A が空であるときに、一意に定まる空写像は空虚な意味で(2. の意味での)定数関数と考えることができるが、B が空ならばそれは値を持たない(つまり 1. の意味で定数でない)[注釈 1]。A が空で B が元を持つ場合に関しては、排中律を必要とするので、前提とする論理によってはそれも問題になる。[2]
実定数函数の概観
実函数(実変数実数値の函数)としての定数函数は、一般に実数 c を用いて f(x) = c あるいは簡単に y = c がその一般形となる。定数函数 y = c のグラフは、xy-平面 上の水平線で点 (0, c) を通る[5]。
一変数 x の多項式函数の文脈では非零定数函数と恒等的に零な函数は区別を受ける。つまり、「次数 0 の多項式」は一般形が f(x) = c (c ≠ 0) となる函数を定め、この函数は x-軸との交点(函数の根)を持たない。他方、零多項式f(x) = 0 は(自明な)定数函数(零函数)を定め、この場合は任意の x が根となり、グラフは xy-平面の x-軸に一致する[6]。
^斎藤 (2009, pp. 24–25) は、写像 f: X → Y が定値写像であることを、c ∈ Y として、すべての元 x ∈ X を c ∈ Y にうつす写像と定義した後、空集合の恒等写像も定値写像とよぶ、としており、Bourbaki による定義と一致する。一方、松坂 (1968) の定義では空集合への空写像は定値とならない(松坂 (1968, あとがき 6)) にあるように、本文ではそもそも定義域や終域が空集合となる場合への言及を(実用上は枝葉末節であるという趣旨で)意図的に避けている)。