道の駅河北(みちのえき かほく)は、山形県西村山郡河北町にある国道287号の道の駅である。愛称はぶらっとぴあ。「ぶらつく」と「ユートピア」を合わせた造語であるが[1]、誤って「ぷらっとぴあ」と書かれることもある[2]。
沿革
開館
1992年(平成4年)4月、建設省は「道の駅」設置基準策定の前段階として、全国で5箇所の設置地点を選定した。山形県では国道287号沿いの河北町谷地が選ばれた[3]。町はこの年、用地造成に着手し、翌1993年度(平成5年度)中には完成させる予定としていた[4]。1993年(平成5年)6月、議会では運営や管理の方針が不明確だとして、一部の議員が建設費を盛り込んだ補正予算に反対する緊急動議を提出したが[5]、結局補正予算は原案通り可決された[6]。町は工事と並行して駅の愛称を公募[7]、1994年(平成6年)1月、愛称が「ぶらっとぴあ」に決定した[1]。
1994年(平成6年)3月29日、完成した道の駅の落成式が行われ[8][9]、4月2日にオープンした[10]。山形県の道の駅としては4番目の開業であったが、先行する3駅は既設の施設が道の駅の指定を受けたもので、新規に道の駅として整備した施設は県内初であった[11]。駅の運営はJAさがえ西村山に委託され、地元農産物の有効活用として河北町産トウモロコシをアイスクリームにした「ハーベストクイーン」が駅で発売された[12]。
休館
しかし冬場に入ると利用者が落ち込み、JAさがえ西村山は1995年(平成7年)3月末で一旦終了する運営委託契約を更新しないことに決めた[13]。駅に出店するレストラン業者と口約束で契約する、撤退する業者に口頭のやり取りで出資金を払い戻すなど、JAのずさんな運営も明らかになり[14]、建設省が道の駅としての登録を取り消す可能性も出てきた[15][16]。これに対し町は、7月以降に開館が予定されていた総合交流センター「サハトべに花」の運営を担う公社に道の駅も運営させる構想を立て[17]、公社設立までの間は暫定的に町観光協会が運営を引き受けることで、施設の閉鎖を回避しようとした[18][19]。
ところがJAと口約束で契約を交わしていたレストラン業者が「5年契約のはず」と主張し、1995年(平成7年)4月以降も施設に残留した。町が電気を止めたことから業者は自家発電機を持ち込んでアイスクリームを販売し、社員が交代で施設に泊まり込んで営業を続けた。JAは4月11日、業者に光熱費など諸費用の支払いとJA所有物の返還を求める訴訟を起こした[20][21]。4月28日には町も業者に明け渡しを求める仮処分申請を行い[22]、5月には訴訟を起こして明け渡しを求めた。訴訟で業者側は、JAとの契約通りに営業していると主張[23]、町長も業者がJAと口頭で結んだ5年の委託契約を承認しているとして、町ともJAとも契約が成立していると主張した[24]。山形地裁は施設の活用策が決まっておらず、町が求める明け渡しに緊急性はないとして、町の仮処分申請を却下したが、業者側が求めていた営業妨害停止の仮処分申請も同時に却下した[25]。これには町と業者の双方が即時抗告した[26][27]。業者も1996年(平成8年)に町とJAに占有権と収益権を求める訴訟を起こし、訴訟合戦となった[28][29]。紛争案件となったことから、1995年4月以降建物は閉鎖状態となり、使用できるのはトイレだけとなった[30]。
1998年(平成10年)、町は建物のうち紛争部分を除いた1階の一部と2階だけを再開させることを決め[31]、4月から町べに花の里振興公社の運営で再開された[32]。1999年3月、山形地裁は「契約が成立していたとは言えない」としてレストラン業者に施設の明け渡しと未払い光熱費の支払いを命じる判決を出した[33][34][35][36]。判決を受け、町は4月2日と3日の両日開催される谷地ひなまつりの前に全館再開したい意向であったが、業者は判決後も退去せず[37]、4月23日に強制執行が行われた[38]。
再開および再休館
2000年(平成12年)6月、レストランのある3階部分も含めて全面再開した[39]。2000年2月の山形「道の駅」連絡会総会では河北の駅長が総会の会長に就任した[40]。
2016年(平成28年)4月からは地元河北町で情報通信機器を販売するゴトウ通信が地域活性化事業部を開設し、指定管理者として道の駅を運営することになった[41]。これに伴い野鳥のマスコットキャラクター「ぶらP」が作成され[42]、建物も改装されて4月29日に正式にリニューアルオープンした[43]。
しかし2018年(平成30年)、ゴトウ通信は自ら指定管理者取り消しを求め、河北町がこれを認めたため、4月1日から休館した[44]。
