航空路火山灰情報センター航空路火山灰情報センター(こうくうろかざんばいじょうほうセンター、英: Volcanic Ash Advisory Center; VAAC)は、大気中を浮遊して航空の安全を脅かすおそれのある火山灰(火山灰雲)に関する情報を取りまとめ、配信する業務を専門に行う気象センターである。 概要2016年現在、航空路火山灰情報センター(以下、VAAC)は世界中の9ヶ所に設置されており[1]、各センターは各自の責任領域内において24時間体制で火山を監視し、火山灰に関する情報を集中的に取り扱う。VAACによる分析結果は航空路火山灰情報 (Volcanic Ash Advisory; VAA[2]) の形で公表されるほか、しばしばコンピュータ・シミュレーションを用いた火山灰の輸送・拡散モデルの結果も取り入れて発表される[3][4]。 VAACの国際的なネットワークは、国際航空路火山監視運営グループ (International Airways Volcano Watch Operations Group; IAVWOPSG) によって運営される国際航空路火山監視計画 (International Airways Volcano Watch; IAVW) の一環として、国連の専門機関の一つである国際民間航空機関 (ICAO) を中心として構築された[5]。IAVWは、ICAOを中心に、世界気象機関 (WMO) 、国際測地学・地球物理学連合 (IUGG) の協力の下、1980年代に推進された[2]。個々のVAACは、アメリカ合衆国のNOAAやイギリスの気象局、日本の気象庁のように、拠点となる国の国立気象機関により運営されている。 発足の経緯火山灰雲中を飛行して航空機がエンジン故障等のトラブルに遭うのを回避するため、火山の噴火によって発生する火山灰雲の分布予測の精度を高めることを目的として、1990年代に航空路火山灰情報センターが設置された。1982年にガルングン山の噴火後にインドネシア上空を飛行したブリティッシュ・エアウェイズ9便(B747型機)は、火山灰の影響で4基のエンジン全てが停止した。1989年にも、リダウト山の噴火後にアラスカ上空を飛行したKLMオランダ航空867便(B747型機)が全エンジンの推力を失った。このように火山灰が関係する航空事故やその他の事案が相次いだことを受けて、火山灰が商用航空にとって危険な存在であることと、同様の事故を確実に防止する唯一の策は適時操縦士に警告を発して火山灰雲を避けるように迂回するなどの措置を取ることであることが認識されるようになった。 目的VAACの目的は、火山観測所や衛星画像、飛行中の航空機操縦士の報告等により、火山から放出される火山灰雲に関する情報を収集して分析し、将来の動向を予測することである。こうして作成された予測および警告は、気象観測機関や航空管制機関および火山灰雲が流れ込む可能性のある近隣のVAACを含む、航空関係諸機関に向けて発表される[6]。 これらの機能を十分に発揮できるように、各VAACは火山灰の拡散モデルを研究・開発している。気象衛星や火山観測点および操縦士の報告等から入手した情報を利用することにより、火山灰の位置を特定し、さらにモデルを活用して航空機の安全に支障を来す可能性があると考えられる空域の火山灰の分布を予測する[7]。 所在地世界9ヶ所に設置されているVAACは、各々に定められた責任領域を管轄している。各センターは、その地域付近を管轄する複数の気象官署だけでなく、隣接するVAACや責任領域内および隣接する航空交通管制部とも連携する。 VAACの監視が及ぶ範囲は、緯度と経度か、ICAOのIAVW計画の一部として国際的に合意された飛行情報区 (Flight Information Region; FIR) と共通の区域か、のいずれかによって設定されており、各VAACの責任領域はIAVWハンドブックに記されている[8]。
警報火山灰雲が探知されると、VAACはそれに関する入手可能な全ての情報を集めた後、コンピュータ・モデルを用いて、航空機が利用する様々なフライトレベルでの火山灰雲の進路を予測する。その後、VAACはIAVWの手順書に定められた通りに、航空関係機関および気象官署に対して警告を発する[8]。この警告は、航空路火山灰情報 (Volcanic Ash Advisory) の形式で発表される。
文字形式の火山灰拡散支援情報のほかにも、グラフィック形式の火山灰拡散予測図(VAG)がある。 東京VAACでは、VAA,VAG以外にも画像ファイル形式で拡散予測情報を提供している。
関連項目脚注・出典
外部リンク
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