株式会社 (日本)
株式会社(かぶしきがいしゃ、ローマ字表記: Kabushiki-gaisha)は、日本の会社法に基づいて設立される会社形態の1つで、株式と呼ばれる細分化された社員権を有する有限責任の社員(株主)のみから成るものの事である。出資者たる株主は出資額に応じて株式を取得し、配当により利益を得る。広義には外国における同種または類似の会社形態を含む(会社法823条)が、これについては株式会社を参照。 概要株式会社に出資することにより株式を有する者(すなわち株式会社の社員)を株主という。株主は購入などで手に入れた株式の数に応じて、株式会社の経営に関与する事ができる(経営参加権)。具体的には株式会社の意思決定会議である株主総会において、原則として株式の保有数、またはその保有単元数に応じて議決権を持つ(株主平等の原則)。 日本の株式会社に対応する同様の構造の会社形態は、日本以外の世界各国にも存在する。以下に例を挙げる。
なお、日本の会社は株式会社以外に有限会社(現在は新設不可)、合資会社、合名会社、合同会社があるが、株式会社の会社数はこれらとは桁違いに突き抜けている。 表記方法株式会社の表記については、法務省日本法令外国語データベースの会社法[1]第六条第二項において、 Kabushiki-Kaisha (連濁せずに、かぶしき 「か」いしゃ)とローマ字表記されている。ただし外国語データベースは参考資料であって、法的効力は有せず、また公定訳でもない。 また、省略する場合、「(株)」(銀行振込の場合は「カ」[注釈 1])となる。英文では「"KK"」(Kabusiki Kaisha)、また「Corp.」、「Inc.」、「Ltd.」、「Co., Ltd.」などが使われる(後述)。 起源
なお、商法はドイツ法を参考に立法されたため、株式会社もドイツの株式会社(AG)を参考に立法された。もっとも、第二次世界大戦後の連合国軍占領下で、商法の株式会社に関する部分は占領当局によりアメリカ合衆国の1933年イリノイ州会社法(Illinois Business Corporation Act of 1933)に基づく全面改訂がなされ[2]、その後もアメリカ法の強い影響を受けて幾度もの改正がなされて現在に至っているが、日本法とアメリカ法の間には差異があるため、アメリカのビジネス・コーポレーションと日本の株式会社は異なる特徴を有している。専門職として、1872年(明治5年)に司法書士が創設され、設立およびそれ以後の権利義務の変動に関する登記(商業登記)のための書類の作成、登記の申請などを業務として行っている。 設立株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(49条)。法人格は準則主義により、法定の手続きが履行されたときに付与される。 会社法第2編第1章 設立に規定がある。
設立方法
発起人株式会社の設立の企画者として定款に署名する者をいう。 株式会社の成立後は、錯誤、又は詐欺若しくは強迫を理由として設立時発行株式の引受けの無効又は取消しをすることができない(51条)。 擬似発起人とは、募集広告等で設立を賛助する者をいい、発起人とみなされる(103条4項)。 定款の作成定款とは、会社の組織活動に関する根本規則(実質的意義の定款)、およびそのような規則を記載した書面・電磁気的記録(形式的意義の定款)のことを指す。 株式会社を設立するためには、発起人が定款を作成、署名・押印しなければならない(26条)。 定款の記載事項は必ず記載しなければならない絶対的記載事項と、記載しなくてもいいが記載しなければその記載の効力が認められない相対的記載事項、定款以外の規則でも効力を及ぼすが定款に記載することもできる任意的記載事項がある。(詳細は定款を参照)。 発起人が作成した定款は公証人によって認証される。また、相対的記載事項の一部は変態設立事項といい、検査役の調査が必要とされる。 商号商号には「株式会社」をどこかに含まなければならない。一般に、「株式会社」は先頭(株式会社○○、いわゆる「前株」)か末尾(○○株式会社、いわゆる「後株」)に置かれ、しばしば(株)と略記される(法的には、○○株式会社□□のような法人名も認められるが、実例はごく少ない)。銀行振込の場合、前株は「カ)」、後株は「(カ」と表記される。 設立時発行株式発起人の全員の同意が必要である(32条)。
出資の履行発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない(34条)。
設立時役員等設立時役員等の選任は、発起設立では発起人の議決権の過半数をもって決定し(40条)、募集設立では、創立総会の決議によって行わなければならない(88条)。 定款で設立時役員等として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時役員等に選任されたものとみなす(38条)。 設立時取締役・設立時監査役は、選任後遅滞なく、設立事項を調査しなければならない(46条、93条)。 創立総会
成立本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(49条)。成立の日における貸借対照表を作成しなければならない(435条)。株式会社の設立の登記(911条) 設立無効の訴え会社の設立の無効は、会社の成立の日から2年以内に訴えをもってのみ主張することができる(828条1項1号)。 会社の設立の無効の訴えは、設立する会社を被告として訴え(834条)、認容判決が確定したときは、将来に向かってその効力を失う(839条)。 株式株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他会社法の規定により認められた権利を有する(105条1項)。
