド』晋遊舎〈100%ムックシリーズ〉、2007年。NCID BA83241788
- Inkscapeマスターテクニック : 無料グラフィックソフトを極める!! 晋遊舎〈100%ムックシリーズ〉、2011年。NCID BB06499724
- Kome;DO NOT EAT・第二I/O編集部『「GIMP」「Inkscape」ではじめるグラフィック&フォトレタッチ : フリーソフトで本格的な「素材制作」&「写真加工」!』工学社〈I/O books〉、2011年。NCID BB07141103
- 羽石相 『無料で使えるベクターグラフィック Inkscapeスタートブック』 秀和システム、2012年3月20日、NCID BB09366975
- 大西すみこ・小笠原種高・羽石相 『できるクリエイター Inkscape独習ナビ Windows&Mac対応 できるクリエイターシリーズ』 インプレス〈できるクリエイターシリーズ〉、2016年9月26日。NCID BB22388564
- 羽石相『無料で使えるイラストソフトInkscapeスタートブック』秀和システム、2017年。NCID BB23266096
- 飯塚将弘 『すぐに作れる ずっと使える Inkscapeのすべてが身に付く本』 技術評論社、2019年6月17日
脚注
関連項目
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
Inkscapeに関連する
メディアおよび
カテゴリがあります。
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