2019年メキシコグランプリ(2019 Mexican Grand Prix)は、2019年のF1世界選手権第18戦として、2019年10月27日にエルマノス・ロドリゲス・サーキットで開催された。
正式名称は「Formula 1 Gran Premio de México 2019」[2]。
背景
- タイヤ
- 本レースでピレリが用意するドライタイヤのコンパウンドは、ハード(白):C2、ミディアム(黄):C3、ソフト(赤):C4の組み合わせ[3]。
- ルイス・ハミルトンのドライバーズチャンピオン獲得の条件
- 本レース開始前の時点でチャンピオンを獲得できる可能性があるのは、ランキング首位のルイス・ハミルトンと2位のバルテリ・ボッタスのメルセデス勢に絞られた。ハミルトンはボッタスを64点リードしているが、本レース終了後にその差を78点に広げれば、ハミルトンの3年連続6度目のチャンピオンが決定する[4]。ハミルトンが4位以下あるいはボッタスが3位以上の場合、ハミルトンのチャンピオン決定は次戦アメリカGP以降に持ち越しとなる[5]。
- 開催契約の延長
- 本年までとなっていたメキシコGPの開催契約は、メキシコ政府の財政支援打ち切りにより継続が危ぶまれていたが、メキシコ出身のセルジオ・ペレスの存在により民間からの支援が集まり、8月8日に2022年までの延長契約が結ばれた。契約に当たり、メキシコシティ市のサポートを強調するため、2021年から「メキシコシティグランプリ」に改名する予定[6]。
- サーキット
- FIAは、エルマノス・ロドリゲス・サーキットのDRSゾーンを従来の2ヶ所(ホームストレートとターン3-4)に加え、ターン11-12にも設定して3ヶ所とした[7]。ターン11の出口にセンサーを設置し、トラックリミット違反の監視を強化する。トラックリミットに違反した場合、その周のタイムが抹消される。さらに、ターン1-3、ターン8、ターン11でコースオフを喫し、エイペックスを通過できなかったドライバーは、ランオフエリアに設置されたボラードなどの指示に従って安全にコースに合流することも通知した[8]。
エントリー
レギュラーシートは前戦日本GPから変更なし。ウィリアムズはニコラス・ラティフィをブラジルGPまでの3戦連続で金曜午前のFP1に出走させる[9]。
エントリーリスト
- 追記
- タイヤは全車ピレリ
- パワーユニットのエンジン(ICE)は全車1.6L V6ターボ
- ^1 - ラティフィはFP1のみ、クビサに代わって出走
フリー走行
- FP1(金曜午前)[11]
- 前日夜からの降雨は止んでいたが、路面はところどころにウエットパッチが残り、気温16度、路面温度20度でセッションは始まった。週末を通して雨がちな予報が出ていたことから、今後のセッションのためにインターミディエイトタイヤを温存したい思惑もあり、最初のインスタレーションラップを終えてから開始25分までの間にタイムを記録するドライバーはいなかったが、ロバート・クビサに代わって出走するニコラス・ラティフィがソフトタイヤでコースインしてから、各車スリックタイヤで走行を開始した。路面のコンディションは少しずつ改善されていき、トップタイムも次々と更新されていった。開始40分に1セット目のタイヤを返却するため各車ピットインすると、各チームがマシンのセットアップを変更するためにしばらくコースインするマシンがない状況が続いた。残り40分を切り、ラティフィがコースインしてから再び各車コースインするマシンが増えた。しかし、残り33分にメルセデス勢がアタックしようとした際に、ランス・ストロールがターン16で挙動を乱してバリアにクラッシュしてしまう。ピットの入り口が近かったため、ストロールはそのまま自走でピットインしたが、バリアの修復のため赤旗が出された。12分間の中断後、ルイス・ハミルトンがソフトタイヤで1分17秒327のトップタイムを出した。シャルル・ルクレールはハミルトンに0.119秒及ばず2番手だったが、ミディアムタイヤで記録したものであった。
- FP2(金曜午後)[12]
- 雲も薄くなり、気温20度、路面温度35度まで上昇した。序盤はフェラーリ勢がミディアムタイヤでトップタイムを更新し続け、同じくミディアムタイヤを履いたマックス・フェルスタッペンが肉薄する展開だったが、開始15分過ぎにアレクサンダー・アルボンがターン7でクラッシュしたため赤旗中断となった。13分後に再開され、メルセデス勢はハミルトンがミディアム、バルテリ・ボッタスがハードとタイヤを使い分けて走行する。残り1時間を切ったところでピエール・ガスリーがミディアムタイヤでトップタイムのベッテルに肉薄し、フェルスタッペンはミディアムタイヤでベッテルと同タイムを記録する。フェラーリ勢は週末で初めてソフトタイヤを使用し、両者ともタイムをミディアムタイヤより1秒縮め、ベッテルは1分16秒607のトップタイムを記録した。フェルスタッペンはベッテルに0.115秒差の2番手で、フェラーリ勢に食らいついた。残り30分ほどになると、各車とも決勝に向けてタイヤのデータを収集するためロングランを始めた。メルセデス勢はソフトタイヤでのアタックがいまいち伸びなかったが、ロングランではハミルトンがミディアムタイヤで、ボッタスがハードタイヤで光る速さを見せた。
- FP3(土曜午前)[13]