再再開
2018年(平成30年)6月、田宮栄佐美町長は1階のみを観光案内所として使用する形で再開を目指す意向を議会で表明した[45]。7月には河北町観光協会が委託先に決まったが[46]、休館状態は続き、2019年(平成31年)に新町長となった森谷俊雄も早期再開に向けた検討の意向を示した[47]。
その後、河北町の2019年度予算案に運営事業費が盛り込まれ[48]、2019年4月25日、プレオープニング式が行われた。これは正式運営に向けた調査のためのプレオープンという位置づけで、町は9月をめどに基本構想をまとめた後、本格オープンに入るとしている[49]。8月、町は2020年(令和2年)4月の本格オープンが目標と明らかにした[50]。
施設
- 駐車場
- トイレ (いずれも24時間利用可能)
- 道路情報コーナー
- イベント広場
- 喫茶コーナー
- 売店
- 物産展示
- レストラン
- 展望室
休館日
アクセス
周辺
脚注
- ^ a b 「道の駅河北、愛称決まる 「ぶらっとぴあ」」『山形新聞』平成6年(1994年)1月9日付朝刊15面。
- ^ ジェイアクト『東北「道の駅」パーフェクトガイド』メイツ出版、2010年、107ページ。ISBN 978-4-7804-0851-5。
- ^ 「「道の駅」に河北町谷地 国道287号 建設省選定 駐車場に物産館整備」『山形新聞』平成4年(1992年)4月15日付朝刊3面。
- ^ 「あす「道の駅」駅長会議 東京 物産施設など整備 来年度完成へ 河北町長ら状況報告」『山形新聞』平成4年(1992年)11月25日付朝刊3面。
- ^ 「〝道の駅〟建設に待った 予算案の修正動議可決 河北町議会」『山形新聞』平成5年(1993年)6月11日付朝刊21面。
- ^ 「「道の駅」の補正予算問題 特別委が集中審議 当局説明、原案通り認める 河北町議会」『山形新聞』平成5年(1993年)6月12日付朝刊3面。
- ^ 「待ち遠しい「憩い空間」 「道の駅 河北」建設工事が本格化 来春オープン 目玉は物産館 町 愛称を広く募る」『山形新聞』平成5年(1993年)6月12日付朝刊3面。
- ^ 「歴史 物産の案内役 「道の駅 河北」2日にオープン 各種ホール、広場併設」『山形新聞』平成6年(1994年)3月30日付朝刊18面。
- ^ 「『臨空都市構想にはずみ』 「河北ぶらっとぴあ」落成式 一般公開、来月2日から」『朝日新聞』1994年(平成6年)3月31日付東京本社朝刊26面(山形)。
- ^ 「旅の心いやす道の駅へ 河北・ぶらっとぴあオープン」『読売新聞』1994年(平成6年)4月3日付読売新聞東京本社朝刊25面(村山・置賜)。
- ^ 深山洋「「道の駅」に熱い視線 県内市町村 地域のPRに効果 情報発信や観光物産の拠点」『山形新聞』平成6年(1994年)8月28日付朝刊9面。
- ^ 「トウモロコシがアイスクリームに 河北「道の駅」で発売 歯ごたえ、風味特徴」『読売新聞』1994年(平成6年)5月1日付読売新聞東京本社朝刊20面(村山・置賜)。
- ^ 「河北町「道の駅」巡る委託トラブル 4月から施設一時閉鎖へ 業者、居すわる構え 町、立ち退き強行?」『読売新聞』1995年(平成7年)2月22日付読売新聞東京本社朝刊28面(村山・置賜)。
- ^ 「河北・道の駅 農協支所ずさん預金払い戻し 撤退業者の求めに応じ 名義人印鑑なしで」『読売新聞』1995年(平成7年)3月5日付読売新聞東京本社朝刊28面(村山・置賜)。
- ^ 「河北・道の駅問題 建設省、県から事情聴取へ 登録取り消しの可能性も」『読売新聞』1995年(平成7年)2月23日付読売新聞東京本社朝刊24面(村山・置賜)。
- ^ 「町長らが建設省などに事情説明 「道の駅河北」問題」『山形新聞』平成7年(1995年)3月3日付朝刊22面。
- ^ 「ぶらっとぴあ 7月以降運営再開へ 「サハト」公社に経営委任」『読売新聞』1995年(平成7年)2月25日付読売新聞東京本社朝刊26面(村山・置賜)。
- ^ 「ぶらっとぴあ 一時閉鎖回避 当面、町観光協が運営 町長、建設省に報告」『読売新聞』1995年(平成7年)3月7日付読売新聞東京本社朝刊28面(村山・置賜)。
- ^ 「河北の道の駅売店 4月上旬にも再開 町議会全員協で報告」『山形新聞』平成7年(1995年)3月8日付朝刊2面。
- ^ 「施設使用料払わないと提訴 河北の「ぶらっとぴあ」でJA」『毎日新聞』1995年(平成7年)4月12日付東京本社朝刊18面(山形2)。