募集株式の発行募集事項の決定株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式について次に掲げる事項を定めなければならない(199条1項)。
原則として、この事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない(199条2項)。この決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない(309条2項5号)。 募集株式の割当て原則として、募集に応じて募集株式の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を株式会社に交付しなければならない(203条2項)。
原則として、株式会社は、申込者の中から募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定めなければならない(204条1項)。 出資の履行原則として、募集株式の引受人は、第199条第1項第4号の期日又は同号の期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集株式の払込金額の全額を払い込まなければならない(208条1項)。 →「募集株式」も参照
新株予約権→「新株予約権」を参照
機関株式会社は法人であり、その意思決定や行為を実際に行うのは、かかる権限を有する機関である。 変遷日本のかつての商法における株式会社は、従来(1950年(昭和25年)改正以降)、全株主により構成される株主総会の下、株主総会により選任された取締役および取締役により構成される取締役会、取締役会により選任される代表取締役、ならびに株主総会が選任する監査役によって構成される。 日本の株式会社は、代表取締役の権能が非常に強く、株主が軽視されがちであるとの主に欧米の機関投資家からの批判を受け、コーポレートガバナンスの観点から、米法型の委員会等設置会社が2003年(平成15年)4月、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)改正により規定された。委員会等設置会社に対して、従来の株式会社を呼称する場合には監査役設置会社といった。 2005年(平成17年)の会社法の成立により、従来の有限会社の枠組みに属するタイプの会社が株式会社の基本的な形態とされることになったため、取締役会の設置も任意になった。その他会社の機関構造の自由度は飛躍的に増加した。また委員会等設置会社は委員会設置会社に名称が改められた。 現行法では、指名委員会、監査委員会および報酬委員会を置く株式会社を指名委員会等設置会社という(2条12号)。 種類
一 執行役等の職務の執行の監査および監査報告の作成 二 株主総会に提出する会計監査人の選任および解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容の決定
計算株式会社は、当該株式会社を除く株主に対し、剰余金の配当をすることができる(453条)。 事業の譲渡等株式会社は、事業の全部の譲渡等をする場合には、その行為がその効力を生ずる日の前日までに、株主総会の決議によって、その行為に係る契約の承認を受けなければならない(467条1項)。 →「事業譲渡」も参照
解散株式会社が、活動を止め財産の整理し、清算することをいい、法人格は、合併の以外では清算手続の完了まで存続する。
清算清算中の株式会社は清算株式会社と呼ぶ。清算が結了するまでは、清算株式会社は、株式会社として(解散の決議後なども)存続し、定期株主集会も開かれ(491条)、原則として清算結了の登記を行うことで、株式会社は消滅する。
関連する法律
英語日本の株式会社に対応する英語での呼称には、以下のようなものがある。
なお、以上とは別に、kabushiki kaishaと呼ぶこともある。特に英文契約書などではこの表現が好まれる。 商号の英訳英語表記の場合には、「株式会社」をローマ字表記にして頭文字を取った「KK」(kabushiki kaisha)の他、米国や英国に倣って「Corp.」、「Inc.」、「Ltd.」とすることが多い。日本においては Co., Ltd. の形もよく使われている。最近では、カンマを外した「Co. Ltd.」の表記を採用する企業もある。また、多国籍企業ではAIGのように日本国外の本社と日本法人を区別するために、前者を「Inc.」など英語の略称、後者を「KK」として区別に用いている例もある。 外国企業等との取引の際に便利なように、英文での商号を定めている日本の株式会社もあり、定款に定めることもある。ただし、日本に英文商号を規制する法律や登記する制度はない。日本の株式会社が定める英文商号の中で、「株式会社」の翻訳として通常使われているのは、以下の4種類である(実例とともに示す)。
なお、英語圏には日本の会社の種類を表す語を前に置く習慣がないため、「株式会社○○」(前株)であっても"XXX Co., LTD"などのように後ろに置くのが普通である。 記号英語では「Kabusiki Kaisha」の略として㏍という記号が使われることもあり、Unicodeなどではこの記号を「全角KK」として定めている。また日本語では「全角括弧付き株」の㈱記号も使われている。
脚注注釈出典
関連項目
外部リンク |