- 夜間に雨が降り、路面は所々乾いた箇所もあったがウエットコンディション状態、気温15度、路面温度20度でスタートした。全車インターミディエイトタイヤを履いて走行を始めたが、開始10分の時点でタイムを残したのはレッドブル勢のみで、開始20分の時点でも6台だけだった。路面の乾きが遅く、スリックタイヤで走行できる状況にならないままセッション後半を迎え、残り17分になってキミ・ライコネンがソフトタイヤで走行を始めると、他車も次第にコースインしていった。路面の乾きも進んでいったセッション終盤、多くのチームが予選シミュレーションを敢行し、ルクレールが1分16秒145でトップ、ベッテルも0.027秒差で続き2番手とフェラーリ勢が1-2でセッションを終えた。メルセデス勢もアタックをまとめ、ボッタスがルクレールに0.114秒差の3番手、ハミルトンも4番手とフェラーリ勢に迫った。逆にレッドブル勢はトラフィックに引っかかってタイムをまとめられずフェルスタッペンが6番手、アルボンは8番手に終わった。ルノー勢はダニエル・リカルドがマシントラブルで全く走行できず、ニコ・ヒュルケンベルグもタイムを記録できずと散々なセッションとなった。
予選
2019年10月26日 13:00 CDT(UTC-5)[14]
気温19度、路面温度34度、路面は乾きドライコンディションで行われた。
Q3ではマックス・フェルスタッペンがトップタイムを記録し、ポールポジションを獲得したかに見えたが、最後のアタックでバルテリ・ボッタスがクラッシュしたことによる黄旗を無視したため、フェルスタッペンには3グリッド降格のペナルティが科された。これにより、シャルル・ルクレールが今季7回目のポールポジションを獲得し、チームメイトのセバスチャン・ベッテルも2番手に繰り上がり、フェラーリ勢がフロントローを独占した。結局フェラーリ勢が6戦連続のポールポジションを記録する形となり、ルイス・ハミルトンが3番手、フェルスタッペンは4番手からスタートすることとなった[1]。予選トップのドライバーがグリッド降格によりポールポジションを獲得できなかったのは、2005年イタリアGPのキミ・ライコネン[注 2]や2012年モナコGPのミハエル・シューマッハ[注 3]の例がある[15]。Q3でクラッシュしたボッタスは6番手に終わり、アレクサンダー・アルボンは5番手でメルセデス勢の間に割って入った。以下、マクラーレン勢が4列目、トロ・ロッソ勢が5列目を占めた。
フェルスタッペンの黄旗区間での減速を怠った一件について、決勝終了後のトップ3に対する記者会見においてハミルトンとベッテルが彼を批判したが、両者とも黄旗[注 4]もしくは赤旗[注 5]中のスピード違反を犯した経歴があり、一方的に批判する言動については苦言を呈するメディア[16]もあった。
予選結果
- 追記
- ^1 - フェルスタッペンはQ3で黄旗を無視したため、3グリッド降格とペナルティポイント2点が加算された(合計4点)[1][19]
決勝
2019年10月27日 13:10 CST(UTC-6)[注 6][20]
展開
メルセデスの1ストップ戦略が功を奏し、ルイス・ハミルトンが2位のセバスチャン・ベッテルに対して2秒未満の差で優勝し、F1通算100勝目を挙げた[21]。予選でメルセデス勢を下したフェラーリおよび近年このコースで強さを発揮していたレッドブル勢は、タイヤのデグラデーションが大きいと判断し両者2ストップ戦略を選択。だが、レッドブルはタイヤ戦略を読み違い失速したうえ、マックス・フェルスタッペンは予選のグリッド降格ペナルティ処分や序盤の接触によりライバル勢と勝負するチャンスを失い6位入賞で終わり、チームメイトのアレクサンダー・アルボンがフェルスタッペンの前である5位で完走した。
- ファステストラップ[23][24]
- ラップリーダー[25][26]
- 追記
- ^FL - ファステストラップの1点を含む
- ^1 - クビアトは9位でフィニッシュしたが、最終ラップにヒュルケンベルグと接触した件でレース後に10秒のタイム加算ペナルティとペナルティポイント2点(合計4点)が科され、11位に降格した[27][28]
第18戦終了時点のランキング
- ドライバーズ・チャンピオンシップ
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- コンストラクターズ・チャンピオンシップ
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- 注:ドライバー、コンストラクター共にトップ5のみ表示。
脚注
注釈
- ^ 予選1位はマックス・フェルスタッペンの1:14.758だったが、グリッド降格ペナルティが科されたため繰り上がり。
- ^ 当時のエンジン基数規定は2レース1基で、ライコネンはこれに抵触して10グリッド降格となった。
- ^ 前戦スペインGPでブルーノ・セナと接触した責任により5グリッド降格となった。余談だが、このスペインGPはハミルトンが予選でトップとなったものの、提出が義務付けられている1リットルの燃料サンプルを残す必要があったが、ガス欠によりターン8でマシンを止めてしまった。このため規定違反で失格となり、最後尾グリッドからスタートした。
- ^ ハミルトンは2011年インドGPの予選にてトラブルで停車したマシンが発生したことを受け、黄旗が2本振られたにもかかわらず減速を怠って自己ベストタイムを記録したため、3グリッド降格のペナルティを受けたことがある。
- ^ ベッテルは今回減速していたものの、2018年アメリカGPのフリー走行1回目で、ウエットコンディションという差異はあるものの、コースの安全確保のため赤旗が掲示された際に、スピード違反を犯して3グリッド降格のペナルティを受けている。
- ^ メキシコの大部分は、10月最終日曜日の2:00にサマータイム(夏時間)期間が終了する。 “メキシコの時差と現在時刻”. Time-j.net. 2019年8月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年11月1日閲覧。
出典