目黒寄生虫館(めぐろ きせいちゅうかん、英称:Meguro Parasitological Museum、頭字語:MPM)は、日本の東京都目黒区下目黒に所在する、寄生虫学専門の私立博物館。公益財団法人目黒寄生虫館が運営している。
概要
寄生虫に関する研究、展示、標本や資料の収集・鑑定、啓蒙活動等を行っている。寄生虫専門博物館は世界でも珍しいため海外からの来訪者も多く、説明文は8カ国語で書かれている[7]。2017年12月[8]に韓国はソウルの江西区にて寄生虫博物館[9][注 1]が開館[10]するまでは、寄生虫専門の博物館として長らく「世界で唯一」の存在だった。
現在の当館の建物は、床面積があまり広くない地上6階・地下1階のビルで、さらに展示スペースは1階と2階のみという、小さな施設である。上層階は研究室、収蔵庫、事務室等となっている。寄生虫形態学および分類学を中心とした地道な研究活動や、定期的な特別展示や講演会、外部での講演など教育活動も行う研究博物館である。
歴史
前史
南満洲鉄道株式会社の衛生研究所に勤務していた医学博士・亀谷了は、1947年(昭和22年)7月に中国の奉天[注 2]から日本への引き揚げを果たすと、1948年(昭和23年)4月、目黒区に診療所を開設した。亀谷はその頃から寄生虫を専門とする研究所を設立したいと考えていた。
年表
関係者
理事長
- 亀谷みどり(かめがい みどり):少なくとも2013年度(平成25年度)以前に就任。現任[3]。
館長
- 1909年(明治42年)生まれ。2002年(平成14年)没。生物学者(獣医学者、寄生虫学者)、医学者、医師。
- 1953年(昭和28年)就任。1997年(平成9年)退任。
- 1997年(平成9年)就任。2000年(平成12年)退任。
- 2000年(平成12年)就任。2006年(平成18年)退任。前職は、ヤマザキ学園大学(現・ヤマザキ動物看護大学)動物看護学部動物看護学科 教授[人 4]。
- 2006年(平成18年)就任。2011年(平成23年)退任。前職は、国立科学博物館動物研究部部長。
- 2011年(平成23年)就任。2021年(令和3年)3月31日退任。前職は、東京大学大学院農学生命科学研究科 教授[人 8]。
- 2021年(令和3年)4月1日就任。現任。前職は、国立科学博物館動物研究部部長。
公益目的事業
- 研究・調査活動、学術資料の収集と整理、指導・助言、外部研究者との連携協力。
- 「目黒寄生虫館」の設置運営、教育普及活動、出版活動、標本販売、ミュージアムの運営。
所蔵品
- 標本:約60,000点(模式標本 約1,500点を含む)(※公式ながら時期情報なし)。2009年時点では、標本 約45,000点(模式標本 約1,500点を含む)。
- 図書文献:約16,000冊(※公式ながら時期情報なし)。
- 図書:約5,000冊。2009年時点では約6,000冊。
- 刊行物:約300種、約11,000冊。
- 論文別刷:2009年時点で約50,000部。
- 特筆性の高い資料
- 日本の寄生虫分類学に多大な業績を遺した山口左仲(1894年-1976年)が論文などの執筆時に使用した寄生虫の原図の一部。
- 大鶴資料:琉球大学医学部長を務めた寄生虫学者の大鶴正満(1916-2008年)が遺した1,000点以上の膨大な資料[22]。
- 小宮文庫:国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所)の所長を務めた寄生虫学者・小宮義孝 (1900-1976年)を中心とする研究者が保存してきた寄生虫病や感染症に関する研究資料。その一部が2017年(平成29年)に研究所から当館に寄託されたもので[23]、様々な言語で書かれた約8,000件の学術論文や会議報告集などからなる。
主な展示物
- 全部で約300点あるが、全長8.8メートルに及ぶ長大な日本海裂頭条虫(サナダムシの一種)は当館を代表する展示物である。1986年(昭和61年)から展示されているこの標本は、約1メートルずつに折り曲げて展示されているが、同じ長さの紐が標本の横に設置されており、それを手に取ることで長さを実感できるようになっている。
- 寄生虫や昆虫の蝋細工模型
- 寄生虫罹患者の写真等のパネル
刊行物
- 書籍
- 論文
- 日本における寄生虫学の発展史が、研究者86名の成果を綴る形で編纂されている。和文版は1961年(昭和36年)から1999年(平成11年)までに全7巻が刊行された。PDFファイルは公式ウェブサイトから無料ダウンロードが可能。
- 英文版は1964年(昭和39年)から2003年(平成15年)までに全8巻が刊行された[26]。和文版と同じく無料ダウンロードが可能[26]。
- その他
- 開館以来発行してきた『目黒寄生虫館月報』および『目黒寄生虫館ニュース』(1998年〈平成10年〉12月発行の通巻第179号まで)は、公式ウェブサイト上で閲覧可能。2000年(平成12年)に『むしはむしでもはらのむし通信』に改題した。
- パンフレット『目黒寄生虫館ガイドブック』(和文版、英文版)
グッズ
入館料を徴収しない当館にとっては、来館者による寄付金とともに貴重な収入源である。当館の珍しい特色を生かしたオリジナル商品が用意されている。館内のショップとオンラインショップ(ECサイト)がある。
利用案内
- 開館時間:午前10時から午後5時まで (10:00 - 17:00) 。
- 休館日:毎週月曜日・火曜日(月曜日または火曜日が祝祭日の場合は開館し、翌平日を休館日とする。)、および、年末年始(12月29日~1月4日)。
- 見学時間:おおよそ30分から40分程度。
入館料
- 無料。
- 任意で寄付を募っており、1階展示室の脇にパンフレットとともに募金箱が置かれているほか、寄附金控除が認められる公益財団法人であることから、来館者へ積極的に寄付を呼びかけている。
交通アクセス
- 最寄りの鉄道駅は、目黒駅。
- 当館に駐車場は無いため、公共交通機関を利用するのが良い。自家用車の場合、周辺のコインパーキングを利用すること。
関連作品
- 書籍
- 当館を初めて「面白スポット」として紹介した文献。その内容は、1981年(昭和56年)に創刊された雑誌『写真時代』の掲載物であるため、1981年の頃に記述されたものと推定される。
参考文献
- 書籍、ムック
- 論文
関連文献
- 論文
脚注
注釈
出典
- 人物情報
外部リンク
- 当事者
- 第三者