- ^ 「町側、明け渡し訴訟も辞さず 河北「道の駅」問題」『山形新聞』平成7年(1995年)4月15日付朝刊22面。
- ^ 「町が明け渡し仮処分を申請 河北・道の駅問題」『山形新聞』平成7年(1995年)4月29日付朝刊22面。
- ^ 「被告業者側は全面争う構え 河北「道の駅」訴訟」『山形新聞』平成7年(1995年)5月25日付朝刊18面。
- ^ 「被告の業者側 全面争う構え 「道の駅」明け渡し訴訟」『山形新聞』平成7年(1995年)7月6日付朝刊21面。
- ^ 「山形地裁 町、業者の申請却下 「ぶらっとぴあ」契約問題」『山形新聞』平成7年(1995年)7月19日付朝刊22面。
- ^ 「仮処分却下で町が即時抗告 河北の道の駅問題」『山形新聞』平成7年(1995年)7月27日付朝刊18面。
- ^ 「業者側も即時抗告 河北の「道の駅」問題」『山形新聞』平成7年(1995年)8月1日付朝刊19面。
- ^ 「業者が提訴 道の駅河北 ぶらっとぴあ」『毎日新聞』1995年(平成7年)2月8日付東京本社朝刊18面(山形2)。
- ^ 「占有権確認求め反訴 「道の駅」食堂の委託業者 河北」『山形新聞』平成8年(1996年)3月9日付朝刊23面。
- ^ 「自治を検証する 山形 第一部 税 その費え去る先 箱もの④ 河北町ぶらっとぴあ 全国で唯一閉館の「道の駅」 経営不振で閉鎖 委託業者と裁判に 再開のめど立たず」『読売新聞』1997年(平成9年)4月4日付読売新聞東京本社朝刊26面(村山・置賜)。
- ^ 「「道の駅」物産館再開へ 一部を除き4月から 振興公社に委託 河北町」『山形新聞』平成10年(1998年)2月20日付朝刊6面。
- ^ 「河北町の道の駅「ぶらっとぴあ」 一部施設利用あす再開 3年ぶり 物産、展示コーナーなど」『読売新聞』1998年(平成10年)3月31日付読売新聞東京本社朝刊33面(村山・置賜)。
- ^ 「業者に立ち退き命令 河北・道の駅訴訟で判決 山形地裁」『山形新聞』平成11年(1999年)3月17日付朝刊23面。
- ^ 「「委託契約結ばれず」 河北町道の駅訴訟 業者に明け渡し命令」『朝日新聞』1999年(平成11年)3月17日付朝日新聞東京本社朝刊27面(山形)。
- ^ 「道の駅「ぶらっとぴあ」レストラン 業者に明け渡し命令 地裁 河北町の請求受け入れ」『読売新聞』1999年(平成11年)3月17日付読売新聞東京本社朝刊26面(村山・置賜)。
- ^ 「河北町・道の駅訴訟 口頭の「業務委託契約」は無効 「業者に占有権ない」 山形地裁 明け渡し命じる判決」『毎日新聞』1999年(平成11年)3月17日付東京本社朝刊23面(山形2)。
- ^ 石川淳一「河北・道の駅 施設占有問題 業者、明け渡しに応じず 町など強制執行手続きへ」『毎日新聞』1999年(平成11年)4月2日付朝刊19面(山形3)。
- ^ 「「ぶらっとぴあ」強制執行 河北」『山形新聞』平成11年(1999年)4月24日付朝刊23面。
- ^ 「「ぶらっとぴあ」再開 河北の道の駅 物産店などがオープン」『読売新聞』2000年(平成12年)6月2日付読売新聞東京本社朝刊26面(村山・置賜)。
- ^ 「道の駅 ここに あそこに 酒田で総会 山形連絡会がガイドブック」『山形新聞』2000年(平成12年)2月15日付朝刊20面。
- ^ 「「道の駅河北」の指定管理契約 ゴトウ通信運営へ 地域活性化へ機能充実図る」『山形新聞』2016年(平成28年)3月31日付9面。
- ^ 『山形新聞』2016年(平成28年)4月14日付16面。
- ^ 『山形新聞』2016年(平成28年)4月30日付19面。
- ^ 上月英興 (2018年5月30日). “赤字続き休館、道の駅はつらいよ 当初は物販想定なく…”. 朝日新聞. https://www.asahi.com/articles/ASL4S7RCNL4SUZHB01B.html 2018年5月30日閲覧。
- ^ 「道の駅河北、1階のみ使用へ 町、観光案内所にする意向」『朝日新聞』2018年(平成30年)6月9日付東京本社朝刊29面(山形)。
- ^ 『山形新聞』2018年(平成30年)7月28日付24面。
- ^ 『山形新聞』2019年(平成31年)1月23日付14面。
- ^ 『山形新聞』2019年(平成31年)2月16日付24面。
- ^ 斎藤吉貴「休館1年―「今度こそ」膨らむ期待 「道の駅河北」プレオープン」『山形新聞』2019年(平成31年)4月26日付20面。
- ^ 斎藤吉貴「来年4月、本格再開目標 道の駅河北 町側が議会に説明」『山形新聞』2019年(令和元年)8月24日付25面。
関連項目
外部リンク